ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

ネヴィル・ブラザーズ@JCBホール 2

2008-10-31 12:20:54 | ソウル、ファンク
ネヴィル・ブラザーズの東京公演。前回は28日について書きましたので、今回は29日を。セットリストは以下の通り。

08年10月29日JCBホール
01. Fiyo On The Bayou
02. No Butts No Maybes~They All Asked For You
03. Africa
04. Brother Jake
05. Mojo Hannah
06. Voo Doo
07. Everybody Plays The Fool
08. Besame Mucho (Charles solo)
09. Hey Pocky Way
10. Tipitina
11. R&R Medley
  Johnny B. Goode~Bony Moronie~Dizzy Miss Lizzy~
  Slow Down~Oh Boy~Long Tall Sally
12. ? (Charles solo)
13. Big Chief
14. Tell It Like It Is
15. Yellow Moon
 -encore-
16. Amazing Grace~One Love~People Get Ready

オープニングは前日と同じ「Fiyo On The Bayou」。この日の私の席は8列目のステージ向かって右側の席。アートのさらに斜め後ろといった位置でした。しかし中央だった昨日より、スピーカーに近いせいか音がダイレクトにガツンとくるんです!昨日より断然に体感リズムが強度を増しています。昨日は聴こえづらかったアートのオルガンもブワブワと良く聞こえます。と言ってバランスが悪い訳でもなく、文句無しの出音。まるで空間に絡み付くようにうなりを上げる骨太なグルーヴにゾクゾクしました。そしてこの日は後悔しないようにと私も1曲目から立ち上がっちゃいました!

さて、世界最高のライヴ・バンドと評されるネヴィル・ブラザーズ。前日とはセット・リストをがらっと変えてくるのかな?なんて期待していたのですが、4曲目まで全く一緒。ですがやはり昨日とは印象が違います。座って観ていた昨日と、立って踊りながら観ていた今日、という違いもあるかもしれませんが、とにかくリズムが腰にくる! 「Africa」でのアートのオルガンも凄かったですし。

そして5曲目。変えてきました! 昨日は「Fever」でしたが今日は「Mojo Hannah」。アートのヴォーカル曲。前半はアートが頑張ります。ですがこの曲の複雑に細かいシンコペーションが重なり合うようなノリは私を含めて日本人にはちょっとキツいかな…、なんて思ったり。

そして昨日は終盤に披露された「Voo Doo」がこの位置で登場し、アーロンの「Everybody Plays The Fool」、チャールズの
「Besame Mucho」は昨日と同じ。欲を言えばこの2曲もそれぞれ違う持ち曲に差し替えて欲しかった…。何て言ったら贅沢ですか? もちろん2曲とも素晴らしい演奏でした。アーロンの美声も良く聞こえましたし!

な~んて思っていましたら、何やら耳慣れたイントロが。これはもしや? あの名曲「Hey Pocky Way」! 何を隠そう私がネヴィルズ関連で一番好きな曲です。正直期待はしていたものの、昨日同様にミーターズから「 Fiyo On The Bayou」と「Africa」を演った時点で「Hey Pocky Way」はないか…、と半ば諦めていました。ところがどっこいですよ! こんな嬉しい裏切りも流石は百戦錬磨のライヴ・バンド! しかもまたもアートのヴォーカル曲。この日の前半はアートの存在感が全開でしたね。ノリ的にはミーターズのクール&もっちゃりファンクとも違う、ネヴィルズ2nd「FIYO ON THE BAYOU」収録ヴァージョンのスピード感たっぷりとも違う、ですがネヴィル・ブラザーズ以外の何者でもないインディアン・ファンク! しいて言えば、ミーターズのヴァージョンをネヴィル・ブラザーズが演ったって感じでしょうか? とにかく私は狂喜狂乱でした。サビは大声で歌いましたよ! でもこの時はまだ余裕でした。マジでヤバかったのは次です。

「Hey Pocky Way」が終わると、シリルが何やら観客を煽り始めます。突如エンジンがかかったかのように身振り手振りを交えて煽る煽る。英語なので残念ながら何を言っているかは分かりませんが「ニューオーリーンズ!!」とか「ティピティーナー!!」とか。その度に客席も「ウォー!」と盛り上がる。なんかシリルらしくなってきましたよ! さらにネヴィルズらしくなってきましたよ! そして始まったのはプロフェッサー・ロング・ヘアの「Tipitina」。とにかくニューオーリンズな、パワフルでパーカッシヴで祝祭的なノリが強烈。そう言えばこういう曲が昨日はなかったんですよね。そして何はともあれシリルが熱い! 帰ってきた熱血漢! 客席を煽りながらシャウトするシリルに感動です。やっぱりシリルはこうじゃなくちゃ! そして会場を覆い尽くすようなリズム。何もかもが熱い!これこそ私の大好きなネヴィル・ブラザーズですよ! この時、私はやっとここで本来のネヴィル・ブラザーズに会えたような、そんな思いが爆発しちゃって、もう涙、涙、涙、でした。さらにウィリー・グリーンのドラム・ソロまでありで、感無量でした。まさに世界最高のライヴ・バンドここに有り!

ですが、ここで終わりではありません。ある意味、これが始まりだったのです。さらに「R&R Medley」で畳み掛け、チャールズのソロ・コーナーでは昨日のジャズではなくブルース・セッション(すいません、曲名分かりませんでした。)でまた違った表情を見せます。チャールズのブルージーなサックスに彼が下積み時代にはBBキングなどのバックを務めていたという逸話を思い出したり。後半はメンバーでソロを回していきますが、アートの弾くブルースも結構珍しいのでは。そして福田氏のギター・ソロも絶品。ほとんど後方でギターを弾いてるこの人もここではステージ中央に出てきました。ですが客席には向かわず、ひたすらチャールズに向かって弾きまくる。何かチャールズ限定みたいな。でもチャールズも嬉しそう。昨日のジャズより断然良かったです。

ブルースで良い意味でのクール・ダウンをした後、アートの鍵盤が奏でたのは「Big Chief」のイントロ。またもプロフェッサー・ロング・ヘア曲。まさかの祭りモード第2弾! 歌うはもちろんシリル・ネヴィル。客席を指差しながら歌いまくるシリルが熱い熱い! そして中盤にはシリルのパーカッションとウィリーのドラムスが絡み合う怒濤のセッションが。これですよこれ! 欲を言えば「My Blood」とか「Congo Square」とかも演って欲しかったですけど、それに変わるアフリカンな息吹を伝える強力な打楽器セッション。もう興奮しまくりでした。終盤はシリルと「ハイヤー!」(ファイヤー?)のコール&レスポンスも有りで大盛り上がりに盛り上がり、終了した時には何やら台風一過のような脱力感。と同時に照明が落ち、「Tell It Like It Is」のイントロが…。

