10月22日、赤坂の日本財団ビルにて開催された、『True Colors BEATS ~Uncountable Beats Festival~』に行ってまいりました。こちらは日本財団により、「障害・性・世代・言語・国籍などのあらゆる多様性があふれ、皆が支え合う社会を目指し、ともに力を合わせてつくる芸術祭」という趣旨の元、2019年9月~2020年7月までのおよそ1年間に渡って催される『True Colors Festival – 超ダイバーシティ芸術祭 – 』の一環として開催された音楽イベント。
会場に入ってまず驚いたのは、パーカッション、ドラムス、ギターなどが雑念と並べられた小さなステージを、半円形に取り巻くように並べられた椅子たち(写真上)。この椅子は観客席ではないのです。イベント最後に行われる、サンティアゴ・バスケスが指揮するパフォーマンスで、彼のワークショップ参加者達が楽器を持って座る椅子なのです。どんな演奏になるのか、この主を待つ椅子達を見ているだけでワクワクしてきましたね。
さて、フェスティヴァルは、もう一つのステージで、ディレクターでもあるサンティアゴ・バスケスの挨拶&トークからスタート。彼はブエノスアイレス出身のパーカッショニストであり、作曲家でもあり、指揮者でもある。自ら考案した「ハンドサイン」による即興演奏を世界中で行い、ブエノスアイレス市から文化功労者に認定されているという鬼才です。ですがトークの場に現れた彼は、いたって普通のお兄さん、といった風情。即興音楽や「ハンドサイン」についてなど、音楽や演奏への愛情たっぷりに語ってくれました。質問に対して、真摯に答えてくれる姿が印象的でした。
そしてステージは、岸野雄一による「世界リズム紀行」と題されたDJへバトンタッチ。東洋的で怪しげなものを中心に、途中、ゆらゆら帝国なんかを混ぜたりして、なかなか楽しめました。そんなDJプレイ中に、YAKUSHIMA TREASURE のお二人が私の目の前を横切っていく。さて、ここからが本番です。
YAKUSHIMA TREASURE は、ご存知、オオルタイチと、水曜日のカンパネラのコムアイによるユニット。被り物をした独特の衣装、屋久島でフィールドレコーディングされたと思われる音と、オルタナティヴなビート、そしてコムアイの幻想的で美しい歌声が響く。初めてライヴを見ましたが、島の鼓動と精霊の歌声のような、不思議な世界観にうっとりでした。
そして打って変わってお祭り騒ぎな、Monaural mini plug のステージ。こちらはタイの東北地方が発祥というローカルなダンス・ミュージック「ピン・プラユック」をやる、日本で唯一と言われるバンド。楽器やサウンドシステムも現地で買い込んだとか。力強いビートを中心にした爆音な辺境グルーヴに、一気に会場がダンスフロアと化す。現地では結婚式のパレードなんかでも演奏されるという「ピン・プラユック」、彼らも列をなして観客の中へ分け入っていく。ちなみに「ピン・プラユック」の"ピン"とはギターに似たタイの楽器のことで、写真の右側のメンバーさんが弾いているのがおそらくその"ピン"でしょう。その異国情緒なメロディーが陶酔感を伴って観客達を巻き込んでいく、異世界感濃厚なライヴでした。
さて、いよいよメインのステージへ。最後はこの日の大本命、サンティアゴ・バスケスとゲストアーティスト、そしてワークショップ参加者達による即興演奏のパフォーマンスです。大勢のワークショップ参加者の中には、外国人の方達もいらっしゃるし、障害者の方も、小さなお子さん達もいる。それぞれが、弦楽器、管楽器、打楽器など、思い思いの楽器を持ち寄っている。中には手作りの楽器や、小ぶりな”ほら貝”のような貝を持って来ている方も。
