ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

クリス・エスリッジ、安らかに

2012-04-29 22:30:38 | ルーツ・ロック
THE FLYING BURITTO BROTHERS / THE CILDED PALACE OF SIN

グラム・パーソンズ、クリス・ヒルマン達とフライング・ブリトウ・ブラザーズを結成し、1st作「THE CILDED PALACE OF SIN」でベースを弾いていたクリス・エスリッジが4月23日に亡くなられたそうです。享年65歳。このアルバムは60年代末に時代を席巻したカントリー・ロックの象徴とも言える作品でした。

このアルバムでのベース・プレイはもちろん、クリスがグラム・パーソンズと共作した哀愁溢れるスロー・ナンバー「Hot Burrito #1」はとても印象的ですね。これはホント名曲です。名曲と言えば、グラム・パーソンズがソロになってからのデビュー・アルバム「GP」に納められた「She」。グラムのソロ時代の曲という印象が強いですが、実はグラムとクリスがフライング・ブリトウ・ブラザーズ時代に作った曲。この曲も良いですよね~。

クリスはグラムとの活動以外にも、アーロ・ガスリー、デイヴ・メイソン、ライ・クーダー、グレアム・ナッシュ、リタ・クーリッジ、ランディ・ニューマン、ポール・カントナー、マリア・マルダー、ウィリー・ネルソン、などなど、セッションプレイヤーとして数々の名作に名を連ねています。




L.A. GETAWAY / L.A. GETAWAY
ジョエル・スコット・ヒル、ジョニー・バーバタ、クリス・エスリッジによるプロジェクト、L.A.ゲッタウェイ。クリス・エスリッジは、グラム・パーソンズが初めて世に出たインターナショナル・サブマリン・バンドにも参加していましたが、実はそれよりも早くジョエル・スコット・ヒルとセッションをしていたそうです。ですがそのセッションは実を結ばず、一旦分かれたそうですが、クリスがフライング・ブリトウ・ブラザーズを脱退したのを契機にまた寄りを戻して作られたのがこのアルバム。クリスはベーシストとしてはもちろんソング・ライターとしても活躍。タイトル曲「L.A.Getaway」はクリスとグレッグ・デンプシー、レオン・ラッセルの共作で、クリスが味のあるリード・ヴォーカルも披露しています。ドクター・ジョン、レオン・ラッセル、ブッカーT、スプーナー・オールダム、ラリー・ネクテル、スニーキー・ピート、クラレンス・ホワイト、クライディ・キングなど、錚々たる面子が参加しているらしい、スワンプ・ロック名盤。



BOOKER T. & PRISCILLA / BOOKER T. & PRISCILLA
グラム・パーソンズがクリス・エスリッジと共作した名曲「She」。実はこの曲が納められたグラムの「GP」にはクリスは参加していません。そのかわり、ブッカーT&プリシラが夫婦名義による初アルバムで「She」を取り上げていまして、クリスはここでベースを弾いています。しかも「GP」は73年発表、こちらの「BOOKER T. & PRISCILLA」は71年発表なので、こっちの方が早いんですよね~。ジム・ケルトナー、ジェシ・エド・デイヴィス、スニーキー・ピート、ジェリー・マギー、ジム・ホーンなどが参加した2枚組の名作。




The Flying Burrito Brothers - Hot Burrito #1

名曲「Hot Burrito #1」。あて振りのせいかクリス・エスリッジがドラムスに座っています。

EGO-WRAPPIN' @アースデイ東京

2012-04-27 01:26:29 | フェス、イベント
今年も4月21日、22日の二日間、代々木公園にて「アースデイ東京2012」が開催されました。私も22日だけですが行ってまいりました。地球のことを考えながら色々なブースを見て回り、アーズデイならではの雰囲気を満喫した1日。そして私の一番のお目当ては?と問われれば、それはやはりライヴなのです。この日はエゴ・ラッピンが出演しました。

さて、そのエゴ・ラッピン。実は私、生で観るのはこの日が初めてでした。この日は中納良恵さん(vo)、森雅樹(g)さんの2人に菅沼雄太さん(ds)を加えた3人によるアコースティック編成。アコースティックと言っても森さんは箱形のエレキ・ギターを弾いてましたけどね。それにしても初めて聴く中納さんの歌声はやはり素敵でしたね。惚れ惚れしました~。シンプルな編成なので、より歌心がストレートに響いて来たのかもしれません。昼の野外ライヴらしくソフトな曲調が中心でした。

特に良かったのがゲストにスティールパンの土生剛さんを招いての「A Love Song」。まず土生さんのスティールパンの音色にやられました。それはまるで天にも昇るような柔らかさ。そしてそんな彼の独奏に導かれるように中納さんが“Just looking in your heart♪”と歌い出した瞬間がまた鳥肌物の素晴らしさ! あの歌声はちょっと筆舌に尽くし難い感じでしたね。あとは「Dear Mama」とか、「満ち潮のロマンス」とか、「Love Scean」とか。「Love Scean」では歌だけでなくピアニカを吹いていたのも印象的でした。もちろん中納さんの歌だけでなく森さんのギターもセンス抜群で流石でしたね。最後は菅沼さんもスネアを持って前へ出て来て、中納さん、森さんと3人が前方中央へ並んでの「サイコアナルシス」。ロカビリー的なノリで格好良かったです。パンチの効いた中納さんの歌声に痺れました。今度はちゃんとしたバンド・セットで観てみたいと思いました。

エゴ・ラッピンのあとは「東田トモヒロ×Leyona×沼澤尚 -TRI-ARTIST SESSION」のライヴを堪能。やっぱりLeyonaさんの歌声って言うのは、キュートですし、セクシーですよね。でもって土っぽい。あのハスキーな感じが良いんですよ。最後にやった「Love」は良かったですね~。