この展開ですよ! シリルの激熱な歌とパーカッションの響宴が終わるや否やアーロンがトロットロのバラードを歌う。こんな展開はネヴィルズ以外にあり得ません!! ここでまたも涙。なんかいいようにブラザーズにもてあそばれてる感じ。意味不明ですが許してください。

ラストは昨日同様「Yellow Moon」。この曲が始まった瞬間、あ~終わりか…、みたいな。終盤のチャールズと福田氏のバトルを目に焼き付け、最高のネヴィル・ブラザーズを2日間も観れた幸せを胸にしまい込みます。アンコールの「Amazing Grace」の素晴らしは言わずもがな。 そして「One Love~People Get Ready」の幸福感溢れるメロディーと、シリルのソウルフルな歌声に、この日に観れた熱いシリルのパフォーマンスが甦ったり、これで本当に最後なんだなという思いなど、色々な感情が入り交じり、恥ずかしながらまたも涙、なのでありました。

最後はお馴染みのメンバー紹介。シリルが一人一人の名を高らかに紹介しますが、べーシストのクリス・セヴェリン(でしたよね?)の名が出てこず、苦笑いしながら下を向いてしまい、アーロンに助けてもらう一場面が有ったり。最後はネヴィル兄弟を紹介し、最終的に観客を指差して「ユー・ネヴィール!」みたいな。お約束ですけど感動しちゃうんです。終演後、メンバー達が握手攻めに会う中、一人、バックで流れる音楽に合わせ、粋なダンスを踊りまくっていたシリルは、やっぱり素敵な人です!

あ、素敵と言えば、「Tipitina」だったか「Big Chief」だったか忘れちゃいましたけど、ギロでジョキジョキとひたすらリズムを刻みまくるチャールズの姿も味わい深かったです。


それにしても最高だったネヴィル・ブラザーズの東京2DAYS。私は正直な話、ここに書いたように二日目の方が断然興奮度が高かったのですが、果たして本当にそれで良かったのでしょうか? その辺も含めて次回まとめます。


ネヴィル・ブラザーズ@JCBホール 1

2008-10-30 21:43:40 | ソウル、ファンク
ネヴィル・ブラザーズの東京2DAYS。堪能してきました。まずは28日から。セットリストは以下の通り。

08年10月28日JCBホール
01. Fiyo On The Bayou
02. No Butts No Maybes~They All Asked For You
03. Africa
04. Brother Jake
05. Fever
06. Everybody Plays The Fool
07. Besame Mucho (Charles solo)
08. R&R Medley 1
  Johnny B. Goode~Bony Moronie~Dizzy Miss Lizzy~
  Slow Down~Oh Boy~Long Tall Sally
09. R&R Medley 2
  Rockin' Pneumonia and the Boogie Woogie Flu~
  Something You Got~I Know~Everybody Loves A Lover
10. Brother John~Iko Iko~Jambalaya
11. A Change Is Gonna Come
12. ? (Charles solo)
13. It Ain't No Use
14. Voo Doo
15. Tell It Like It Is
16. Yellow Moon
 -encore-
17. Amazing Grace~One Love~People Get Ready


ほぼ定刻通りにステージに姿を現したメンバー達。オープニングは彼等のテーマ・ソングとも言える「Fiyo On The Bayou」。まだまだ様子を見ながらみたいな雰囲気もありましたが、それでもシンコペーションの効いたガンボなノリはネヴィル・ブラザーズそのもの。そして長兄アートが昔程のハリは無くなったものの、元気に歌ってくれました。

2曲目はシリルが歌うメドレー「No Butts No Maybes~They All Asked For You」。前者はシリルがソロ作「NEW ORLEANS COOKIN'」で取り上げたプロフェッサー・ロング・ヘア曲。後者はミーターズ時代のレパートリー。この選曲は意外でしたね。渋すぎますよ! でも古き良きニューオーリンズな楽しい雰囲気が最高で、シリルもパーカッションの後ろで踊りだしたり。そして「Africa」、「Brother Jake」とファンキーな曲が続き、これも意外だった「Fever」。「NEVILLE-LZATION」収録の曲ですが、見せ場でもある冒頭のアーロンの声が美しく、チャールズのサックス・ソロも格好良かったです。

そして待ってましたのアーロン・ネヴィルが歌います! 12年振りに聴く生ゴールデン・ヴォイスです。曲は「Everybody Plays The Fool」。まるで軽やかに宙を舞うかのようなアーロンのファルセット。もう、聴いてる私の方も天に昇るかのような気持ちに。至福の一時でした。続くはチャールズのソロ・コーナー。何が来るか楽しみにしていたのですが、これもビックリな「Besame Mucho」。ムーディーでした。

さて、ここからがこの日のハイライト。得意のメドレーを、しかも3連発で! ネヴィルズのライヴって、後半にいくつか有るメドレーのうち一つを選んで演るようなイメージが有ったのですが、まさかの3連発でした。特にR&Rメドレーの連続には驚きました。ヒューイ・スミスの「Rockin' Pneumonia and the Boogie Woogie Flu」から始まる方は、クリス・ケナーやバーバラ・ジョージをつないだニューオーリンズ色濃厚なもので、ミーターズ時代でもお馴染みのメドレー。一方、チャック・ベリーからラリー・ウィリアムス、バディ・ホリー、リトル・リチャードなどを繋ぐ方も、オフィシャルでのリリースはないものの、私はネヴィルズ92年のライヴを収めたブート盤で親しんできたメドレーで、おそらくもっと前から演っているものなのでしょうね。このメドレーではアーロンとチャールズがおちゃめに同じステップで踊ったりしていい感じに盛り上げていました。そして最後は「FIYO ON THE BAYOU」収録のメドレーにハンク・ウィリアムスの「Jambalaya」を繋げたもの。これももう名人芸!

