ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

TANK AND THE BANGAS @新宿ブルックリンパーラー

2020-02-01 11:06:42 | ニューオーリンズ
1月30日、新宿ブルックリンパーラーにて、ニューオーリンズ産の新鋭ソウルバンド、タンク&ザ・バンガスを観てまいりました。

先日のグラミー賞でも、最優秀新人賞にノミネートされていた注目のバンド。

入店待ちの列が出来るほど大入りとなった会場。バンドメンバーと共に存在感抜群のシンガー、タリオナ"タンク"ボールが現れると拍手喝采。昨年リリースされ、本格的な世界デビュー作となった最新作「GREEN BALLOONS」から「Hot Air Balloons」でスタート。そして「Smoke.Netflix.Chill」へ続く。オーガニックで、揺れるようなリズムに、トロっとしたエレピとフルートが絡む。いかにも"今"のバンドらしい、フワッとした不思議なグルーヴ。なんとラヴリーなソウル・ミュージック!!

そして特筆すべきはタリオナの歌声ですよ!黒人らしいふくよかな中低音から、アニメのキャラのようなキュートな声まで、七色の歌声を駆使し、独特のフィーリングを醸していく。

この日はカフェにてのミニライブということで、シンガーのタリオナを中心に、ドラマー(パッド)、ベース、エレピ、フルートという、簡易的な編成でしたが、それがかえって親密感を生みだしていく。それは、ソウル、ヒップホップ、ジャズを感じさせつつ、観客を巻き込みながら変幻自在に展開されていく。

彼らは2017年に、NPRのTiny Desk Concertに出演して、そのライブが注目を浴びたのですが、実は私も、それをYouTubeで見たのが彼らを知ったきっかけでした。

そのTiny Desk Concertは、アコースティック的なライブなので、案外、この日の編成はそれに雰囲気が似てるんですよ。特に終盤に演った「Boxes And Squares」はTiny Desk Concertバージョンと言ってもいい感じで、私にとっては、まさにこれぞ、タンクのソウル感!といった雰囲気。それを生で聴けてホント嬉しかった!しかもTiny Desk Concertからさらに進化してましたし!

いやしかし、本当にタリオナ"タンク"ボールという人は魅力的なシンガーですね。時にソウルフルに歌い上げ、時にキュートにラップし、時折効果音のような奇声を混じらせたかと思えば、ゴスペル的な濃密度で攻めてきたり。スマフォを見ながら詩の朗読?をしたりもしてました。

そして一番驚いたのが、ノラ・ジョーンズ「Don't Know Why」のカバーですよ!ノラとタンクは何度か共演している仲ですけど、まさかこの名曲のカバーが聴けるとは!これがまた絶品でした!!うっとりでしたね。

もちろんバンドの演奏も、終始しなやかでスイートなグルーヴに溢れていました。

ミニライブとは言え、およそ40分、たっぷり聴かせてくれました。独特のソウル&ファンク・フィーリング。こういうバンドがニューオーリンズから出てきたっていうのは嬉しいですよね。

さて、タンク&ザ・バンガスは、1月31日と2月1日に、ブルーノート東京にて正式な初来日公演があります。私も最終日にもう一度行ってまいります。フルバンドになって、どれだけパワーアップするのか、楽しみでなりません。

早くも年間ベストライブの予感。

ロバート・パーカー 安らかに

2020-01-23 20:54:39 | ニューオーリンズ




1月19日、ニューオーリンズ出身のR&Bシンガー、ロバート・パーカーが亡くなられました。老衰とのこと。享年89歳。1966年のヒット曲「Barefootin'」が有名ですね。この曲はロバート・パーカーの自作曲で、ウィルソン・ピケットやピート・タウンゼント、ジョニー・ウインターなど、多くのカバーを生んだ名曲。

このヒットの後、アラン・トゥーサンの元で行われた録音もマニアに人気。

元々はサックス奏者としてキャリアを始め、プロフェッサー・ロングヘアー等のバックを務めていました。「Mardi Gras In New Orleans」を含むプロフェッサー・ロングヘアーの1949年の初録音でも彼がアルト・
サックスを吹いています。

2007年、ニューオーリンズ音楽の殿堂入り。


ロバート・パーカーさん、安らかに。


アート・ネヴィル、安らかに

2019-07-23 07:55:51 | ニューオーリンズ
ネヴィル・ブラザーズの長兄アート・ネヴィルが亡くなられました。81歳でした。もう、随分前から、体調が悪いように見えましたし、最近になって音楽活動からの引退も発表していたので、この日が来ることはずうっと覚悟はしていましたが、やはり実際にその訃報を聞くと、その衝撃と悲しさは堪え難いものです。

アート・ネヴィルはミーターズを作った男ですから、まさにニューオーリンズ・ファンクの生みの親です。そしてネヴィル・ブラザーズを率いて、ニューオーリンズ音楽をさらなる高みに導いた偉大なるアーティストでした。

ミーターズにおいても、ネヴィル・ブラザースにおいても、アートのオルガンこそが、つわもの達の繰り広げるそのファンクネスを纏め上げ、さらなる深みへと導いていました。

「All These Things」、「Witchita Lineman」、「Love Is For Me」、「Son's And Daughters」など、彼の歌声も味わい深くて大好きでした。



ファンキー・ミーターズやネヴィル・ブラザーズで、何度も来日してくれたアートでしたが、ここ数年は、ず〜っと体調が悪そうでした。それでも来日を重ねてくれたんですから、感謝の言葉しか有りません。山奥のフジロックにまで来てくれたんですからね。

2014年のファンキー・ミーターズの来日公演、その終演後のサイン会に、途中から参加したアート。とてもとてもゆっくりとサインを書いてくれたのが、印象的でした。

アーティ兄さん、ありがとうございました!!


