いよいよ目前に迫ってきた『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』。前回取りあげたジョン・クリアリーに続いての予習企画第2弾は、もちろんジェリー・ダグラスです!!
まずは新作2枚と2年前のソロ作のご紹介から。
THE EARLES OF LEICESTER / THE EARLES OF LEICESTER
先日リリースされたばかりのこのアルバムは、ブルーグラス界の伝説フラット&スクラッグスをトリビュートしたジェリー・ダグラスによる新プロジェクト。これは最高ですね!こういうブルーグラスが聴きたかった! まさにそんなアルバム。メンバーは以下の6人。
Jerry Douglas(Dobro, vocals)
Shawn Camp(lead vocals, guitar)
Johnny Warren(fiddle, bass vocal)
Charlie Cushman(banjo, guitar)
Barry Bales(bass, vocals)
Tim O’Brien(mandolin, vocals)
それぞれがカントリー/ブルーグラス界で活躍する達人達。ティム・オブライエンはブルーグラス界が誇るシンガー・ソング・ライター(ケルティック・ミュージックにも造詣が深い)として日本でもお馴染みでしょう。ジョニー・ウォレンはフラット&スクラッグスでフィドルを弾いていたポール・ ウォレンの息子さん。そのジョニー・ウォレンと共にポール・ ウォレンのトリビュート作も作っているチャーリー・クッシュマンは、次世代のアール・スクラッグスと呼べそうなバンジョー弾き。バリー・ベイルズはジェリー・ダグラスと共にアリソン・クラウス &ユニオン・ステーションで活躍するベーシスト。そしてリード・ヴォーカルを務めるショーン・キャンプは、元々オズボーン・ブラザーズやアラン・ジャクソンなどのバックを務めてきたマルチ・プレイヤーで、現在は数々のアーティストから愛されるソング・ライターとしても名高い。これらつわもの達が1曲目「Big Black Train」から広大なブルーグラスの桃源郷へと旅立たせてくれます。このストリングスの豊穣とした絡み合いに、しばし時の経つのを忘れてしまいそう。もちろんジェリー・ダグラスのドブロも最高です!これぞブルーグラス!!
http://www.youtube.com/watch?v=yURi-svV7es
The Earls of Leicester - Big Black Train & Black Eyed Suzy
MIKE AULDRIDGE, JERRY DOUGLAS, ROB IKES / THREE BELLS
もう一つ、ジェリー・ダグラス関連の新作を。こちらは3人のドブロ弾きによる競演「THREE BELLS」。ちなみにドブロとは、リゾネーター・ギター(ギターのボディに共鳴板が張られていて、通常、ボディを寝かしてスライド・バーで弾く)のブランド名なんですけど、あまりにも有名なため、リゾネーター・ギターの総称のようにつかわれてしまうケースも多いようですね。もちろん、この3人は正真正銘のドブロ弾き。
マイク・オウルドリッジ(1938年生まれ)
ジェリー・ダグラス(1956年生まれ)
ロブ・イックス(1967年生まれ)
我らがジェリー・ダグラスこそブルーグラス界、いやそんなジャンルに捕われない、敢えて言うなら“ドブロ界”を代表する革命的プレイヤーですが、セルダムシーンでの活躍でも知られるマイク・オウルドリッジは、革新的なドブロ・プレイヤーとしてもジェリー・ダグラスの先輩格。そしてロブ・イックスはさらにドブロの可能性を広げた若き天才(と言ってももう40代後半ですけどね)。そんなドブロ界の頂点ともいえる3人が繰り広げるセッションの数々。ドブロならではの響きが紡ぐアメリカーナ。それはまるで広大な大陸を駆け巡るようでもあり、静かに語りかけてくるようでもある。彼らの妙技と、その美しくも深淵な音色に、じっくりと耳を傾けたいです。
このアルバムは2012年の5月、9月に録音されたようですが、マイク・オウルドリッジはその年の12月に亡くなられたそうです。こんな素晴らしいアルバムを録音して間もなく…。信じられません…。享年73歳。R.I.P.
http://www.youtube.com/watch?v=K3sLiZBMRcc
Jerry Douglas & Rob Ickes - Silver Threads
Jerry and Rob perform a beautiful duet at the Mike Auldridge tribute show at the Birchmere 2-12-13
JERRY DOUGLAS / TRAVELER
そしてこちらはジェリー・ダグラスのソロ名義としては現在のところ最新作となる2012年作「TRAVELER」。ジェリー・ダグラスと言いますと、あまりにも多くのアーティストの作品に参加しているため、セッション・プレイヤーとしての知名度が高いかと思いますが、実はソロ作もこれで13枚目となるそうです。ドブロだけではなくラップ・スティールなども弾き、リード・ヴォーカルも披露しているこの作品、タイトル通り、ニューオーリンズ~ナッシュビル~ニューヨーク~ロンドンを旅して完成されたアルバムとのことですが、やはり注目はニューオーリンズ録音でしょう。ジョン・クリアリー、デヴィッド・トーカノウスキー、シャノン・パウエルの他、マット・ペロン、ウォッシュボード・チャズというティン・メンのメンバーが参加しているところが個人的にツボ。1曲目「On A Monday」での彼らによるニューオーリンズ・グルーヴ、そしてそれをリードするかのようなジェリー・ダグラスのスライド・ギターがまた粋なんですよ!! ドクター・ジョン、ケブ・モが参加した「High Blood Pressure」も良いですし、エリック・クラプトンが歌う「Something You Got」もなかなか。またロンドンで録音されたマムフォード&サンズとの「The Boxer」も印象的。ですが、やはりサム・ブッシュのマンドリンとジェリーのドブロという強力デュオによる「Duke And Cookie」とか、高速ブルーグラス「King Silkie」あたりに一番興奮させられたり。
http://www.youtube.com/watch?v=2Y5Id7PbUnI
Jerry Douglas - Traveler
以上、極最近のジェリー・ダグラス重要作3枚をご紹介しましたが、一応、数あるジェリーのセッション参加アルバムから、私のお気に入り作品もいくつか選んでみました。以下、どうぞ!