お祭り騒ぎの後はしっとりとアーロン・ネヴィル。曲は「A Change Is Gonna Come」。待ってましたのスロー・ナンバー。もう、とにかく聴き入りました。アーロンの声を一言も漏らさず聴き入りました。素晴らしかったです。またここでは日本人ギタリストの福田氏も聴かせました。前半のカッティングには多少ヒヤヒヤさせられたような気もしましたが、タメの効いたブルージーなソロが絶品でした。

続く2度めのチャールズ・コーナーですが、曲目が分かりませんでした、すいません。福田氏やサポートのキーボーディスとのソロも交えたジャズ・セッション。チャールズ・コーナーが2曲もあるとはちょっと意外でしたし、もう少しネヴィルズっぽい曲を演ってくれた方が良かったかも…、みたいな。

そしてまたもミーターズな「It Ain't No Use」、「Voo Doo」と若干へヴィーな曲が続き、ついに、ついに、きました!「Tell It Like It Is」。アーロンの出世曲。美しき“黒いヨーデル”が響き渡りました。もううっとりです。御歳60大後半にして、何て艶やかで、色っぽく、スウィートなのか! いや~、生で聴けて良かったです。

最後は「Yellow Moon」。エンディングでの最大の見せ場であるチャールズのサックスと福田氏のギターの掛け合いで大いに盛り上がって終了。ですが個人的にはこの曲で終わりというのも意外でした。確かに最後の掛け合いは盛り上がりますけど、曲的にちょっと暗いと思うんですよね。でも最後、チャールズと福田氏がハイタッチして終わる光景は見事でした。

そしてアンコールを求める拍手が鳴り響き、その喧噪が冷めやらぬうちにアーロンがマイクを手に持ちます。そしてそれを口元から離したり振るわせたりしながら、まさに天から降ってくるようなファルセットを。曲はもちろん「Amazing Grace」。静まる観客。まるで空気に溶け込むかのような歌声。そしてその歌声は空気を浄化し、我々の心をも浄化してくれるような、そんなスピリチュアルな響き。ここは教会か?いや天国か? 嗚呼、やっぱりアーロン・ネヴィルは素晴らしい!

そして「One Love~People Get Ready」。シリルの歌うこの曲、大好きです。そして昔と変わらないメンバー紹介をして、この日のライヴは終了。最後は観客がステージ前に詰めかけ、メンバーみんなが握手攻めに会っていました。


1時間40分ぐらいでしたでしょうか。新しい曲は一切なし。90年代初頭までの曲とお馴染みのカヴァー曲、プラス若干の意外な選曲で楽しませてくれた名曲オン・パレード。4兄弟それぞれに見せ場があり、それぞれ年齢を重ねたとはいえ、元気な演奏を聴かせてくれた素晴らしい内容でした。ですが期待に100%答えてくれたかと言いいますと、必ずしもそうでなかったのも事実。

まず、私はシリル・ネヴィルが好きで、90年代前半に観たネヴィル・ブラザーズのコンサートのような、魂を振り絞るようにステージを盛り上げる熱いシリルを期待していたのです。ですが少し前に彼がニューオーリンズ・オールスターズを率いて来日した際は、思いのほかクールと言うか、静かと言うか、元気がない、という感じで、現在のシリルのテンションってこんな感じなの? いや、ネヴィルズでは違うはず、といった期待、といより不安に近いものが有ったのですが、この日のシリルも、元気な歌を沢山聴かせてくれたとは言え、私の期待するシリルの姿ではなかったんです。

それと、出音がやや小さいかったのでは?という印象も。なのでリズムがもう一つガツンとこなかった気もするんです。もちろんグラグラと沸き立つようにうねるグルーヴはネヴィル・ブラザーズ意外何者でもないものでしたし、ウィリー・グリーンの叩き出すリズムは強烈でしたけどね。全体的には円熟のノリ、といった印象でした。それとアートのオルガンの音が弱かったり、アーロンの声ももう少し上げて欲しかったとか、ま、微妙すぎて好みの問題かもしれませんけど…。

それとお客さんも全体的に静かめでしたね。横の方のブロックのお客さんは結構立ち上がって踊ってらした方が多かったようですが、中央前方は大人しかったですね。私は前から8列目のど真ん中で観てたのですが、私より前方はほぼ全員座って観てました。って言うか、かくいう私も座ってみてましたけど…。ですがR&Rメドレーで我慢出来ずに立ち上がっちゃいましたけどね。でも前の方の席って、周りが立ってないと一人で立って良いのかしら?みたいに牽制し合っちゃって結局立ち上がれないみたいな雰囲気って有りますよね? そんな感じだったのかも。そしてアンコールで堰を切ったかのように総立ち。最終的には良い雰囲気で盛り上がりました。

こんな28日でした。29日についてはまた次回。

(演奏曲目等、間違っていたらごめんなさい。)



@JCB

2008-10-29 18:17:06 | ソウル、ファンク
はい、今日もネヴィル・ブラザーズです。最終日ですから昨日はとまた違う盛り上がりになるかな?とにかく楽しみです!



帰宅後追記:
凄まじく良かったです! 素晴らしすぎて泣いてしまいました…。しかも3回。参りましたね。

私がネヴィル関連で一番好きな「Hey Pocky Way」も演ってくれましたし、「Tipitina」と「Big Chief」ではパーカッシヴで祝祭的なノリが爆発しました。これぞニューオーリンズですよ!そして「Tipitina」ではウィリー・グリーンのドラムソロ、「Big Chief」ではシリルのパーカッションとウィリーのドラムスが絡み合うといった見せ場が有り、そして何よりこの2曲でのシリルが熱かった! 観客を煽りに煽りシャウトするシリルの姿にジーンと来ちゃいました。さらに「Big Chief」で盛り上げに盛り上げた後、間髪入れずに「Tell It Like It Is」ですよ! 熱きシリルのカーニバル・モードが終わるや否や、照明が落ち、アーロンがトロットロに歌っちゃう訳ですから! こんなのネヴィルズ以外にあり得ません!!!!!

昨日も最高でしたが、今日は昨日以上に私が好きなネヴィルズの魅力を充分に味わいました。やっぱり私はシリルとウィリー・グリーンが好きなのかもしれません。たぶん彼等の見せ場がないとなんか物足りないのでしょう。でも二人の見せ場が有った分、アーロンの出番が減ってしまった感じは有ります。今日しか来れなかった人は、逆にアーロンの見せ場が少なくて物足りない思いをしたかもしれません。結局ネヴィルズの魅力を堪能するには、1日じゃ無理、ってことですかね?