今年のアースデイ東京は、2日間合わせて11万人が来場されたそうです。凄いですね。それだけ環境問題が注目されているということですよね。もちろんイベントとして楽しいですけどね。私にとっても、年に一度とは言え、イベントとして楽しみながら環境問題などについて眼を向けられる貴重な機会になっています。

日々、地球に感謝しながら、少しでも地球に優しく暮らせるように、努力したいと思っています。

ZYDECO KICKS&ハチャトゥリアン楽団@六角橋商店街ヤミ市

2012-04-25 13:35:54 | フェス、イベント

4月21日、横浜六角橋商店街の「ドッキリ闇市場」に行ってまいりました。このヤミ市、一度行ってみたかったんですよね~。ただヤミ市と言うだけあり事前に出演者が分からないんですよ。ライヴ目当ての私としては、やはり出演者が分からないとなかなか行きずらい。でも今回はたまたまザディコ・キックスとハチャトゥリアン楽団の出演情報をゲットしまして、これは行かねば!と喜び勇んで行ってまいりました。

初めて訪れる六角橋商店街。昭和の風情が残る、昔ながらの商店街です。仲見世という狭い路地裏のような通りに店舗がひしめいている感じはかなりディープ。しかもヤミ市という事でその狭い路地でフリーマーケットが展開され、飲食の露店も出てる。そして至る所でライヴが同時進行で行なわれている。私も初めての体験にドキドキしながら、ジャズ・バンド、フラメンコ、ドブロ系のギター弾き語りブルースなどをハシゴしつつ、ヤミ市の雰囲気を満喫。そうこうしているうちにザディコキックスの開演時間に。

06年にシリル・ネヴィルが出演した「中之島Music Carnival'06~大阪ニューオーリンズ祭り」というイベントの出演者欄に“ザディコ・キックス”という名前を見つけて以来、ず~っと気になっていたんですよ。ですがなかなか観る機会が無く、あれから5年以上が経ち、ようやくライヴを観ることが出来ました。09年にリリースしたアルバム「TRAILRIDE」がグラミー賞のノミネート候補にエントリーされるなど、今や日本が世界に誇るザディコ・バンドです!!

薬局前の少し広い通りで行なわれたそのザディコキックスのライヴ。始まるや否やザディコの泥臭くも躍動感溢れるリズムが炸裂。特に両側に陣取る2人の女性ラヴボード奏者が凄い! テンガロンハットとお揃いのザリガニ模様のエプロンも可愛らしく、そんな姿で肩から下げたラヴボードをシャカシャカと擦りながら踊りまくる。しかもガンガン前へ出てきたり、左右縦横無尽に動き回る。この2人の動きがストリートをグイグイとザディコ祭に誘っていく。もちろんアコーディオンを中心にしたバンド全体のグルーヴ感あってこそですが、やはりラヴボードのリズムと言うのはどうにもこうにも血が騒ぎます。後半からはそのラヴボードを手渡された観客達も入り乱れてのお祭り騒ぎ。ザディコの泥臭いノリと商店街気質が溶け合ったようなディープな空間と化しました。ザディコキックス、凄いバンドです!

続いてハチャトゥリアン楽団。古き良きニューオーリンズ・ジャズという渋い世界を志しながら、最近メキメキと頭角を現している若いバンド。こちらは私も何度かライヴを観ているお馴染みのバンドです。メンバーはトロンボーン奏者のハロさんを中心に、バンジョー、トランペット、チューバ、スネアという5人組。さらに今回は同じニューオーリンズ組のブラック・ボトム・ブラス・バンドのバスドラ奏者、アントンさんがスネアで加わっての、よりリズムが強化されたストリート仕様な感じ。「Iko Iko」とか良かったですね~。ザディコのノリも良いけど、やっぱセカンドラインも最高ですよ! チューバの低音が良いですね! もちろん女性2人のホーンの音色も、バンジョー奏者の丸山さんの歌声も良かったです。途中、アントンさんのスネア・ソロもあってやたら盛り上がりました。あと意外とガーシュインの「I Got Rhythm」が良いんです! この曲でのバンジョーとトロンボーンの絡みはハチャトゥリアンならではの魅力ですね~。そして「Just a closer walk with Thee~I'll Fly Away」のゴスペル・メドレー。特に「I'll Fly Away」はお客さんも一緒に歌い出す程の何とも言えないハッピーな一体感に。特に私のすぐ横で一際良い声で歌っている方がいらっしゃって、誰かと思えば日本で唯一人とも言われる、その筋では有名なグランドマーシャルさんその人でした。なんか色々濃いな~って感じ。最後は「聖者の行進」で楽しく終了。

ザディコ・キックス~ハチャトゥリアン楽団、やはり最高でしたね! 昭和レトロな商店街でのヤミ市で観るルイジアナ音楽、良いですね~。しかもザディコ・キックスは日本語詩でザディコをやってましたし、ハチャトゥリアン楽団も「Iko Iko」を日本語で歌ったりしていましたからね。まさにルイジアナと日本が混じりあい、より一層なガンボ感を醸したような一夜でした。



下の写真は、上がハチャトゥリアン楽団、左下がザディコ・キックス、右下が細い路地でやっていたジャズ・バンド。




ボビー・ラッシュ@ビルボードライヴ東京

2012-04-23 18:57:26 | ブルース
4月20日、ボビー・ラッシュのライヴを観に、ビルボードライヴ東京へ行ってまいりました。私が観たのはその夜の2ndショー。今回の来日公演最終ステージです。前から2列目のテーブル、ド真ん中の席という、個人的に一番好きな席に着席。

