ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

映画「サイドマン:スターを輝かせた男たち」

2019-01-30 10:05:14 | ブルース
先日、新宿のK’sシネマにて「サイドマン:スターを輝かせた男たち」という映画を観てまいりました。


※多少、映画の内容に触れますのでご注意ください。



2011年に相次いで亡くなられてしまった、3人のシカゴ・ブルース・レジェンド達。ピアニストのパイントップ・パーキンス、ドラマーのウィリー “ビッグ・アイズ” スミス、そしてギタリストのヒューバート・サムリン。

彼らは、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフというシカゴの2大スターを支えたサイドマン達でした。


ブルース好きには堪らない映画でしたね。近年の3人の姿、それぞれのキャラが立っていてとても魅力的でした。

私は1998年にパークタワー・ブルース・フェスティヴァルでパイントップ・パーキンスを観て、その演奏がとても印象深かったこともあり、3人のなかでも特にパイントップに視線が行きましたね。特にマクドナルドの袋を貰って嬉しそうにする姿はチャーミングでした。

ハイライトはパイントップとウィリー・スミスがグラミー賞を受賞するシーンでしょうか。はしゃぐウィリー・スミスが何とも子供っぽくて、印象的でした。サイドマンが表舞台に登った瞬間、感慨深かったですね。

もちろん新旧のライヴ映像にも目が釘付けになりました。でもそこはもっと見せて!って感じにもなりましたけど…。


御三方のバイオグラフィーを簡単に。

パイントップ・パーキンス、本名はジョセフ・ウィリアム・パーキンス。1913年7月7日ミシシッピ州ベルゾニの生まれ。マディー・ウォーターズのバンドに入ったのは1969年頃、オーティス・スパンの後釜としてでした。実はマディより年上だったり。そういう意味では遅咲きですが、それ以前にロバート・ナイトホークや、サニーボーイ・ウィリアムスンのバックを付けていたそうですので、既にベテランのピアニストでした。マディ・バンドには70年代を通じて参加し、レジェンダリー・ブルース・バンドとして独立しています。その後はソロ作をコンスタントに発表し、ブルース界の最長老として貫禄の活動を続けていました。ちなみに“パイントップ”という芸名はブギ・ウギ・ピアノの創始者パイントップ・スミスからとったそう。2011年3月21日、97歳で亡くなられました。


1936年1月19日、アーカンソー州ヘレナ生まれのウィリー “ビッグ・アイズ” スミス。ニックネームの “ビッグ・アイズ” は、マディ・ウォーターズが名付け親だとか。文字通り”大きな目”が魅力な愛すべきドラマー。マディ・ウォーターズのバンドには、50年代末頃から単発で顔を出していたようですが、本格的にレギュラー化するのは、パイントップと同時期の69年頃から。ウィリーの繰り出すビートは、独特のスウィング感が特徴的で、パイントップのピアノとの相性も抜群だったようです。ベースのカルヴィン・ジョーンズを含めた鉄壁のトライアングルで、70年代のマディを支えました。2011年9月16日、脳梗塞のため75歳で亡くなられました。


マディー・ウォーターズは50年代からブルースのエレキ・バンド化という革命的なスタイルを生み出し新しいシカゴ・ブルースの潮流を生み出しましたが、パイントップとビッグ・アイズ、お2人が在籍していた70年代のマディー・ウォーターズ・バンドは、勢いのあった全盛期ではなく、その晩年に当たります。とは言え、ギターにサミー・ロウホーン&ピー・ウィー・マディソン、もしくはルーサー “ギター・ジュニア” ジョンソン&ボブ・マーゴリン、ハープにはキャリー・ベル、モジョ・ビュフォード、ジェリー・ポートノイなど新鮮な顔ぶれが、熟成したマディのブルースを彩り、この時代ならではの魅力があります。ジョニー・ウィンターの全面バックアップによるブルースカイからの諸作は、グラミー賞も受賞し、現在でも名盤として語り継がれています。

ちなみに、マディ・ウォーターズの全盛期、50年代のマディーのバンドには、ジミー・ロジャース(g)、オーティス・スパン(p)、フレッド・ビロウ(ds)、ウィリー・ディクソン(b)などのサイドマン達がいらっしゃいました。彼らにもいつか日の目が当たると良いですね。