それと、今日は昨日よりスピーカーに近い位置で見たためか、昨日より断然、出音に迫力が有ると言うか、リズムがダイナミックに感じました。アートのオルガンも良く聞こえましたし、JCBホールは真ん中よりハジの方が良いのかも? もちろん、一度体験した後という、微妙な気持ちの変化も有るかもしれませんが…。

詳しいレポートは明日ゆっくり、気合い入れて書きます!



ネヴィルズ帰り

2008-10-29 00:42:00 | ソウル、ファンク
アーロン、何故あなたはそんなにアーロンなの? 「Amazing Grace」、素晴らしすぎました。

と言うわけで、ネヴィル・ブラザーズに行ってきました! 正直「ミタケ・オヤシン・オヤシン」以降のネヴィルズはそんなに聴き込んでないので、最近の曲とか演られても分からないかも?とか思っていたのですが、まるで90年代初頭までの美味しいとこどりみたいなセット・リストに興奮の連続でした。カヴァー曲もお馴染みのものばかりでしたし、中盤に得意のメドレーを連発しましたが、それもよ~く知ってる流れのまま。私の大好きなネヴィル・ブラザーズが帰ってきた感じで、ホント感無量です。もちろんみんな歳をとりましたよ。アートは杖をついて尚歩くのが大変そうでしたし、シリルもやはり以前のような熱血漢なイメージは影を潜めていました。ですが3人の声と、チャールズのサックス、そしてこのバンドが繰り出すリズムはネヴィル・ブラザーズ以外の何者でもなく、円熟していながらもバイユーの香り漂うディープなノリは流石、世界最高のライヴ・バンドでした! そしてやっぱりウィリー・グリーンは凄かった!

詳しいセット・リストなどはまた後日。何せまだ明日もありますからね!

アート・ネヴィル

2008-10-28 17:49:42 | ソウル、ファンク
NEVILLE BROTHERS / BROTHER'S KEEPER

ネヴィル・ブラザーズ来日公演直前特集も最終回。最後は長兄、アート・ネヴィル。伝説のミーターズを率いた男として、讃えても讃えきれないファンク・マスターです。しかしどうしてもミーターズというと、ジガブーのドラム、ジョージのベース、レオのギターばかりが取り沙汰されがちです。ですが、ゴリゴリの三人の演奏を丸みの帯びたニューオーリンズ・ファンクに纏め上げてるのはアートのオルガンであり、後のミーターズの変遷を考えれば、さらにハードなプレイに暴走する若い3人に歯止めをかけ、抑制と隙間が生むクールなファンクを作り上げたのもアートその人が居てこそだと思うのです。

似たようなことはネヴィル・ブラザーズにも言えると思います。アート、アーロン、シリルというネヴィルズの誇る3人のシンガー。この中でアーロンとシリルの人気はもう自明のことと思います。ですがアートが一番好き!という意見は失礼ながら少数派なのではないでしょうか? ま、そう言う私もシリルとアーロンが好きでしたけどね…。

ですが、今回の来日に向けて、アートのホウケッツでのデビュー作「Mardi Gras Mambo」からネヴィルズ関連の音源を次から次へと聴き漁ったところ、思いのほかアートの歌心にグッとくることが多かったのです! そして個性派の弟達の歌唱をしてバンドが散漫な印象にならないのは、実はもっともネヴィルズらしい歌声はアートのものであり、彼の素朴にして円やかな歌声があってこそ、ネヴィルズの声は纏まりを得るのではないかと。やはり兄は偉大なのです。

37年12月生まれのアート・ネヴィル。もう70歳ですね。ホウケッツを率い「Mardi Gras Mambo」でデビューしたのが55年。この曲は地元で大ヒットしたそうです。その後ソロ名義で数々の録音を残しますが、その中に「All These Things」というアラン・トゥーサン作の美しいバラードが有ります。この曲は少し後にアーロン・ネヴィルも歌っているのですが、そのアーロンは自伝本「ネヴィルブラザーズ自伝」の中で、アートのように上手く歌えなかった、というような内容のことを語っています。兄をたてたのかもしれませんが、私もこの曲に関しては断然アートの歌の方が好きです。

そしてミーターズとしてのデビューが69年。ミーターズと言えばセカンドライン・ファンクですが、案外ファンク・ナンバーのなかに巧みに組み込まれたミドル/スロー・ナンバーも絶品で、それらがアルバム全体の流れに深みを与えているのです。「STRUTTIN'」収録の「Witchita Lineman」や「CABBAGE ALLEY」収録の「Birds」に「Lonesome And Unwanted People」、名作「REJUVENATION」収録の「Love Is For Me」など。もちろん歌っているのはアート・ネヴィルで、それぞれアートならではの哀愁深い味わいが格別。

アートの歌唱はアーロンやシリルに比べれば、派手な装飾の無いいたってシンプルな歌い方。しかしシンプルだからこそ伝わる情感って有りますよね。そんなアートの魅力はネヴィル・ブラザーズ結成後も2nd収録の「Sitting In Limbo」あたりに顕著ですね。

そんなアートがさらに深い含蓄とスピリチュアルなクールさを帯びた低音ヴォイスの魅力を開花させたのが90年の大傑作「BROTHER'S KEEPER」(上写真)。冒頭の「Brother Blood」での抑制の利いた低いアートの声を聴くだけで、何度でもこのアルバムに対する期待感が沸き上がりゾクゾクしてきます。そして圧巻は「Son's And Daughters」。説得力の塊のような静かな語りから、終盤に素朴な歌へと変わる展開も秀逸ながら、とにかくアートの声が持つ存在感が凄い! これは名唱です。

もちろんミーターズから続くファンク・ナンバーでのアートの歌も文句無しに素晴らしいです。アーロンのスピード感やシリルの粘りとはまた違う、アートならではのファンクネスがありますよね~。やっぱり何と言っても「Hey Pocky Way」ですかね。来日公演で演ってほしいな~。

70歳という年齢も有り、近年元気がないような印象もなきにしもあらずなアートですが、そんな心配を杞憂に終わらす現役バリバリなステージを見せて欲しいですね! やっぱり何はともあれ長兄アート・ネヴィルあってのネヴィル・ブラザーズですからね!





