ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

グラミー賞 ノミネート『BEST BLUES ALBUM』

2016-02-07 21:51:34 | ブルース
Buddy Guy / Born To Play Guitar

いよいよグラミー賞授賞式が近づいてまいりました。主要4部門を誰が受賞するのか?各方面で予想など騒がしくなってきましたが、「ルーツな日記」的に気になるのは、もっともっと奥の方。例えば『BEST BLUES ALBUM』部門とか。という訳で『BEST BLUES ALBUM』部門、ノミネートは以下の5作品。

Cedric Burnside Project / Descendants Of Hill Country
Shemekia Copeland / Outskirts Of Love
Buddy Guy / Born To Play Guitar
Bettye LaVette / Worthy
John Primer & Various Artists / Muddy Waters 100


なんだかんだで注目はバディ・ガイ。もうすぐ80歳になろうとしているとはとても思えない、生命力に溢れたブルースを聴かせてくれます。ギターの暴君ぶりはもちろん、歌声も衰え知らず。脂ぎったブラック・フィーリングにロックな勢い、そこに年齢を重ねた渋みが良い塩梅に加わり、バディにしか成し得ない豪腕ブルースを生み出しています。ギタリストとして一生をブルースに捧げるような人生を振り返る「Born To Play Guitar」に始まり、ZZトップのビリー・ギボンズと共にロックする「Wear You Out」、キム・ウィルソンのハープが疾走する「Too Late」、ジョス・ストーンとのスウィンギーなデュエット「(Baby) You Got What It Takes」、ヴァン・モリソンを招きB.B.キングに捧げた「Flesh&Bone」などなど、要所要所に魅力的なゲストを配しながら、全てを飲み込むようなバディ・ガイのギターとその歌声は、まさに人生をブルースに捧げたリヴィング・レジェンドの存在感。またその破格なエネルギーを、太く躍動感溢れるボトムでがっつり支えるプロデューサー、トム・ハンブリッジのサウンド・プロダクションも流石です!! 今回受賞すれば、おそらく2010年の「Living Proof」以来、7個目のグラミーとなるはず。


対抗は、マディ・ウォーターズ生誕100年を記念したトリビュート・アルバム「Muddy Waters 100」でしょうか。こちらは歴史あるマディ・ウォーターズのバンドの最後のギタリストだったジョン・プライマーを中心に、ジェイムズ・コットン、ボブ・マーゴリンというマディ・バンド卒業生の他、ビリー・ブランチ、ケブ・モ、ジョニー・ウィンター、デレク・トラックス、ゲイリー・クラーク・JR.などなど、多彩なゲストが参加。それでいて散漫にはならず、まるでマディ・ウォーターズの魂ここにあり!と感じさせられるような、太く濃い、一本の筋の通った力作であります。

そして前作に引き続いてのノミネートとなるシェメキア・コープランド 。故ジョニー・コープ ランドの実娘という出自も折り紙付きの彼女は、グラミー受賞で名実共に新たな「ブルースの女王」となるか? いやいや、ベテランさんも黙ってはおりません。今年の1月で70歳になったベティ・ラヴェット。ジョー・ヘンリーのプロデュース作「Worthy」ではディラン、ビートルズ、ストーンズのカヴァーなどを、旨味たっぷりの激渋な声で歌っております。さらにノース・ミシシッピ・ヒル・カントリーの今を伝えるセドリック・バーンサイドのノミネートも嬉しいですね!!

B.B.キング、安らかに

2015-05-24 10:33:35 | ブルース
B.B.KING / ONE KIND FAVOR

5月14日、B.B.キングが亡くなられました。ラスヴェガスの自宅にて。89歳でした。

まさにブルースの象徴的存在だったB.B.キング。愛機「ルシール」から繰り出されるあの太く深い音色。その音色が唸りをあげる瞬間からブルースの旨味が溢れ出す。それはスクイーズ一発でブルースの何たるかを語るような説得力。

腹の底から噴き上げるような歌声も、恰幅のいい体格も、愛嬌たっぷりの表情も、全てがブルースでした。


B.B.キングを初めて生で観た91年、ゆうぽうと簡易保険ホールでの単独ライヴ、忘れません。



B.B.キングさん、安らかに。







*写真は2008年作「ONE KIND FAVOR」。スタジオアルバムとしてはこれが最後の作品となってしまいました。ブルースの名曲を集めたカヴァー作ながら、バックにジェイ・ベルローズ、ドクター・ジョン、ネイザン・イースト達を配した、T・ボーン・バーネットによる技ありのプロデュースの元、B.B.キングが圧巻の歌声とギターを聴かせてくれます。これは本当に素晴らしい作品。グラミー賞「Best Traditional Blues Album」部門を受賞。

2014 Blues Music Awards

2014-05-29 19:53:23 | ブルース
BILLY BOY ARNOLD, CHARLIE MUSSELWHITE, MARK HUMMEL, SUGAR RAY NORCIA & JAMES HARMAN / REMEMBERING LITTLE WALTER

2014年の『Blues Music Awards』が5月8日に発表になったようです。数年前までは『W.C. Handy Blues Awards』という名で親しまれてきたブルースの祭典。今年の『Album of the Year』に選ばれたのは、新旧のハーピスト5人が集まりシカゴ・ブルースの伝説リトル・ウォルターをトリビュートしたライヴ盤「Remembering Little Walter」(写真)でした!!

