9.11同時多発テロから20年が過ぎました。『テロとの戦い』を掲げたアメリカがアフガンから撤退し、この事件に続く一連の騒動も一つの区切りがついた気がします。
もともとアメリカ合衆国は、ヨーロッパを逃れたプロテスタントたちが、この世に『キリスト教の精神に基づく神の王国』を打ち建てようと建国したのですから、(ヤタラに)まだ神の教えを知らぬ無知蒙昧なヤカラを教化しようとするお節介なトコロがあるのです。
その始まりは実に秘密結社めいていて、最初の頃は移民自由でした。聖書に手を置いて『アメリカの憲法に従い、その定めを遵守します』と誓えば誰でも国民になれたのです。
キリスト教といえば愛の宗教と思うヒトが多いのですが、もともとの教えは『汝われ以外の神を信ずべからず』という
苛烈な砂漠の一神教ですから、信教という点では一切の妥協を許しません。
こうした集団が、『アラーの他に神はなし』と唱えるイスラム教の集団とぶつかれば争いは必至です。どちらかが殲滅されるまで戦いは続くのでしょう。
さて、今日にちなんだ曲としてW.A.S.P.の『Hallowed Ground』をご紹介しましょう。これは同時多発テロの跡地『グラウンド・ゼロ』のための鎮魂歌です。
※W.A.S.P.『Hallowed Ground』
W.A.S.P.といえばアメリカの支配層を表す『ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント』の略ですが、これをバンド名にしたW.A.S.P.のウリは『史上最凶』なるキャッチコピーが表す通りワルの集団でした。
リーダーのブラッキー・ローレスは兵役に就くも(あろうことか)上官を殴って除隊という経歴の持ち主で、過激な演出はコンサートを見たファンから『舞台で人が殺されている』と通報されるほどでした。
タネを明かせば拘束された美女がガイコツに変わるイリュージョンとのコラボだったのですが、生き血のような赤い液体を飲んだり、口から火を吐いたりするパフォーマンスと相まって、本当と信じるヒトが出るほどの過激さがウリだったのでした。
ところが
アルバム『クリムゾン・アイドル』を出した頃からバンドは変質し始めます。極めつけのワルが人生について悩むようになったのです。ブラッキー・ローレスは自分が造り上げた架空の人物ジョナサンと自分を同一視するようになり、バンドは迷走し、メンバーが次々と抜けて、ついにはブラッキーのソロ・プロジェクトになってしまいます。
アルバム『Dying for the world(見出し写真)』は、ソロ・プロジェクト時代のブラッキーが同時多発テロに触発されて製作したものです。
ご紹介したHallowed Groundもこのアルバムに収録されています。これは鎮魂歌ですが、アルバム収録曲には激しい曲も多く、それらは湾岸戦争の戦車兵からもらったファンレターに書いてあった『攻撃するときはW.A.S.P.の曲をガンガン掛けながら前進している』という一節に刺激を受けた『人を殺しに行くための曲』なのだとか。最凶バンドとしての面目躍如のようなアルバムです。