ロゴの左上がアートのサイン。




数々の名曲、名演、忘れません。

アートネ・ネヴィル様、安らかに。


ドクター・ジョン 安らかに

2019-06-07 23:33:42 | ニューオーリンズ
6月6日、ニューオーリンズ・ミュージックの象徴的存在、ドクター・ジョンが亡くなられました。77歳でした。

最近は、ライヴはもちろん公の場に姿を現すことが無く、体調が心配されていただけに、訃報の覚悟はしていたとは言え、やはりその喪失感は計り知れません。

ドクター・ジョンの「GUMBO」でニューオーリンズ音楽の洗礼を受けたという人は数えきれない程いらっしゃるでしょう。かく言う私もその一人な訳ですから。

「GUMBO」でセカンドラインのリズムに目覚め、「GRIS-GRIS」でヴードゥーの妖しさに洗脳されたのです。


実はこれらの作品、故郷ニューオーリンズに帰れなかったドクター・ジョンが、変わりゆくかの地を悲しく思い、音楽やコンセプトを通じ、一部だけでも残しておきたいという思いで制作された作品だとか。

ドクター・ジョンのその思いは、ニューオーリンズも、その土地の音楽も知らない我々にも、色々なことを教えてくれました。

街や音楽は、時と共に進歩し変わっていくものです。だからこそ驚きに溢れ、新鮮味を感じさせてくれるのでしょう。ですが同時に失われるものも多く、寂しくもあります。

ドクター・ジョンが亡くなられ、また一つ、とても大きな、ニューオーリンズの音楽が失われてしまったように思います。残念でなりません。

でもきっと、彼の長い音楽人生は、色々なところに種を蒔いていることでしょう。


ドクター・ジョンさん、これまで沢山の素晴らしい演奏を、ありがとうございました。

安らかに。

ルイジアナ&テキサス色のクリスマス!!

2018-12-25 00:32:39 | ニューオーリンズ
VA / Blues, Mistletoe, and Santa's Little Helper

メリー・クリスマス!!

今晩はクリスマス・イヴでしたね。


という訳で、私のお気に入りのクリスマスアルバムを。しかも敢えてマイナーなやつです。

ニューオーリンズのレーベルとして知られた BLACK TOP による「Blues, Mistletoe, and Santa's Little Helper」。92年〜95年の録音。ジャケがいかにもって感じですよね。

アール・キング、グラディ・ゲインズ、アンソン・ファンダーバーグ&ザ・ロケッツ、ロッッド・ピアッツァ&ザ・マイティ・フライヤーズ、リック・ホームストローム、リン・オーガスト、ロバート・ウォードなどなど、ブラックトップを彩った個性豊かなアーティスト達が、各々クリスマスにちなんだ曲を演っています。

個人的には大好きなアール・キングによる「Santa Don't Let Me Down」が白眉。バックにはジョージ・ポーター・ジュニア(b)、デヴィッド・トーカノウスキー(p)、ハーマン・アーネスト(ds)達という鉄壁の布陣。アール・キングの歌とギターも冴え渡る。

ザディコのリン・オーガストによる「Christmas By The Bar-B-Que」も泥臭くて良いですし、テキサス系ではアンソン・ファンダーバーグのパキッパキのギターにサム・マイヤーズの渋い歌声が絡む「Sam's Christmas Blues」も良い。グラディ・ゲインズが軽快にブロウする「Grady and Santa Is Coming To Town」のバックではクラレンス・ホリマンがギターを弾いていたり。

いや〜、こういうローカル色、堪りませんね!!


ボビー・パーカーによるファンキーな味わいの「Sandy Claw Stole My Woman」も格別です。


という訳で、皆様も良いクリスマスをお過ごしくださいね!!

LIVE MAGIC! 予習 ジョン・クリアリー Part1

2018-09-03 23:58:13 | ニューオーリンズ
来月10月に開催される『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』、その看板アーティストの一人ジョン・クリアリー。彼は2014年の第1回『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』に出演しているのですが、以下はその折に予習特集として書いた記事を、少しばかり再編集したものです。



JON CLEARY / ALLIGATOR LIPS AND DIRTY RICE
ジョン・クリアリーのデビュー・アルバム「ALLIGATOR LIPS AND DIRTY RICE」。94年の作品。イギリス生まれで17歳の時に渡米したというジョン・クリアリー。1962年生まれですから、32歳ぐらいの作品ですね。デビュー作としては決して若くはないかもしれませんが、それ故に、彼らしいソウル・フィーリングは既に確立されてる感じですね。もちろん、その後にライヴ盤「MO HIPPA」で再演される自作曲「C'mon Second Line」など、ニューオーリンズ・フレイヴァー満載。ベースにはジョージ・ポーター・ジュニアも参加。