その新旧5人のハーピストとは、ビリー・ボーイ・アーノルド、チャーリー・マッスルホワイト、マーク・ハメル、シュガー・レイ・ノーシア、ジェイムズ・ハーマンという凄腕達。まあ、新旧と言っても一番若くてマーク・ハメルが58歳ですけどね。シュガー・レイ・ノーシアもほぼ同年代ですね。そして最も年配なのがビリー・ボーイ・アーノルドで78歳です。

やはりビリー・ボーイ・アーノルドの存在は光ってますよね。この中で唯一生粋のシカゴ・ブルース・マンですし、故リトル・ウォルターとは5歳しか歳も違いません。「You're So Fine」での軽快な歌声とハープ・ブロウはとても80歳近い方とは思えません。そしてもう一方強烈な印象を残しているのがチャーリー・マッスルホワイト。スロー・ブルース「Just A Feeling」での太く深いハープの音色とそれに呼応するような渋い歌声は相当滲みます。

それにしても、さすがにハープが主役なアルバムだけあって、ハープが良い音で録られてるんですよ! 冒頭、「I Got To Go」でのマーク・ハメルの吹くハープが開口一番に唸りを上げた瞬間に、ブルース・ハープの世界に吸い込まれるようでした。マーク・ハメルは今作のプロデューサーも請け負ってまして、おそらく彼が集めたであろうバック・バンドも素晴らしい演奏を聴かせてくれます。

ちなみにこのアルバム、『Album of the Year』だけでなく『Traditional Blues Album of the Year』も受賞するという2冠でした。そしてチャーリー・マッスルホワイトは『Best Instrumentalis – Harmonica』部門も受賞しております。






TEDESCHI TRUCKS BAND / MADE UP MIND
『Band of the Year』を受賞したのがテデスキ・トラックス・バンド。また最新作「MADE UP MIND」(写真)が『Rock Blues Album of the Year』を、そしてスーザン・テデスキが『Contemporary Blues Female Artist of the Year』を受賞するという活躍ぶり。多様化するブルースの未来を担うのはやはり彼らでしょうか?



BUDDY GUY / RHYTHM & BLUES
『B.B. King Entertainer of the Year』という部門を受賞したバディ・ガイ。今ひとつどういう位置づけの部門なのかよく分らない部門ですが、“エンターテイナー”ですから、バディ・ガイにピッタリですね。ちなみに最新作「RHYTHM & BLUES」(写真)は『Album of the Year』にノミネートされていたのですが、今回はお預けでした。



BOBBY RUSH / DOWN IN LOUSIANA
『Soul Blues Album of the Year』を受賞したのは、ボビー・ラッシュの「DOWN IN LOUSIANA」。チトリンサーキットで鍛え上げられたライヴのその濃密さは折り紙付きですが、近年はスタジオ作も傑作続き。特に今作は彼の代表作の一つになるのではないでしょうか?



ROYAL SOUTHERN BROTHERHOOD / SONGS FROM THE ROAD
『DVD of the Year』には我らがシリル・ネヴィルの勇姿をたっぷり拝めるロイヤル・サザン・ブラザーフッドのライヴDVD作品が。もちろんマイク・ジト、デヴォン・オールマンの見せ場もたっぷり。来日してくれませんかね~。



GARY CLARK JR. / BLACK AND BLU
『Contemporary Blues Male Artist of the Year』を受賞したゲイリー・クラーク・ジュニア。



CEDRIC BURNSIDE PROJECT / HEAR ME WHEN I SAY
『Best Instrumentalist – Drums』にはRLバーンサイドの孫、セドリック・バーンサイドが。彼はミシシッピーの新しいスターですね!


と、とりあえず個人的に気になる受賞者をいくつか紹介しましたが、もちろんこの他にも沢山の部門があるんです。興味がある方は、こちらのサイトで各部門のノミネートと受賞者の一覧を確認できます。(海外のサイトですけどね。)

http://blues.about.com/od/bluesawards/a/2014-Blues-Music-Awards.htm

Japan Blues Festival 2014

2014-05-02 17:52:08 | ブルース
CARLOS JOHNSON / LIVE AT B.L.U.E.S. ON HALSTED

毎年、青森県で「Japan Blues Festival」というブルース・フェスが開催されているのを御存知ですか? 先日、その「Japan Blues Festival 2014」の主催者である青森商工会議所青年部、安潟みなとまつり実行委員会の方から、今年のフェス開催についての案内をコメント頂いたので、そちらを以下にコピーさせて頂きます。

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Japan Blues Festival 2014
今年も開催します!本場シカゴのドリームバンド と、 国内ブルースバンドが結集!
7月25日・26日       
山のブルース 浪岡ステージ:25日  
海のブルース 安潟ステージ:26日

○ドリームバンド
Carlos Johnson Band with special guest Demetria Taylor(カルロス・ジョンソン・バンドwithスペシャルゲスト デミトリア・テイラー)
過去20年にわたりシカゴのブルースシーンの第一線でプレイし続ける実力派で、現在世界屈指のブルース・ギタリストに挙げられている。
そんな彼が率いるドリームバンドに2011年も来青のトップ・ヴォーカリスト
“デミトリア・テイラー”を加え、今夏来青!
Carlos Johnson : カルロス・ジョンソン (ギター & ヴォーカル)
Bill Dickens:ビル・ディッケンズ (ベース)
Piotr Switoniowski:ピオトール・スィトニオスキー(ピアノ)
Melvin Carlisle:メルヴィン・カリスル(ドラム)
(特別ゲスト)
Demetria Taylor: デミトリア・テイラー (ヴォーカル)

○国内ブルースミュージシャン、バンド
Shun Kikuta (シュン キクタ)
毎年Japan Blues Festivalにこの方は欠かせない!
今年はなんと、ギタークリニックも開催予定!彼のギターテクニックを学ぶなら今だ!