LEGACY - A HISTORY OF THE NEVILLES
ネヴィルズ結成以前のアートとアーロンの活動を収録した2枚組アンソロジー。アートのデビュー曲「Mardi Gras Mambo」や、アートとアーロンそれぞれの「All These Things」も収録。



THE METERS / CABBEG ALLEY
ミーターズの72年の作品。ファンキー・ナンバーに混じってアートの哀愁の名唱「Birds」と「Lonesome And Unwanted People」を収録。

チャールズ・ネヴィル

2008-10-26 12:25:54 | ジャズ
CHARLES NEVILLE & DIVERSITY / CHARLES NEVILLE & DIVERSITY

アーロン、シリル、と続いたので、今回はチャールズ・ネヴィルです。

ネヴィルズ伝記本「ネヴィルブラザーズ自伝」で予想外に多弁なチャールズ・ネヴィル。とにかく語る語る。しかも話の大半が、窃盗、ドラッグ、女性関係、獄中生活、といった内容。4兄弟中最も一筋縄でいかない男です。

チャールズという人は兄弟の中で最も異色な男でもあります。他の3人の兄弟達は、大まかにいえばR&Bシンガーとしてニューオーリンズで活動を開始しました。ですがチャールズはチャーリー・パーカーなどのジャズに憧れ、サックスを持ち、ロードへ出てメンフィスやニューヨークで腕を磨きました。そしてその間、BBキングやジョニー・テイラーなどのバックも務めたそうです。

ネヴィル・ブラザーズの音楽がニューオーリンズに留まらない多様性を持ちながら、唯一無比のネヴィル・サウンドとして纏まっているのは、兄弟それぞれの志の高さはもちろんですが、チャールズの経験値が物を言ってる部分ってあると思うんですよ。実際、ネヴィルズの実質上の1st作とも位置づけられるワイルド・チョピトゥーラスの同名アルバムは、そのアレンジを当時ミーターズを纏めていたアート・ネヴィルと、ニューヨークから呼び戻されたチャールズが行ったそうですし。

ですがネヴィル・ブラザーズ初期の名作と言われる「FIYO ON THE BAYOU」では、おそらくプロデューサーの意向でチャールズはソロをとらせてもらえませんでした。あのアルバムでサックス・ソロを吹いているのは外部から来たデヴィッド・ファット・ヘッド・ニューマン(レイ・チャールズのバックでも知られる大物サックス奏者)です。この頃のネヴィルズはレコード会社から見れば3人のシンガーとバック・バンドといった扱いだったんですかね~。

ですがチャールズのサックスが奏でる独特の音階はネヴィルズにはなくてはならない物です。それは初期のライヴ盤「NEVILLE-LZATION」を聴いても分かります。1曲目「Fever」の冒頭、チャールズのサックスを聴いただけで『あ~、ネヴィルズだ~!』って感じますから。この曲のサックス・ソロも良いですし、6曲目「Caravan」はいかにもチャールズなエギゾチックなプレイが最高です。実は私、この超有名スタンダードを初めて聴いたのはこのアルバムでして、私にとって「Caravan」はチャールズの曲なのです。

そんなチャールズのサックスがスタジオ作においてネヴィルズの血肉となったのは、やはり「YELLOW MOON」からでしょうか。この頃のネヴィルズが持つ、スワンプの秘境感やヴードゥーな香りといった怪しげで神秘的なディープさはチャールズのサックスなくして成し得なかったと思います。前にこのブログでアーロン・ネヴィルについて書いた際、アーロンは3つのグラミーを受賞していると書きましたが、実は正確に言うと4つ受賞しています。残りの1つは兄弟4人、つまりネヴィル.ブラザーズで受賞しているのです。受賞部門は「ポップ・インストゥルメンタル部門」で、受賞曲は「YELLOW MOON」収録の「Healing Chant」です。

インスト曲ですから、もちろん主役はチャールズのサックスです。おそらく曲もチャールズが中心になって作られたのではないでしょうか。チャールズらしい怪しさ満開の名曲です。「FIYO ON THE BAYOU」での屈辱を考えれば、チャールズ的には“どうだ!”って感じだったでしょうね。

ですがチャールズは、やっぱり本質的にはジャズ・サックス・プレイヤーのようで、ジャズ作となるソロ・アルバムも過去に2枚制作しています。その一枚が、90年のソロ1st作「CHARLES NEVILLE & DIVERSITY」(上写真)。ここではチャールズがアルトを吹き、他にテナー・サックス、トランペット、さらにハープ、ヴァイオリン、チェロが加わりまからユニークです。やはりこの人、一筋縄では行きません。しかもギターは当時のネヴィルズのメンバーであるエリック・ストゥルザース、ドラムスにはかのジョン・ヴィダコヴィッチ!

いわゆるジャズですが、至る所でいかにもチャールズらしい音階が顔を出しニヤケてしまいます。曲目はチャーリー・パーカーやビリー・ホリデイ、ガーシュインなどを取り上げるなか、チャールズのオリジナル曲もありで楽しめます。そして全編チャールズが務めたアレンジもヴァラエティに富んでいて飽きさせません。ハープやヴァイオリンも心地よいですし、エリックのカッティングが冴え渡る「Baluda」がちょっぴりファンキーで格好良いです。

この頃のCHARLES NEVILLE & DIVERSITYの映像は、ビデオ・ソフト化されていた91年のニューオーリンズ・ジャズ祭の模様で少し見ることが出来ました。そこではトランペットとテナー・サックスが白人のお姉さんだったりして、なんかチャールズらしいなと思ったり。さらにコンガやスティール・パンまでフューチャーしていて、やはり一筋縄ではいきません。

さて、今回の来日公演ではどんなプレイを見せてくれることでしょうか? 私は初めて日比谷野音でネヴィル・ブラザーズを観た際の「Yellow Moon」での延々と続いたギターとチャールズのサッックスとの熱いバトルが未だに忘れられません。あれは凄かった! 何はともあれ、ネヴィル・ブラザーズにチャールズ有り!というところをガツンと見せて欲しいです。



グラミー受賞曲「Healing Chant」を収録の「YELLOW MOON」。このアルバムから、インディアンやヴードゥーといった何処か神秘的な雰囲気を内包するスピリチュアルなネヴィル・サウンドが確立され、チャールズの怪しい音階がそこにピタッと嵌った印象も有ります。



チャールズが参加したネイティヴ・インディアンのプロジェクト、ソング・キャッチャーズの94年作。演奏はもちろん、作曲やプロデュースにも携わっているようです。ソプラノ・サックスによるチャールズらしい音階はやはりスピリチュアルなサウンド作りに一役買っています。