TAJI MAHAL / PHANTOM BLUES
ソロ作をリリースしていたとは言え、90年代のジョン・クリアリーは、まだまだ知る人ぞ知る存在だったんだと思います。セッション・プレイヤーとして徐々に名が浸透してくるなかで、飛躍のきっかけは、やはりタジ・マハールの作品だったのでしょうか。写真は96年の「PHANTOM BLUES」。ジョン・クリアリーはリズム・セクションの一員として全面的に参加するばかりでなく、2曲の楽曲提供も行っています。ピアノを中心に、時にウーリッツァー、クラビネット、ギターと、多彩なプレイでタジ独特のルーツ指向なブルースを彩っています。ジェシー・ヒルやファッツ・ドミノのカヴァーも有り。タジはジョンを含むほぼ同じ布陣で次作「SENOR BLUES」も製作しています。



BONNIE RAITT / SILVER LINING
ジョン・クリアリーと言えば、ボニー・レイットのバックを務めていたことも有名ですね。こちらはボニー・レイットの02年作「SILVER LINING」。ジョン・クリアリーはリッキー・ファター(ds)、ジェイムス“ハッチ”ハッチンソン(b)と共にパーソナル・メンバーとしてクレジットされています。しかもジョン・クリアリー作のニューオーリンズ・ファンク曲「Fool's Game」が1曲目を飾り、もう1曲のジョン・クリアリー作「Monkey Business」ではボニー・レイットとデュエットをしていたりと、なかなかの活躍ぶり。ジョン・クリアリーはボニーの次作「SOULS ALIKE」にも参加していますし、ノラ・ジョーンズやベン・ハーパーなど豪華ゲストを招いた06年のライヴDVD作品「BONNIE RAITT & FRIENDS」でも良い仕事していますので、そちらもお薦めです。



JON CLEARY AND THE ABSOLUTE MONSTER GENTLEMEN / JON CLEARY AND THE ABSOLUTE MONSTER GENTLEMEN
WIKIによりますと、ジョン・クリアリー&ザ・アブソリュート・モンスター・ジェントルメンが結成されたのは1992年だそう。つまりジョンが1stソロ作を制作した頃には既にバンドで活動していたことになりますが、そのバンド名義でアルバムがリリースされたのは、02年のこちらが初めてでした。ちなみに95年の時点で山岸潤史さんが「今ニューオーリンズで一番ホットなのは、ジョン・クリアリーのバンド!」と発言していたそうですから、まさに満を持してという感じ。してそのバンド・メンバーは、ジョン・クリアリー(p,vo)、ダーウィン"Big D" パーキンス(g)、コーネル・ウィリアムズ(b)、ジェフリー“ジェリービーン”アレクサンダー(ds)。オリジナル曲を中心に、ミーターズのカヴァーも交えながら、必ずしもニューオーリンズに捕われない、彼らならではのファンクネスを聴かせてくれます。ジョン・クリアリーらしいお洒落なセンスと言いますか、都会的なクールネスはこの頃から際立ってますね。



JOHN SCOFIELD / PIETY STREET
ジャズ/フュージョン界のレジェンド級ギタリストではありますが、MM&Wと共演するなどジャム・バンド・シーンに接近したり、アーロン・ネヴィルやドクター・ジョンを招いてレイ・チャールズのトリビュート作を作ったりと、興味深い製作活動を続けてきたジョン・スコフィールドが、ニューオーリンズ色の強いバンドを結成した09年作「PIETY STREET」。主要メンバーはジョージ・ポーター・ジュニア(b)、リッキー・ファター(ds)、そしてジョン・クリアリー(p,vo)。ゲスト的な扱いでシャノン・パウエルやジョン・ブッテも参加しています。ジョン・ブッテの歌唱が素晴らしいのは自明のことですが、ジョン・クリアリーも鍵盤はもちろん、リード・シンガーとしてもブッテ以上に存在感を発揮してるんです。また、ここにボ二ー・レイット時代の同僚リッキー・ファター(ds)が含まれている辺りにもこのプロジェクトにおけるジョン・クリアリーの役割の重みが感じられますね。ゴスペル曲を多く取り上げているためか、ジョン・クリアリーがオルガンを多く弾いているところにも注目です。ちなみにこの作品がリリースされた09年、ジョン・スコフィールドはジョン・クリアリーを伴い、ジョン・スコフィールド AND THE PIETY STREET BANDとして東京JAZZに出演しました。



SNOOKS EAGLIN / THE WAY IT IS
ここで紹介した以外にも、B.B.キング、マリア・マルダー、エリック・バードン、ケブ・モ、アナ・ポポヴィッチなどなど、数々のアーティストへ客演しているジョン・クリアリーですが、もちろん彼のお膝元ニューオーリンズでも引く手数多な活躍ぶりなのは言わずもがな。中でも個人的に印象的なのは、かの地が生んだ愛すべき個性派ギタリスト、スヌークス・イーグリンの「THE WAY IT IS」です。2000年の録音でジョン・クリアリーは全14曲中7曲に参加。しかも彼はアソシエイト・プロデューサーとしてもクレジットされています。さらにジョンが参加した曲には、ビッグ・D、コーネル・ウィリアムズ、ジェリービーンも参加したりしていて、まるでスヌークス・イーグリンのバックをジョン・クリアリー&ザ・アブソリュート・モンスター・ジェントルメンが付けてるような編成になっていたりと、なかなかそそられます。スヌークスにとってはこれがラスト・アルバムになってしまいましたが、最後に新進気鋭のニューオーリンズ・グループと繰り広げた、心温まるファンキー・ソウル。



