先日物故した哲学者梅原猛氏は既存の枠組に囚われずその活躍は多方面に亘った。
これは小説家としての氏の一面を示す一冊。中世の怪異譚に多方面からの該博な知識と近代人の思考を加味して新しい物語に仕立てた一冊です。軽く読めるので『梅原文学の入門書として最適では』と思います。
※梅原猛『中世小説集』新潮社 / 1993年5月25日発行(→後半はこの文字列をクリック!)
その1.首
怪談『舞首』をもとに二振りの刀をめぐる争いとその結末を描いたもの。
古墳から出土した大量の鉄器を鋳直して作られた鉄の柱は地頭の妻と交わり、妻は鉄の玉を産みおとす。その玉から造られた刀は近づけただけで人の首を切り落とす力を持っていた・・・。
※舞首は神奈川県真鶴町に伝わる妖怪。互いに首を切り落とした三人が首だけになっても争い合う。
その2.長谷雄の恋
鬼との双六勝負に勝った紀長谷雄(きのはせお)は、絶世の美女を譲り受ける。鬼の出した条件は『今日から百日の間はこの女を抱いてはならぬ』というものだった・・・。
※当時の双六は現代でいうバックギャモン、サイコロの運に加えて相手の進路を塞ぐ頭脳戦が勝敗の鍵を握る。
その3.おようの尼
観想念仏の修行を極めた僧のもとに現れた物売りの尼の存在に僧の心は千々に乱れていく・・・。久米仙人を彷彿とさせる話。
※久米仙人は洗濯する女の脚を見て通力を失い、空から墜ちてその女を妻にする。
その4.福富物語
道祖神に願掛けした夢占いのおかげで巨万の富を得る老夫婦。何とその方法は妙なる調べを聴かせるオナラ芸だった・・・。オナラ芸とはいっても世阿弥の理論に基づいて構築!?・・・音階を響かせていると最後に『ミ』が出る!?いやいや・・・落語のようなオチが待っています。
※世阿弥は独自の理論で夢幻能を完成させ、集大成した。
これは小説家としての氏の一面を示す一冊。中世の怪異譚に多方面からの該博な知識と近代人の思考を加味して新しい物語に仕立てた一冊です。軽く読めるので『梅原文学の入門書として最適では』と思います。
※梅原猛『中世小説集』新潮社 / 1993年5月25日発行(→後半はこの文字列をクリック!)
その1.首
怪談『舞首』をもとに二振りの刀をめぐる争いとその結末を描いたもの。
古墳から出土した大量の鉄器を鋳直して作られた鉄の柱は地頭の妻と交わり、妻は鉄の玉を産みおとす。その玉から造られた刀は近づけただけで人の首を切り落とす力を持っていた・・・。
※舞首は神奈川県真鶴町に伝わる妖怪。互いに首を切り落とした三人が首だけになっても争い合う。
その2.長谷雄の恋
鬼との双六勝負に勝った紀長谷雄(きのはせお)は、絶世の美女を譲り受ける。鬼の出した条件は『今日から百日の間はこの女を抱いてはならぬ』というものだった・・・。
※当時の双六は現代でいうバックギャモン、サイコロの運に加えて相手の進路を塞ぐ頭脳戦が勝敗の鍵を握る。
その3.おようの尼
観想念仏の修行を極めた僧のもとに現れた物売りの尼の存在に僧の心は千々に乱れていく・・・。久米仙人を彷彿とさせる話。
※久米仙人は洗濯する女の脚を見て通力を失い、空から墜ちてその女を妻にする。
その4.福富物語
道祖神に願掛けした夢占いのおかげで巨万の富を得る老夫婦。何とその方法は妙なる調べを聴かせるオナラ芸だった・・・。オナラ芸とはいっても世阿弥の理論に基づいて構築!?・・・音階を響かせていると最後に『ミ』が出る!?いやいや・・・落語のようなオチが待っています。
※世阿弥は独自の理論で夢幻能を完成させ、集大成した。
この説話集、幻想文学にも使われていて、
1は「千と千尋の神隠し」のカシラ@頭のキャラかと個人的には思っています。
2の原作は、(ここでの先生の解説のほかには、)
澁澤龍彦氏の「女体消滅」にも使われ、
また鈴木静一氏は、「朱雀門」として、音楽劇に仕立てました。
(黒澤明氏の音楽など担当)
この音楽劇は23分と長いですが、、、絶対にこの楽器に縁がなかった人も、またクラッシック関係なく、観客が楽しめるような仕立てになっています。
最初の動画は、演奏方法と声優さんの演技両方楽しめます。
フルートやマンドリンで笙や琴、琵琶の音を出すのです。
https://www.youtube.com/watch?v=ZyNjV4SOMaI
とても演奏人数とか、お金がかかるので、上演自体が大変なのですが。
古い動画1971年!ですが、声優さんははこちらの方が好きです。
https://www.youtube.com/watch?v=E0Nb_67RmsI
因みに渚のセリフが一声だけなのが受けるし、
あといかにエロく、煩悩に満ちて弾くのか、
いや、そうは弾かないのかが、
奏者側は弾いていて非常に悶々とする、大いに盛り上がる曲であります。
-------☆☆☆-------
「2」で主人公に観想念仏を伝授した師匠は「もはやこのうえは一刻も早く阿弥陀浄土に」と崖から飛び落ちて死んでしまいます。
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「5」の主人公は栄達を極めると、ある日突然雲隠れしてしまい、神社に祀られます。
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「6」では何が何でも極楽浄土に生まれ変わろうとする強い意志とその成就が語られます。
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それらを考えると、この中世という時代は、この世(現生)とあの世(常世)との境目がきわめて曖昧になっているように思われます。
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長谷雄の恋に登場する女性は鬼によって造られたいわば「人造人間」ですので、これは「死から還ってきた魂」であると言えましょう。
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この「鬼が死体から人間を造る」考え方は結構あって、例えば西行法師が修行中に、あまりの寂しさから死体を集めて人間を造ったという「反魂の秘法」の伝説等の形で伝わっています。
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演奏は私も1971年の方が声が内容に合っているように思います。シューベルトの「魔王」とか、先般観に行ったストラヴィンスキー「兵士の物語」を思わせる出来だと思います。