VA / NEW ORLEANS LIVE! JAZZ(VHS-VIDEO)
92年に発売された、ニューオーリンズ・ライヴ・シリーズの1本。91年のニューオーリンズ・ジャズ・フェスの模様を中心に編纂されたシリーズで、こちらはそのジャズ編。CHARLES NEVILLE & DIVERSITYのライヴも収録。このシリーズはDVD化を望みます! って言うかNHKさん、また一日かけて放送して欲しいです。

シリル・ネヴィル

2008-10-25 11:53:35 | ソウル、ファンク
CYRIL NEVILLE & THE UPTOWN ALLSTARS / THE FIRE THIS TIME

前回、アーロン・ネヴィルについて書きましたが、実はネヴィル・ブラザーズで一番好きな人は?と聞かれたら、シリル・ネヴィルと答えます。

私が最もネヴィルズに熱を上げていたのは90年代初頭。名作「YELLOW MOON」に続いて「BROTHER'S KEEPER」が出た頃。日比谷野音で初めて観たネヴィル・ブラザーズに完膚なきまでに打ちのめされ、彼等のCDを買いあさりました。そして聴きまくりました。もう、来る日も来る日もネヴィルズを聴いてましたね。特によく聴いたのは「YELLOW MOON」と「BROTHER'S KEEPER」。そしてミニアルバムの「LIVE!!」と「FEARLESS」。特に「FEARLESS」収録の「My Blood」、そして「LIVE!!」収録の「People Say」という2曲のライヴ・ヴァージョンに興奮しまくりでした。

特に「My Blood」はこれぞシリル・ネヴィル!という大名演。この曲のスタジオ・ヴァージョンはアルバム「YELLOW MOON」の1曲目に収録されていますが、そこでのスピリチュアルなグルーヴがひたひたと寄せてくるようなアレンジも格好良いのですが、ここで聴けるライヴ・ヴァージョンはさらにカリブ&アフリカンなリズムを強調した、シリルならではのミクスチャー・ワールドな世界。後半、シリルのパーカッションとウィリー・グリーンのドラムスが弾ける展開も最高にスリリング。私はこれを聴いて「これがアフリカか~!」とゾクゾクしたものです。

「People Say」はもちろんミーターズの曲ですが、当時はまだリプリーズ時代のミーターズをCDでは聴けない時代でした。ですがこのネヴィルズのライヴ・ヴァージョンにJBやスライとは明らかに違うファンクを感じました。それはウィリー・グリーンの強烈なドラミングを中心にバンド全体が絡み合ってのグルーヴな訳ですが、リード・ヴォーカルのシリル・ネヴィルの熱いスピリットがビシバシと来る訳です。後半はジャムっぽい感じでさらにディープになっていくのですが、シリルのスキャットにギター・ソロが絡む展開が私のツボにハマりまくりでした。

またこの2曲で聴けるシリルの粘り気のあるヴォーカルがソウルフルで良いんですよ! 熱き男、シリル・ネヴィルの本領発揮と言ったところです。そう、シリルは熱いのです! 近年はどうか知りませんが、この頃はライヴのMCを殆どシリルが担当し、持ち前のフロント・マン資質で観客をグイグイと引っ張っていました。

そんなシリルはネヴィル兄弟の末弟です。ネヴィルズの伝記本「ネヴィルブラザーズ自伝」によりますと、早くから音楽業界で切磋琢磨していた兄達に憧れ、兄に追いつき、認められたいと常に思っていたようです。若い頃、兄達はシリルを子ども扱いしていましたが、いつしかシリルの才能に一目置くようになります。

70年代半ば、シリルは後期ミーターズに参加することで本格的にシーンに顔を出すことになりますが、そのきっかけは、以外にもローリング・ストーンズだったそうです。それは74年、ミーターズがストーンズのツアーのオープニング・アクトに抜擢された際、5万人のロック・ファンを相手に出来るフロント・マンが必要だということで、シリルが呼ばれたとか。シリルはストーンズを間近に見ることによってさらに色々なことを学んだそうです。ついでに新種のアシッドも学んじゃったみたいですけど…。

それはそうと、シリルのあの熱くエネルギッシュなパフォーマンスはストーンズの影響もあるというわけなのです。ネヴィルズを聴きながらも脳の半分はロック・ファンだった私が、シリルに惚れる訳です。ネヴィルズの伝記本を読んで、なるほど~!と納得したしだいです。

またあの頃のネヴィルズは、ニューオーリンズの伝統に、カリブやアフリカのリズムをブレンドし、ヒップ・ホップやロックを視野に入れながらも怪しげなブードゥーの気配を漂わせ、さらに神に祈りながら凛とした黒人としての誇りを音楽を込めるという、ネヴィル・ブラザーズにしか成し得ない境地に達していました。そしてその先頭に立っていたのがシリル・ネヴィル! 少なくとも私にはそう見えたのです。

「My Blood」はもちろん、シリル流のラップで人種差別を扱った「Sister Rosa」、怪しげなファンク・レゲエ「Wake Up」、U2のボノとの共作「Jah Love」などはこの時代のシリル格好良さを感じる最たるもの。さらに96年作「MITAKUYE OYASIN OYASIN」収録の「Whatever You Do」あたりのノリもシリルらしいですね。またそんなシリルの魅力をさらに押し進めたソロ・アルバムの数々も魅力的です。

熱き男、シリル・ネヴィル。今回の来日公演でも彼らしいパフォーマンスでステージを引っ張ってくれることでしょう。ですが、今年の8月、ニューオーリンズ・オールスターズを率いて来日した際、ちょっと元気が無かったようにも感じたのですが、どうなんでしょうか? またシリルはこの8月の来日以外にも06年に大阪のみでしたが来日公演を行っていますし、もっと遡ればアップタウン・オールスターズを率いての来日もありました。ネヴィルズ以外ではほとんど来日してくれない他の兄弟達に比べれば一番の親日家かも知れませんね。そういえば中島美嘉の「All Hands Together」にもパーカッションで参加してましたっけ。


*上の写真はセカンドライン・ファンクとレゲエを融合させたセカンドライン・レゲエを核に、彼らしいアイデンティティを打ち出した94年の傑作アルバム「CYRIL NEVILLE & THE UPTOWN ALLSTARS」。このアルバムを引っさげての来日公演は、観客の入りこそ寂しいものでしたが、内容は素晴らしかったです!





