ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

DAN presents「35の夜 in白金台」

2011-05-29 14:43:24 | フェス、イベント

5月28日、アコーディオン奏者、DANさんの誕生日パーティ『DAN presents「35の夜 in白金台」』に行ってまいりました! 場所は白金にある西山電気ビル1Fのロビーということで、いったいどんな場所だろうと思いきや、流石は白金、なんかアートっぽい吹き抜けになったオシャレなスペースでした。この夜の出演者は、Dried Bonito、MOUNT SUGAR、友情山脈、DAN、の4組。私のお目当てはもちろんMOUNT SUGARでした。

1番手に登場のDried Bonitoのライヴを観るのはこれで2度目ですが、残念ながら最後の1曲しか聴けませんでした…。ですが相変わらずヴォーカルのヤスヨさんは良い声してらっしゃいました。

そしてMOUNT SUGARです。広い吹き抜けのスペースのせいか、音の反響が大きく、ナチュラル・エコーな感じで、いつもとは違う音響で楽しむことが出来ました。前半はアリサさんと森さんの二人によるセット、後半はDANさんのアコーディオンを加えてのセッション。私の大好きな「農家の嫁」も良かったですが、この日の「パレット」は素晴らしかった!後半、どんどんエモーショナルになっていくアリサさんの歌声には聴き惚れました。そして「野生」では二人によるグルーヴ感にぐいぐい引き込まれる。森さんのギターもやたら響くせいか、そのストロークはいつもよりアグレッシヴに感じて、なんか良かったですね~。そして震災後にハピネスレコードのチャリティー配信に参加した新曲「今日思う事の唄(2011年3月19日)」。これも滲みましたね~。DANさんのアコーディオンも良い味わいでした。最後は「黄昏」で締め。この曲も良い曲ですね~。やはりアリサさんの歌声は特別!スーっと心に染み込んできて、そして独特のスウィング感に癒される感じ。そしてその歌声に応える森さんのオーガニックな暖かいギター。二人ならではの空気感。良いですね~。

次は友情山脈。失礼ながらまったく知らない方達でしたが、実は彼等がこの日一番盛り上がったかも。ヴォーカル&アコギとドラムスの二人によるフォーク・パンク的な感じ。熱血なパフォーマンスとユーモアのある歌詞、そして最後はほろりとさせられるみたいな。会場中も彼等の勢いに笑わされつつも、なんか心に響いてくる感じで、とにかく妙に良かったです。

そして最後はもちろんDANさんが登場。私は過去にMOUNT SUGARのバックでアコーディオンを弾くDANさんなら観たことがあるのですが、DANさんご自身のライヴを観るのは初めて。DANさんがアコーディオンを弾きながら歌い、バックはパーカッションとウッドベース。アコーディオンの音色とロマンチックなメロディーが異国情緒を醸して凄く良かったです。DANさんの歌声もちょっぴりスモーキーでなかなかの雰囲気。リズムも粋な感じで格好良かったです。特に初めてスカを取り入れたという曲が印象的でした。曲間の軽妙なMCでも楽しませてくれました。




VA / ONE HEART JAPAN 2011 Vol. 1
マウントシュガーが「今日思う事の唄(2011年3月19日)」で参加したハピネスレコードの「ONE HEART JAPAN 2011 Vol. 1」。東日本大震災における被災者支援のチャリティーに賛同した15組のアーティストによる配信限定のコンピレーション。マウントシュガーの「今日思う事の唄(2011年3月19日)」にはDANさんもアコーディオンで参加。人肌の優しさと希望が感じられる曲。手作りっぽい暖かさを感じる仕上がりも秀逸。ちなみにこのシリーズはVol. 4までリリースされているそうで、Vol. 3にはDRIED BONITOも参加しているそうです。→One Heart Japan.

フジ予習:バディ・ガイ

2011-05-28 12:59:39 | フジロック
BUDDY / BRING EM IN

さて、今年もやりますよ~!「ルーツな日記」的フジロック予習特集。栄えある第1回はこの人、バディ・ガイ!!!

フジロックの長い歴史において、過去にも海外のブルースマンは数組出演してます。例えばジョン・メイオールとか、リトル・ジョー・ワシントンとか、ボブ・ログ三世とか、シーシック・スティーヴとか。ですが、自ら米ブルース・シーンのメイン・ストリームを築いてきたレジェンドとなると、このバディ・ガイが初出演となります。

1936年、ルイジアナ生まれ。58年にシカゴへ移住し、コブラ・レコードと契約(正確にはコブラの傍系アーティスティック)。同僚のオーティス・ラッシュ、マジック・サムと共に、新しいシカゴ・ブルースの旗手となります。それまでのシカゴ・ブルースはマディ・ウォーターズを中心にしたダウン・ホームなスタイルでしたが、バディ達はさらにBBキングなどのアーバンなスタイルを取り入れ、スクイーズを中心にした情熱的なブルースを作り出します。そのサウンドはコブラがシカゴのウエスト・サイドにあったことからウエスト・サイド・サウンドと呼ばれたりしますが、現在のシカゴ・ブルースと言えば、彼等のサウンドを指すと言っても過言ではないと私は思っています。

その後バディはチェス~ヴァンガードと渡り歩き、シカゴ・ブルースの最前線で活躍します。歪んだ音色でスクイーズしまくるギター、そしてヒステリックな程エモーショナルにシャウトするヴォーカルがバディの真骨頂。チェス時代の名演を集めた「I WAS WALKING THROUGH THE WOODS」や、ヴァンガード時代のライヴ盤「THIS IS BUDDY GUY」などはブルース史に残る名盤ですね。さらにシカゴを代表するハーピストの一人であるジュニア・ウェルズとのコンビでの活躍も知られます。初来日は75年の「第2回ブルース・フェスティバル」。ウェルズと共にエネルッギッシュなモダン・ブルースを披露し、極東の島国に衝撃を与えたとか。

80年代には、多くのブルースマンがそうだったように、一時不遇の時代を迎えますが、91年、シルヴァートーンからエリック・クラプトン、ジェフ・ベックなどロック系の大物ゲストを迎えた「DAMN RIGHT, I'VE GOT THE BLUES」を発表して完全復活。ここからはロック・リスナーをも視野に入れた意欲的な作品を次々に発表し、いくつものグラミーを受賞。まるで歳を重ねるごとに元気になっていくような絶倫振りは、もうほとんど魔王のレベル。最新作「LIVING PROOF」ではブルース&ソウル・レコード誌に「バディはブルースを殺す気か?」とまで言わせた暴君ぶりを発揮。止まるところを知らぬブルース・レジェンド、それがバディ・ガイ。