その他にも、現在多数のアーティストが参加決定しています!(まだまだ追加予定)
○「Nacomi Band」今年も大阪から参戦決定、関西パワーのソウルフルなブルース!
○「B.B.Heads」地元ブルース最強バンド!
○「The Submarine Band」青森YEGドリームバンド!

Japan Blues Festival 2014 Facebookページアドレスは下記
https://www.facebook.com/japanbluesfes

出演者・スケジュール等は諸事情で変更になる場合がございます。
変更等が発生した場合は 
青森商工会議所青年部公式ホームページ上(http://aomori-yeg.jp/
若しくは上記Facebook上でご案内いたします。


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さて、日本を代表するブルース・フェスティヴァルであった日比谷野音の「ジャパン・ブルース&ソウル・カーニバル」が、昨年に続き今年も開催されないような状況のなか、日本で行われる唯一のブルース・フェスとなりつつある青森県の「Japan Blues Festival」。こちらは今年も開催されるようですね!!

昨年は今やシカゴ・ハープの第一人者とも言えるマシュー・スカーラーを、そして一昨年にはシカゴで最も熱い歌姫チック・ロジャースを呼ぶなど、現行シカゴ・ブルースの美味しいところを見せてくれる玄人好みの招聘で、徐々にその存在感を増しつつあるこのフェスティヴァル。東京在住の私も一度は青森まで足を運んでみたいと思ってはいるんですけどね~。

そして今年のメイン・ゲストは、カルロス・ジョンソン バンド&デミトリア・テイラー!!


カルロス・ジョンソンですよ!!ここ日本でも絶大なる人気を誇る、現在のシカゴを代表するギタリスト。もちろん何度も来日しています。ですが今回特筆すべきは、バンド編成での来日と言うこと。過去数度の単独来日公演は全てソロで来日し日本のバンドがバックを付けました。もちろんそのバンド達は素晴らしい演奏をしましたし、そういうセッションならではのケミストリーもありました。ですがカルロスはその場のフィーリングに任せてやりたいようにやるタイプですし、ブルースに限らずソウルやジャズなど幅広い音楽性の持ち主でもありますから、短時間のリハで彼についていくのは至難の業だったと思います。そもそもリズム自体はどうなのか?っていう問題もありますし。私もライヴを観終わった後、毎回これがもし本場シカゴのバンドだったら?という妄想をせずにはいられませんでしたからね。ある意味、カルロスがバンドと一緒に来日してくれるというのは私の夢でもありました。

そして今回、いよいよバンドを引き連れてやってくるのです。もしかしたら、これが日本で初めてカルロス・ジョンソン本来の姿を拝めるライヴになるのかもしれません。ただ、今回のバンドがカルロスにとってのパーマネントなバンドなのか?それとも今回特別に編成されたバンドなのか?そこが私には分らないのですが、どちらにしろ、カルロス・ジョンソン・バンドと名乗るぐらいですから、完璧に仕上げて来日してくれることは間違いないでしょう。

あと、そのバンド・メンバーのなかにBill Dickensの名があるのも気になるところ。Bill DickensってあのBill "Buddha" Dickensですか? だとしたら凄いですね!シカゴに生まれたスラップ・ベースの怪物!! ソウルからフュージョンまで幅広くセッション活動をこなす大物ベーシストです。私は昨年ミーターズ・エクスペリエンスで彼のプレイを観ましたが、凄かったです。ファンキーなリズム・キープはもちろん、ベース・ソロでは会場を2階まで上がって練り歩き爆音で弾きまくるまさにモンスター。と言っても愛嬌たっぷりのモンスターでしたけどね。彼のような低音プレイヤーが脇を固めるバンドなら、それは強力ですよ。今からそんなバンドをバックにカルロスの縦横無尽なスクイーズ・ギターが爆発する光景が目に浮かぶようです。いや~、これは観たいですね!!

ちなみにゲストのデミトリア・テイラーは、あの故エディー・テイラーの娘さんで、ココ・テイラーの姪っ子でもあるという、まさにシカゴ・ブルースの姫君ですから、彼女の歌声と、カルロスとの共演にも、そそられますね~。



でもね、私はフジロックと被ってて観に行けないんです…。フジ終了後にカルロス・ジョンソン・バンドの単独東京公演を切に望みます!!






YouTubeにこんな動画があったのでリンクを貼っておきます。カルロス・ジョンソンとビル・ディケンズの共演動画ですが、ベース・ソロだけですのでカルロスはほとんど写りません…。1より2の方がヒートアップしていて凄いです。

Carlos Johnson & Bill Dickens - Monster Bass Solo 1
http://www.youtube.com/watch?v=dN9bwivWjyw

Carlos Johnson & Bill Dickens - Monster Bass Solo 2
http://www.youtube.com/watch?v=-gjdofeki8w



*写真はカルロス・ジョンソンの名ライヴ盤「LIVE AT B.L.U.E.S. ON HALSTED」。07年のリリース。同年、来日した際にサインを頂きました。

JOE LOUIS WALKER / HORNET'S NEST

2014-04-15 23:56:17 | ブルース
JOE LOUIS WALKER / HORNET'S NEST

ジョー・ルイス・ウォーカーが来日します。しかも大阪開催の「INTERNATIONAL JAZZ DAY」で。このコンサートは凄いですよね。こんな豪華なコンサートが日本で開催されるなんて! しかもこのメンバーの中にジョー・ルイス・ウォーカーが含まれているという事実にも驚きです。