そしてマディ・ウォーターズと並ぶシカゴ・ブルースの巨頭、ハウリン・ウルフ。その右腕として知られるギタリストがヒューバート・サムリンです。1931年ミシシッピ州はグリーンウッドの生まれ。1950年代半ばにハウリン・ウルフの専属ギタリストとなっていますから、まさにシカゴ・ブルースの全盛期をサイドマンとして活躍したギタリスト。シカゴ・ブルースのサイド・ギタリストと言えば?真っ先に彼の名前が挙がるでしょう。嘘か真か、その腕を買われ一時マディに引き抜かれた、なんていう伝説的なエピソードもあったり。ジミ・ヘンドリックスやレッド・ツェッペリンがカヴァー、引用した有名な「Killing Floor」のオリジナルのリフを弾いているのもヒューバート・サムリンです。ロック界からもリスペクトされる希有なサイドマンでした。後年もソロ作やコラボ作を多数リリースし、存在感を発揮していましたが、2011年12月4日、心不全のため亡くなられました。80歳でした。




マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、リトル・ウォルター、ジョン・リー・フッカー、ライトニン・ホプキンス、エルモア・ジェイムス、などなど。巨人達の足跡こそ、ブルースの根幹ではありますが、一歩踏み込んで、バック・ミュージシャン達、すなわちサイドマンに注目し、そのプレイを味わうのもブルースの醍醐味。そこから新しい発見や、新たな興味が生まれたりしますしね。この映画がきっかけで、ブルースの歴史を彩った沢山の魅力的なサイドマン達に注目が集まると良いですね。



「サイドマン:スターを輝かせた男たち」の上映は、新宿K’sシネマですと2月1日まで。その後は、関東ですと、横浜や宇都宮で見れるようです。


詳細はこちら→ Sidemen サイドマン:スターを輝かせた男たち






PINETOP PERKINS & WILLIE 'BIG EYES' SMITH / JOINED AT THE HIP
パイントップ・パーキンスとウィリー・スミスの共演盤「JOINED AT THE HIP」。2010年の作品。このアルバムがグラミー賞『Best Traditional Blues Album』部門を受賞し、映画でのハイライトとなった訳です。ウィリー・スミスはここではドラムスを息子のケニー・スミスに任せ、本人は歌とハープに専念しています。ベースはハウリン・ウルフのバックなどで知られる大ベテラン、ボブ・ストロジャー! ギターにはこちらもマディ・バンド出身のジョン・プライマーも参加。歴戦の勇者達が鳴らす玄人好みのブルースです。



PINETOP PERKINS & HUBERT SUMLIN / LEGENDS
こちらはパイントップ・パーキンスとヒューバート・サムリンの共演盤「LEGENDS」。98年作。バックはDoug Wainoris(g)、Annie Raines(harp)、Rod Carey(b)、Per Hanson(ds)。「Got My Mojo Working」、「Rock Me Baby」、「Hoochie Coochie Man」、「The Sky Is Crying」などブルース・スタンダードの他、ヒューバート作の曲も収録。2人の演奏はもちろん、いぶし銀の歌声も味わい深いです。

オーティス・ラッシュ 安らかに

2018-09-30 23:23:30 | ブルース
9月29日、シカゴ・ブルースを代表するギタリストの一人、オーティス・ラッシュが亡くなられました。享年84歳。

*オーティス・ラッシュの生年は、これまで1934年とされてきたようですが、最近は1935年が正しいと訂正された見解が多いそうです。1935年説ですと、享年83歳となります。)


1934年(1935年)、米ミシシッピ州の生まれ。シカゴへ移住の後、1956年の初シングル「I Can't Quit You Baby」を皮切りに新興コブラレコードへ数々の名演を吹き込みました。そのスクイーズに彩られた奔放なギターソロをフィーチャーしたエネルギッシュなブルースは、共に頭角を現してきたバディ・ガイ、マジック・サムと並び、シカゴ・ブルースを新たな形へと導きました。オーティス・ラッシュがコブラに残したシングルの数々は、ブルースの至宝として、今でも語り継がれています。そして60年代以降も、決して多作とは言えないものの、様々なレコード会社を渡り歩きながら、数々の名作を残してくれました。


