吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

梅原猛『中世小説集』新潮社 / 1993年5月25日発行(今回は後半!)

2019-01-23 07:19:10 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
 先日物故した哲学者梅原猛氏は既存の枠組に囚われずその活躍は多方面に亘った。
 これは小説家としての氏の一面を示す一冊。中世の怪異譚に多方面からの該博な知識と近代人の思考を加味して新しい物語に仕立てた一冊です。軽く読めるので『梅原文学の入門書として最適では』と思います。


※梅原猛『中世小説集』新潮社 / 1993年5月25日発行(→前半はこの文字列をクリック!)

その5.物臭太郎
 飯を食うのも面倒臭いという極端な物臭に生まれついた太郎。しかし極賤は極貴に通ず。都に出て出世する太郎、その意外な正体が明らかになり、ついには国守として故郷に錦を飾ることに・・・。太郎の行なった人心掌握術とはいかに?

※現代のニートのような生活を延々と送る物臭太郎の前半生。

その6.蓮
 須磨の浦で平敦盛を討った熊谷次郎直実は出家して蓮生坊となっていた。法然上人の教えを受けて極楽往生の道にひたすら突き進む蓮生坊(その滑稽なまでの愚直さは感動的でさえある)。ついには日を決して極楽往生せんと一大セレモニーを決行する。その純粋な心に果たして奇跡は起きるのか?

※熊谷次郎直実に討たれた平敦盛を歌った『青葉の笛』。

その7.熊野の本地
 熊野の三柱の神様は、元々は天竺にあるマガダ国の王様、お妃様、王子様だった!? 異国の後宮における後継者争いが生んだ悲劇と奇跡の物語。
 本文より・・・『熊野はまことに霊験あらたかなところであります。そこへ参ると懐かしい死んだ人にも会え、心の憂さが解消され、長生きをして幸福な人生を送ることができますがアカムシにだけはご用心あそばせ。熊野へお参りください。熊野へお参りください。しかしアカムシにだけはくれぐれもご用心なさいますようお願い申し上げます。』・・・アカムシとは山に棲む大きなヒルのことでお妃様に祟りなす後宮女御たちの化身だという。

※那智勝浦にある熊野本宮大社。

その8.山椒太夫
 ご存知安寿と厨子王丸の悲しい物語。森鴎外の翻案とは違い、厨子王丸の復讐は凄まじいが、受けた苦しみに比べればまだまだ・・・。因果応報、めぐる因果は糸車、昔を今に返さんと思えども、それは叶わぬ夢なのだ。

※溝口健二監督の映画『山椒太夫』より。


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2 コメント

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うまい (きなこママ)
2019-01-24 14:25:33
この本は ほんと面白くていいです。
また 読み返してみたくなりました。
モバちゃんの解説読んで。
うまい❣️

皆さま どうぞ 是非 手にとって
読んでみてくださいね。
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Re>うまい (管理人)
2019-01-25 10:59:15
ありがとうございます。
追悼特集として、しばらく梅原猛氏の著作を読み返そうと思ったのです。
次は戯曲を予定・・・。
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