(はじめに)
笠岡市竹喬美術館で、数年前に「奥の細道句抄絵」展があった。
作品や、その下書きの絵が展示され、絵画の迫力を堪能した。
小野竹喬画伯が全霊を込めて描く姿を、勝手に想像をさせてくれた。
その時、美術館で「奥の細道句抄絵」の冊子を購入した。
その本を家でひろげていると、自分もその世界に少し浸りたくなった。
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旅の場所・東京都江東区常盤 「江東区芭蕉記念館分館」
旅の日・2022年7月13日
書名・奥の細道
原作者・松尾芭蕉
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「わたしの芭蕉」 加賀乙彦 講談社 2020年発行
『奥の細道』
芭蕉の散文が日本語の表現として、いかに優れて、いかに美しいかを体験していただきたいので、
『奥の細道』の冒頭の文章を示す。
みなさんに原文を何度か読み返し、その日本語の美を味わっていただきたいからである。
月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。
舟の上に生涯を浮べ、馬の口 とらへて老を迎ふる者は、日々旅にして旅を住みかとす。
古人も多く旅に死せるあり。
予もいづれの年よりか、片雲の風にさそはれて、漂泊の思ひやまず。
海浜にさすらへ、去年の秋、江上の破屋に蜘蛛の古巣を払ひて、やや年も暮れ、春立てる霞の空に、白河の関越えんと、
そぞろ神のものにつきて心を狂はせ、道祖神の招きにあひて取るもの手につかず。
股引の破れをつづり、笠の緒つけかへて、三里に灸すゆるより、松島の月まづ心にかかりて、住めるかたは人に譲り、杉風が別墅に移るに、
章の戸も住替る代ぞひなの家
表八句を庵の柱に掛けおく。
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「芭蕉物語」 麻生磯次 新潮社 昭和50年発行
草の戸も住み替る代ぞひなの家
住み荒した汚ない草庵であるから、もう住み替ることもあるまいと思っていたのに、時世時節でいつかその時が来るものだ。
新しい居住者は今までの世捨人とはちがって、妻も娘もある賑やかな家庭で、のぞいてみると、雛人形が飾られている。
これが世の中の転変の相なのだ、と感じたのである。
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「声に出して読みたい日本語」 斎藤孝 草思社 2001年発行
「おくのほそ道」 松尾芭蕉
月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。
舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらへて老いをむかふる物は、日々旅にして旅を栖とす。
古人も多く旅に死せるあり。
予もいづれの年よりか、 片雲の風にさそはれて、漂泊の思ひやまず、・・・
(おわりに)
いま、暗誦文化は絶滅の危機に瀕している。
かつては、暗誦文化は隆盛を誇っていた。
小学校の授業においても、暗誦や朗誦の比重は低くなってきているように思われる。
••••••歴史のなかで吟味され生き抜いてきた名文、名文句を私たちのスタンダードとして選んだ。
声に出して読み上げてみると、そのリズムやテンポのよさが身体に染み込んでくる。
そして身体に活力を与える。
それは、たとえしみじみしたものであっても、心の力につながってくる。
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