そしてオーティス・ラッシュと言えば、やはりライヴですよね! 私が初めてオーティス・ラッシュのライヴを観たのは、たしか1992年、渋谷クラブクアトロでした。実はその2年前にバディ・ガイを観ていて、それが初めて体験した生のブルースでした。ロックしか知らない私にとって、その煽動的で破壊力を持ったブラックフィーリングは衝撃的だったんです。それからブルースにのめり込んでのオーティス・ラッシュですよ。クアトロのステージに現れた、大きな帽子を被ったオーティスの姿と、それを迎える観客の熱気が今でも思い出されます。オーティス・ラッシュはバディのように扇動的ではありませんが、もっと深いところからブルースのなんたるかを語りかけてくるようで、これがブルースか!!と、震えるように受けた感銘は今でも忘れられません。オーティス・ラッシュを生で観て、本物のブルースを知った、みたいな人って、結構多いんじゃないですかね?

その後も、オーティス・ラッシュは何度も来日してくれました。私も何度も観に行きましたし、ある時は最前被りつきで見ることも出来ました。そして最後になってしまったのは2004年のブルースカーニバルでしたね。あの時は脳梗塞が発症した直後で、その後遺症と闘いながらのステージとなってしまい、観ていてとても複雑な思いでしたね。でもあの時、よくキャンセルしないで来日してくれましたよね。思うような演奏が出来ず、とても悔しかったと思いますが、オーティスのプロ意識と、ファンを思う気持ちは、本当に素晴らしいいと思います。その後、出来ることならば、リハビリなどで回復してまた元気な姿を見せて欲しいと思っていましたが…。とても残念ですね。悲しいです。


これまで、沢山の素晴らしいブルースを、ありがとうございました。

オーティス・ラッシュさん、安らかに。




Otis Rush: I`Cant Quit You Baby


レイジー・レスター R.I.P.

2018-08-24 23:58:51 | ブルース
VA / BLUESIN' BY THE BAYOU

8月22日、ルイジアナ・スワンプ・ブルースのレジェンド、レイジー・レスターが、カリフォルニア州パラダイスの自宅で亡くなられたそうです。胃ガンを患っていたそうです。享年85 歳。


1933年にルイジアナ州トーラスで生まれたレイジー・レスター。本名はレズリー・ジョンスン(Leslie Johnson)。ルイジアナを代表するハーピスト。50年代から60年代にかけてエクセロに残した音源は今でもブルース・ファンに広く愛され、ライトニン・ スリム、ロンサム・サンダウン、スリム・ハーポと共にルイジアナ四天王と賞されます。

2000年に、パークタワー・ブルース・フェスティヴァルで来日しています。ハープアタックとして、アーサー・ウィリアムズ、ガイ・フォーサイスと共に、いわゆるハープ合戦みたいな感じで出演しました。私ももちろん見に行きました。他の2人は割りとガツガツと攻めて来るのに対し、レイジー・レスターは飄々としているというか、いたってマイペースで、ルイジアナらしい”緩い”雰囲気が印象的で、いなたいハープもとても味わい深かったと記憶しています。あの時のレイジー・レスターは、本当に印象深かったです。


日本にも来てくれたブルースのレジェンドがまた一人、亡くなられてしまいましたね。悲しいです。

これでルイジアナ四天王も、全て故人となってしまいました。


レイジー・レスターさん、安らかに。




May 28, 1958 "I Hear You Knockin'" Lazy Lester



レコード・コレクターズ7月号

2017-06-20 23:21:07 | ブルース
レコード・コレクターズ7月号は、チャック・ベリー追悼特集。チェック・ベリーの作り出した音楽が、当時どれほど新しかったかということは、今となってはなかなか分かりづらいところですが、流石はレココレ、それを丁寧に紐解くかのような多角的な解説は読み応え充分。「チャック・ベリーの名曲10選」という企画も面白いですし、もちろんディスコグラフィーも充実。


そういえば数ヶ月前に、私も私なりのチャック・ベリーの名曲10選を選んだりしてました。よろしければそちらもどうぞ〜。

2017-03-23   私の好きなチャック・ベリー


私の好きなチャック・ベリー

2017-03-23 23:56:35 | ブルース
先日亡くなられたロックンロールの巨人、チャック・ベリーの名曲を、私の思い入れ順で10曲選んでみました。


1位 Johnny B. Goode
2位 Rock and Roll Music
3位 Sweet Little Sixteen
4位 Too Much Monkey Business
5位 Maybellene
6位 Come On
7位 You Never Can Tell
8位 Back in the U.S.A.
9位 Memphis, Tennessee
10位 School Day (Ring! Ring! Goes the Bell)