ほぼ開演予定時刻にメンバーが登場。バック・バンドはキース・ラフ(Guitar)、デクスター・アレン(Bass)、ブルース・ハーワード(Drums)の3人というシンプルな編成。まずはバンドで1曲。リズム隊の懐の深いグルーヴとキース・ラフのシャープなギターが印象的。ギター・ソロはハード・ロック的に弾き倒し、最後はギターを肩から放り投げるようにグルンと一回転させ客席を驚かせる。そしてブルース・ハーワードの高らかな紹介に促され、ボビー・ラッシュがゆっくりと登場。キラキラとラメの入った真っ白なジャケットを着た姿は流石チトリン・サーキットの王者の風格。

さて、ボビー・ラッシュのステージと言えば、女性ダンサー達を侍らせての下ネタ満載のファンク・ブルースというイメージですが、今回は残念ながらその名物とも言える女性ダンサー達が居らっしゃらない。果たしてどんなライヴになるのか?とちょっぴり心配に思いきや、流石はボビー・ラッシュ!まあ、濃かったですよ! 歌詞なんてほとんど下世話な内容なんでしょうが(偏見ですかね?)、それを濃密に観客に語りかけるように歌う。またこの歌声が独特のエグ味に溢れてる。さらに土臭いハープ! ダンサーが居ない分、ハープを吹きまくってましたね。しかもワン・フレーズ吹く度にドヤ顔&ドヤアクションですよ。やることがいちいち濃い! しかも元気! ステージ狭しと左右に動き回りながら、脂ぎったブルース臭をこれでもかとまき散らしていく。76歳ですか? そんな風には見えませんでしたね~。ここぞという瞬間には「ハッ!!」という掛け声と同時にぴょんと飛び跳ねて華麗な足技も決めたり。いや別に格好良くはないですよ。基本、ガニ股のおっさんですから。でもそれがブルースなんですよ!私らブルース・ファンにとってはそれが堪らなく格好良いのです。

曲は得意のファンキー路線より、もっとブルース調が目立った印象。「Crazy 'Bout You」のどっぷりとしたフィーリングは堪らないものがありましたね。「Hoochie Coochie Man」や「She's Nineteen Years Old」などのカヴァーも良かったです。「My Babe」もやりましたし、意外なところでは「When the Saints Go Marching In」も。

まあ、正直、セットリストはよく分かりませんでした。知らない曲もありましたし、知っているような曲もアレンジが違うしで…。しかもほとんど切れ目無しに次から次へと繋がれていく。「Shake Your Moneymaker」とか「Shake, Rattle and Roll」みたいな曲もやってましたが、あの有名なスタンダード曲とは雰囲気が違うように思いました。やはりボビー・ラッシュほどの歴戦のブルースマンともなると、スタンダード曲も、自身の曲も、その日のフィーリングで自由自在に料理できるんでしょうね。ちなみに「When the Saints Go Marching In」も「FOLKFUNK」というアルバムで「You Gotta Move」と引っ掛けて「Saints Gotta Move」として録音してる曲ですしね。

そんなテンポもリズムも違う様々な曲が繋がれていくディープな展開には、チトリン・サーキットを形成する黒人クラブの雰囲気を垣間みる思いでした。また曲中に好き放題喋るボビーがまたいかにもな感じで。おそらく下世話な内容だと思うのですが(偏見?)、かなり笑いを取ってましたね。最前列のお客さん一人一人に「おまえはビッグ・ファット・ウーマンは好きか?」と聞いてはその反応を楽しむなんていう客いじりもあったり。そんな話術を含めた自由自在な曲展開はホント見事でしたし、それにぴたっと着いてくるバンドも流石でしたね。特にギターのキース・ラフは、ソロこそハード・ロック的でしたが、バッキングではセンス抜群のブルージーなフレーズを連発していて痺れました。

あと驚いたのはボビー・ラッシュが一人、ギターの弾き語りで数曲歌ってくれたこと。07年のアルバム「RAW」はアコギ引き語り作でしたが、それともまた違うエレキ・ギター弾き語り。「Goodmorning Little Schoolgir」とか「Chicken Heads」なんかを挟んでましたが、基本的には似たようなリフでいくつかの曲を繋いでいたような印象。ダラダラとワン・フレーズで引き繋ぐ感じは流石に泥臭い。眼を細めて絞るような表情でギターを弾いていたのも印象的でした。

全体的にファンク曲が少ない印象ではありましたが、終盤になってやっとボビー・ラッシュらしいファンク・ブルースな感じになり、最後はボビーが客席に降りての握手大会。もちろん私も握手しましたよ。驚くことにボビーは1階席の最後列まで行き、一人一人と握手していました。この辺りも流石はチトリン・サーキットの王者! 観客達もスタンディングオベーションでボビー達の熱演に応えていました。アンコールのような形でバンド編成による「Chicken Heads」がまた格好良かった!

いや~、めったに日本では観れない質の濃密さでした。ボビーのハープをたっぷり聴けたのも良かったですしね。でも次回はぜひ女性ダンサー達も引き連れて来て欲しい! という訳で、また呼んでくださいね。



BOBBY RUSH / SHOW YOU A GOOD TIME
終演後のサイン会でサインを頂いた最新作「SHOW YOU A GOOD TIME 」。一人一人自分の隣の席に座らせて一緒に写真を撮ったり、とてもフレンドリーな雰囲気でした。



~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

 12.04.20 いよいよボビー・ラッシュ!!

レヴォン・ヘルム、安らかに

2012-04-20 15:14:39 | ルーツ・ロック
LEVON HELM BAND / @MERLEFEST

4月19日、レヴォン・ヘルムが亡くなられたそうです。もう随分と前から咽頭癌との闘病を続けていたレヴォン・ヘルムでしたが、ついに天国へと旅立ってしまいました。近年は充実したスタジオ作及びライヴ盤を残していただけに、残念でなりません。

ホークスと名乗っていた頃のザ・バンドから始まるレヴォン・ヘルムの歩みはあまりにも長く、その功績はあまりにも大きいので、今ここで詳細に振り返ることは出来ませんが、あの土っぽくファンキーなドラムと歌、どこか人懐っこい愛嬌があり、それでいて寂寞とした味わい、まさに彼にしか成し得ない魅力でした。


長く確執の続いていたロビー・ロバートソンもレヴォンを病院に見舞っていたそうです。彼はレヴォンの死に対し、フェイスブックにこんな愛情溢れる追悼文を載せています。

Levon is one of the most extraordinary talented people I’ve ever known and very much like an older brother to me. I am so grateful I got to see him one last time and will miss him and love him forever.