で、バディ・ガイの魅力と言えばやはりライヴな訳ですよ。私が初めてバディを観たのは90年の「ジャパン・ブルース・カーニバル」。実はこれが私が観た初めてのブルースであり、この時のバディに衝撃を受け、黒人ブルースの世界にのめり込むようになったのでした。その頃の私と言えば、黒人音楽をほとんど知らないロック・ファンでした。ですが初期ストーンズやポール・バターフィールド、フリードウッド・マックなどを通じ、そのルーツであるブルースに興味を持ち始めた頃。実はこの時のブルース・カーニバルも、バディではなくジョン・メイオールを目当てに観に行ったのでした。しかし完全にバディにやられました。

まず、ブルースのコンサートという雰囲気にカルチャー・ショックを受けましたね。当時のブルース・カーニバルも現在同様に日比谷野音で行なわれていましたが、多分、お酒の持ち込みが自由だったと思うんです。もう客席の至る所で、怪し気な液体の入った瓶をみんなでラッパ飲みしているんです。そして思い思いに叫び、踊っている。踊っていると言うよりベロンベロンに揺れてる感じ。これがブルースか!と思いましたよ。そしてバディが登場した時の異様な程の盛り上がり。バディが一音ギターを鳴らしただけで「ギャー!!」だの「ギョエー!!」だの歓声が飛ぶ。そしてバディが一言叫ぶたびに「ウギャー!!」と応える。それまで私が行っていたロックやパンクのライヴとは明らかに違う濃密さに多少の怖さすら覚えました。

そして思い思いに酔っぱらう観客達を一つの大波のようにコントロールしていくバディがまたとんでもない凄さ。これぞブルース!なフレーズを連発し、その度に観客の心を深くえぐり取っていく。ある時はギターのボリュームを絞りに絞って小さな音量に感情を込める。それまで各々騒いでいた観客達も水を打ったようにその音に耳を傾ける。突如、雷に撃たれたように爆音へと転じ、「ドワー!!」っと歓声を上げる観客達と共に一気に高揚感の頂点に上り詰めるカタルシス。そして何かに憑かれたように弾きまくるバディ・ガイ。もう堪らないものがありましたね。ロック・ファンだった私にとって、その溢れんばかりのフレーズを恍惚的に弾く姿はジミ・ヘンドリックスの姿と重なったり。まるでブルース界のジミヘンだ!と興奮したものでした。(実際はジミがバディから強い影響を受けていたんですけどね。)

その後、バディ・ガイは幾度かのブルース・カーニバルを始め、単独はもちろんウドー・フェスにも登場するなど何度も来日しています。私はと言うと、90年代は来日するたびに足を運んでいたものの、ここ数年は何故かバディのライヴから遠ざかっていました。しかし最近のスタジオ作の充実振りからは、その押しの強さと言うか、アクの濃さと言うか、常軌を越えた弾きっぷりと言うか、とにかくバディならではの凄みが増しているように思いますので、フジでどんなステージを見せてくれるのか今から楽しみです。おそらく、あらゆるロック・アクトを薙ぎ倒してくれることでしょう!


では、いくつかバディ・ガイの作品をご紹介。


BUDDY GUY / I WAS WALKING THROUGH THE WOODS
バディ・ガイがチェスに残した名演を集めた編集盤。70年にリリースされたものですが、録音自体は60~64年。この時代のチェスならではの危うい緊張感に満ちています。「Stone Crazy」や「First Time I Met The Blues」など、ひりひりするようなスロー・ブルースが強烈。突き刺さるようなヴォーカル・スタイルにゾクゾクします。フレッド・ビロウ(ds)、ジャック・マイヤーズ(b)、オーティス・スパン(p)のリズム陣も秀逸。



BUDDY GUY / THIS IS BUDDY GUY
ヴァンガードから68年のライヴ盤。バディのライヴにおけるテンションの高さにやられます。1曲目「I Got My Eyes On You」からバディのギターが軋むように唸りを上げます。「Fever」「Knock on Wood」のようなジャズ/ソウル曲での爆発振りがまた堪りません。スロー・ブルース「I Had a Dream Last Night」もディープなことこの上ない! ファンキーなジャック・マイヤーズのベース、A.C.リードを中心にしたホーン隊も最高!


JUNIOR WELLS & BUDDY GUY / JUNIOR WELLS & BUDDY GUY
75年、郵便貯金ホールでの「第2回ブルース・フェスティバル」におけるバディ・ガイとジュニア・ウェルズのライヴを収めたライヴ盤。バディ&ウェルズのブルースがこの頃の日本でどれだけモダンな感覚に聴こえたかと言うのは今では分かりにくいところですが、そんなことに思いを馳せながら聴くのも面白い。前半はバディが主役、後半になってウェルズが登場するという展開にも当時の空気が感じられます。バックにはA.C.リードや、バディの弟フィル・ガイも参加。


BUDDY GUY / DAMN RIGHT, I'VE GOT THE BLUES
91年、ヴァンガードからリリースされた、第2の全盛期の始まりを告げる名盤。よりブルース・ロック色を強めながらも、バディのギターと歌からはまったりとした黒さが滲みだす。エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、マーク・ノップラーが1曲づつゲストで参加。ドラムはリトル・フィートのリッチー・ヘイワード。ライヴでの定番曲「Mustang Sally」も収録。スティーヴィー・レイ・ボーンに捧げられた作品でもあります。


BUDDY GUY / BLUES SINGER
03年にリリースされたアコースティック作。このアルバムがリリースされた当時、この前作「SWEET TEA」がブロークン・ブルースな作品だったこともあり、いよいよバディ・ガイも迷走しはじめたな…、なんて思ったりもしたものですが、今聴くとこれがなかなか良い! スキップ・ジェイムス「Hard Time Killing Floor」、サン・ハウス「Louise McGhee」なんかを演っててかなりいけます。フジでも何処か小さいステージでアコースティックの弾き語りとか演ってくれないですかね~?



BUDDY GUY / LIVING PROOF
そして問題の最新作がこちら。バディのギターの音色と言うのは元々ギガギガした歪み方をする傾向にありましたが、これはさすがに酷過ぎる。1曲目のギター・ソロを聴いた瞬間、そのあまりの爆音と強引さに思わず笑ってしまいました。しかし聴き進めているうちにその異形のギターに飲み込まれていく。そして聴き終える頃にはすっかりねじ伏せられてしまいますからやはり凄い。まさに怪物による怪物アルバム。



ついでに映像もいくつかご紹介。

Buddy Guy, Jack Bruce, Buddy Miles, Dick Heckstall-Smith

こちらは若きバディ・ガイが出演したSUPERSHOWの一場面。不穏な雰囲気と刺すような切れ味のバディがやたら格好良い。バディ・マイルズのファンキーなビートも秀逸。

Buddy Guy & The Rolling Stones

そして近年のバディさん。ローリング・ストーンズの映画「Shine a Light」での共演場面。ここでのバディの存在感はまさに怪物。公開当時、各方面からバディ・ガイが凄い!という声を漏れ聞いたような。個人的印象としては、完全にストーンズを喰ってます。とにかく名場面。果たしてフジでロニーとの共演はあるのか? ないでしょうね…。



さて、次回はフジロックにやってくる、もう一つのブルースです。お楽しみに!