パート2に続く。

チャールズ・ネヴィル 安らかに

2018-04-28 18:41:43 | ニューオーリンズ
Charles Neville & Diversity / Charles Neville & Diversity

昨日の朝、何気なくツイッターを開いて、真っ先に目に飛び込んできたのが、チャールズ・ネヴィルの訃報でした。膵臓がんを患っていたそうです。79歳でした。かなり具合が良くないという噂は耳に入っていたので、近々こういう日がくるであろうことは覚悟していたものの、実際にその訃報を目にすると、その喪失感に奈落の底へ突き落とされたような気分でした。もうチャールズのサックスの音色を生で聴くことは出来ませんし、体を揺らしながらパーカッションをカンカン鳴らす姿を見ることも出来なくなりました…。

私が初めてチャールズ・ネヴィルを観たのは、もちろんネヴィル・ブラザーズで、91年に日比谷野音で開催された「ジャンボ・ガンボ・カーニバル」というイベントでした。ネヴィルズの他にはボ・ガンボスとかドクター・ジョンなんかが出演していたと思います。この時のネヴィル・ブラザーズは本当に最高で、圧倒的に素晴らしく、私が生涯観たライヴの中でもベスト・ライヴの一つとして心に刻まれています。91年と言えば、「BROTHERS KEEPER」を出した翌年ですからね。ネヴィルズが最も格好良かった時期ですよ。チャールズ・ネヴィルと言えば、「Yellow Moon」の終盤で、ギターとサックスによる掛け合いがあるんですけど、それがまた格好良いのなんの。チャールズの熱いブロウに野音の場内も大盛り上がりになった時の興奮を、今でもはっきりと覚えています。あれ以来、私にとってネヴィルズのライヴの見せ場と言えば、その最高峰はいつだって「Yellow Moon」のチャールズ・ネヴィルだったんです。

その後、ネヴィル・ブラザーズは来日する度に見に行きました。93年は中野サンプラザ、96年は渋谷ON AIR EAST 、08年は水道橋のJCBホール、そして09年のフジロック。ネヴィル・ブラザーズはいつだって最高でしたし、チャールズの吹くサックスの独特のメロディは常にネヴィル・ブラザーズらしさを彩っていました。あと2012年には、アーロン・ネヴィルのソロ来日公演にもバンドメンバーとして来てくれて、その時のライヴもとても印象的でした。ちなみに上の写真は、その時にチャールズからサインを頂いたCDです。



数年前にネヴィル・ブラザーズが活動休止を発表してからも、いつかまた4人揃って復活してくれるに違いないと思っていましたが…、とても残念でなりません。でもチャールズの残してくれた音楽は無くなりませんからね。

チャールズ・ネヴィルさん、安らかに。


The Neville Brothers - Yellow Moon [live 1989]

「Yellow Moon」リリース当時のライヴ映像。サックス×ギターによる必殺の掛け合いが楽しめます。そしてネヴィル・ブラザーズを紹介するのはイギー・ポップだったり。あと後ろの方でちょろちょろギターを弾いてる色白の方はプロデューサーのダニエル・ラノワでしょうね。ネヴィルズとラノワが一緒に演奏しているという珍しい映像です。それにしてもチャールズ・ネヴィル、格好良いですね〜!!

Preservation Hall Jazz Band @ビルボードライヴ東京

2017-08-13 10:31:53 | ニューオーリンズ
8月11日、ビルボードライヴ東京にてプリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンドのライヴを観てまいりました。

1960年代初頭、古き良きニューオーリンズ・ジャズの伝統を守るべく、プリザヴェーション・ホール専属バンドとして誕生したプリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンド。メンバー交代を繰り返しながらもトラディショナルを演奏し続け、50年に渡ってその指名を果たしてきた老舗バンドです。そんな彼らも近年は、コーチェラやボナルーなどのロック・フェスにも出演し、2014年にはフジロックのため38年ぶりの来日も果たすなど、その活動範囲を大きく広げてきました。アルバム制作でも、2014年には、まさかの全曲オリジナル曲による新作「THAT'S IT!」を、マイ・モーニング・ジャケットのジム・ジェームスのプロデュースによりリリース。そして2017年の最新作「SO IT IS」は、プロデューサーにTV・オン・ザ・レディオのデヴィッド・シーテックを招き、キューバ音楽からの影響を大胆に取り入れた意欲作。こちらは、バンドが2015年にキューバを訪れたことがきっかけに制作されたという、まさに”今”のプリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンドの姿。ニューオーリンズ・ジャズに新たな生命を吹き込むべく、果敢に飛躍を遂げ始めたプリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンド! 私が見たのはこの日の2ndショー。