(全文を読みたい方はこちら→http://ja-jp.facebook.com/j.robbierobertson


レヴォン・ヘルムさん、安らかに。



*上の写真は、2009年にリリースされたライヴ盤「@MERLEFEST」。録音は08年。レヴォンを中心にした大所帯のソウル/カントリー・レヴュー的なライヴ。まさにルーツ・ミュージックの桃源郷。こんなステージを生で観てみたかった! (ちなみに当ブログの2009年度ベスト・アルバム第1位に選ばせて頂いたアルバムです。)




The Band - 1970 - The Weight - Festival Express, Toronto


いよいよボビー・ラッシュ!!

2012-04-20 14:02:58 | ブルース
BOBBY RUSH / SUE

ただ今来日中のボビー・ラッシュ。もう70歳を越えた大ベテランですが、新作をリリースする度に“ブルース界にボビー・ラッシュ有り!”という強烈なインパクトを残し続けている現在進行形ブルースマン。ブルース・ムーヴィー・プロジェクトの「The Road To Memphis」でフューチャーされたあの人と言ったら分かりやすいでしょうか? その音楽はもちろん、チトリン・サーキットを休み無く回るボビーの姿そのものに“ブルース”を感じた方も多かったのでは? そう、やっぱりブルースは人なんです。人間そのものからブルース汁が滲み出るのです。

ちなみにチトリン・サーキットの“チトリン”とは、豚肉の小腸を煮込んだ、いわゆる黒人料理のこと。黒人のクラブを転々とドサ廻りすることを、黒人しか食べない安い料理に例えてチトリン・サーキットと呼ぶそうです。ボビー・ラッシュは女性ダンサーを従え、チトリン・サーキットを毎夜の如く沸かせてきたことでしょう。ボビーの両側にお尻の大きな女性ダンサーが立ち、その女性達が観客席に向かって腰を突き上げながら、その大きなお尻を振る。そのお尻をジーッと見つめながら歌うボビー・ラッシュ。観客は沸きに沸く。これがボビー・ラッシュのステージ!

しかし、今回の来日公演は女性ダンサーを引き連れてないそうなんです。それがメンバー個人の問題なのか、費用の問題なのか、ビルボードという箱の問題なのか、最近はそういうスタイルなのか、その辺はよく分からないのですが、これは少々がっかり。ですがそもそも主役はボビー・ラッシュですからね。ボビーの全身から放たれるディープなブルース臭は変わりないはずです。いや、かえってボビー・ラッシュのブルースそのものをじっくりと堪能出来るかもしれません!!

ビルボード東京でのボビー・ラッシュの来日公演も今日4月20日が最後です。もちろん私も本日の2ndステージを観てきます。楽しみです!


*写真のアルバムはボビー・ラッシュ、81年の作品「SUE」。99年にパークタワー・ブルース・フェスティヴァルのメイン・アクトとして来日した際に会場で購入しました。ライヴ前だったんですけど、空き時間に物販ブースに立ち寄ったら、そのブースの横で黒人さんが退屈そうに座ってるんです。しかしその人がボビー・ラッシュによく似てる。まさかな~と思いながらこのボビー・ラッシュの「SUE」を手に取ってみたのです。もしその黒人さんがボビー・ラッシュ本人であれば、販売のお姉さんが「今買うとボビー・ラッシュさんのサインが貰えますよ!」なんて営業してきそうなものじゃないですか? ですがそのお姉さんはまったく動じない。黒人さんもピクリとも動かない。やっぱ違うのか?と思いながらも私は「コレください」とCDをお姉さんに手渡しお金を払う。するとお姉さんはおもむろにCDのビニールを破り、無言で黒人さんに渡す。黒人さんも無言でマジックを取り出し、CDジャケットにスラスラとサインする。やっぱ本物か!! そしてニコッと握手。良い人だ~。にしてもせっかく本人来てるんだからもうちょっと宣伝すれば良いのにと思ったり。いわゆるサイン会が終わったあとだったんですかね?でもあの時の退屈そうなボビー・ラッシュが妙に印象に残っています。もちろんその後のライヴはまさに白熱。女性ダンサーも出演しましたし、ボビーも観客席に降りるなどの大熱演。猥雑極まりないブルースなエンターテイメントをたっぷり見せつけてくれました。あれはもう12年も前の話なんですね~。




BOBBY RUSH / RUSH HOUR
60年代から細々とシングルを出していたらしいボビー・ラッシュですが、アルバム・デビューを飾ったのは79年、フィラデルフィア・インターナショナル・レコードからでした。ボビー・ラッシュがフィリーからデビューってちょっと意外ですよね。とは言えこの時から既にボビー節は確立されてる感じ。シンプルなビートに野性味溢れる歌と素朴なハープが絡む、独特なファンクネスが格好良い! タイトに纏まったサウンドは流石はギャンブル&ハフ。



BOBBY RUSH / I AIN'T STUDDIN' YOU
デビュー・アルバムは残念ながら商業的成功を収められず、フィリーを離れミシシッピはジャクスンにあるラ・ジャムからリリースされた2nd作が先の「SUE」。ラ・ジャムから数枚のアルバムをリリースした後、同じくミシシッピのアージェントに移籍しての出世作と言われるのがこの「I AIN'T STUDDIN' YOU」。91年作。バックのディスコチックなサウンドとボビーの南部的な泥臭さというミスマッチが妙なブルース臭を醸し、なんともクセになる一枚。天然なのか計算なのかよく分からない、これぞボビー流ファンク・ブルース。



BOBBY RUSH / RAW
数曲でShawn Kellermanのドブロが入る意外、全てボビー・ラッシュによるアコースティック・ギター&ハープ弾き語り。07年リリース。裸にオーバーオールというジャケ写が物語るような、土臭くディープなブルース。こういうボビー・ラッシュも良い!!