~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

 08.11.07 BUDDY GUY / SKIN DEEP
 11.02.27 BUDDY GUY / LIVING PROOF


 11.05.19 フジロック第6弾!
 11.04.28 フジロック第5弾&日割り!!
 11.04.15 フジロック第4弾!
 11.04.02 フジロック第3弾!
 11.03.18 フジロック第2弾!
 11.03.01 フジロック第1弾!!

クレオール・ジョー・バンド@ブルーノート東京

2011-05-21 20:22:37 | ジャズ
C. J. CHENIER / MY BABY DON'T WEAR NO SHOES

5月19日、ブルーノート東京にて、クレオール・ジョー・バンドを観てまいりました。私が観たのは2ndショー。彼等のブルーノートにおける最終公演です。

中心人物はジョー・サンプル。かのクルセイダーズでの活躍でも知られるフュージョン界の大物鍵盤奏者。彼が自身のルーツでもあるクレオールの音楽をやるために12年もの構想を経て結成されたというのがこのクレオール・ジョー・バンド。クレオールとは、アメリカ南部のルイジアナに根付く独特の文化で、その期限は18世紀、その地方がまだフランス植民地だった頃に遡り、原住インディアンとフランスやスペインからの移民者、さらにはアフリカからの黒人奴隷など、様々な異文化が交合して作られたそうです。その文化は綿々と現在まで受け継がれ、その音楽はザディコと呼ばれています。

では何故ウエストコースト一派との印象が濃いジョー・サンプルがザディコを? 実はジョー・サンプルはテキサス州ヒューストンの生まれ。そのジョーが生まれる10数年前に当たる1927年、ルイジアナはミシシッピ川の氾濫による大洪水に襲われました。ランディー・ニューマンが「Louisiana 1927」で歌ったあの惨事です。住む家を失った多くのルイジアナの人達がヒューストンへ移り、その新天地にクレオールの文化を持ち込み、根付かせたようです。そんななかでジョー・サンプルは生まれ育ったのです。幼い頃、教会でザディコに親しみ(その頃にはまだザディコという言葉はなく、ララ・ミュージックと呼ばれていたそうですが)、ザディコの王様クリフトン・シェニエに入れこんだそうです。彼にとってクレオール・ミュージックはまさにルーツな訳なのです。

そんなジョー・サンプルがクレオール・ジョー・バンドを結成するにあたって集めたメンバーがこの夜の九人衆。まず真っ先に紹介したいのがC.J.シェニエ。今は亡きクリフトン・シェニエの息子さんです。父親同様にアコーディオンを弾きながら歌い、ザディコの第一線で活躍しています。ジョー・サンプルにとっては幼い頃に憧れた人の血を受け継ぐ人ですから、C.J.シェニエこそがこのバンドの象徴と言っても過言ではないでしょう。そしてザディコに欠かせないラブボード、いわゆる洗濯板ですが、それをかき鳴らすのがジェラルド・シェニエ。この人はブルース銀座さんのブログによりますと、C.J.シェニエの従兄弟だそうです。そしてドラムスには現在ジョン・クリアリーのバンドでも活躍するダグ・ベローテ。さらにギタリストには我らが山岸潤史と、ニューオーリンズ所縁の強者で固めています。さらに紅一点のヴォーカリスト、シャロン・マーティンもかの地のジャズ・フェスに名を連ねている人なのでニューオーリンズのシンガーなのでしょうね。そしてキーボーディストのスキップ・ナリア。この人はゲイトマウス・ブラウンなどのバックも務めていた方のようですが、おそらくジョー・サンプル陣営からの参加ですかね? ベースはジョー・サンプルの息子ニック・サンプル。最後にジョー・サンプルとの付き合いも長い、ゴースト・バスターズのレイ・パーカー・JR.!

*ここからはコンサート内容のネタバレになります。これからコンサートに行かれる方は読まれないことを推す勧めいたします。


さて、ほぼ開演時刻の9時半にメンバーが登場。ステージ中央に左からシャロン・マーティン、レイ・パーカー・JR.、C.J.シェニエと並びます。私の席は前から2列目、C.J.シェニエの正面。彼は真っ赤なスーツに真っ赤なズボン、真っ赤な靴に真っ赤な帽子と、目も覚めるような赤ずくめ。スーツの下のシャツだけが黒。そしてジャラジャラとしたネックレスにギラギラのバックル。ド派手です!濃いです! そしてオーバーオールを着込んだレイ・パーカー、頭をターバンのように白い布で巻いたシャロン・マーティンと、皆さんそれぞれ個性的。主役のジョー・サンプルは右端のキーボードの前に座ってアコーディオンを弾くという控えめな感じ。

1曲目はテーマ・ソング的な「Creole Joe」。この曲を含めた数曲はブルーノートのサイトで試聴出来たので、予想はしていましたがかなりポップで親しみやすい感じ。個人的にはもっとグラグラと煮立つような泥臭いザディコの方が好みなのですが、これはこれで文句無しに楽しい! セット・リストはオリジナル曲が中心だったようで、ほとんどが聴いたことのない曲でしたが、どの曲も一聴して耳に馴染じんでくるキュートな曲ばかり。「Louisiana Loving」「Zydeco Zoo」と続く序盤からメンバー紹介を兼ねたソロ回しへ。ギター、ベース、ドラムスとそれぞれ聴かせてくれましたが、ひときわ盛り上がったのがラブボードのジェラルド・シェニエ。それまで後方で地味にシャカシャカやっていた彼でしたが、紹介されるやいなやステージ前方へと躍り出る。観客にとっても一番馴染みが薄い楽器なせいもあり、その肩から下げた洗濯板をお腹のあたりでジャリジャリ擦る姿に拍手喝采!さらにステージから降りて客席を練り歩きながらジャリジャリ鳴らすジェラルド。なかなか魅せてくれます!

