歌舞伎とか神楽は、筋を知ったうえで見ないと、ほぼ「猫に小判」状態になる。
しかし神楽のうち、大国主(だいこくさん)の”福の種まき”だけは万人が楽しめる。
神楽のお面、舞、衣装、太鼓、台詞を楽しみながら、種まきが始まるのを今か今かと待つ時間もいい。
現在は、お祭り以外に地域イベントに備中神楽の出演が多く、
「福の種まき」をいつも楽しみにしている。
・・・
備中神楽「国譲り」大国主命の舞
「そも舞い出でし翁は、
この国の主(あるじ)大国主の命なり。
われを祭る輩(ともがら)には福徳幸いを授くるなり。
また手向かうものあるときは、
この打ち出の小槌広鉾両種の威徳をもって打ち固め、
世を安国としずめるなり。」
「いよいよ尊信するとあるならば、
これより中津国のかまど巡りなさばやと存じ候。」
「いそぎようやく清々しき神殿に着いたと覚えたり。
しばらくこの所に鎮座いたし、
十二支五性の産子に、福の種を授けばやと存じ候」
”大国が万宝袋の紐解いて
多くの産子に福を授くる”
「急ぎたまえ。」
「はやしたまえや。」で、
神前へ供えた小餅やみかんなどを、福の種といって、
観衆へ向けてまきちらす。
「まくぞや、まくぞや、福の種をまくぞや。」
太鼓は急調子にはやしたてる。
子どもはもちろん大人まで、
なりふりかまわず騒ぎたて、
神楽場は湧きに湧く。
「福の種をまきたるが故に、
この所にてしばらく休息なさらばやと存じ候。」
備中神楽」 山根堅一 岡山文庫 昭和47年発行
・・・
撮影日・ 2022年11月27日 井原市青野町