THE NEVILLE BROTHERS / LIVE!!
こちらは89年のライヴを3曲、90年のライヴを2曲収録したミニ・アルバム。この頃のライヴはまさに天下無敵。



THE NEVILLE BROTHERS / FEARLESS
ボブ・クリアマウンテンによる「Fearlee」のリミックス・ヴァージョンを中心にした5曲入りミニ・アルバム。ライヴ・ヴァージョンは3曲なれどどれも極上。「My Blood」の凄さはもちろん、後半のサックスとギターのバトルがエキサイティングな「Yellow Moon」、アーロンの極上ファルセットからウィリー・グリーンのパワフルかつファンキーなドラムスが冴え渡る「River Of Life」も抜群の出来映え!



CYRIL NEVILLE & TRIBE 13 / THE HEALING DANCE
ソロ最新作。シリルらしいスピリットに溢れる快作。衰えを全く感じさせない歌声も嬉しいです。




アーロン・ネヴィル

2008-10-24 20:16:45 | ソウル、ファンク
AARON NEVILLE / BRING IT ON HOME...THE SOUL CLASSICS

アーロン・ネヴィル。ソウル史上最もマッチョな肉体を持ち、最も天使に近い声で歌う男。

ネヴィル・ブラザーズの来日公演での見所は? ま、色々ありますよ。って言うか全てが見所なのですが、まぁ、何は無くともアーロン・ネヴィルです!

何しろ、兄弟の中で最もソロ・シンガーとして成功を収めたのはこの人だからです。3度のグラミー受賞に輝き、ネヴィルズ結成以前にも「Tell It Like It Is」という全米2位の大ヒットを放っています。そしてネヴィルズでの成功以降、何枚ものソロ・アルバムを発表し、作品数では本体のネヴィル・ブラザーズ以上です。人気の面でも本体を上回っているかもしれません。

とにかくその歌声! 甘く滑らかな地声と天空から降り注ぐようなファルセット。人はそれを“ゴールデン・ヴォイス”と讃えます。そしてその黄金の声を震わすように、そして信じられない高低差と振り幅で次々にコブシをまわす歌唱法は、まるで山々にこだまするヨーデルのようでもあり、それは“山彦唱法”とも“黒いヨーデル”とも評されます。

アーロンの歌唱法のルーツについては古いドゥー・ワップやカントリーのヨーデルなどがあるそうですが、それにしてもユニーク。こんな歌い方する人、他にいませんよね? アーロンの後にも先にもアーロン無し。まさにワン・アンド・オンリーなシンガーなのです。

そんなアーロン・ネヴィルのデビューは1960年。アラン・トゥーサンのプロデュースによる「Over You」でした。今ではアーロンといえばバラードというイメージですが、この曲は以外にもロッキンなダンス・ナンバーでした。実はアーロンの滑らかな歌声はスピード感があり、アップ・テンポの曲も良いんですよ。90年代以降のソロ作でもチャック・ベリーをカヴァーしたりしてますしね。ですがやっぱり注目はスロー・ナンバー! 何しろネヴィルズの初期、外部プロデューサーとの折り合いが上手くいかず、ネヴィルズらしい作品が作れなかった頃、そんな苦しい時代も、「Arianne」や「Drift Away」など、アーロンの歌うスロー・ナンバーだけは高水準を保っていましたから。さらにアルバム「YELLOW MOON」以降はディラン・ナンバーの「With God On Our Side」など、まさに神が付いたかごとくの素晴らしさです。

そしてアーロンの歌唱は、その艶やかな性質はもちろん、リズム感というかキレの良さは黒人以外の何者でもないのですが、案外カントリーにも通じる土っぽいおおらかな魅力もあり、これがまた堪らないのです。特にソロ作ではそんな魅力を開花させた素晴らしい作品を残しています。

またアーロンの場合、その歌声にただただ感動させられるだけではなく、トロっとした安らぎを覚えます。それはアーロンがソロ・シンガーとして秀でているだけではなく、デュエット・シンガーとして名を馳せいることと無関係ではありません。

彼のデュエット・パートナーとして知られるリンダ・ロンシュタットは「アーロンと歌っていると、舞踏会のシンデレラみたいな気分になる」と語っていたそうです。またリンダ以外にもトリーシャ・イヤウッドやレイチェル・ランパなどと名デュエットを残しています。実はアーロンが受賞したグラミーの3曲は、どれもデュエット・ナンバーでして、2曲がリンダ・ロンシュタット、もう1曲がトリーシャ・イヤウッドとのデュエットでした。もちろんどれも極上の味わい。

ちなみに私事で恐縮ですが、今から10数年前、私が結婚したときの披露宴で、キャンドルサービスのバック・ミュージックを自分で選べると言われ、妻の希望も聞かずにアーロンの歌う「Ave Maria」と、リンダとのデュエット「Don't Know Much」の2曲を選びました。なので未だにこの2曲を聴くと「あ、ロウソクに火をつけなきゃ…」みたいな気分になります。ちなみにもし、もう一度結婚式を挙げるようなことがあれば、その時はレイチェル・ランパとの「There Is Still A Dream」を使いたいです! すいません、どうでもいい話ですね…。

さて、ネヴィル・ブラザーズの来日公演。アーロンは何を歌うでしょうか? とにかく名曲が多すぎて困ります。12年振りの来日ですから、定番の「Tell It Like It Is」や「Amazing Grace」は外せないでしょうね。個人的には「Wildflower」や「Drift Away」あたりを所望したいところですがいかがでしょうか?


*上の写真は現在のところアーロン・ネヴィルの最新作「BRING IT ON HOME...THE SOUL CLASSICS」。タイトル通りソウル・クラシックのカヴァー集。こちらではメイヴィス・ステイプルズとチャカ・カーンとデュエットしています。






こちらはリンダ・ロンシュタットがアーロン・ネヴィルをフューチャーした89年作「CRY LIKE A RAINSTORM, HOWL LIKE THE WIND」。グラミー受賞の2曲「Don't Know Much」と「All My Life」を含む4曲をデュエットしています。これがアーロン・ネヴィル黄金時代の始まりです。


リンダがデュエットの成功を受けてプロデュースに携わった、その後のアーロンのソロとしての方向性を決定づけた実質的な1stアルバムと言える作品。大陸的な大きな包容力が素晴らしい作品。「Ave Maria」も収録。


「RHYTHM COUTRY & BLUES」と題された、リズム&ブルースとカントリーの対決、いや共演盤。両界から大物達がこぞって参加し夢の共演を繰り広げています。ここでアーロンはカントリー界の歌姫トリーシャ・イヤウッドと「I FALL TO PIECES」をデュエットし、見事にグラミー受賞。


2000年リリースのアーロンのソロ作「DEVOTION」。数あるアーロンのソロ作の中でも最もソウルフルで、私はこれが一番好きです。レイチェル・ランパとの強力デュエット「There Is Still A Dream」も入ってますし!