開演予定時間を少し過ぎた頃、拍手喝采に迎えられステージに現れたメンバー達。ベン・ジャフィ(b)、ロネル・ジョンソン(tb)、クリント・メドゲン(sax)の3人は2014年の来日時から引き続きのメンバー達。そしてカイル・ルーセル(kbd)と、ブランデン・ルイス(tp)は最新作「SO IT IS」から加わった新メンバー。さらにベテラン・ドラマーのシャノン・パウエルは、助っ人的な立場でしょうか? そして本来は長老的存在のチャーリー・ガブリエル(sax)もここに加わる予定でしたが、健康上の理由により来れなくなってしまったそうです。これは流石に残念でしたね…。

ですが、ですが、若手ホーン隊が最高のプレイを聴かせてくれました。1曲目「Over In The Gloryland」は、挨拶代わりにトラディショナルな息吹横溢。テンポを落としたスローな演奏でしたが、愛らしく絡み合う管の音色はこれぞニューオーリンズ! そして歌うはロネル・ジョンソン。時おりゴスペル的な野太いシャウトを交えながら、ふくよかな美声を聴かせてくれました。そして特筆すべきはシャノン・パウエルのドラムス。タメを効かせた、酩酊感のあるビートがえも言えぬ味わいでした。

そしていよいよアップテンポの「Higher Ground」。最新作「SO IT IS」の日本盤にボーナストラックとして収録されている曲。インディアン・ファンク的な掛け声に否が応にも盛り上がる。ここからは”今”のプリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンドの本領発揮です! そして「So It Is」、「Santiago」、「Convergence」、「La Malanga」と、「SO IT IS」からの曲が続く。キューバからの影響をストレートに表しつつも、バンドの醸す雰囲気は流石にニューオーリンズそのもの。それはニューオーリンズの音楽とキューバ音楽の親和性を物語る以上に、音楽地図上におけるニューオーリンズの特異性を肌に感じさせてくれる。

とは言え、ステージはそういった小難しい話を忘れてしまうほどの楽しさに溢れています。何と言っても、丸い体型が印象的なトロンボーン奏者のロネル・ジョンソン。フジロックの時も愛されキャラ的に盛り上げていましたが、今回もとにかく陽気。トロンボーンを客席に向けてブオーン!ブオーン!吹いては満面の笑みを浮かべたり、ステージの端から端へと踊りながら移動したり、コミカルに足をバタバタさせながらソロを吹いたりと、愛嬌たっぷり。もちろん、彼に限らず、サックスのクリント・メドゲン、トランペットのブランデン・ルイスを含むフロントの3人は皆エンターテイナーでしたね。彼らが、立ち位置を変えながら、時に掛け合いしつつ、ソロを回していく様は、古き良きニューオーリンズ・ジャズ以上に、現行ブラス・バンド的な白熱を感じさせてくれました。一方、鍵盤奏者のカイル・ルーセルは終始クールでしたね。ニューオーリンズ・フレイバーなピアノはもちろん、ピッチベンドを用いたファンキーなプレイも印象的でした。彼は若くしてヘッドハンターズやダーティ・ダズンで腕を磨いてきたピアニストで、シャノン・パウエルのジャズバンドでの来日経験もあったりする人。ホーン隊の隙間を縫うように躍動するプレイが光ってましたね。そんなホーンと鍵盤の自由奔放な絡み合いこそ、ニューオーリンズ音楽の楽しさそのものですよ!

そして彼らが自由奔放に出来るのも、要となるリズムがあってこそ。黙々とダブル・ベースを操る、現バンドの頭脳と言われるベン・ジャフィもさることながら、今夜の主役は、シャノン・パウエルでしょう。ハリー・コニック,JR.を始め、数々のアーティストのバックを務めてきた、ニューオーリンズのレジェンド・ドラマーです。彼のタイトでありながら、人間的なおおらかさに溢れたドラミングが、変幻自在なバンド・グルーヴをカチッと締めてましたね〜。その叩き方がまたなんとも魅力的で、私もライヴの半分ぐらいは彼を見ていましたからね。

そのシャノン・パウエルによる観客との「エーメン」のコール&レスポンスから始まったゴスペル「Amen」。ここで一気にニューオーリンズ・トラディショナルな世界へ舞い戻ります。さらに「Down By the Riverside」へ続く黄金のメドレー。ゆったりとしたリズムに乗る、シャノン・パウエルの歌声がまた味わいがあっていいんですよ。終盤になってその歌が教会の説教のような様相を呈してくると、一気にリズムがテンポアップ。ゴスペルの白熱が会場を包み込んでいくと、居ても立っても居られなくなったように、シャノン・パウエルがタンバリンを叩きながらドラムセットから出てきてステージ中央へ踊りでる。もの凄いキレでタンバリンをバシバシ叩くシャノン・パウエルに観客達も大盛り上がり。しかもこのタンバリンのリズムがまた良いんですよ! いやはや、シャノン・パウエルに痺れまくりでしたね!