JERRY DOUGLAS & FRIENDS / BEST ROUNDERS
ジェリー・ダグラスの初期ソロ作他、彼が参加したJD・クロウ&ニューサウス、ブーンクリーク、さらにデヴィッド・グリスマンやトニー・ライス、トッド・フィリップスへの客演など、70年代を中心に80年代の前半まで、若きジェリーの活動の、ほんの一端ではありますが、溌剌とした活躍ぶりが覗けるコンピ盤。
http://www.youtube.com/watch?v=TYxfVVoBLP4
Boone Creek 'Dixieland'
EMMYLOU HARRIS / LIVE IN 1978
昨年発掘リリースされた、エミルー・ハリスの78年のライヴ音源。リッキー・スキャッグス(guitar, fiddle)、ジョン・ウェア(ds)、エモリー・ゴーディ・ジュニア(b)、バック・ホワイト(mandolin)達と共にジェリー・ダグラス(dobro)もバンド・メンバーとして大活躍しています。ラジオ音源なので音はそれなりですが、エミルーの歌も、バンドのノリも、ホント最高です!!
BELA FLECK / THE BLUEGRASS SESSIONS: TALES FROM THE ACOUSTIC PLANET, VOL. 2
ベラ・フレックによる99年のブルーグラス・セッション。メンバーはベラ・フレック(banjo)、トニー・ライス(guitar)、サム・ブッシュ(mandolin)、マーク・シャッツ(bass fiddle)、スチュアート・ダンカン(fiddle)、そしてジェリー・ダグラス(dobro)。さらにゲストしてアール・スクラッグスやヴァッサー・クレメンツ、ジョン・ハートフォードなども加わるんですから、その凄さ、想像出来ますよね。
http://www.youtube.com/watch?v=b1YNG4n24IE
Bluegrass Sessions - Strawberry Music Festival 1999 Blue Mountain Hop
ALISON KRAUSS & UNION STATION / LONELY RUNS BOTH WAYS
やはりジェリー・ダグラスと言えばアリソン・クラウス &ユニオン・ステーションですよね。こちらは04年の作品「Lonely Runs Both Ways」。アリソンによる妖精のような透明ヴォイスとジェリーのドブロが相性抜群な麗しのポップ・ブルーグラス。グラミー賞で『Best Country Album』部門を受賞した傑作ですが、ジェリー・ダグラス作曲による「Unionhouse Branch」も『Best Country Instrumental Performance』部門を受賞しました。
http://www.youtube.com/watch?v=aeLeacn6QoI
ALISON KRAUSS & UNION STATION - Unionhouse Branch
JOHN OATES / MISSISSIPPI MILE
近年、ソロ・シンガーとしてルーツ指向な作品をリリースしているジョン・オーツ。こちらはナッシュビルで録音された2011年リリース作。ジェリー・ダグラスは中心メンバーとしてドブロ及びラップ・スティールで貢献。スライドの音色がいい具合にアルバムを彩っています。ライナーノーツの中のジョン・オーツの言葉に曰く「ジェリーがアルバムを聴いて、スライドがありすぎて、めまいがすると言ってたよ(笑)」とのこと。サム・ブッシュ、デニス・クロウチ、ベッカ・ブラムレットなども参加。
SARAH JAROSZ / FOLLOW ME DOWN
最後は私の大好きなサラ・ジャロス。彼女こそ現代ブルーグラスの新たなプリンセス。デビュー作から昨年の最新作まで3枚全てにジェリー・ダグラスがゲスト参加しています。写真は2nd作「FOLLOW ME DOWN」。今作では13曲中6曲で、ドブロの他、ラップ・スティールやワイゼンボーンを弾いています。
http://www.youtube.com/watch?v=byAjS8RCx5s
Sarah Jarosz with Jerry Douglas - Run Away
さて、すでに日本に到着したという情報もある、ジェリー・ダグラス。上記に紹介した最新のプロジェクトとはまた違う、ジェリー・ダグラス・バンドでの来日公演。どんなステージなるのか?どんなプレイを聴かせてくれるのか?そして「TRAVELER」に参加しているジョン・クリアリーとの夢のセッションは??楽しみですね!
~関連過去ブログ~
14.10.21 LIVE MAGIC! 予習:ジョン・クリアリー
14.10.19 Peter Barakan's LIVE MAGIC! 予習