実はこの時、C.J.シェニエはアコーディオンを持たずに歌っていたんです。一通りソロを回した後、レイ・パーカーがおもむろに演奏を止めさせ、C.J.シェニエに「君はソロやらないのか?」みたいな突っ込みを入れる。そして「赤い帽子!赤いズボン!赤い靴!」みたいに囃される。それを受けてCJはモニター・スピーカーの上に自慢げに靴を乗せて見せびらかせてみたり。そして銀ピカのアコーディオンを持ち、満を持してのソロを披露。さすがに華麗な指捌きでしたね。今回のステージではジョー・サンプルもアコーディオンを弾きますが、ことアコーディオンに関しては、CJの方が一枚も二枚も上手な感じでしたね。でもジョー・サンプルのアコーディオンも独特のタイム感が良い味を出してて凄く良かったです。

それにしてもジョー・サンプルは終始控えめな感じでしたね。MCでこのバンドのことやクレオール・ミュージックについて色々語ってくれましたけど、ステージ場で目立ったのはフロントの3人でした。バンマス的に仕切っているのもC.J.シェニエのように見えましたし、レイ・パーカーがジョークを言いながら全体を引っ張っているようにも感じました。でもやっぱり底辺でジョー・サンプルが支えているという印象も受けましたし、それ以上にメンバーのジョー・サンプルに対するリスペクトを強く感じさせられました。ジョー・サンプルの元に集まったザディコ・バンドですからね。

そしてこの夜、最も熱きザディコのリズムを感じたのは「Zydeco Bugaloo」(ブルーノートに掲載されたセット・リストはこの綴りですが、本当は「Zydeco Boogaloo」?)。これはもう、ザディコ・スタンダードと言っても良い有名曲ですね。これは正直燃えました。やはりこういう曲を弾くC.J.シェニエのオーラは凄いものがありましたし、彼の鍵盤から繰り出されるガンボなリズムは濃密そのものでしたね。文句無しに格好良かったです。さらにハンク・ウィリアムスの曲ながらほぼニューオーリンズ・クラシックな「Jambalaya」。このメンバーでこの曲聴かされたら、思わず笑みがこぼれるというか、終始ニコニコ顔で聴くしかないですよね~!

そういったルイジアナなノリを堪能する一方で、メンバー個々の技も存分に楽しませてくれました。山岸潤史とレイ・パーカーのギター・バトルになったのは「Give Me One Good Reason」だったかな?シャロン・マーティンをフューチャーしたスロー・ナンバーでしたが、ブルージーに感情移入しまくる山岸潤史に対して、洗練されたキレで応えるレイ・パーカー。この二人の対比は面白かったですね~。

レイ・パーカーと言えば、ある曲でメンバー間の長尺ソロを回していた際、さあ、いよいよレイ・パーカーの番と言う時に、ギターを弾かず体をゆらゆら揺らして踊ってる。客から“ピーピー”言われると、”OK”みたいな表情をして今度は後ろにくるっと振り返る。そしてお尻をフリフリ振り始める。客席からは笑いが漏れつつ「いいからギター弾けよ!」的な雰囲気が充満。さすがにそれを悟ったレイ・パーカー。“やるぞ!”という目つきで指をペロペロ舐め、手のひらをすりすり揉み、結局なかなか弾かない…。しかし焦らしに焦らした挙げ句に繰り出したのは伝家の宝刀的なギター・カッティング!これはもう彼の独壇場ですよ! フォームを変えながらネチネチと軽快に刻むグルーヴは流石の一言!これでモータウンの時代から世を渡ってきたんですからね!流石ですよ!

さらに彼の見せ場はもう1曲「Please Forgive Me」。これは「Jambalaya」の次にやった曲で、あの和気あいあいな楽しい雰囲気が一気にアダルトな色へと変わったR&Bバラード。レイ・パーカー自ら歌いますが、まさに大人の時間な感じ。最前列に女性を見つけては語りかけるように歌う。しまいには観客席に降りていき、若くて奇麗な女性を見つけると、その目の前の席に腰掛け、ほぼマンツーマン状態で歌い続ける。さらに彼女の手を取り、立ち上がらせ、チークダンスを踊りだす。そして恍惚の表情で「アイ・ラヴ・トキオ~!」なんて口走って笑いを誘ったり。ちなみにこの曲でも山岸潤史が堪らなくブルージーなソロを披露して盛り上げたことを付け加えておきます。

それにしてもレイ・パーカーは良いキャラしてましたね。程よいエロさと言うか、お茶目なダンディズムと言うか。正直、バックに徹すると勝手に予想していたレイ・パーカーがこれほどのエンターテイナー振りを見せてくれるとは少々驚きでした。耳からかけるタイプのコードレス・マイクを使っていたこともポイントですね。

もちろん後半になるとジョー・サンプルの見せ場も有りましたよ!キーボードでラグタイム調からフリーキーに発展させブギウギへ展開したソロは流石でしたね。さらにアコーディオンでC.J.シェニエとの掛け合いも有りましたし。座ってるジョー・サンプルが立ち上がってCJへ挑むような姿勢を見せた時は盛り上がりましたね~!

本編ラストは「Creole Joe Groove」。1曲目にやった曲のリプライズのような感じでしょうか。これはもうダンス天国! 観客もみんな立ち上がって踊りまくりましたね。それまでわりとクールだったC.J.シェニエもハジケてました。笑顔でノリノリ。そしてアンコールは「Jambalaya」。こちらは先程のハンク・ウィリアムス曲とは違うおそらくオリジナル曲。やはり和やかで楽しい曲調。良いですね、こういう曲。この曲もブルーノートのサイトで少し試聴出来ます。そしてメンバー全員がステージ前に並んで一礼。やんやの拍手。なんか良い雰囲気でしたね。

やはりルイジアナのノリは良いですね~。ポップでしたがディープでした。本場のザディコを日本で観れる機会は滅多にないので、楽しくも貴重な一夜になりました。


終演後、客席後方でうろちょろしていたC.J.シェニエをつかまえてサインを頂きました。そして握手。いや、握手と言うより手を鷲掴みにされた感じ。デカイし、勢いがある。そして力強かった!



セットリスト

01. Creole Joe
02. Louisiana Loving
03. Zydeco Zoo
04. Boomti Boomti Boom Boom
05. Give Me One Good Reason
06. Zydeco Bugaloo
07. Louisiana Woman, Texas Man
08. Jambalaya (On The Bayou)
09. Please Forgive Me
10. Zydeco Train
11. Creole Joe Groove
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
12. Jambalaya

*ほとんど知らない曲でしたが、ブルーノートのサイトに掲載されていた公演初日のセットリスト片手に観た結果、アンコール以外は一緒だったと思います。間違っていたらごめんなさいね。


*それと私、英語はさっぱり分からないので、本文の会話部分については雰囲気というか、そんなイメージです。すいません…。



*写真はサインを頂いたC.J.シェニエの「MY BABY DON'T WEAR NO SHOES」。バックに父親が率いたTHE RED HOT LOUISIANA BANDを従えた88年作。ラブボードは叔父(クリフトン・シェニエの兄)クリーヴランド・シェニエ。この人がラブボードを現在の形にしたとも言われています。



@ブルーノート東京

2011-05-19 20:53:27 | ジャズ
今日はクレオール・ジョー・バンドを観にブルーノート東京に来ています。これは、クルセイダースでの活躍で知られるジャズ/フュージョン界の大物鍵盤奏者、ジョー・サンプルが、自身のルーツでもあるクレオールの音楽をやるために集めたバンド。相棒とも言えるレイ・パーカー・JR.も居ますが、私の興味は本場ルイジアナからやって来たC.J.シェニエ。あのクリフトン・シェニエの息子さんです。もちろん、アコーディオンを弾きながらザディコをやります。日本で本場のザディコを生で聴ける機会は滅多にないですからね。楽しみです!

フジロック第6弾!

