えっ?・・・本当にこの先にホテルがあるのか?
目の前が開けると、車廻しが。
車廻しから入り口を振り返るとこんな感じ。
テラス席へ。紅茶はドイツの名門ロンネフェルト。
生垣の向こうはウッドデッキ、テラス席から向かって左側の庭園。
テラス席から向かって右側、庭園の奥。
石橋を渡ると石楠花の花が咲いていました。この脇を抜けると奥に茶室があります。
アフタヌーン・ティーが運ばれてきました。
ゆっくりと暮れていく、午後の優雅なひとときです。
江月照らし 松風吹く 永夜清宵 何の所為ぞ (そもさん)
さあさ始まるミュケナイ王族の血で血を洗う凄惨な復讐劇。
これに(「百物語」で聴衆を恐怖のドン底に叩き込んだ)白石加代子と(白塗り暗黒舞踊集団「大駱駝館」を率いる) 麿赤兒大先生が出演するというから、『これを見逃すテはない』と、勇んで行ってきました。
ミュケナイの王アガメムノンを演じる麿赤兒
物語はミュケナイの王アガメムノン(以下「アガ王」)がその妻クリュタイムネストラ(以下「クリュ妃」)に殺される場面から始まります。
そもそもアガ王自身が叔父のテュエステスを追い落として王位に就いた経緯があります。テュエステスはアポロンの神託により自分の娘との間に男子アイギストス(以下「アイ斗」)をもうけ、これがクリュ妃の愛人になり、二人してアガ王を謀殺する。
アガ王が殺されるのは、トロイア戦争の際、船団出港のための追い風招来祈祷に自分の娘イピゲニア(以下「イピ子」)を生贄にしてしまい、クリュ妃から愛想を尽かされていたという背景があるのです。
複雑なので系図を示します(左下の部分にあります)。
ええっ!? 麿赤兒大先生は開始5分でもう死んじゃうの?と思いましたが、ご安心を。この後も姿を変えて何度も出演します。
王になったアイ斗の妃におさまったクリュ妃は実の子を虐待、・・・この辺は最近でもよく見られる事件です。
水瓶を運ぶ次女エレクトラ
長女イピ子はすでに死亡しているので、残りは三人。次女エレクトラ(以下「エレ代」)は虐待を受けて実の母のクリュ妃を憎んでいる。三女クリュソテミス(以下「テミ子」)は運命を受け入れ母親に従っている。エレ代のたったひとつの希望は、国外に逃れた弟オレステス(以下「オレ男」)。『いつかオレ男が戻って母と愛人を殺してくれる』と信じて毎日を送っているのです。何とも救いのない心の状態です。なお、テミ子のその後の運命は描かれません。
ある日亡命先から『オレ男が死んだ』との報せをもって使者(従者に麿赤兒)がやってきます。絶望するエレ代。しかし、実はこの使者こそがオレ男の変装でした。オレ男はエレ代に正体を明かし、二人は油断したクリュ妃とアイ斗を短剣で刺し殺して父の仇を討つ。
しかし、クリュ妃はオレ男にとってもエレ代にとっても『実の母』なのですよ。この辺が、この物語の壮絶な点です。
ここで死体がスックと立ち上がり女神ネメシスに自分の復讐を訴える。白石加代子の壮絶な演技です。もうクリュ妃は霊となっているのですが、その怨念の深さを思い知るシーンです。
実の母を殺した息子への判決は死罪。ところがここに突然アポロン(麿赤兒)が現われる。
物語が混乱したとき神が降臨して話の収拾をはかることを『デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神または勧善懲悪と訳される)』といいますがまさにコレです。
アポロンはオレ男を逃がし『運命をアルテミスに託す』と言い残す。
『え、何で』と思う方も多いと思いますが、ギリシャ神話を知っていると月の女神アルテミスは太陽神アポロの姉ですから話が繋がります。
逃れたオレ男は異国の浜辺に漂着する。異国の王はこれを豊穣の神アルテミスの生贄にしようと捕える。連れて行かれた神殿にいた巫女は何と、死んだと思っていた長女のイピ子だった。実はアガ王は実の子を殺すに忍びず、イピ子の身代わりを立てていたのだった。
異国の王はまたまた麿赤兒大先生。今度はダークスーツにサングラス姿、手にはステッキとヤクザの親分みたいな扮装(キャー!ステキー!)で舞台狭しと暴れまわって楽しませてくれます。
アルテミスの神像を盗み出し『これを持ってミュケナイに帰ろう』と、手に手を取って逃れるイピ子とオレ男、異国の王は追手を差し向けようとするが、アテナ神(白石加代子)にさえぎられ、二人は無事脱出、再び『デウス・エクス・マキナ』です。二人はアルテミスの神像の加護により無事故郷へと戻っていく。
物語はこの後、異国をさすらうエレ代が母への憎しみから解放され、自分もまた母になる決心をしたところで終結する。
壮絶なギリシャ悲劇に熟練の演技が光ります。主役のエレ代は「あまちゃん」で有名になった高畑充希。大先輩二人に負けない演技で、白石加代子からも『娘をよろしく』と紹介されるほどの気迫のこもった名演です。楽しめました。