そんな多種彩々な参加者達の最前列には、大友良英、勝井祐二、コムアイ、フアナ・モリーナ、ミロ・モージャ、芳垣安洋、岩崎なおみ、など、ゲストアーティスト達がずらりと並ぶ、異様なオーケストラ。彼らがサンティアゴ・バスケスの指揮の元、ユニークな即興演奏を繰り広げる。サンティアゴ・バスケスの指揮は、よく見ると、確かに"ハンドサイン"になっている。細かく手の形や身振りを変えながら、自由自在に演奏を導いていく。同じサインが何度も出てくるので、見ているこちらもなんとなく仕組みが分かってきたりして面白い。刻々とスピーディーに変化していくサインに、一丸となって付いていく参加者達。もちろんリハーサルは入念にしているでしょう。演奏も全くの即興ではなく、ちゃんと曲になっているので、あらかじめテーマのようなものは決められているのかな?と思います。それにしても、明らかに"ハンドサイン"によって、曲が進行し、思わぬ方向へ進展していく様は、まさに今、この場所で生まれ、生きている音楽、といった感じで、感動的でしたね。
演奏的には、やはり、芳垣安洋(ds)、岩崎なおみ(b)のリズム隊がしっかりと芯を支えていたのが印象的。特にファンキーな反復フレーズでがっついりと低音を支配していた岩崎なおみのプレイは特筆ものでした。あと、いたるところで聴かせた大友良英のフリーキーなギターソロも流石でしたね。そしてアルゼンチン組のミロ・モージャによるヒューマンビートボックスとか、フアナ・モリーナのスキャットも素敵でした。フアナのスキャットとのコール&レスポンスとか、私もやりたかったな~。終盤にはサンティアゴ・バスケスご本人もパーカッションを叩いてくれて、そのリズムのキレが強力でした!!あと意外と、ほら貝が健闘していましたね。
ほとんどがプロ・ミュージシャンではないオーケストラを導く"ハンドサイン"による即興演奏。それはまさしく音楽の冒険であり、それでいて根源的なパワーに溢れていました!そしてとても人間的でした。いやはや、音楽って素晴らしいな!と思わせられるライヴでした!!
追記: ツイッターで、サンティアゴ・バスケスのオーケストラに参加されていた方から教えて頂いたのですが、演奏には、あらかじめテーマなどの用意はなく、完全な即興だったそうです。恐れ入りました。これは、本当に凄いと思います!!
会場に入ってまず驚いたのは、パーカッション、ドラムス、ギターなどが雑念と並べられた小さなステージを、半円形に取り巻くように並べられた椅子たち(写真上)。この椅子は観客席ではないのです。イベント最後に行われる、サンティアゴ・バスケスが指揮するパフォーマンスで、彼のワークショップ参加者達が楽器を持って座る椅子なのです。どんな演奏になるのか、この主を待つ椅子達を見ているだけでワクワクしてきましたね。
さて、フェスティヴァルは、もう一つのステージで、ディレクターでもあるサンティアゴ・バスケスの挨拶&トークからスタート。彼はブエノスアイレス出身のパーカッショニストであり、作曲家でもあり、指揮者でもある。自ら考案した「ハンドサイン」による即興演奏を世界中で行い、ブエノスアイレス市から文化功労者に認定されているという鬼才です。ですがトークの場に現れた彼は、いたって普通のお兄さん、といった風情。即興音楽や「ハンドサイン」についてなど、音楽や演奏への愛情たっぷりに語ってくれました。質問に対して、真摯に答えてくれる姿が印象的でした。
そしてステージは、岸野雄一による「世界リズム紀行」と題されたDJへバトンタッチ。東洋的で怪しげなものを中心に、途中、ゆらゆら帝国なんかを混ぜたりして、なかなか楽しめました。そんなDJプレイ中に、YAKUSHIMA TREASURE のお二人が私の目の前を横切っていく。さて、ここからが本番です。
