先日、新宿のK’sシネマにて「サイドマン:スターを輝かせた男たち」という映画を観てまいりました。
※多少、映画の内容に触れますのでご注意ください。
2011年に相次いで亡くなられてしまった、3人のシカゴ・ブルース・レジェンド達。ピアニストのパイントップ・パーキンス、ドラマーのウィリー “ビッグ・アイズ” スミス、そしてギタリストのヒューバート・サムリン。
彼らは、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフというシカゴの2大スターを支えたサイドマン達でした。
ブルース好きには堪らない映画でしたね。近年の3人の姿、それぞれのキャラが立っていてとても魅力的でした。
私は1998年にパークタワー・ブルース・フェスティヴァルでパイントップ・パーキンスを観て、その演奏がとても印象深かったこともあり、3人のなかでも特にパイントップに視線が行きましたね。特にマクドナルドの袋を貰って嬉しそうにする姿はチャーミングでした。
ハイライトはパイントップとウィリー・スミスがグラミー賞を受賞するシーンでしょうか。はしゃぐウィリー・スミスが何とも子供っぽくて、印象的でした。サイドマンが表舞台に登った瞬間、感慨深かったですね。
もちろん新旧のライヴ映像にも目が釘付けになりました。でもそこはもっと見せて!って感じにもなりましたけど…。
御三方のバイオグラフィーを簡単に。
パイントップ・パーキンス、本名はジョセフ・ウィリアム・パーキンス。1913年7月7日ミシシッピ州ベルゾニの生まれ。マディー・ウォーターズのバンドに入ったのは1969年頃、オーティス・スパンの後釜としてでした。実はマディより年上だったり。そういう意味では遅咲きですが、それ以前にロバート・ナイトホークや、サニーボーイ・ウィリアムスンのバックを付けていたそうですので、既にベテランのピアニストでした。マディ・バンドには70年代を通じて参加し、レジェンダリー・ブルース・バンドとして独立しています。その後はソロ作をコンスタントに発表し、ブルース界の最長老として貫禄の活動を続けていました。ちなみに“パイントップ”という芸名はブギ・ウギ・ピアノの創始者パイントップ・スミスからとったそう。2011年3月21日、97歳で亡くなられました。
1936年1月19日、アーカンソー州ヘレナ生まれのウィリー “ビッグ・アイズ” スミス。ニックネームの “ビッグ・アイズ” は、マディ・ウォーターズが名付け親だとか。文字通り”大きな目”が魅力な愛すべきドラマー。マディ・ウォーターズのバンドには、50年代末頃から単発で顔を出していたようですが、本格的にレギュラー化するのは、パイントップと同時期の69年頃から。ウィリーの繰り出すビートは、独特のスウィング感が特徴的で、パイントップのピアノとの相性も抜群だったようです。ベースのカルヴィン・ジョーンズを含めた鉄壁のトライアングルで、70年代のマディを支えました。2011年9月16日、脳梗塞のため75歳で亡くなられました。
マディー・ウォーターズは50年代からブルースのエレキ・バンド化という革命的なスタイルを生み出し新しいシカゴ・ブルースの潮流を生み出しましたが、パイントップとビッグ・アイズ、お2人が在籍していた70年代のマディー・ウォーターズ・バンドは、勢いのあった全盛期ではなく、その晩年に当たります。とは言え、ギターにサミー・ロウホーン&ピー・ウィー・マディソン、もしくはルーサー “ギター・ジュニア” ジョンソン&ボブ・マーゴリン、ハープにはキャリー・ベル、モジョ・ビュフォード、ジェリー・ポートノイなど新鮮な顔ぶれが、熟成したマディのブルースを彩り、この時代ならではの魅力があります。ジョニー・ウィンターの全面バックアップによるブルースカイからの諸作は、グラミー賞も受賞し、現在でも名盤として語り継がれています。
ちなみに、マディ・ウォーターズの全盛期、50年代のマディーのバンドには、ジミー・ロジャース(g)、オーティス・スパン(p)、フレッド・ビロウ(ds)、ウィリー・ディクソン(b)などのサイドマン達がいらっしゃいました。彼らにもいつか日の目が当たると良いですね。
そしてマディ・ウォーターズと並ぶシカゴ・ブルースの巨頭、ハウリン・ウルフ。その右腕として知られるギタリストがヒューバート・サムリンです。1931年ミシシッピ州はグリーンウッドの生まれ。1950年代半ばにハウリン・ウルフの専属ギタリストとなっていますから、まさにシカゴ・ブルースの全盛期をサイドマンとして活躍したギタリスト。シカゴ・ブルースのサイド・ギタリストと言えば?真っ先に彼の名前が挙がるでしょう。嘘か真か、その腕を買われ一時マディに引き抜かれた、なんていう伝説的なエピソードもあったり。ジミ・ヘンドリックスやレッド・ツェッペリンがカヴァー、引用した有名な「Killing Floor」のオリジナルのリフを弾いているのもヒューバート・サムリンです。ロック界からもリスペクトされる希有なサイドマンでした。後年もソロ作やコラボ作を多数リリースし、存在感を発揮していましたが、2011年12月4日、心不全のため亡くなられました。80歳でした。
マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、リトル・ウォルター、ジョン・リー・フッカー、ライトニン・ホプキンス、エルモア・ジェイムス、などなど。巨人達の足跡こそ、ブルースの根幹ではありますが、一歩踏み込んで、バック・ミュージシャン達、すなわちサイドマンに注目し、そのプレイを味わうのもブルースの醍醐味。そこから新しい発見や、新たな興味が生まれたりしますしね。この映画がきっかけで、ブルースの歴史を彩った沢山の魅力的なサイドマン達に注目が集まると良いですね。
「サイドマン:スターを輝かせた男たち」の上映は、新宿K’sシネマですと2月1日まで。その後は、関東ですと、横浜や宇都宮で見れるようです。
詳細はこちら→ Sidemen サイドマン:スターを輝かせた男たち
PINETOP PERKINS & WILLIE 'BIG EYES' SMITH / JOINED AT THE HIP
パイントップ・パーキンスとウィリー・スミスの共演盤「JOINED AT THE HIP」。2010年の作品。このアルバムがグラミー賞『Best Traditional Blues Album』部門を受賞し、映画でのハイライトとなった訳です。ウィリー・スミスはここではドラムスを息子のケニー・スミスに任せ、本人は歌とハープに専念しています。ベースはハウリン・ウルフのバックなどで知られる大ベテラン、ボブ・ストロジャー! ギターにはこちらもマディ・バンド出身のジョン・プライマーも参加。歴戦の勇者達が鳴らす玄人好みのブルースです。
PINETOP PERKINS & HUBERT SUMLIN / LEGENDS
こちらはパイントップ・パーキンスとヒューバート・サムリンの共演盤「LEGENDS」。98年作。バックはDoug Wainoris(g)、Annie Raines(harp)、Rod Carey(b)、Per Hanson(ds)。「Got My Mojo Working」、「Rock Me Baby」、「Hoochie Coochie Man」、「The Sky Is Crying」などブルース・スタンダードの他、ヒューバート作の曲も収録。2人の演奏はもちろん、いぶし銀の歌声も味わい深いです。
※多少、映画の内容に触れますのでご注意ください。
2011年に相次いで亡くなられてしまった、3人のシカゴ・ブルース・レジェンド達。ピアニストのパイントップ・パーキンス、ドラマーのウィリー “ビッグ・アイズ” スミス、そしてギタリストのヒューバート・サムリン。
彼らは、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフというシカゴの2大スターを支えたサイドマン達でした。
ブルース好きには堪らない映画でしたね。近年の3人の姿、それぞれのキャラが立っていてとても魅力的でした。
私は1998年にパークタワー・ブルース・フェスティヴァルでパイントップ・パーキンスを観て、その演奏がとても印象深かったこともあり、3人のなかでも特にパイントップに視線が行きましたね。特にマクドナルドの袋を貰って嬉しそうにする姿はチャーミングでした。
ハイライトはパイントップとウィリー・スミスがグラミー賞を受賞するシーンでしょうか。はしゃぐウィリー・スミスが何とも子供っぽくて、印象的でした。サイドマンが表舞台に登った瞬間、感慨深かったですね。
もちろん新旧のライヴ映像にも目が釘付けになりました。でもそこはもっと見せて!って感じにもなりましたけど…。
御三方のバイオグラフィーを簡単に。
パイントップ・パーキンス、本名はジョセフ・ウィリアム・パーキンス。1913年7月7日ミシシッピ州ベルゾニの生まれ。マディー・ウォーターズのバンドに入ったのは1969年頃、オーティス・スパンの後釜としてでした。実はマディより年上だったり。そういう意味では遅咲きですが、それ以前にロバート・ナイトホークや、サニーボーイ・ウィリアムスンのバックを付けていたそうですので、既にベテランのピアニストでした。マディ・バンドには70年代を通じて参加し、レジェンダリー・ブルース・バンドとして独立しています。その後はソロ作をコンスタントに発表し、ブルース界の最長老として貫禄の活動を続けていました。ちなみに“パイントップ”という芸名はブギ・ウギ・ピアノの創始者パイントップ・スミスからとったそう。2011年3月21日、97歳で亡くなられました。
