吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

小松左京『復活の日』角川文庫(初出1964年)

2020-01-24 06:00:46 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護

 今日から春節・・・新型コロナウイルスの蔓延(パンデミック)はあるのでしょうか?

 

※中国当局の手によって武漢駅は封鎖(事実上の隔離)されました。

 春節を目前にした昨日、中国当局の手によって武漢が事実上隔離されましたが、すでに出国した人も多く、多数の人が移動する状況には変わりがなく、重い肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの蔓延が心配されます。

 中国に配慮したWHOは緊急事態宣言を見送りましたが、この判断はいかがなものか。

 

 今日は、この現代の状況を予見したかのような小説がありますので、ご紹介したいと思います。

 小松左京『復活の日』です。

※小松左京『復活の日』角川文庫・・・表紙は生頼範義です!

 

 

※角川映画『復活の日』映画もなかなかの力作です。

 

 映画化(角川映画)もされましたので、ご存知の方も多いと思いますが、実は映画では重要なプロットが抜け落ちていたために、この小説の持つ本当の面白さは味わえないのです。

 世界を破滅させるウイルスはもともと生物兵器として開発され研究所の中で培養されていました。これがひそかに盗みだされ、輸送中の飛行機が墜落した結果、全世界にウイルスが拡散してしまう、これは映画でも描写されていました。

 映画で描写されなかったのは、その経過です。

 最初、中国の奥地でアヒルが大量死します。ところが中国当局はこれをひた隠しにします。問題のウイルスは突然変異を繰り返すインフルエンザウイルスの一種で、最初は鳥類に感染するのです。ウイルスは変異を繰り返し鳥から鳥へ、鳥からヒトへ、そしてヒトからヒトへと感染経路を増やしていきます。生物兵器として開発されたウイルスは強力で、発症したが最後、高熱が出て、たちまち死んでしまうという恐ろしいものでした。このウイルスに対抗しようとワクチンを作る試みがなされるのですが、次々と変異するために有効なワクチンを作ることができません。さらに、ヒトへの感染が確認されるより先に、野鳥から鶏に感染していたため、鶏が大量死してしまい、ワクチンを作るために必要な有精卵が手に入らなくなってしまうのです。その結果、新型インフルエンザの蔓延により人類は滅亡します。

 残ったのは世界から隔離されていた南極越冬隊だけになるのです。

 

※武漢市内の病院では医師や看護師は防護服を着用して治療にあたっています。

 

 どうでしょう。H5N1型(鳥インフルエンザ)やSARSを経験した私たちには、いつ現実になっても不思議ではない状況に思えませんか。

 驚くのは、この小説が発表されたのが1964年で、今から56年も前だということです。

 当時、大多数の人々は風邪とインフルエンザが別物だという認識さえなかった時代に、この予見は凄すぎるとしか言いようがありません。

 今こそ、多くの人に読んでもらいたい小説です。