忠義のために、わが子を犠牲にした武士の物語――。
討ち取った敦盛の首の代わりに自分の子の首を差し出した直実の苦悩
鬼平犯科帳から大好きになった中村右吉衛門が京都へ!
これは行かねばなるまいて。
昼の部、勇んでチケットを取ったら前から2列目という幸運。
数年前なら躊躇した1人歌舞伎に行ってまいりました。
ここは南座のお隣、祇園饅頭さん。
さっそく豆大福とニッキ餅を買い込んで
イヤホンガイドも借りて、南座に入ると花萬さんでちらし寿司ゲットして。
目の前の緞帳には
「中村歌昇改め 三代目中村又五郎 中村種太郎改め 四代目中村歌昇」
の染め抜き文字が、アゲハ蝶の大きな紋とともに目に入ります。
元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿(おはまごてんとよつなきょう)
浜遊びの日に起こるアクシデントを、愛之助演じるお殿様・綱豊が
ラブリン~ブリンブリン♪と解決するお話。
「播磨屋っ」「待ってましたっ」
ナイスなタイミングで大向こうがかかるのも、南座ならでは。
松竹座ではなかなか粋な大向こうは少ないように思います。
舞台は
なんたって演者さんがすぐそこですからね、本当に堪能いたしました。
30分の休憩は、膝の上にちらし寿司を広げて
イヤホンガイドから聞こえるインタビューなどを聴きながら、
いやしかしお食事は、お友達と一緒が良いですね。
次は舞の「猩々(しょうじょう)」
猩々という妖怪がお酒を飲んで踊るんですね、
もともとはお能の演目なので、かづらも衣装も格が高くて艶やか。
中村種太郎改め 四代目中村歌昇が初々しく、翫雀がまた素晴らしい。
若さの歌昇22歳、流し眼にほんの少し笑みを口元にたたえているのが
ほーんまに色気があって美しい、きれい!
相対する翫雀、少し酔いが回ったのにポーカーフェイスでお茶目な猩々、
おふたりとも最高です。
昔は「舞の時間はちょっと休憩タイム」のような気持ちになったのですが
今回の猩々、目が離せない踊りでした。
私の呟きは、イシちゃん・・・ウエンツ・・・
さて、最後はいよいよ吉右衛門の「熊谷陣屋(くまがいじんや)」
眠気がくるかも?という予感はありましたが
イヤホンガイドがあったので、義太夫節もなんのその、
その義太夫お2人にも大向こうがかかるという、素晴らしい浄瑠璃です。
まず吉右衛門演じる熊谷が大きくて迫力があり、もう目が離せない。
唇をぶるぶるぶる~とさせて発音する様や、見得を切る様、
まさに歌舞伎、という舞台ですね。
その熊谷がねぇ、最後には頭を丸めて出家する、
なんという悲しい物語というのと、吉右衛門の存在感がすごい。
「十六年はひと昔、夢だ、夢だ。」
なんて、涙なしには聴けないセリフです。いやぁ泣かされた。
こうやって1人南座行き、無事に完了いたしました。
そして、いつかは見たい吉右衛門の
「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべ さとのえいざめ)」
NHKで見て、あまりの怖さに震えた演目です。
南座か松竹座でかかったら必ず観たいです。
いや、江戸でも…