ネヴィル・ブラザーズ

2008-10-24 12:16:19 | ソウル、ファンク
ジョン・クリアリーの次はネヴィル・ブラザーズだー! という訳でネヴィル・ブラザーズの来日公演が近づいてきました。12年振りだそうです。体感的にはもっと経ってるような気もしますが、それだけ待たされたということなのですね。

文屋章さんのブログ「boonlog」によりますと、来日メンバーはこんな感じだそうです。

Art Neville (keyboards., vo.)
Charles Neville (sax)
Aaron Neville (vo., tambourine)
Cyril Neville (percussion, vo.)
Willie Green (Drums)
Michael Goods (Keyboards)
Makuni Fukuda (Guitar)
Chris Severin (Bass)

アイヴァンやイアンといった息子達がいないのは残念ですが、とりあえずウィリー・グリーンの名に一安心です。やっぱりこの人がいないとね~。彼のパワフル&ファンキー・ドラムがあってのネヴィル・ブラザーズだと私は思っています! しかしネヴィルズの最新作「WALKIN' IN THE SHADOW OF LIFE」(05年)には彼の名がクレジットされていなかったのです…。ですがちゃんとライヴでは叩いていたんですね! そしてそのウィリーと今回タッグを組むベーシストはクリス・セヴェリン。この人はアラン・トゥーサンのバックでも知られる人ですね。昨年はトゥーサンのバックで来日し素晴らしいプレイを披露していましたから、このリズム隊は期待出来ます! ギタリストのマクニ・フクダはニューオーリンズ在住の日本人ギタリストだそうです。ネヴィル・ブラザーズのメンバーになって凱旋帰国なんて、素晴らしすぎる!

さて、現在予習を兼ねてネヴィルズの伝記本「魂の宿る街ニューオーリンズから - ネヴィル・ブラザーズ自伝 -」(写真)を読んでます。随分前に出た本ですが、部分的にはかじっていたものの通しで読むのは初めてだったりします。これが面白いんですよ。兄弟それぞれの語りが時系列に沿って並べられてるだけなのですが、4人それぞれの紆余曲折な人生が、本人の言葉で語られるだけにリアリティがあって引き込まれます。ニューオーリンズという街と人種差別に始まり、窃盗、ドラッグ、女性、投獄…。あの至福の音楽の陰には一筋縄では行かない歩みがあったようです。もちろん、50年代~60年代のニューオーリンズR&B周辺、ラリー・ウィリアムスとの邂逅、ミーターズの微妙なメンバー関係、ネヴィルズ結成のいきさつなどなど、興味深い話がてんこもりです。そして兄弟、家族の絆こそががこのバンドの創造力とエネルギーの源泉なんだとあらためて感じさせられました。色々悪いこともしてきたようですが、やっぱり素晴らしいバンドなのです!

いや~、ライヴが楽しみです!




@インストア

2008-10-19 16:23:23 | フェス、イベント
今日はインストアライウ゛をはしごしています。まず新宿タワレコでつじあやのを観て、ディスクユニオンに移動してケルト/アイリッシュのデュオを堪能。急いで渋谷へ行ってタワレコで話題の邦ブルースマン、Mr.OH YEAH、最後はお待ちかねのジョン・クリアリー!


帰宅後追記:

無料ライヴを堪能してきました! 実はジョン・クリアリー以外はコンサートはもちろんCDすら聴いたことが無いアーティストだったのですが、いずれもインストアならではのアットホームな雰囲気で楽しいライヴでした。


つじあやの(新宿タワー・レコード)
流石に人気があるようで、イベントスペースから溢れ出るほどの観客が集まっていました。私は後ろのほうで見ていましたが、ウクレレの弾き語りでカヴァー曲を数曲。ほのぼのとしていい感じでした。

田村拓志(fiddle)×柏木幸雄(guitar)(新宿ディスク・ユニオン)
5階ルーツ&トラディショナル館でインストア・イベントって、何処でやるの?と思っていましたら、あの狭い店内でちゃんとやってました。しかもこれがまたイイ雰囲気。なんかルーツ好きの隠れ家ライヴって感じで。それはそうと普段なかなか生で聴く機会の無いケルト/アイリッシュ音楽。やっぱり良いですね。独特の旋律とリズム。そして哀愁溢れるフィドルの音色。そのフィドル奏者の田村拓志さんは、9年間もアイルランドで修行を積んだとか。さすがは本場仕込み。ですが次があるので残念ながら30分程聴いて渋谷へ移動。すいません…。

MR.OH YEARH! AND HOOKER(渋谷タワー・レコード)
MR.OH YEARH!さんのワイルドなんだかとぼけているのかよく分からないキャラが素敵でした。薄紫のスーツで決めて、後方の立ち見客にまで分け入ってギター・ソロを弾いたりしてなかなかエグかったです。テレキャスもパキッと良い音してました。

ジョン・クリアリー(渋谷タワー・レコード)
これはもう言うこと無いでしょう! アンコールを含めて約35分、堪能させていただきました。最高でした! 今回はピアノ(キーボード)弾き語りと言うことで先日のクアトロとはまた違う魅力。よりオーセンティックな味わいが楽しめました。創造力豊かな右手はもちろん、重心の低いノリを演出する左手がまた凄い! そして心地良く枯れた歌がまたソウルフルでイイ! またアンコールで披露されたインストのブギウギでは、観客から自然に手拍子が沸き起こり、その手拍子に戯れるがごとく次から次へと繰り出される踊るようなフレーズの数々には、ピアノの楽しさをまざまざと見せ付けられた思いでした。20日には青山でソロピアノ・ライヴがあるそうですが、きっと素晴らしいライヴになることでしょう。残念ながら私はいけませんが…。


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MR.OH YEARH!さんのMCではじめて知ったのですが、18日に、ウェストロード・ブルース・バンドの結成メンバーで、日本のブルース・シーンの立役者の一人にして、我が国最高のブルース・ギタリストの一人、塩次伸二さんが亡くなられたそうです。

ご冥福をお祈りいたします。