YAKUSHIMA TREASURE は、ご存知、オオルタイチと、水曜日のカンパネラのコムアイによるユニット。被り物をした独特の衣装、屋久島でフィールドレコーディングされたと思われる音と、オルタナティヴなビート、そしてコムアイの幻想的で美しい歌声が響く。初めてライヴを見ましたが、島の鼓動と精霊の歌声のような、不思議な世界観にうっとりでした。
そして打って変わってお祭り騒ぎな、Monaural mini plug のステージ。こちらはタイの東北地方が発祥というローカルなダンス・ミュージック「ピン・プラユック」をやる、日本で唯一と言われるバンド。楽器やサウンドシステムも現地で買い込んだとか。力強いビートを中心にした爆音な辺境グルーヴに、一気に会場がダンスフロアと化す。現地では結婚式のパレードなんかでも演奏されるという「ピン・プラユック」、彼らも列をなして観客の中へ分け入っていく。ちなみに「ピン・プラユック」の"ピン"とはギターに似たタイの楽器のことで、写真の右側のメンバーさんが弾いているのがおそらくその"ピン"でしょう。その異国情緒なメロディーが陶酔感を伴って観客達を巻き込んでいく、異世界感濃厚なライヴでした。
さて、いよいよメインのステージへ。最後はこの日の大本命、サンティアゴ・バスケスとゲストアーティスト、そしてワークショップ参加者達による即興演奏のパフォーマンスです。大勢のワークショップ参加者の中には、外国人の方達もいらっしゃるし、障害者の方も、小さなお子さん達もいる。それぞれが、弦楽器、管楽器、打楽器など、思い思いの楽器を持ち寄っている。中には手作りの楽器や、小ぶりな”ほら貝”のような貝を持って来ている方も。
そんな多種彩々な参加者達の最前列には、大友良英、勝井祐二、コムアイ、フアナ・モリーナ、ミロ・モージャ、芳垣安洋、岩崎なおみ、など、ゲストアーティスト達がずらりと並ぶ、異様なオーケストラ。彼らがサンティアゴ・バスケスの指揮の元、ユニークな即興演奏を繰り広げる。サンティアゴ・バスケスの指揮は、よく見ると、確かに"ハンドサイン"になっている。細かく手の形や身振りを変えながら、自由自在に演奏を導いていく。同じサインが何度も出てくるので、見ているこちらもなんとなく仕組みが分かってきたりして面白い。刻々とスピーディーに変化していくサインに、一丸となって付いていく参加者達。もちろんリハーサルは入念にしているでしょう。演奏も全くの即興ではなく、ちゃんと曲になっているので、あらかじめテーマのようなものは決められているのかな?と思います。それにしても、明らかに"ハンドサイン"によって、曲が進行し、思わぬ方向へ進展していく様は、まさに今、この場所で生まれ、生きている音楽、といった感じで、感動的でしたね。
演奏的には、やはり、芳垣安洋(ds)、岩崎なおみ(b)のリズム隊がしっかりと芯を支えていたのが印象的。特にファンキーな反復フレーズでがっついりと低音を支配していた岩崎なおみのプレイは特筆ものでした。あと、いたるところで聴かせた大友良英のフリーキーなギターソロも流石でしたね。そしてアルゼンチン組のミロ・モージャによるヒューマンビートボックスとか、フアナ・モリーナのスキャットも素敵でした。フアナのスキャットとのコール&レスポンスとか、私もやりたかったな~。終盤にはサンティアゴ・バスケスご本人もパーカッションを叩いてくれて、そのリズムのキレが強力でした!!あと意外と、ほら貝が健闘していましたね。
ほとんどがプロ・ミュージシャンではないオーケストラを導く"ハンドサイン"による即興演奏。それはまさしく音楽の冒険であり、それでいて根源的なパワーに溢れていました!そしてとても人間的でした。いやはや、音楽って素晴らしいな!と思わせられるライヴでした!!
追記: ツイッターで、サンティアゴ・バスケスのオーケストラに参加されていた方から教えて頂いたのですが、演奏には、あらかじめテーマなどの用意はなく、完全な即興だったそうです。恐れ入りました。これは、本当に凄いと思います!!