BOBBY RUSH / SHOW YOU A GOOD TIME
昨年リリースされた最新作。1曲目なんてゴースト・バスターズみたいですし、スクラッチ音みたいなのも入ってくるし、なのにどうにもこうにも垢抜けないボビー節。ブルースを逸脱すればする程、ブルースなエグ味が濃くなっていく。やっぱり凄いよこの人!と思わせる傑作。スローナンバーも良いんです!

フジロック第4弾!!

2012-04-19 13:09:01 | フジロック
DUMPSTAPHUNK / LISTEN HEAR

フジロック出演者第4弾の発表がオフィシャルサイトにてありました。今回は25組。

a flood of circle
ANNIE MAC
COBRA
THE D.O.T.
DJANGO DJANGO
DUMPSTAPHUNK
ED SHEERAN
THE FIELD
ゴジラ・放射能・ヒカシュー
group_inou
完熟トリオ(小坂忠/鈴木茂/中野督夫)
KID MASSIVE
麗蘭
LINDIGO
LOSTAGE
M.WARD
MOP OF HEAD
ORQUESTA LIBRE with おおはた雄一
quasimode
RAY DAVIES & BAND
渋さ知らズオーケストラ
SWISS LIPS
THA BLUE HERB
TOOTS AND THE MAYTALS
YAEL NAIM



まずはダンプスタファンクですよ! これは前々からフジロックに似合うだろうな、と思っていたニューオーリンズ・ファンク・バンド。アーロン・ネヴィルの息子アイヴァン・ネヴィルを中心に、アート・ネヴィルの息子イアン・ネヴィルも在籍している、まさにニューオーリンズの現在を担うバンド。待望の初来日です! そしてM・ウォード。ズーイー・デシャネルとやってるShe & Himで知られる彼ですが、実はそれ以上に彼個人がフォーキーなSSWとして評価の高い人。でも出来ればズーイーも一緒に来てくれたら…、なんて思ってしまいがちですが、それはあまり言わないことにしましょう。さらにトゥーツ&ザ・メイタルズ! スカ~ロック・ステディ~レゲエ界の伝説的グループですし、中心人物のトゥーツ・ヒバートはまさにレジェンドですよね~。私も一度生で観てみたかったのでこれは嬉しい! ホント良くぞ呼んでくれました!ヘヴンかオレンジのトリですかね?

あと気になるのは、エド・シーランとか、ヤエル・ナイムとか、そんな辺り。あ、あとレイ・デイヴィス!! この方を忘れてはいけませんね。さらっとこういう人を呼んじゃうフジロックって素敵ですよね。前回(99年)、フジに出演した時はグリーンの明るい時間帯でしたから、今回は出来れば夜が良いですね~。奥の方でじっくり楽しみたいです。

それとLINDIGOというアーティスト。まったく知らないんですけど、アフリカ系ですかね? 妙にそそられます。あと邦楽勢では、ヒカシューに渋さ知らズとチャランポランタンが絡むという、ゴジラ・放射能・ヒカシューが面白そう。あと芳垣安洋さんのオルケスタ・リブレも気になります。もちろん渋さ知らズオーケストラも。

いや~、それにしても今年もなんだかゴチャゴチャとした感じのラインナップが揃って来ましたね。なんかもう奥の方はかなり賑やかな感じ。もうコレは当然被ってきますよね。例年ですと5月1日前後に日割りも発表される感じですが、もうすぐですよね~。なんかそわそわしちゃいますね。



*写真はDUMPSTAPHUNKの5曲入りのミニ・アルバム。07年のリリース。多分コレがデビュー作でしょうね。これを初めて聴いた時は、あまりにファットで切れ味鋭いファンクに、あまりニューオーリンズらしさが感じられない程の衝撃を受けました。しかしこれこそヒップホップ以降の現在のニューオーリンズ・ファンク。ネヴィルズの第二世代達が新たな扉を開いて行くようでワクワクさせられます。ですが意外とアイヴァン・ネヴィルはもう結構なベテランなんですけどね。一昨年にリリースされた新作も最高です!!



Dumpstaphunk Performs "Do You Want My Love" at Gathering of the Vibes 2011

ダンプスタファンク。生粋のライヴ・バンド。異様に粘り気の強いファンクが腰に来ます。新加入の女性ドラマーさんのタメの効きまくったスネアも気持ち良いです。


M. Ward - Chinese Translation (Live in the Bing Lounge)

M・ウォード、良いですね~。もうすぐ新作も出るそうなので、そちらも楽しみです!


Yael Naim - New soul - Live

ヤエル・ナイム、こちらも良いですね~。日本にも何度か来ているフランスの女性SSW。最近フランスって面白いですよね~。


Toots & The Maytals - Funky Kingston (Live)

レゲエ史上に残る名盤「FUNKY KINGSTON」からタイトル曲のライヴ映像。レゲエ×JBファンク的なリズムが格好良い! ソウルフルなトゥーツ・ヒバートの歌唱も良いですね~。


LINDIGO - Misaotra Mama - MALOYA

こういうアーティストももはやフジに欠かせない存在。これぞフジロック!