本編ラストは前作のタイトル曲「That's It!」。現バンドのテーマ・ソングとも言える曲ですね。ゴスペル・メドレーで気をはいたシャノン・パウエルがここでは長尺のドラム・ソロを披露して再度、観客を沸かせてくれました。ベン・ジャフィのベース・ソロも強力でしたね。ベース・ソロ中にメンバー達が「ウナネ〜」みたいな掛け声しているのが、なんともニューオーリンズ的で印象深かったですね。


そしてサプライズはアンコールに。なんと外山喜雄・恵子夫妻がステージへ。プリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンドを見に来るようなお客さんで外山喜雄さんを知らない人はいらっしゃらないのでは?と思いつつ、私の周りにも「あれ?日本人出てきちゃったよ?」みたいな反応している方もいらっしゃって、やっぱり客層はトラッド・ジャズより、現行のニューオーリンズ・グルーヴ好きの方達が多いのかな?なんて思ったり。そんな空気を察してか、外山さん自ら「外山喜雄と申します。日本のサッチモと言われたりしています」と自己紹介して喝采を受けたり。さらに外山さんがニューオーリンズ在住時代にベン・ジャフィのお父さんにお世話になり、プリザヴェーション・ホールに通い勉強したことなどを語る。とりわけ、プリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンド初来日時、ベン・ジャフィはまだ5歳だったという話で盛り上がりました。

そしてお待ちかねの「When The Saints Go Marching In」ですよ。まずはスローなマイナー調でロネル・ジョンソンが歌う。これも何とも味わい深かったですね。そしてアップテンポに華やかに転調すると、我らが外山喜雄さんが、まさしく「日本のサッチモ」な歌声で歌いだす。その本物な歌声に観客達も拍手喝采で応える。バンド・メンバーも嬉しそう。終始クールなカイル・ルーセルも恵子さんと連弾してましたし。外山さんが「ラ・ラ・ラ〜」で観客達とコール&レスポンス。バンドメンバー達も一緒に歌ってアット・ホームな盛り上がりは最高潮に。これぞニューオーリンズですよ。やっぱりニューオーリンズって最高だな!!

演奏が終わって、拍手と歓声の中、ステージを後にするメンバー達。ロネル・ジョンソンは最後までステージに残り、バックに流れるドクタージョンの「アイコ・アイコ」に合わせて、踊ったり、変なブレイク・ダンスしたり、最後の最後まで観客達を楽しませていました。

いや〜、冒険を続けるプリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンドの”今”の姿をたっぷりと、古き良きトラディショナルな息吹も伝えながらのおよそ1時間半弱。ホント、笑顔の絶えない素晴らしいライズでした。ニューオーリンズ万歳!!!



この日のセットリスト↓

Over In The Gloryland
Higher Ground
So It Is
Santiago
Convergence
La Malanga
Amen / Down By the Riverside
That's It!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
When The Saints Go Marching In





ベン・ジャフィ / Ben Jaffe (Bass, Tuba)
クリント・メドゲン / Clint Maedgen (Saxophone)
ロネル・ジョンソン / Ronell Johnson (Trombone)
シャノン・パウエル / Shannon Powell (Drums)
カイル・ルーセル / Kyle Roussel (Piano)
ブランドン・ルイス / Branden Lewis (Trumpet)


ゲスト 外山 喜雄・恵子





シャノン・パウエルがプレイしたドラム・セット。バンドのロゴが格好良い!!



何処かでベン・ジャフィが使うことを楽しみにしていたスーザフォンでしたが、結局、この夜は使われることはありませんでした…。



メンバーの足下に貼られていたセットリスト。全然この通りじゃないし…。



チャーリー・ガブリエルのキャンセル告知。御高齢ですので、健康上の理由というのは心配ですね。早く元気になってもらいたいです。

Go To The Mardi Gras !!

2017-02-27 11:16:14 | ニューオーリンズ
ニューオーリンズではマルディグラ真っ最中ですね。マルディグラとは、フランス語で「太った火曜日」を意味する謝肉祭のことで、今年は2月28日だそうです。世界三大カーニバルの一つに数えられるニューオーリンズでは、そのマルディグラの日に向けて連日パレードが街を行き交っているとか。あの巨大な山車が連なるカーニバルは一度生で観てみたいですけどね〜。という訳で、今回はニューオーリンズにおけるマルディグラの定番ソングを集めてみました。巨大フロート、仮想、仮面、ビース、かの地の賑わいに思いを馳せて。



Professor Longhair - Go To The Mardi Gras

まずはこれ。1959年、ロンに残された長髪教授の大名曲。


The Hawkettes - Mardi Gras Mambo

ネヴィル・ブラザーズの長兄アート・ネヴィルのデビュー曲としても知られるホウケッツの「Mardi Gras Mambo」。55年のリリース以降、後々までマルディグラのスタンダードとして親しまれています。


Iko, Iko - the Dixie Cups

ドクタージョンでも有名な「Iko, Iko」。オリジナルはこのディキシー・カップスのヴァージョン。さらにその原曲はシュガー・ボーイ・クロフォードの「Jack-A-Mo」であり、さらにその原泉はマルディグラ・インディアンのチャントにあるという。マルディグラのスタンダードを超え、ニューオーリンズを代表する曲。


Carnival Time-Al Johnson

こちらもマルディグラのカーニバルを代表する愛らしき名曲。1960年リリース。


Earl King - Street Parade

私の大好きなアール・キンング!! これもマルディグラのパレード・ナンバーとして定番化しているという名曲。ミーターズをバックに72年の録音。


BILL SINIGAI & THE SKYLINERS Second line part I

73年のStop Inc. によるカヴァーもマルディグラ・スタンダードとして有名なこの曲。こちらはオリジナルのビル・シニガルによるヴァージョン。1962年の録音。これぞニューオーリンズ!って感じですよね。なにせ曲名が「セカンドライン」ですから!