4月30日に開催される「INTERNATIONAL JAZZ DAY GLOBAL CONCERT 2014 OSAKA 」。これはユネスコが「INTERNATIONAL JAZZ DAY」と定めた4月30日に開催される国際的なジャズ・イベントで、第1回目はパリ、ニューオーリンズ、ニューヨークを舞台に開催され、今年で3年目となるそうです。その今年は大阪がホスト・シティに選ばれ、大阪城西の丸庭園でハービー・ハンコックがオールスターバンドを指揮するそうです。

その出演者があり得ない程に豪華!! ハービー・ハンコックを筆頭に、秋吉敏子 (pf)、日野皓正 (tp)、ロイ・ハーグローブ (tp)、ケニー・ギャレット (sax)、ウェイン・ショーター (sax)、コートニー・パイン (sax)、マーカス・ミラー (b)、エスペランサ・スポルディング (b)、アール・クルー (gt)、ジョン・スコフィールド (gt)、ディー・ディー・ブリッジウォーター (vo)、ロバータ・ガンバリーニ (vo)、レイラ・ハサウェイ (vo)、グレゴリー・ポーター (vo)、テリ・リン・キャリントン (ds)、T.S.モンク (ds)、シーラ・E (per)、ピート・エスコヴェード (per)、などなど。これ程までに、ジャズ及びその周辺の大物ミュージシャンが、ここ日本で、一つのステージに立つと言うのは、未だかつて無かったのではないでしょうか? しかもこれ、たった2時間(予定)のコンサートですからね。もう豪華を通り越してなんか、勿体ないですよね…。東京でやってくれてら迷わず行くんですけどね~。

で、この出演ミュージシャンの中に、何故か2人のブルースマンの名があるんです。その一人がジョー・ルイス・ウォーカー (gt)なのです。ちなみにもう一人はクリス・トーマス・キング (gt)。はじめに出演者一覧を見たときは正直、目を疑いましたけどね。どの程度フィーチャーされるのか?とても気になります。


詳しい出演アーティストなどの詳細は大阪観光局のオフィシャル・サイトへ→http://www.ijd2014-osaka.jp/index.html
こちらは本家「INTERNATIONAL JAZZ DAY」のオフィシャルサイト→http://jazzday.com/




さて、写真は今年リリースされたジョー・ルイス・ウォーカーの最新作「HORNET'S NEST」。アリゲーター移籍後2作目となります。60歳を超えた辺りからますます脂が乗ってきた感のあるジョー・ルイス・ウォーカー。今作でも勢い溢れる溌剌としたブルースを聴かせてくれています。プロデューサーはバディ・ガイの近作等で手腕を振るうトム・ハンブリッジ。バディ・ガイ作品でもロック的なエネルギーをサウンドに込めるのに秀でた音作りをしているトム・ハンブリッジですが、こちらでもエッジの立ったサウンドで、ヴァラエティ豊かな曲調を見事に一本筋の通った作品に纏め上げています。バック・メンバーはそのトム・ハンブリッジ(ds)を中心に、ロブ・マクニーリー(g)、トミー・マクドナルド(b)、リース・ワイナンズ(piano,organ)という布陣。これは前作「HELLFIRE」を引き継いだメンバーなので、今作は「HELLFIRE」の延長上を一歩押し進めた作品と言えるかもしれません。

何はともあれ、ジョー・ルイス・ウォーカーのギターがいい具合に突き抜けていて気持ち良い! さらにちょっぴり塩辛さを感じさせながらも溌剌とした歌声がまた良い! 1曲目はブラック・ファンク的なリフからして強力なロッキン・ブルース「Hornet's Nest」、続いてマスルショールズ・ホーン・セクションが参加した南部ソウル的な「All I Wanted To Do」、本格派のスロー・ブルース「As The Sun Goes Down」、重心の低いシャッフル・ナンバー「Stick A Fork In Me」、ゴスペル的なコーラスが印象的な「Don't Let Go」、泥臭いリフとスライド・ギターが冴える「Love Enough」、後半の荒れ狂うブギのリズムに思わず興奮の「Ramblin' Soul」などなど。ローリング・ストーンズ「Ride On, Baby」のカヴァーなんかはポップな仕上がりなれど、レア過ぎる選曲が面白い。ラストを締める「Keep The Faith」のゴスペルな味わいがまた滲みます。

それにしてもこの勢い!これはなかなかの快作ですよ。ピュアなブルースを期待すると、少々モダン過ぎる印象をうけるかもしれませんが、私は大好きです。こういうのをコンテンポラリー・ブルースって言うんですか?よく分かりませんが、ロックだったり、ポップだったり、ソウルフルだったりゴスペル的だったりっていうある種のミクスチャー感はやはり現代的ではありますよね。ですがブルースとしてのゴツゴツとした質感は失わずに、あくまでもブルース・アーティストらしく、良い意味での不器用さと言うか、我がままな“俺流”を濃厚に感じさせてくれるところが、どうにもこうにも頼もしいところ。


この新作をリリースした勢いで、ぜひ単独来日公演も実現して頂きたいところですが、どうなんでしょうね?