アンドリュー・ラヴ、安らかに

2012-04-18 16:34:48 | ソウル、ファンク
MEMPHIS HORNS / MEMPHIS HORNS

2012年4月12日、メンフィス・ホーンズのサックス奏者、アンドリュー・ラヴが亡くなられました。メンフィスの自宅で。享年70歳。晩年はアルツハイマー病を患い、合併症で亡くなられたそうです。

メンフィス・ホーンズと言えば、そりゃあもうサザン・ソウル/メンフィス・サウンドの象徴のような存在でした。メンバーはウェイン・ジャクソン( trumpet )とアンドリュー・ラヴ(sax)の2人。2人とも1941年メンフィス生まれです。元々はスタックスのハウス・バンド的存在だったマーキーズというバンドで、そのメンバーは多分に流動的だったことと思われますが、大まかに言えば、そこからリズム・セクションが独立してブッカー・T. & ザ・MG'Sとなり、残されたホーン隊が後にメンフィス・ホーンズとなった、という感じのようです。なのでメンフィス・ホーンズも当初は2人だけではなく4~5人からなるブラス・セクションだったようです。そしてMG'S同様に白人黒人の混成バンドでした。ちなみにウェイン・ジャクソンは白人、アンドリュー・ラヴは黒人でした。

60年代のスタックス黄金期を代表する作品、オーティス・レディングの「OTIS BLUE」。MG'S のリズムに絡むアンドリュー・ラヴ&ウェイン・ジャクソン達のホーン隊。これぞスタックス・サウンド!これぞサザン・ソウルですよね! やはりオーティス・レディングの歌唱と、それを支えたバックの演奏って言うのは、ソウル・ファンにとってかけがえの無いものです。また彼らによるスタックス/ヴォルト・ツアーと呼ばれるヨーロッパでのライヴ盤もスタジオ録音とはまた違う南部魂が感じられて最高ですね! あと個人的にスタックス時代だとアルバート・キングの「BORN UNDER A BAD SIGN」が好きです。あとジョニー・テイラーの「WANTED: ONE SOUL SINGER」辺りもアンドリュー・ラヴを含むホーン隊が良い味を出しています。

やはりメンフィス・ホーンズと言いますとスタックスの印象が強いかもしれませんが、例えば、彼らが参加したウィルソン・ピケットの67年作「THE SOUND OF WILSON PICKETT」はマスル・ショールズのフェイムスタジオで録音され、リズム・セクションはロジャー・ホーキンス、トミー・コグビル、チップス・モーマン、ジミー・ジョンソン、スプーナー・オールダムなどが務めています。さらに70年代になると、彼らはウィリー・ミッチェル率いるハイ・レコードでも欠かせない存在となり、アル・グリーンの名作「 LET'S STAY TOGETHER」をはじめ、アン・ピーブルス、シル・ジョンソン、オーティス・クレイなどの諸作に参加し、ホッジス兄弟達のハイ・リズムと共に、伝説のハイ・サウンドを彩りました。

そしてメンフィス・ホーンズの単独名義となるデビュー作が70年リリースの「MEMPHIS HORNS」。こちらはサウンズ・オブ・メンフィス・スタジオにて録音。バックにはジム・ディッキンソンこそ居ないものの、ほぼディキシー・フライヤーズな面々が参加しています。この頃には同スタジオに出入りし、ディキシー・フライヤーズとセッションを重ねていたようです。

ここに挙げたものは氷山の1角にすぎないのですが、メンフィス・ホーンズがいかに“メンフィスの音”もしくは“サザン・ソウルの音”として愛されていたかが分かりますよね。これだけ多岐にわたって、南部の音を担って来た人達はそうは居ません。そんな彼らですから、ロック・フィールドからもそのサウンドを求めて引く手数多でした。例えば、ジェイムス・テイラー、スティーヴン・スティルス、ドゥービー・ブラザーズ、スティーヴ・ウィンウッド、ジョー・コッカー、スティングなどなど。ちなみに私が初めてメンフィス・ホーンズの音を聴いたのは、おそらくヘヴィ・メタル・バンドのシンデレラ。(私、若い頃メタル大好きだったんで。)彼らはブルース/ソウルをルーツに持つ変わり種で、1990年の3rd作にメンフィス・ホーンズの2人が1曲だけですが参加し、ファンキーなホーン・リフで彼らの南部趣味に一役買ってます。

ですが個人的に最も印象的なのはプライマル・スクリームです。彼らの南部回帰作と言える94年作「GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP」でメンフィス・ホーンズの果たした役割は重要ですよね。アーシーなロックンロールに彼らのホーンが切れ込む感じこそ、この作品の格好良いところ! ちなみにこの次作に収録された名曲「Star」でオーガスタス・パブロのメロディカと並んで印象的なホーンを吹いてるのもメンフィス・ホーンズです。

まあ、結局この辺りも氷山の一角な訳ですが、つまり、南部な雰囲気にしたいと考えたとき、真っ先に白羽の矢が当たるような存在がメンフィス・ホーンズだった訳です。彼らが一吹きすれば、そこにはメンフィスの風が吹くのです。まさにメンフィス・サウンドの象徴、メンフィス・ホーンズ。


さて、近年のアンドリュー・ラヴはアルツハイマー病を患っていたそうなので、第一線からは引いていたようです。晩年の録音としては、バディ・ガイの「BRING 'EM IN」(05年)とか、 アル・グリーンの「EVERYTHING'S OK」(05年)とか。あと映画「LIGHTNING IN A BOTTLE」のオールスター・バンドにも参加していましたね。あ、そう言えば中島美嘉の「All Hands Together」(06年)にも参加してましたよね?