1936年1月19日、アーカンソー州ヘレナ生まれのウィリー “ビッグ・アイズ” スミス。ニックネームの “ビッグ・アイズ” は、マディ・ウォーターズが名付け親だとか。文字通り”大きな目”が魅力な愛すべきドラマー。マディ・ウォーターズのバンドには、50年代末頃から単発で顔を出していたようですが、本格的にレギュラー化するのは、パイントップと同時期の69年頃から。ウィリーの繰り出すビートは、独特のスウィング感が特徴的で、パイントップのピアノとの相性も抜群だったようです。ベースのカルヴィン・ジョーンズを含めた鉄壁のトライアングルで、70年代のマディを支えました。2011年9月16日、脳梗塞のため75歳で亡くなられました。
マディー・ウォーターズは50年代からブルースのエレキ・バンド化という革命的なスタイルを生み出し新しいシカゴ・ブルースの潮流を生み出しましたが、パイントップとビッグ・アイズ、お2人が在籍していた70年代のマディー・ウォーターズ・バンドは、勢いのあった全盛期ではなく、その晩年に当たります。とは言え、ギターにサミー・ロウホーン&ピー・ウィー・マディソン、もしくはルーサー “ギター・ジュニア” ジョンソン&ボブ・マーゴリン、ハープにはキャリー・ベル、モジョ・ビュフォード、ジェリー・ポートノイなど新鮮な顔ぶれが、熟成したマディのブルースを彩り、この時代ならではの魅力があります。ジョニー・ウィンターの全面バックアップによるブルースカイからの諸作は、グラミー賞も受賞し、現在でも名盤として語り継がれています。
ちなみに、マディ・ウォーターズの全盛期、50年代のマディーのバンドには、ジミー・ロジャース(g)、オーティス・スパン(p)、フレッド・ビロウ(ds)、ウィリー・ディクソン(b)などのサイドマン達がいらっしゃいました。彼らにもいつか日の目が当たると良いですね。
そしてマディ・ウォーターズと並ぶシカゴ・ブルースの巨頭、ハウリン・ウルフ。その右腕として知られるギタリストがヒューバート・サムリンです。1931年ミシシッピ州はグリーンウッドの生まれ。1950年代半ばにハウリン・ウルフの専属ギタリストとなっていますから、まさにシカゴ・ブルースの全盛期をサイドマンとして活躍したギタリスト。シカゴ・ブルースのサイド・ギタリストと言えば?真っ先に彼の名前が挙がるでしょう。嘘か真か、その腕を買われ一時マディに引き抜かれた、なんていう伝説的なエピソードもあったり。ジミ・ヘンドリックスやレッド・ツェッペリンがカヴァー、引用した有名な「Killing Floor」のオリジナルのリフを弾いているのもヒューバート・サムリンです。ロック界からもリスペクトされる希有なサイドマンでした。後年もソロ作やコラボ作を多数リリースし、存在感を発揮していましたが、2011年12月4日、心不全のため亡くなられました。80歳でした。
マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、リトル・ウォルター、ジョン・リー・フッカー、ライトニン・ホプキンス、エルモア・ジェイムス、などなど。巨人達の足跡こそ、ブルースの根幹ではありますが、一歩踏み込んで、バック・ミュージシャン達、すなわちサイドマンに注目し、そのプレイを味わうのもブルースの醍醐味。そこから新しい発見や、新たな興味が生まれたりしますしね。この映画がきっかけで、ブルースの歴史を彩った沢山の魅力的なサイドマン達に注目が集まると良いですね。
「サイドマン:スターを輝かせた男たち」の上映は、新宿K’sシネマですと2月1日まで。その後は、関東ですと、横浜や宇都宮で見れるようです。
詳細はこちら→ Sidemen サイドマン:スターを輝かせた男たち
PINETOP PERKINS & WILLIE 'BIG EYES' SMITH / JOINED AT THE HIP
パイントップ・パーキンスとウィリー・スミスの共演盤「JOINED AT THE HIP」。2010年の作品。このアルバムがグラミー賞『Best Traditional Blues Album』部門を受賞し、映画でのハイライトとなった訳です。ウィリー・スミスはここではドラムスを息子のケニー・スミスに任せ、本人は歌とハープに専念しています。ベースはハウリン・ウルフのバックなどで知られる大ベテラン、ボブ・ストロジャー! ギターにはこちらもマディ・バンド出身のジョン・プライマーも参加。歴戦の勇者達が鳴らす玄人好みのブルースです。
PINETOP PERKINS & HUBERT SUMLIN / LEGENDS
こちらはパイントップ・パーキンスとヒューバート・サムリンの共演盤「LEGENDS」。98年作。バックはDoug Wainoris(g)、Annie Raines(harp)、Rod Carey(b)、Per Hanson(ds)。「Got My Mojo Working」、「Rock Me Baby」、「Hoochie Coochie Man」、「The Sky Is Crying」などブルース・スタンダードの他、ヒューバート作の曲も収録。2人の演奏はもちろん、いぶし銀の歌声も味わい深いです。