チック・ロジャース@蓮田 スタジオJazz

2012-10-27 10:15:44 | ブルース
CHICK RODGERS / ESSENTIALLY YOURS

随分と前の話になりますが、このままスルーしてしまってはあまりに勿体ないので今さらですが書かせて頂きます。7月22日、チック・ロジャース@蓮田 スタジオJazzのライヴ・レポです。

シカゴ・ブルースの女王と言えば今は亡きココ・テイラー。そのココ・テイラーの秘蔵っ子、もしくは後継者と言われ、さらには新しきシカゴ・ブルースの女王とまで賞されるチック・ロジャース。日本での知名度は高いとは言えませんが、マニアの間で「チック・ロジャースが凄い!」と噂が噂を呼んでいたシンガーだけに、私も生で観るのを楽しみにしていました。今回の来日は青森で開催された「JAPAN BLUES FESTIVAL 2012」への出演をメインにしたものでしたが、いくつか単独公演も行なわれ、私が観に行ったのは埼玉県蓮田にあるスタジオJazz。バックを務めたのは晩年のココ・テイラーを支えた菊田俊介が率いるShun Kikuta Band です。

いかにもスタジオ内のイベントスペースな感じの飾り気のない会場。客層もブルース・ファンと言うより、日頃スタジオでお世話になっている地元の方々が集まった感じで、いたってローカル色の濃い雰囲気。しかもどちらかというと菊田俊介を観に集まっているお客さんが多い模様。彼はここ蓮田スタジオJazzで何度かライヴをされてるようで、この界隈で人気があるようです。

まずはその菊田俊介が登場し、彼が率いるShun Kikuta Bandの演奏からスタート。ソリッドなインスト曲「Mr. Air」から始まり、アダルトなスロー「Chicago Midnight」、ゴスペル・フレイバーな「Baby Love You So」とオリジナルの3曲を披露してくれました。本場シカゴ仕込みブルース・ギターは流石に貫禄充分。艶っぽい歌声も独特の味わいを聴かせてくれました。特に「Chicago Midnight」は良かったですね~!情感たっぷりなギター・ソロも圧巻でした。

そしていよいよチック・ロジャースの登場。小柄とは聞いていましたが、予想以上に小柄、というより華奢な感じ。しかし「Let The Good Times Roll」を歌うその歌声は想像以上に力強い。何て言いますか、声自体の芯の強さですかね? 揺るぎないテンションがビシバシと伝わってくる。あの華奢な体の何所からこんな声が出るのかと不思議に思う程。ココ・テイラー流のシカゴ・スタイル「I'm A Woman」をまるで唸るように歌うチックの凄いこと! これぞブルースですよ! アレサ・フランクリンの「Baby I Love You」も最高でしたし、アルバート・キングの「I'll Play The Blues For You」からのメドレーでのチックのブルース・フィーリングも堪らないものが有りましたね! また菊田俊介のギターもチックが来てからさらに冴えまくってる印象で、やはり良いシンガーに良いギタリストという図はグッときますね。最後はシカゴらしい「Down Home Blues」から名曲「Rock Me Baby」で1stショー終了。

休憩を挟んでの2ndショー。まずはShun Kikuta Bandが1st同様に3曲を熱演した後、チックが再登場。2ndで圧巻だったのは何と言ってもアレサ3連発ですよ! チックはブルース・シンガーと言われていますがアレサ・フランクリンなどソウル・シンガーにも随分と影響を受けているそうで、高音の切れ味なんかは特にアレサからの影響を強く感じさせられましたね。「Dr. Feelgood」なんか相当難しいと言うか。ちょっとやそっとじゃ歌えない曲だと思うのですが、いや~、見事でしたね。チック・ロジャースの歌唱力、表現力、全て濃密この上ない。まさに本物でした!「Ain't No Way」も聴き惚れる程素晴らしかったですし、「Respect」もノリノリで最高でした。そして最後はやはりココ・テイラーですよ。彼女をトリビュートしての「Wang Dang Doodle」。これも大迫力! アンコールは「Sweet Home Chicago」で大団円。

チック・ロジャースのような現在進行形の女性ブルース・シンガーが来日するというのはなかなかないことなので、貴重な体験になりました。しかもブルースもソウルもあれだけディープにパワフルに歌えるシンガーを生で観れる機会は滅多にないですからね。ブルース&ソウル・レコーズ誌107号のインタビューによりますと、メンフィス生まれのチックは父がゴスペル・シンガーだったこともあり、幼い頃から教会で歌っていたそうです。その後メンフィスのビールストリートでR&Bやトップ40を歌うようになり、シカゴに移り住んでからはブルースを歌うことが増えたそうです。トップ40を歌っていた頃は日本の赤坂MUGENで3ヶ月ハウスバンドで歌ったこともあるとか。なんとなくこれまでの苦労が伺える話ですが、あの芯の強い歌声はそういった苦労の積み重ねなのかもしれませんね。そしてあの歌唱力の根源にはゴスペルが有ることにも頷けます。

いやはや、シカゴのディープな空気をたっぷり吸ったこの日の夜でした。


*上の写真はチック・ロジャースにサインを頂いた08年リリースの「ESSENTIALLY YOURS」。これが今のところの最新作であり、唯一のソロ作です。ブルース有り、ソウル有りで、彼女の歌唱が存分に楽しめます。下の写真はこの日のセットリスト。


7月の日本はブルース天国!!