*昨日、ニューオーリンズのマルディグラ・パレードの最中、見物客にトラックが突っ込み、28人が負傷するという事故があったそうです。とても心配ですね。飲酒運転だそうですが。最終日まで、また事故がないように、無事に終わりますように。

グラミー賞 ノミネート 『Best Regional Roots Music Album』

2017-02-11 11:06:32 | ニューオーリンズ
ルイジアナ南部の文化に欠かせない、ケイジャンとクレオールって御存知ですか?

カナダ南東部アカディアに住むフランス系住民がフレンチ・インディアン戦争により追放され、ルイジアナ南部に辿り着きました。1750〜60年代のお話。彼らがケイジャンと呼ばれるそう。そしてクレオールとは、植民地時代に大陸へ渡ってきたフランス人、スペイン人達の子孫のこと。とは言え、クレオールやケイジャンの詳しい定義や成り立ちとなると、難しい世界史の話になってしまうので、実は私も漠然とルイジアナに根付いたフランス系住民、ぐらいにしか理解出来ていません。なにはともあれ、彼らクレオールやケイジャン達が、音楽や料理など独特の文化を花開かせたのです。



なんて、ちょっぴり堅苦しく始まりましたが、グラミー特集です。グラミー賞の部門の中で、「ルーツな日記」的に最も気になる部門が『Best Regional Roots Music Album』です。いまいち分らない部門ですが、「Regional」は直訳すると「地域」とか「地方」ということのようなので、つまり地域色の濃い米ルーツ・ミュージックってことでしょうね。ここに、ハワイアンとかネイティヴ・インディアン系に交じって、ルイジアナ土着の音楽も入ってくるんです。つまりケイジャンとか、ザディコとか。という訳で、今回の気になるノミネートは以下の5組。

Barry Jean Ancelet & Sam Broussard / Broken Promised Land
Northern Cree / It's A Cree Thing
Kalani Pe'a / E Walea
Roddie Romero And The Hub City All-Stars / Gulfstream  
Various Artists / I Wanna Sing Right: Rediscovering Lomax In The Evangeline Country

期待通りに、ルイジアナ原産の興味深いアルバムが3点ノミネートされました。


Barry Jean Ancelet & Sam Broussard / Broken Promised Land

まず、Barry Jean Ancelet とSam Broussard による「Broken Promised Land」。ケイジャン文化研究の第一人者という Barry Jean Ancelet と、ケイジャンを代表するグループの一つ、スティーヴ・ライリー&ザ・マムー・プレイボーイズのギタリスト、Sam Broussard 。Barry Jean Ancelet の作詞にSam Broussard が曲を付けたというこの作品。オープニングの「Conte De Faits」からSam Broussard のアコースティック・ギターが素晴らしい!まるで生き物のように6本の弦が縦横無尽に響き渡る。

「Promised Land」や「Trop De Pas」でのスライド・ギターも味わい深い。ルイジアナと言えばサニー・ランドレスが有名ですが、このSam Broussard も、確かなテクニックと型にはまらないユニークさではひけをとりません。何せこのアルバムでは、3曲のみにゲスト・ミュージシャンを加えただけで、他のアコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、ラップ・スチールはもちろん、フィドル、ベース、ハーモニカ、フルート、サックスまでを一人でこなし、さらにパーカッションのプログラムまで。すべて彼のホームスタジオで録音されたそうです。

ヴォーカルは2人で分け合っていますが、その歌心の違いも面白いですし、ルイジアナの風土を伝えてくれるフランス語詩もまた味わい深い。「Cœur Cassé」ではケイジャン・グループのFeufollet のメンバーだったAnna Laura Edmiston が美声を聴かせてくれています。

Sam Broussard のメロディアス且つ想像力豊かなギター・ワークが、しっとりと聴かせるルイジアナの物語。最後は伝説的なザディコ・オリジネイターである、アメディ・アルドワンを歌った「Une Dernière Chanson」で、Barry Jean Ancelet の朗らかながら飾らない歌声が胸に沁みます。





VA / I Wanna Sing Right: Rediscovering Lomax In The Evangeline Country

こちらは1934年に、ジョン・A・ロマックスとアラン・ロマックスの親子がルイジアナで行ったフィールド・レコーディングに関する、著書、ウェブサイト、新録CDによるプロジェクトだそう。もちろんグラミーにノミネートされているのはCDです。ちなみに著書は「Traditional Music in Coastal Louisiana: The 1934 Lomax Recordings」というタイトルで、CDのプロデューサーでもあるJoshua Clegg Caffery が著わしています。ちなみに、はしがきを書いているのはBarry Jean Ancelet だそう。そしてウェブサイトは多分こちら→「John and Alan Lomax in Louisiana, 1934」。いにしえのルイジアナそのものを録音したようなフィールド・レコーディングを大量に試聴出来る素晴らしいサイトです。

