吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

ディック・パウエル監督『眼下の敵(The Enemy Below)』(1957年アメリカ・西ドイツ)

2017-05-26 19:25:42 | 映画・ドラマを観て考えよう

 久々にテレビ放映され『やっぱり名画だ!』と感動を新たにしました。

 昔から『潜水艦ものにハズレなし』といいます。そう考えてみれば『Uボート』,『レッド・オクトーバーを追え』,『K-219』など、いい作品が多いですが、これはその嚆矢ともいうべき作品です。ちなみにこの映画、女性は一人も出ません。



 物語は・・・
 第二次世界大戦のさなか、駆逐艦の艦長を務めていたロバート・ミッチャムはドイツ軍のUボートを発見する。
 この艦長、実はUボートには胸に秘めた遺恨があるのです。疎開させようと妻を乗せた船がUボートに撃沈されてしまったのです。この辺のストーリー、今ならCG等でフラッシュバックまたは悪夢として再現されるのでしょうが、ここでは艦長自身の口から語られるのみ・・・『乗った船に魚雷が命中して船は真っ二つになった。船首の方から妻が呼ぶ声が聞こえたが(船首部分は)すぐに転覆して沈んでしまった』・・・しみじみと語ります。何でもかんでもCGで再現って風潮は改めないといけないと思います。

 Uボート側の艦長はクルト・ユルゲンス。別のUボートと接触し機密情報の受け渡しをするのが今回の任務です。
 米国の駆逐艦に発見され、これを振り切ろうと奮闘しますが、いかんせん指令書によって目的地を指定されているため、針路を大幅に変えることができない。そのため駆逐艦を振り切ることができず、ここに手に汗握る対潜水艦戦が始まることになります。

 この対決が実に見もので、相手の考えや乗組員の練度を推測して、その裏をかく、丁々発止のやりとりが息をつかせぬ展開です。

 駆逐艦はわざと舷側を晒して、Uボートに魚雷を発射させ、再装填のために発射できないタイミングで攻撃を仕掛けます。
 Uボートは偽装の泡を出して所在をくらませたり、限界深度を超えた潜水を行って、駆逐艦の攻撃を逃れようとする。
 個々の対決の策が実にリアル描かれていきます。このやりとりは必見です。

 とうとう最後にUボートの魚雷が駆逐艦を捉え爆発すると、駆逐艦の艦長は甲板でマットレスを燃やし、艦が炎上して行動不能に陥ったと装った後、勝利を確信して浮上したUボートに最後の体当たりを敢行する。両艦とも損傷は激しくもはや沈没を待つばかり・・・。

 死力を尽くした闘いの後、お互いの姿を艦上に認めた二人は敬礼を交わし合う。


 沈むUボートの艦長クルト・ユルゲンスにロープを投げて助ける駆逐艦の艦長ロバート・ミッチャム。

 最後は駆逐艦、Uボートともに炎上して大爆発してしまう(Uボートはそれ自体が機密扱いなので自爆装置が積まれている。大戦終了時にUボートのほとんどは暗号「レーゲンボーゲン」の指示を受け自沈した)。

 物語は救助された巡洋艦甲板での感動的な会話で幕を閉じます。

 ユルゲンス『いつも生き延びてしまう・・・。

 ミッチャム『次はロープを投げないでおくよ。

 ユルゲンス『いや、君はきっと投げるさ。