2012-06-25 23:39:27 | ブルース
もうすぐ7月、何故かブルースが来てます! 来日ラッシュです。その辺のところ、纏めてみました。



BUDDY GUY / LIVING PROOF
バディ・ガイ

7月28日(土) FUJI ROCK FESTIVAL '12
7月30日(月) Shibuya O-EAST

泣く子も黙るバディ・ガイ、去年のキャンセルからのリベンジ来日です。70歳代半ば、50年以上のキャリアを持つリヴィング・レジェンドでありながら、いまだ全盛期まっしぐらという奇跡。衰え知らずな暴君ぶりを見せてもらいたいところ。



ELVIN BISHOP / THE BLUES ROLLS ON
エルヴィン・ビショップ・バンド

7月25日(水) 下北沢 Garden
7月26日(木) 横浜 Thumbs Up
7月28日(土) FUJI ROCK FESTIVAL '12

元ポール・バターフィールド・ブルース・バンドのギタリスト、エルヴィン・ヴィショップ。最近もコンスタントに新作を発表し続け、グラミーにノミネートされるなど、注目度も高いですね。フジロックのサイトでアナウンスされているバック・メンバーは、Bob Welsh(G)、Ruth Davies(B)、Bobby Cochran(Dr)、Steve Willis(Piano/Accordion)、Ed Earley (Trombone)という布陣。いなたい南部ノリのブルースを期待したいです。



CHICK RODGERS / ESSENTIALLY YOURS
チック・ロジャース

Koko Taylor's Blues Machine
7月19日(木)~21日(土)JAPAN BLUES FESTIVAL 2012@青森

Shun Kikuta Band feat Chick Rodgers
7月22日(日) 蓮田 スタジオJazz

Funky Blues & Real Blues @ KOBE Chick Rogers with 菊田俊介
7月23日(月) 神戸 CHICKEN GEORGE

菊田俊介 PRESENTSシカゴ・ブルース / R&B ナイト!feat チック・ロジャース&山本恭司 !!
7月24日(火) 原宿 La Donna

ココ・テイラーの秘蔵っ子、後継者、さらにはシカゴ・ ブルースの新しき女王とまで賞されるチック・ロジャース。こういう人を呼んでくれる青森の「JAPAN BLUES FESTIVAL」って凄いな!って思いますよ。しかもこのフェスでは再結成したココ・テイラーのバンド、ブルース・マシーン(Vino Louden(Gt), Shun Kikuta(Gt), Melvin Smith(B), Brian T Parker(Ds))と共演しちゃうんですからね。これは羨ましい~!! そして22日の蓮田以降は、残念ながらブルース・マシーンとの共演ではなく、日本人を中心にしたバンドとのステージとなるようです。とは言え、全てのステージの中心は、ブルース・マシーンのメンバーでもある我らが菊田修介さんですからね!



LURRIE BELL / LET'S TALK ABOUT LOVE
ザ・ローリー・ベル・ブルース・バンド

7月19日(木)~21日(土)JAPAN BLUES FESTIVAL 2012@青森

そして青森の「JAPAN BLUES FESTIVAL」のもう一つのメインがローリー・ベル。いや~、シカゴ・ブルースの美味しいところを持ってきてくれますよね~。バックはWillie Hayes(Ds)、Felton Crews(B)、Bill Sims Jr(Key)、Matthew Skoller(Harp)という面子。このハーピストのマシュー・スコーラーも現在のシカゴ・ブルース・シーンにおいて注目の人。ホント、青森が羨ましい。東京には来てくれないんですかね~?



KELLY JOE PHELPS / SLINGSHOT PROFESSIONALS
ケリー・ジョー・フェルプス

7月18日(水) 横浜 Thumbs Up
7月21日(土) 鎌倉 招山由比ケ浜
7月23日(月) 西麻布 新世界

ブルース/カントリーを独自の感性でエモーショナルに表現する孤高のギタリスト、ケリー・ジョー・フェルプス。この人のライヴも一度は観てみたいですね(インストア・ライヴなら観たことあるんですけどね~)。ちなみに横浜はSpecial GUESTに中村まりが登場し、鎌倉は小野一穂、The Mud Chuck Bobs (サム・ベネット&桜井芳樹)、Celtic Windも出演するミニフェスとのことです。



CHRIS DUARTE GROUP / VANTAGE POINT
クリス・デュアーテ・グループ

7月15日(日) 広島 Live Juke
7月16日(月) 博多 Gate's7
7月17日(火) 松山 YAHMAN 33
7月19日(木) 神戸 WYNTER LAND
7月20日(金) 松阪 MAXA
7月21日(土) 大阪 なんばHatch
7月22日(日) 金沢 MANIER
7月24日(火) 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
7月25日(水) 郡山 HIP SHOT JAPAN
7月26日(木) 東京 BLUES ALLEY JAPAN

テキサス出身の熱き白人ブルース・ギタリスト、クリス・デュアーテ。日本には何度も来てくれてるのでもうお馴染みですね。それにしてもこれだけの都市を回ってくれるのですから、さすが熱血漢! 21日のなんばHatchは「BLUES AND ROCK FREAKS ~なんばHatch 10th anniversary~」というイベントで、日本のブルースマン達も総出演な感じで豪華です。




お出かけの際は事前のご確認をお願いいたしま~す!!

33rd Blues Music Awards 受賞者

2012-05-21 23:52:03 | ブルース
TEDESCHI TRUCKS BAND / REVELATOR

2012年の『Blues Music Awards』が5月10日に発表になったようです。数年前までは『W.C. Handy Blues Awards』という名で親しまれてきたブルースの祭典です。昨年はアルバム「Living Proof」を引っさげ、『Album of the Year』を含む5部門を受賞したバディ・ガイの年となりましたが、今年はテデスキ・トラックス・バンドです!