2011-05-19 17:36:15 | フジロック
RON SEXSMITH / RON SEXSMITH

フジロックの出演アーティスト第6弾の発表が公式サイトにてありました! 正直、15日前後にあるのかな?と思っていただけに、ここ数日なかなか更新されない状況にちょっぴり不安になったりもしていたんですけどね。ちょうどメルトダウンが騒がれている真っただ中だったので、まさか追加よりキャンセルの方が多いんじゃないか?とか、よからぬ想像に怯えていましたが、とりあえず無事に追加発表が行なわれてホッとしています。残念ながらキャンセルが2組ありましたけどね…。気になる追加アーティストは以下の通り。

7月29日
毛皮のマリーズ
DJ NOBU
大橋トリオ
RON SEXSMITH
SHERBETS
WASHED OUT

7月30日
DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN
岡林信康
TAKKYU ISHINO

7月31日
THE BLACK ANGELS
GLASVEGAS
GOMA&THE JUNGLE RHYTHM SECTION
YOUR SONG IS GOOD


出演キャンセル
QUEENS OF THE STONE AGE
TANGERINE DREAM


さすがに邦楽勢が多いですね。そんな中、ロン・セクスミスは嬉しい! 95年のデビュー作(写真)はよく聴きましたね。フジロックは01年以来2回目ですか。私もあの時レッドマーキーで観たことは覚えているのですが、内容等についてはもう記憶の彼方…。今回、他と被らなければぜひ観たい!そしてグラスヴェガスやザ・ブラック・エンジェルスといったロック勢も気になります。特にザ・ブラック・エンジェルスは、サイケの奥からその朴訥とした風貌も含め、オールドなブルース・ロックの息吹を感じたりもするので、かなり期待です。あと毛皮のマリーズもちょっと観たい。


Ron Sexsmith - Get In Line.avi


The Black Angels - "Bad Vibrations" (ROOFTOP SESSION LIVE)




次はステージ割りですかね?ここが運命の分かれ道。

ブーツィー・コリンズ

2011-05-19 14:27:18 | ソウル、ファンク
BOOTSY COLLINS / THE FUNK CAPITAL OF THE WORLD

サマーソニックにブーツィー・コリンズが来ますね~! しかも単独公演もありで。前回の来日は忘れもしない08年のフジロック。それは兄キャットフィッシュ・コリンズ、ジャボ・スタークス、ジョニー・グリッグス、フレッド・ウェズリー等を率いた、まるでオリジナルJB’S再結成のようなメンバーで、しかもダニー・レイやヴィッキー・アンダーソンまで加わったJBトリビュート・ライヴでした。あれは凄かった!まるでジェイムス・ブラウン一座のレビューを再現したかのような構成と、ブーツィーを中心にした生JB’Sのリズムはまさにファンクの神髄でした! しかしバックに徹するブーツィーの姿に不満を感じた方もいらっしゃったかも…。

そして今回の来日です。予定されてるメンバーは、前回とはうってかわって、バーニー・ウォーレル(kbd)、レイザー・シャープ(kbd)、ブラックバード・ナイト(g)、フランキー・ワディー(ds)というラバー・バンドな面々に加え、T.M.スティーヴンス(b)やカイル・ジェイソン(vo)なんかも来る。もちろんホーン隊も帯同という大所帯。これは楽しみですよね~。しかもツイン・ベースですか? ブーツィーとT.M.スティーヴンスとのベース合戦みたいな展開もあるのかな?


で、気になるのが今回の日程。8月12、13日が川崎クラブチッタ、そして8月14日にサマーソニック(幕張)ということですが、それぞれで違った雰囲気になりそうな感じ。まず8月12日が「おとなのファンク・ナイト」。この日は年配のファンの方達にもゆっくり楽しんで頂こうという趣旨のようで、客席前方に250席のプレミアムシート(指定席)が用意され、チケ代も11,500円と少々高め。そして翌日13日は「サタデー・スターナイト・パーティー」ときました!スターナイトですよ!なんかよく分かりませんが、とにかくブーツィー流の濃密ファンク・パーティが楽しめそう。こちらは1Fはオール・スタンディングで9,500円。そして最後を締める14日のサマーソニック。まさかのビーチステージでメインだそうです。これも凄いことになりそうですよね。浜辺でファンク地獄ですよ!う~ん、堪らないものがある!

個人的には、私も40過ぎて体力に不安があるので、「おとなのファンク・ナイト」も結構魅力的だったりするんですけど、いかんせん財布の問題が…。やっぱりどうせならスタンディングで踊りまくりたい!と思いつつも、その日はサマソニに行く予定だったり。しかも財布の事情でブーツィーの出る日曜はサマソニのチケは買わない予定…。さあ、どうしましょう?土曜のサマソニにブーツィーが出てくれたらバッチリだったんですけどね~。しょうがない、ここは例のアレに賭けるしかないですね~。ビーチですから…。

ちなみに今回のブーツィー・コリンズ来日の正式バンド名は「Bootsy Collins and The Funk U Band」。そして現在予定されている来日メンバーは以下のような感じ(もちろん、変更の可能性はあるようですが)。

Bootsy Collins
T.M. Stevens - bass
Bernie Worrell-keyboards
Joel "Razor" Johnson-keyboards
Dewayne "Blackbird" McKnight- gtr
Keith Cheatham- gtr
Frankie "Kash" Waddy-drums
Garry Winters-trumpet
Randy Villars-saxophone
Sarah Morrow Trumbone
Kyle Jason - vocals
Candice Cheatham-vocals
Hazel Razzberry Scott-vocals

詳細→http://clubcitta.co.jp/001/bootsycollins/

写真は発売されたばかりのブーツィー・コリンズの最新作「THE FUNK CAPITAL OF THE WORLD」。多彩なゲストと共に万華鏡のようにめくるめく濃密ファンクが繰り広げられています。

ブーツィー曰く、ファンクとヒップホップの将来のために作ったという「Hip Hop @ Funk U」にはアイス・キューブ、スヌープ・ドッグ、チャック・Dが参加し、重低音ファンクを荒々しく彩ってくれる。そしてジェイムズ・ブラウンをトリビュートした「Jb-Still The Man」ではフレッド・ウェズリーのトロンボーンがJBファンクの神髄へと誘ってくれる。さらに昨年亡くなった兄キャットフィッシュ・コリンズをフューチャーした「Don't Take My Funk」。この曲ではボビー・ウォマックが強力なシャウトを披露してくれたり。

ベラ・フレックのバンジョーが哀愁を誘う「If Looks Could Kill」は終盤のデニス・チャンバースによるパワフル且つ手数の多いドラミングが凄まじい。メタリックなギター・リフが異色の「Minds Under Construction」でギターを弾きまくるのは奇才バケット・ヘッド!! ジャズをトリビュートしたその名も「The Jazz Greats」ではなんとジョージ・デュークとロン・カーターが参加。ロン・カーターが4ビートで刻むウッド・ベースとブーツィーによるスペース・ベースの対比が面白い!やはり昨年亡くなったP-FUNK軍団のギタリスト、ゲイリー・シャイダーをトリビュートした「Garry Shider Tribute」では、去年録音してあったというゲイリーのギターを核に、ジョージ・クリントン&リンダ・シャイダー(ゲイリーの奥様)が歌う。さらにミュージック・ソウルチャイルドが参加した「Yummy, I Got The Munchies」などなど。

もちろんバーニー・ウォーレル、レイザー・シャープ、フランキー・ワディーといった、鉄板の仲間達も参加しています。ジャズからソウル、JB、P-FUNK、ヒップ・ホップ、そしてジミヘンまで、黒人音楽の要所に敬意を表しつつ、新しい仲間を加えながらブーツィーならではのミクスチャー・ファンクをたっぷり楽しめます。おそらく今回の来日公演もこのアルバムのような一大ファンク絵巻のようなステージになるのではないでしょうか?