様々なフィールドでメンフィスの音色を鳴らし続けたアンドリュー・ラヴさん、安らかに。


*トップの写真はメンフィス・ホーンズ名義のデビュー作「MEMPHIS HORNS」。オーティス・レディングの「I Can't Turn You Loose」、「Sad Song (Fa-Fa-Fa-Fa-Fa)」や、やサム&デイヴのメドレー「You Don't Know Like I Know ~ Soul Man」など往年のサザン・ソウル名曲に加え、メンフィス・ホーンズの2人によるオリジナル曲も含んだ11曲。メンフィス・ホーンズによるあのホーンの音色がたっぷり味わえます。アンドリュー・ラヴは、テナー、アルト、バリトン・サックスを使い分け、さらにフルートまで吹いてます。ソロもたっぷり堪能出来ます。ほぼディキシー・フライヤーズなバックも最高!



本文で挙げた他の作品も一部ご紹介。


OTIS REDDING / OTIS BLUE
まず、サザン・ソウルと言えばコレ。土っぽく男臭いサザン・ソウルの旨味がたっぷり味わえます。



OTIS REDDING / LIVE IN LONDON & PARIS
スタックス/ヴォルト・ツアーの記録。スタジオという狭い箱から飛び出して暴れまくるサザン・ソウル、そんな感じ。爆発するオーティスの歌唱も凄いですが、それに畳み掛けるようなバンドの演奏も素晴らしい。。



AL GREEN / LET'S STAY TOGETHER
ハイ・レコードが生み出したメンフィス・ソウルの大名盤。セクシーなソウルネスの中にもメンフィス・ホーンズの存在感は格別。



PRIMAL SCREAM / GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP
今でもライヴの定番曲となっている「Rocks」だって、メンフィス・ホーンズあってのあの格好良さ!



BUDDY GUY / BRING 'EM IN
メンフィス・ホーンズは数々のブルースマンにも愛されていました。バディ・ガイもその一人でした。このアルバムのホーン隊にもアンドリュー・ラヴが加わっています。(ウェイン・ジャクソンは参加していません。)





ザ・チーフタンズ

2012-04-16 14:12:04 | ワールド・ミュージック
THE CHIEFTAINS / VOICE OF AGES

1962年の結成から、50年間に渡ってアイリッシュ・ミュージックの伝統を守りつつ、その未来を切り開いて来た偉大なバンド、ザ・チーフタンズ。ポール・マッカートニー、ローリング・ストーンズ、ヴァン・モリスン、ルチアーノ・パヴァロッティなど、多くの大物アーティストとの共演歴、そして数度に渡るグラミー受賞などが物語る、まさにアイルランドの至宝。そんな彼らが先日リリースした最新作「VOICE OF AGES」は、T・ボーン・バーネットをプロデューサーに向かえ、豪華ゲストを招いての50周年記念作。しかし豪華ゲストとは言え今回はいわゆる大物ではなく、これからのフォーク/カントリー/アメリカーナといったフィールドを担う新進気鋭のアーティスト達が中心。例えば、キャロライナ・チョコレート・ドロップスとか、ザ・シヴィル・ウォーズとか、パンチ・ブラザーズとか。さらにボン・イヴェールやザ・ディセンバリスツといった新時代のインディー・フォーク・ロック系のバンドまで。この辺りの人選には唸らされるばかりですし、彼らを同じ土俵に上げてしまうという感覚も素晴らしいの一言! しかもこれがザ・チーフタンズのアルバムとして見事に纏まっているから天晴です!

メアリー・ブラックで知られる「Carolina Rua」からスタート。歌うはスウィンギー&ロカビリーな才女イメルダ・メイ。実は彼女、メアリー・ブラックと同じダブリン出身なんですよね。アイリッシュなメロディーとポップな躍動感が何とも愛らしい出来映え。現代の黒人ストリングス・バンド、キャロライナ・チョコレート・ドロップスとの「Pretty Little Girl」は、カントリーの源流にケルト音楽があることを伺わせるセッション。そしてボン・イヴェールことジャスティン・ヴァーノンが静謐な雰囲気を醸す「Down In The Willow Garden」も、アパラチア地方からさらにアイリッシュへと遡るカントリーのルーツが垣間みれるようで興味深い。

ザ・ディセンバリスツが参加したディラン曲「When The Ship Comes In」はその選曲もさることながら、フォーク・ロックに絡み付くアイリッシュなアレンジが秀逸。T・ボーン・バーネットがプロデュースした作品も話題になったアラバマ出身の姉妹デュオ、ザ・シークレット・シスターズが歌う「Peggy Gordon」は2人のハーモニーが素晴らしい!この姉妹には今後注目です。そして注目と言えば次世代のブルーグラス・バンド、パンチ・ブラザーズですよ!これからのブルーグラスを担う彼らと、アイリッシュの歴史を刻んで来たザ・チーフタンズの共演にはワクワクさせられます。あと忘れてならないのがザ・シヴィル・ウォーズ。今年のグラミー賞での溌剌としたパフォーマンスも記憶に新しい男女フォーク・デュオ。彼らの参加も嬉しいところ。


それにしても50周年作に現代の新感覚なフォーク/カントリー・シーンの旗手達を集めるという、ザ・チーフタンズの現在進行形な姿には恐れ入りますね。そしてやはり恐るべきはT・ボーン・バーネット、ということになるんでしょうね。ちなみにジム・ケルトナー、デニス・クロウチ、デヴィッド・ヒダルゴ、ヴァン・ダイク・パークスなんかもちらっと参加しています。


Voice of Ages trailer | The Chieftains




さてさて、そのザ・チーフタンズが来日します。ツアー日程は以下の通り。

11/22(木)Bunkamuraオーチャードホール
11/23(金・祝)焼津文化会館
11/24(土)滋賀県立劇場びわ湖ホール
11/25(日)アルカスSASEBO
11/27(火)北九州芸術劇場
11/30(金)すみだトリフォニーホール
12/1(土)オリンパスホール八王子
12/2(日)兵庫県立芸術文化センター
12/4(火)愛知県芸術劇場コンサートホール
12/7(金)まつもと市民芸術館


東京はBunkamuraオーチャードホール、すみだトリフォニーホールの2回。前者はアイリッシュトラッド中心の単独公演、後者は新日本フィルハーモニー交響楽団との共演だそうです。もう何度も日本に来ているザ・チーフタンズですが、今回は50周年記念ですし、中心人物のパディ・モローニももう70歳代半ばですからね。


ちなみに私は、偉そうなこと書いてる割にはまだ一度もザ・チーフタンズを観たことがありません…。一度は生で観てみたいんですけど、なかなかね~。



インフォメーション→プランクトン
プランクトン先行予約は4月15日から始まってます!