テデスキ・トラックス・バンドは『Album of the Year』と『Band』の2部門を受賞し、さらにデレク・トラックスがギタリスト賞と言える『Gibson Guitar Award』部門を、そしてスーザン・テデスキが『Contemporary Blues Female Artist』部門を仲良く受賞しています。正直、ブルース・アウォードでテデスキ・トラックス・バンドってどうなの?って感はありますが、新作「Revelator」は傑作でしたし、ライヴ活動も含めその話題性、人気、勢い共に郡を抜いている印象はありますよね~。そういう意味では『Album of the Year』及び『Band』両部門の受賞も頷けますね。

そして彼らに勝るとも劣らない存在感を示したのがタブ・ベノワ! こちらは『Contemporary Blues Album』、『B.B. King Entertainer』、『Contemporary Blues Male Artist』の3部門を受賞。テデスキ・トラックス・バンドに比べれば、まだまだローカルなアーティストというイメージなタブ・ベノワですが(特にここ日本では。本国ではどうなんでしょうね?)、ニューオーリンズ音楽が好きな人にはお馴染みのルイジアナ出身のギタリスト/シンガーです。こういう人が評価されるのはニューオーリンズ・ファンとしては嬉しいですよね~。

その他では、3月にシンディー・ローパーの来日公演に同行したことも記憶に新しいハーピスト、チャーリー・マッセルホワイトが『Instrumentalist - Harmonica』、『Traditional Blues Male Artist』の2部門を受賞、そして日本でも人気が高そうな黒人女性シンガー、ルーシー・フォスターも『DVD』、『Koko Taylor Award (Traditional Blues Female)』の2部門を受賞。

あとは、マーシャ・ボール、ボビー・ラッシュ、エリック・ビブ、シカゴ・ブルース・ア・リヴィング・ヒストリーの受賞が、個人的に嬉しいです。


以下、今年の受賞者、受賞作品↓

Acoustic Album
David Maxwell & Otis Spann / Conversations In Blue

Acoustic Artist
Eric Bibb

Album of the Year
Tedeschi Trucks Band / Revelator

B.B. King Entertainer
Tab Benoit

Band
Tedeschi Trucks Band

Best New Artist Debut
Samantha Fish / Runaway

Contemporary Blues Album
Tab Benoit / Medicine

Contemporary Blues Female Artist
Susan Tedeschi

Contemporary Blues Male Artist
Tab Benoit

DVD
Ruthie Foster / Live At Antone's (Blue Corn)

Gibson Guitar Award
Derek Trucks

Historical Album
Howlin' Wolf / Smokestack Lightning (Chess Records)

Instrumentalist - Bass
Biscuit Miller

Instrumentalist - Drums
Chris Layton

Instrumentalist - Harmonica
Charlie Musselwhite

Instrumentalist - Horn
Terry Hanck

Instrumentalist - Other
Sonny Rhodes (lap steel guitar)

Koko Taylor Award (Traditional Blues Female)
Ruthie Foster

Pinetop Perkins Piano Player
Marcia Ball

Rock Blues Album
Joe Bonamassa / Dust Bowl

Song
Johnny Sansone / The Lord is Waiting, the Devil is Too

Soul Blues Album
Bobby Rush / Show You A Good Time

Soul Blues Female Artist
Denise LaSalle

Soul Blues Male Artist
Curtis Salgado

Traditional Blues Album
Billy Boy Arnold, John Primer, Billy Branch, Lurrie Bell, Carlos Johnson / Chicago Blues: A Living History – the (R)evolution Continues

Traditional Blues Male Artist
Charlie Musselwhite





ドナルド・ダック・ダン、安らかに

2012-05-14 01:33:59 | ブルース
BOOKER T.&THE MG'S / MELTING POT

5月13日、BOOKER T.&THE MG'S のベージストして、STAXの黄金時代を築き、サザン・ソウルの屋台骨を支え、現在まで数々のセッションを通し世界最高峰のベーシストの一人に数えられる、ドナルド・ダック・ダンが亡くなられたそうです。享年70歳。彼は現在「STAX! フィーチャリング・スティーヴ・クロッパー、ドナルド“ダック”ダン & エディ・フロイド」として来日中でした。5月8日、9日が丸の内コットンクラブ、そして5月10日~12日の3日間がブルーノート東京、それぞれで往年のスタックス・サウンドを甦らせるような素晴らしいステージを披露してくれていたことでしょう。そしてブルーノート最終日の翌朝、宿泊先で亡くなられていたそうです。

私もライヴには行けませんでしたが、そのステージの様子の断片がツイッターからチラチラと眼に入ってくるのを楽しんでいた矢先の訃報に、一瞬、眼を疑いました。あまりにも突然なことに、にわかに信じ難くて…。だって、前日までステージに立っていたんですからね。しかも東京の地で。とても悲しく、残念でなりません。私はダック・ダンには縁がなくて、一度も生で観ることが出来ませんでした。色々なコンサートに足を運んでいるつもりが、肝心なところが抜けてるんです…。でもダック・ダンの生み出すサザン・グルーヴには、レコードを通じてさんざんお世話になってきました。ありがとうございました。

ドナルド・ダック・ダンさん、安らかに。

ボビー・ラッシュ@ビルボードライヴ東京

2012-04-23 18:57:26 | ブルース
4月20日、ボビー・ラッシュのライヴを観に、ビルボードライヴ東京へ行ってまいりました。私が観たのはその夜の2ndショー。今回の来日公演最終ステージです。前から2列目のテーブル、ド真ん中の席という、個人的に一番好きな席に着席。