~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

 08.08.08 フジロック・ベストアクト第1位!!!!(O8年のブーツィー・コリンズ@フジロック)

上原ひろみ×熊谷和徳@ブルーノート東京

2011-05-14 19:36:02 | ジャズ
あの感動から、既に2週間以上が経ってしまい、なんだか今更と思いつつも、あの日の興奮をここに書き留めておきたいと思います。4月26日、上原ひろみ×熊谷和徳@ブルーノート東京、ピアノとタップ・ダンスによる脅威の共演です!

このお二人は既に何度も共演しているようですが、私が観るのは08年の東京JAZZ以来、2度目です。あの時は東京国際フォーラムという、格調高い上品なホール公演だったため、二人の親密感や熱気みたいなものが、若干伝わりづらかったかな?という印象でしたが、今回はブルーノートという狭いクラブということで、これは本当に楽しみでした。本来なら1st~2nd通しで堪能したいところでしたが、財布の事情も考え、1stショーだけで我慢しました。

狭いステージには、向かって左側に上原さんが弾くピアノが置かれ、中央から右側にかけてのスペースに熊谷さんが踊るタップ用の板が敷き詰められています。私は前から2列目ほぼ中央の席を確保。至近距離から左側に上原さんの表情がバッチリ見え、右側に熊谷さんの姿が見える位置。もうこのステージ配置を見ただけでワクワクですよ!そしてほぼ開演時間にお二人が登場。ちなみに上原さんは短パンが可愛いらしいモノトーンの衣装でしたが、これはおそらく4月14日にコットンクラブで見た時、そして4月19日に「笑っていいとも」に出演した時と同じ衣装。いわゆる勝負服ですかね?

そして上原さんらしい跳ねたリズムが心地良いスウィンギーな曲でスタート。上原さんは相変わらず奔放な“ひろみワールド”を繰り広げますが、そこに熊谷さんのタップ・ダンスが加わると、さすがにその景色はいつもとはまるで違ってきます。熊谷さんのタップは上原さんのピアノをバックに踊るのではなく、まるで両足が繰り出すリズムで上原さんのピアノとジャム・セッションを繰り広げるよう。上原さんも熊谷さんの出方を伺いながら、色々仕掛けている感じ。この二人の呼吸が堪らなくスリリング。しかし間近で観る熊谷さんのタップのキレと躍動感は半端無いです!しかもその音というかリズムが生々しい!

もちろん、熊谷さんのダンスが魅せる視覚的な効果も上原さんのピアノをさらに情緒的な世界に引き上げます。特に「Sakura」のようなスローな曲ではそれが顕著。あの「さくらさくら」をモチーフにした曲で、懐かしい日本の美しさを感じさせながら、エモーショナルこの上ない二人の共演は、まさしく芸術的でしたね。熊谷さんはただ佇んでるだけでも憂いを感じさせるようなオーラを持っていて、その雰囲気が良いんですよね~。で、また上原さんがいい顔してるんですよ!

そして一変してアップテンポの「Bern Baby, Bern」の凄まじかったこと。これは間違いなくこのステージのハイライトでしたね。二人の定位置は最初に書いたように向かって左が上原さん、右が熊谷さんな訳ですが、この曲では、おもむろに熊谷さんが上原さんの左側に移動。実は上原さんのさらに左側の小さなスペースにもタップ用の板が敷いてあったんです。そしてそこでの熊谷さんのタップはどんどん激しさを増していく。上原さんもそんな後ろの熊谷さんを振り返りながらどんどん加速していくよう。これはもう二人のぶつかり合いですよ!ぶつかり合いながらも絡みあい、そして重なり合ってとんでもないスピード感で翔け上がっていく。観客達もそのあまりの白熱振りにざわざわし始める。そして圧倒的な熱量と興奮がその頂点に達した瞬間、大拍手が巻き起こる。何か凄いものを観た!なんかそんな感動に包まれた瞬間。まさに騒然。やり終えた後の二人の表情も良かったですね。

続いて二人のソロ・コーナー。まずは上原さんの「Haze」。これは私が今最も好きな曲で、先日のコットンクラブでも聴いた曲。さざ波のように緩やかに繊細なメロディーが紡がれる曲ですが、この日の上原さんの“入り方”は素晴らしかった!その繊細さの中に感情を溜め込んで溜め込んで、もう溢れんばかりになり、今にも崩れそうなぐらい。その儚くも力強く濃密なパッション。本当に美しかった!! そして熊谷さんによる「Touhoku」。熊谷さんは仙台出身だそうで、今回の震災被害に対し“HAND TO HAND!! FEET TO FEET!!” という支援プロジェクトも立ち上げているそうです。今回披露された「Touhoku」という曲も、おそらく被災地への思いが込められているのだと思います。こちらも感動的なパフォーマンスでした!

そして本編ラストはチック・コリアの「Spain」。熊谷さんのタップ・ダンスは、何処かフラメンコのような雰囲気があるので、ヨーロッパな異国情緒を感じさせるこの曲は合ってましたね~。終始楽しそうに演奏する上原さんの姿も印象的でした。そしてアンコールは「Learn On Me」。ビル・ウィザースですね~。コットンクラブでもアンコールでやっていましたが、やはり上原さんのソロとはまた違う響きで素晴らしかったです。そしてやっぱり上原さんは歌ってました。

それにしても、二人のジャム度の高いライヴでしたね。リードしているのは明らかに上原さん。そして彼女がやりたい放題になっても熊谷さんはしっかり付いていきますから凄いです! 上原さんがアヴァンギャルドの方へ向かえば、熊谷さんもちゃんと呼応しますし、二人の掛け合いになっても、ピアノとタップがしっかり対話している。そして上原さんの落としどころというか、その感情の高ぶりが頂点に達する瞬間を、ちゃんと熊谷さんも共有している。だからこそ、その瞬間を我々観客も共有出来る。会場全体が一点に上り詰める、そんな瞬間が何度もありました。ピアノとタップという異色デュオでありながら、この二人だからこその化学反応。いや~、堪りませんね!とにかく二人の熱いソウルに参りました!