ジョン・オーツ@新宿タワーレコード

2012-04-08 16:51:06 | インストアイベント
インストア・イベント観覧記その6 JOHN OATES@新宿タワーレコード


4月7日、ブルーノート公演のため来日中のジョン・オーツが、なんと新宿タワーレコードでインストア・ライヴを行ないました。あのホール&オーツのジョン・オーツですよ!!

実は私、中学生の頃ホール&オーツが大好きだったんですよね~。ちょうど「Private Eyes」や「Maneater」の頃です。ですが当時は圧倒的にダリル・ホールの方が好きでした。子供心にもあのダリルの歌声っていうのは痺れるものがありましたし、背が高くて格好良かったですからね。で、ジョン・オーツはと言いますと、そのダリルの後ろでちょろちょろギターを弾いてる人(「Private Eyes」のPVの印象が強い…。)というイメージ。すいません…。でもそんなお子様だった私も様々なフィーリングが分かる大人になって、あらためてホール&オーツを聴き返してみると、意外とジョン・オーツのソウルフルな歌声に耳を奪われるんですよ。「She's Gone」、「How Does It Feel To Be Back」、「Back Together Again」、「When Sometimes Is Wrong With My Baby」など、ジョンのねっとりとした黒いソウルネスにやられまくりです。このホール&オーツにおけるジョンの黒いフィーリングって言うのは、あの子供の頃には分かりませんでしたね~。

そんなジョン・オーツが昨年リリースした最新ソロ作「MISSISSIPPI MILE」は、まさにジョン・オーツ流のブルース・アルバムといった趣きで、我々ルーツ好きの間でもかなり話題になったアルバムでした。正直、若い頃のホール&オーツしか知らない私なんかには、ジョン・オーツがこれ程までに土臭いブルース・フィーリングを持った作品を作ったのは意外でしたし、ジョンの歌声そのもののざらついた質感にも驚きました。でもこれは凄く良いですよ! そして今年になってその世界をそのままライヴ盤としたような「THE BLUESVILLE SESSIONS」をリリース。さらにそれらを引っさげてのソロ来日公演が実現と、ノリにノッてるジョン・オーツなのです!


さて、ようやく本題。この日のインストア・イベントです。ほぼ定刻に拍手で迎えられて登場したジョン・オーツ。いたってカジュアルな雰囲気でアコースティック・ギターの弾き語り。サポートにはおそらくバック・バンドのドラマーさんと思われる方が、タンバリンやマラカスだったかな?とにかく手で振る系のパーカッションでリズムとコーラスを添えるだけ。そんな2人だけによるアコースティック・ミニ・ライヴ。

てっきり新作からの曲でブルージーな世界を聴かせてくれるのかと思いきや、いきなりホール&オーツ時代の初期曲「Las Vegas Turnaround」でスタート。超意外! そう来たか!って感じ。そう言えばこの曲もジョンの歌声が印象的な曲でしたね。サラッとした美しいメロディ・ラインに、ジョンならではのソウルが染み入ります。やはりジョンの歌声っていうのは味わい深いですね。そして「How Does It Feel To Be Back」。ホール&オーツ曲の中でもジョン・オーツの歌唱が光る屈指の名曲ですね。ホール&オーツのポップな感じとはまったく違う、アコギのコード感を活かしたフォーキーなアレンジがまた秀逸でした。ラストは大ヒット曲「Maneater」。子供の頃にさんざん聴いたこの曲、なんか感慨深かったです。よりブルージーなアレンジとジョンの黒いフィーリングが格好良く、今の私には断然こっちの方が好み!

たった3曲だったとは言え、全てホール&オーツ時代の曲というサービス振りもさることながら、インストアという明るく狭い空間だったこともあり、妙にアットホームな雰囲気で楽しいライヴでした。ジョンも終始上機嫌のように見えました。しかもこの日はジョンの誕生日だったんですよ。なのでMCでは自分が今日誕生日なことを強調したりしてて、なんか可愛かったです。今夜のブルーノートにはケーキを持って来て!みたいなジョークも言っていたような。あと途中でラグタイム調の短いインスト曲を弾きはじめ、華麗な弦捌きを披露してくれたりもしました。

そしてライヴの後はお楽しみのサイン会。もちろん私もサインを頂きました。そしてテーブルの上には誕生日プレゼントが積み上げられてました。私も何か用意して行けば良かったかな~。



JOHN OATES BAND / THE BLUESVILLE SESSIONS
こちらはサインを頂いた最新ライヴ盤。バンド名義になっているだけのことはあり、スタジオ作に比べてライヴならではのバンド感に溢れています。決して派手ではないですが、アダルトな渋みを伴うタイトなグルーヴ感が心地良い。もちろんブルージー且つソウルフル。エモーショナルに唸るように歌うジョンの歌声にも痺れます。オリジナルの「Mississippi Mile」、コースターズの「Searchin'」、インプレッションズの「It's All Right」、プレスリーの「All Shook Up」、ミシシッピー・シークスで知られる古典「Sittin' On Top Of The World」など。クリス・ケナーのニューオーリンズR&B「Something You Got」が取り上げられているのも嬉しい。さらにインストア・イベントでも演ったホール&オーツの「Maneater」。この曲って元々はジョンのアイデアから出来た曲なんですよね~。