さて、肝心のCD。こちらは多彩なケイジャン・アーティストが参加していまして、パート1〜パート4の4種リリースされています。写真はパート3です。4枚組のボックス・セットもあるようですが、なかなか手が出ないので、とりあえず iTunes で、ジャケが美しいパート3のみを買いました。マグノリア・シスターズのAnn Savoy が歌う「Aux Illinois」、元スティーヴ・ライリー&ザ・マムー・プレイボーイズのDavid Greely によるフィドル・ソロ「Wayne Perry Tunes」、ケイジャンの代表ボーソレイユのMichael Doucet がフィドルを弾き歌う「Je M'ai Fait une Maîtresse」、Zachary Richard がアカペラで歌い、最後にRoddie Romero のスライドが遠くで唸る「Tout un Beau Soir」など。プロデュースはJoel Savoy とJoshua Caffery の2人。どのトラックもトラディショナルな香りが濃厚で素晴らしい!

やっぱり他の3枚も買いたくなっちゃいますね。



Roddie Romero And The Hub City All-Stars / Gulfstream

そしてもう1枚。Roddie Romero And The Hub City All-Stars です! 先の2枚がアカデミックな作品だったので、最後は楽しいアルバムで締めましょう。とは言え、正直、このグループがグラミー賞にノミネートされたのには驚きましたよ! だってルイジアナ・ローカルなイメージが強かったですからね。ですが実は、07年度のグラミーでも『Best Zydeco or Cajun Music Album』部門にノミネートされていたんです。実はその部門は07年度に新設された部門でして、その時はケイジャンとザディコの部門が出来た!と喜んだものですが、わずか4年で無くなってしまったんです…。まあ、無くなったと言うより、おそらく、ハワイアンやネイティヴ・アメリカン等の部門と統合されて現在の『Best Regional Roots Music Album』部門になったんでしょうけどね。

まあ、それはさておき、ケイジャン文化の残るラファイエット出身のRoddie Romero And The Hub City All-Stars による最新作「Gulfstream」です。ニューオーリンズのOFFBEAT MAGAZINE による「The 50 Best Albums Of 2016」でもアーロン・ネヴィルに次いで第2位に選ばれていたアルバムですからね。まさに大躍進。ですがそれも頷ける快作です!

タメの効いたグルーヴに南部の風を感じるミドル・テンポのロック・チューン「My Baby Is the Real Thing」に始まり、ヴードゥー風味の妖しげなニューオーリンズ・ファンク「The Creole Nightingale Sings」、スワンプ・ポップなロックン・ロール「Rock 'n' Roll & Soul Radio」、Roddie Romero の弾くアコーディオンがルイジアナのローカル臭を醸す「Donne-Moi, Donc」や「Po' Boy Walk」。またRoddie Romero はアコーディオンとギターの両刀使いなのですが、スワンピーにハネる「Ma Jolie」や豪快なサザン・ロック「Windmill in a Hurricane」で聴けるキレの良いスライドギターが格好良い!!そしてニューオーリンズ流スローの「I Hope」や「I Must Be in a Good Place Now」の味わいも格別。

アコーディオンやエレキギターとの絡みでルイジアナ流のミクスチャー・グルーヴを作り出す鍵盤奏者は、Roddie Romero とならぶもう一人の重要人物Eric Adcock 。彼の鍵盤がまた良いんですよ! また多彩な楽曲群も多くがRoddie Romero とEric Adcoc との共作だそうです。

プロデュースは名匠ジョン・ポーター。ポップでロックでファンキーなルイジアナ・グルーヴ満載の傑作。ちなみに南部の哀愁豊かなタイトル・トラック「Gulfstream」は今回のグラミー賞『Best American Roots Song』にもノミネートされています。



さて、では本命はどれなのか?グラミー賞にはアカデミックな作品が好まれそうな気がするんですよね。ですが敢えてRoddie Romero And The Hub City All-Stars の「Gulfstream」を本命としたいと思います。やっぱり1枚のアルバムとしての完成度はこれが抜き出ているように感じます。そして単純に私が大好きだから!! そして対抗はBarry Jean Ancelet & Sam Broussard の「Broken Promised Land」しておきます。やっぱりね、「I Wanna Sing Right: Rediscovering Lomax In The Evangeline Country」は1/4しか聴いてないのに偉そうに選べないですからね…。


ですけど、この部門、先にもちらっと触れましたが、2011年度に創設された新しい部門なんです。そして創設以来、昨年まで連続してルイジアナ勢が受賞しているんです。ちなみに今回ノミネートされているNorthern Cree はインディアン系、Kalani Pe'a はハワイアンのようですので、そろそろそっち系が受賞しないと色々問題になりそう…。




↓宜しければこちらもぜひ!


グラミー賞 ノミネート 『Best Americana Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Folk Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Roots Gospel Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Traditional R&B Performance』
グラミー賞 ノミネート 『Best R&B Performance』
グラミー賞 ノミネート 『Best Urban Contemporary Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Traditional Pop Vocal Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Rock Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Rock Performance』
グラミー賞 ノミネート 『Best Rock Song』
グラミー賞 ノミネート ビヨンセ!!