終演後、熊谷さんは自ら募金箱を持って、出口付近に立っていました。私も少しですが募金させて頂きました。


二人が名前を付けたと言う本日のスペシャル・ドリンクは“希望”でした。
メニュー曰く「ワン&オンリーの“元気が出るピアノ”をフレッシュトマトと自家製のはちみつレモンを使ってヘルシーに表現しました。軽快なピアノのメロディーと迫力のあるタップのリズムに合わせてお楽しみください。」だそうです。私はお酒がダメなので残念ながら諦めました…。





ブルーノート東京の公式サイトに4月24日1stショーのセット・リストが載っていました。

1. I Mean You
2. Sakura
3. Bern Baby, Bern
4. Haze
5. Touhoku
6. Spain
-------------------
7. Learn On Me

私が観た4月26日もこれで間違いないと思います。1曲目は「I Mean You」、セロニアス・モンクのカヴァーだったんですね。なるほど~。
ちなみに、2ndショーのセット・リストはこんな感じだったようです。

1.Brain Training
2.Place To Be
3.Touhoku
4.Ue Wo Muite Aruko
5.Rhapsody in blue
-----------------------
6.What A Wanderful World


ちなみに、私がなぜ1stショーを選んだかと申しますと、おそらく上原さんのことですから、1stと2ndで演目を変えてくるだろうと。そして全体のハイライトは、東京JAZZで演った「Rhapsody in blue」だろうと。なので2ndは長尺の「Rhapsody in blue」が中心になるだろう。でも私は「Rhapsody in blue」以外の曲が聴きたい。じゃあ、1stにしよう。という次第だった訳です。しかもこの予測はバッチリ的中したという。しかも最終日4月27の2ndショーは全編USTREAM中継されたんです。もちろん私もパソコンにかじり付きで観ました。なので一応、まがいなりにも1st&2nd両方観れた感じみたいな。しかし私が避けた「Rhapsody in blue」が恐ろしく良かった! 東京JAZZで生で観た「Rhapsody in blue」より、小さな画面越しに観たこの日の「Rhapsody in blue」の方が断然興奮しました! まさにハイライトでしたね。途中、レッチリの「Under The Bridge」が挟まれたりで。やっぱ2ndも行っとけば良かった…、と思う次第。


コーネル・デュプリーを偲ぶ

2011-05-11 13:49:11 | ブルース
60年代からソウル系のセッション・ミュージシャンとして数々の名作に携わり、いくつかのバンド活動や自身のソロ作でも高い評価を受け、日本にも何度も来日し人気を博している名ギタリスト、コーネル・デュプリーが、さる5月8日、ニューヨークで亡くなられました。近年は肺気腫を患っていたそうです。

決して派手なギターを弾く人ではありませんが、テキサス流の研ぎ澄まされた感性と独特のリズム感で、個性豊かなシンガーをバックアップし、そして自らもギターで歌いまくる。テキサス産の土っぽさと、ニューヨークで培った都会の洗練、玄人ウケする職人気質と果敢に切れ込む技の数々、そしてジャズ/ソウル/ブルースと自由にクロスオーヴァーしながらもワン&オンリーな魅力を放ち続け、ファンを魅了して止まなかったギタリスト、コーネル・デュプリー。彼が参加した膨大な作品の中からほんの一部をご紹介。



SAM COOKE / ONE NIGHT STAND! SAM COOKE LIVE AT THE HARLEM SQUARE CLUB
サム・クック、63年の名演を収めた傑作ライヴ盤。まあ、特別コーネル・デュプリーのギター・プレイが楽しめる、というものではないかもしれませんが、ここにコーネル・デュプリーが居たという事実が凄い! 彼は1941年生まれですからこの時20歳そこそこ。このステージのバックを務めたキング・カーティスのバンド・メンバーとして参加。とは言え、おそらくカーティスのバンドにも入ったばかりの頃だったのではないでしょうか? ギタリストとしてはサム・クック側からクリフ・ホワイトも参加しています。



LAURA NYRO / CHRISTMAS & BEADS OF SWEAT
女性シンガー・ソング・ライター、ローラ・ニーロの4作目、70年の作品。アナログA面がロジャー・ホーキンス(ds)、デヴィッド・フッド(b)、エディ・ヒントン(g)などマッスルショールズの面々、そしてB面がコーネル・デュプリー(g)、チャック・レイニー(b)、ラルフ・マクドナルド(per)といったニューヨーク系のセッション・マンが参加した作品。「Beads of Sweat」でのコーネル・デュプリーとチャック・レイニーによるファンキーなグルーヴが堪りません。しかもこの曲でリード・ギターを弾くのはデュアン・オールマン!



KING CURTIS / LIVE AT FILLMORE WEST
キング・カーティス&キング・ピンズによる名ライヴ盤。71年3月にロックの殿堂であるフィルモア・ウェストにアレサ・フランクリンと共に出演。リズムを担うのはコーネル・デュプリー(G)、ジェリー・ジェモット(b)、バーナード・パーディー(ds)という鉄壁の布陣。「Ode To Billie Joe」あたりのバンド一体でつっこんでいくようなノリが堪りません。コーネル・デュプリーの職人的なプレイも冴え渡りますが、ジェリー・ジェモットのファンキーなベース・ラインも最高!



DONNY HATHAWAY / LIVE
ニューソウルを代表するダニー・ハサウェイの名ライヴ盤。71年作。ロサンゼルスとニューヨークの2カ所で録音され、コーネル・デュプリーは後半ニューヨークに登場。13分越えの「Voices Inside (Everything is Everything)」ひたひたと滲みるファンクネスが圧巻。そしてダニーならではの空気感に呼応するかのように、徐々に高ぶっていくコーネル・デュプリーのブルージーなギター・ソロも素晴らしい!



ARETHA FRANKLIN / YOUNG GIFTED AND BLACK
72年に発表されたアレサ・フランクリンの名盤。南部指向から都会派へハンドルを切り、ニューソウルの息吹も感じさせる傑作。何と言っても「Rock Steady」でしょう。コーネル・デュプリー(g)、チャック・レイニー(b)、バーナード・パーディー(ds)によるバックの格好良いこと!この時期にコネール・デュプリーがアレサのバックを務めたキング・カーティスとの「Live at Filmore West」や、ゴスペル・ライヴ「Amazing Grace」という2枚の傑作ライヴも秀逸。



CORNEL DUPREE / TEASIN'
コーネル・デュプリー初のソロ・アルバム。74年の作品。チャック・レイニー(b)、バーナード・パーディー(ds)リチャード・ティー(kbd)など気心知れたメンバーが参加。極上のジャズ&ソウル&ブルースを展開。セッション・マンのリーダー作らしい、聴きやすさの中に深みがある名盤。コーネル・デュプリーのファンキーでありながらメロウなソロもたっぷり堪能出来ます。