ほぼ開演予定時刻にメンバーが登場。バック・バンドはキース・ラフ(Guitar)、デクスター・アレン(Bass)、ブルース・ハーワード(Drums)の3人というシンプルな編成。まずはバンドで1曲。リズム隊の懐の深いグルーヴとキース・ラフのシャープなギターが印象的。ギター・ソロはハード・ロック的に弾き倒し、最後はギターを肩から放り投げるようにグルンと一回転させ客席を驚かせる。そしてブルース・ハーワードの高らかな紹介に促され、ボビー・ラッシュがゆっくりと登場。キラキラとラメの入った真っ白なジャケットを着た姿は流石チトリン・サーキットの王者の風格。

さて、ボビー・ラッシュのステージと言えば、女性ダンサー達を侍らせての下ネタ満載のファンク・ブルースというイメージですが、今回は残念ながらその名物とも言える女性ダンサー達が居らっしゃらない。果たしてどんなライヴになるのか?とちょっぴり心配に思いきや、流石はボビー・ラッシュ!まあ、濃かったですよ! 歌詞なんてほとんど下世話な内容なんでしょうが(偏見ですかね?)、それを濃密に観客に語りかけるように歌う。またこの歌声が独特のエグ味に溢れてる。さらに土臭いハープ! ダンサーが居ない分、ハープを吹きまくってましたね。しかもワン・フレーズ吹く度にドヤ顔&ドヤアクションですよ。やることがいちいち濃い! しかも元気! ステージ狭しと左右に動き回りながら、脂ぎったブルース臭をこれでもかとまき散らしていく。76歳ですか? そんな風には見えませんでしたね~。ここぞという瞬間には「ハッ!!」という掛け声と同時にぴょんと飛び跳ねて華麗な足技も決めたり。いや別に格好良くはないですよ。基本、ガニ股のおっさんですから。でもそれがブルースなんですよ!私らブルース・ファンにとってはそれが堪らなく格好良いのです。

曲は得意のファンキー路線より、もっとブルース調が目立った印象。「Crazy 'Bout You」のどっぷりとしたフィーリングは堪らないものがありましたね。「Hoochie Coochie Man」や「She's Nineteen Years Old」などのカヴァーも良かったです。「My Babe」もやりましたし、意外なところでは「When the Saints Go Marching In」も。

まあ、正直、セットリストはよく分かりませんでした。知らない曲もありましたし、知っているような曲もアレンジが違うしで…。しかもほとんど切れ目無しに次から次へと繋がれていく。「Shake Your Moneymaker」とか「Shake, Rattle and Roll」みたいな曲もやってましたが、あの有名なスタンダード曲とは雰囲気が違うように思いました。やはりボビー・ラッシュほどの歴戦のブルースマンともなると、スタンダード曲も、自身の曲も、その日のフィーリングで自由自在に料理できるんでしょうね。ちなみに「When the Saints Go Marching In」も「FOLKFUNK」というアルバムで「You Gotta Move」と引っ掛けて「Saints Gotta Move」として録音してる曲ですしね。

そんなテンポもリズムも違う様々な曲が繋がれていくディープな展開には、チトリン・サーキットを形成する黒人クラブの雰囲気を垣間みる思いでした。また曲中に好き放題喋るボビーがまたいかにもな感じで。おそらく下世話な内容だと思うのですが(偏見?)、かなり笑いを取ってましたね。最前列のお客さん一人一人に「おまえはビッグ・ファット・ウーマンは好きか?」と聞いてはその反応を楽しむなんていう客いじりもあったり。そんな話術を含めた自由自在な曲展開はホント見事でしたし、それにぴたっと着いてくるバンドも流石でしたね。特にギターのキース・ラフは、ソロこそハード・ロック的でしたが、バッキングではセンス抜群のブルージーなフレーズを連発していて痺れました。

あと驚いたのはボビー・ラッシュが一人、ギターの弾き語りで数曲歌ってくれたこと。07年のアルバム「RAW」はアコギ引き語り作でしたが、それともまた違うエレキ・ギター弾き語り。「Goodmorning Little Schoolgir」とか「Chicken Heads」なんかを挟んでましたが、基本的には似たようなリフでいくつかの曲を繋いでいたような印象。ダラダラとワン・フレーズで引き繋ぐ感じは流石に泥臭い。眼を細めて絞るような表情でギターを弾いていたのも印象的でした。

全体的にファンク曲が少ない印象ではありましたが、終盤になってやっとボビー・ラッシュらしいファンク・ブルースな感じになり、最後はボビーが客席に降りての握手大会。もちろん私も握手しましたよ。驚くことにボビーは1階席の最後列まで行き、一人一人と握手していました。この辺りも流石はチトリン・サーキットの王者! 観客達もスタンディングオベーションでボビー達の熱演に応えていました。アンコールのような形でバンド編成による「Chicken Heads」がまた格好良かった!

いや~、めったに日本では観れない質の濃密さでした。ボビーのハープをたっぷり聴けたのも良かったですしね。でも次回はぜひ女性ダンサー達も引き連れて来て欲しい! という訳で、また呼んでくださいね。



BOBBY RUSH / SHOW YOU A GOOD TIME
終演後のサイン会でサインを頂いた最新作「SHOW YOU A GOOD TIME 」。一人一人自分の隣の席に座らせて一緒に写真を撮ったり、とてもフレンドリーな雰囲気でした。



~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

 12.04.20 いよいよボビー・ラッシュ!!