STUFF / LIVE AT MONTROUX
NYを代表する職人集団が結成した伝説的バンド、スタッフ。76年の1st作「STUFF」が有名ですが、こちらはそのデビュー作発売の直前にスイスのモントルー・ジャズ・フェスティヴァルに出演した際のライヴ盤。メンバーはコーネル・デュプリー(g)、エリック・ゲイル(g)、リチャード・ティー(kbd)、ゴードン・エドワーズ(b)、スティーヴ・ガッド(ds)。(もう一人のドラマー、クリス・パーカーはここには居ない模様)。スタジオ作では洗練された演奏を繰り広げるスタッフですが、ライヴではゴツゴツとして黒々としたグルーヴをまき散らす。「Signed, Sealed, Delivered I'm Yours」の前半でリードをとるコーネル・デュプリーの切れ味とスピード感は半端無い。ライヴならではのリズムの捉え方が凄い!スティーヴ・ガッドとリチャード・ティーも強烈!大名演! DVDもお勧め。



CORNEL DUPREE / MR.2500-LIVE AT BIRDLAND
最近のアルバムも1枚ご紹介。最近と言っても10年前の録音ですけどね…。コーネル・デュプリーが単身ドイツに乗り込み、現地のミュージシャンとライヴ録音した物だそうです。「The Getto」「What's Going On」「Spirit In The Dark」「Memphis Soul Stew」など、興味深い楽曲が並び、なかなか面白いです。デュプリーのギターも絶好調。「What's Going On」のメロディーを、あの音色と、あのリズム感で綴るデュプリーに痺れます。



Steve Gadd - Stuff live 1976 Montreux ("Signed, Sealed, Delivered I'm Yours " FULL !)

例のモントルー・ジャズ・フェスティヴァルでのスタッフ「Signed, Sealed, Delivered I'm Yours」。何度聴いてもゾクゾクします!



私は一度だけコーネル・デュプリーのライヴを観たことがあります。メンバーはデュプリーの他、レス・マッキャン(key,vo)、ロニー・キューバー(sax)、ジェリー・ジェモット(b)、バディ・ウィリアムス(ds)という、豪華な布陣でした。特にキング・ピンズ時代を思わせるデュプリー&ジェリー・ジェモットのコンビにはやられましたね。デュプリーのブルージーにしてクール且つソウルフルなプレイは今でも心に残っています。

コーネル・デュプリーさん、安らかに。

ゴールデンウィーク

2011-05-08 14:43:38 | 余話
ゴールデンウィークも今日で終わりですね。皆様、素敵な連休をお過ごしになられましたか? 私はと言いますと、自宅でニューオーリンズ三昧でした。というのも4月29日から5月8日にかけて、かのニューオーリンズ・ジャズ・フェスティヴァル(略してジャズフェス)が開催されているのです。なんて言いますか、我々ニューオーリンズ音楽ファンにとっては、それこそ聖地のようなフェスなのです。

例年なら、今頃ジャズフェスか~、なんて海の向こうに思いを馳せるだけで終わりなのですが、今年はPCを通じて、かの地のWWOZというラジオ局が放送するジャズフェス中継を聴くことが出来ると知り、初日から徹夜で聴きましたよ!時差があるため日本時間の深夜1時頃始まるんです。でも数日後にFSTREAMというソフトをダウンロードすれば、丸々HDに録音出来るということを知り、早速ダウンロードして録音。とは言え、必ずしも聴きたいアーティストを中継してくれる訳ではないので、それよりアレが聴きたいのに~!みたいなジレンマもあるんですけどね。それでもニューオーリンズのジャズなど現地ミュージシャンはもちろん、ロバート・クレイやチャーリー・マッセルホワイト、ルーシー・フォスターなんかも聴けました。さらにジャズフェスに関連したイベントの中継もあり、ジョー・クラウンやマーシャ・ボール、ロニー・スミスなんかが出演したピアノナイトや、アーロン・ネヴィルのソロ・コンサートの中継もあり、もう堪りませんでした。こういったライヴをリアルタイムに聴ける喜びと言うのは、日本に居ながらジャズフェスを疑似体験したような気分でしたね。そしてジャズフェス最終日は今日の深夜から始まります。またはりきって録音しなくては!

そしてさらに、5月7日と5月8日は、日本時間の翌午前8時頃からrollingstone.comにて映像での中継もあるんです。本日5月7日分については先程終わったばかりですが、まだ明日(5月9日午前8時頃から)もありますからね。ちなみに今日の中継は、ジョージ・ポーター・JR.、ジョン・クリアリー、ジェフ・ベック、ギャラクティック、ウィルコ、アーケイド・ファイア等々、ニューオーリンズ勢から旬なロック・バンドまで、豪華なメンツがおよそ5時間半に渡って放送されました。明日はマーシャ・ボール、ダーティ・ダズン、VOW、ルシンダ・ウィリアムス、アーマ・トーマス、アラン・トゥーサン、ロバート・プラント、ネヴィル・ブラザーズと、さらに豪華! 特にジャズフェスのネヴィルズと言うのはねえ~、これは楽しみです!

TOKYO M.A.P.S@六本木ヒルズ 2日目

2011-05-04 18:04:26 | フェス、イベント
今日も六本木ヒルズアリーナにて開催されているフリー・ライヴ・イベント、TOKYO M.A.P.Sに来ています。これから今日のお目当て、サニーデイ・サービスです。楽しみ!


帰宅後追記:

昨日に続いてのTOKYO M.A.P.S。この日のメンツは、4 bonjour's parties、高野寛、リリー・フランキー、キリンジ、清 竜人、サニーデイ・サービス、小坂忠、という前日に勝るとも劣らない豪華な布陣。私は例の如く午後からのんびり出かけて丁度リリー・フランキーさんの演奏中に現地に到着。ゲストで箭内道彦さんも登場していたようです。そしてキリンジ。この人達のライヴは初めて観ましたが、洋SSW的な香りが濃厚で気持ちよかったですね~。1曲目なんてキャロル・キングの「You've Got A Friend」ですからね。歌声も透明度が高くてかなり良かったです。このあと清 竜人さんのステージだったのですが、私はヒルズをぶらぶらしたりお茶したりしているうちに見逃してしまいました…。ま、フリー・イベントですからね。そういうのも良いかと。そしてサニーデイ・サービス。当初は曽我部恵一さんのソロ出演の予定だったようですが、急遽バンドでの登場となりました。「恋におちたら」とか「ふたつのハート」とかやったかな? 曽我部さんのソウルフルな歌声が良かったです。やっぱりキリンジにしろ、サニーデイにしろ、良い曲と、良い演奏と、良い歌と、それを野外で聴くというのは、気持ち良いですよね~。そしていよいよ大トリの小坂忠さんな訳ですが、残念ながら私は別の約束があったので、ここで退散。ステージには高橋幸宏さんや鈴木茂さんなんかも登場して盛り上がったらしいです…。