1位は何と言っても「Johnny B. Goode」でしょう。ロック史に燦然と輝く大名曲。ギターリフはロックンロールの代名詞とも言える定番中の定番。ジミ・ヘンドリックスによるライヴカヴァーもめちゃくちゃ有名ですね。でも案外、チャック・ベリーのオリジナル・ヴァージョンは聴いたことがないっていう人も多かったり。58年のリリース。ギター&ヴォーカルはもちろんチャック・ベリー。バックにはフレッド・ビロウ(ds)、ウィリー・ディクソン(b)、ラファイエット・リーク(p)という、チェスが誇るブルース職人達が並んでいる。このメンバーでロックンロールをやってるんですから、こういうところにチェスの面白さを感じさせられますね。でこの曲、チャック・ベリーの代表曲であり、ロックン・ロールを代表する曲でもある割には、チャート・アクションはそれほど良くないんですよね。R&Bチャートで2位、ポップ・チャートで8位がピークですから。他にもっと順位の良い曲はあるのに、この曲がこれほど持て囃されるのは何故でしょう?やっぱりチャートとは別に年代を問わず愛される曲ってあるんですよね。

2位は「Rock and Roll Music」。これは多分私が初めて聴いたチャック・ベリーの曲。と言ってもビートルズのカヴァーで聴いたんですけどね。ジョン・レノンのぶっとんだヴォーカルが大好きでした。一方のチャック・ベリーのオリジナル・ヴァージョンは意外な程に牧歌的。でもそのいなたさがジワジワきます。57年リリース。メンバーは「Johnny B. Goode」と同じで、ラファイエット・リークのピアノがご機嫌!

3位は「Sweet Little Sixteen」。これはビーチボーイズの「Surfin USA」の元歌と言われる曲ですね。これは本当に格好良い曲。歌詞も含めてポップ・ソングとして完成度が非常に高いですよね。実はチャック・ベリーのオリジナル曲としてチャート的に最も成功したのがこの曲。R&Bチャート1位、ポップチャート2位を記録しています。ビートルズのBBCライヴで聴けるジョンの歌うこの曲もグッド!!

4位は、しばしばボブ・ディランの「Subterranean Homesick Blues」と比較される「Too Much Monkey Business」。歌詞を言葉遊びのように畳み掛けながらリズムに乗せて歌うという手法は、チャック・ベリーが最初という訳ではありませんが、そのユニークな感性は特筆すべきで、そういう面ではジョン・レノンにも多大な影響を与えたであろうことは間違いないでしょう。ビートルズ以外にも、ホリーズ、ヤードバーズ、キンクスなど、モッズ達に好まれた名曲。

5位は、チャック・ベリーの記念すべきデビュー曲「Maybellene」。55年のリリース。この55年は、ロックン・ロール時代の幕開けと賞されるビル・ヘイリーの「Rock Around the Clock」が大ヒットした年です。ちなみにチャック・ベリーの「Maybellene」は、ボブ・ウィルスの「Ida Red」をインスピレーション源にしているとか。後のロックへ多大なインスピレーションを与えたチャックですが、さらにその源泉を辿るとウェスタン・スウィングがあるという。これはなかなか面白いですね〜。ちなみにこの「Maybellene」でピアノを弾いてるのはジョニー・ジョンソンというピアニストで、この方こそ「Johnny B. Goode」のジョニーだそう。

そして6位はローリング・ストーンズのデビュー曲「Come On」。もちろんチャック・ベリーのカヴァー。ビートルズを始めとするロック・バンドは、チャック・ベリーを直線的なノリでカヴァーすることが多いですが、ローリング・ストーンズはこの「Come On」で、チャック・ベリー独特のグルーヴを彼らなりに再現しています。流石はストーンズ!!


7位の「You Never Can Tell」は、エミルー・ハリスのカヴァーも有名ですが、私はアーロン・ネヴィルで親しんだ曲。これ聴くと、思わず踊り出したくなっちゃうんですよね〜。

8位は「Back in the U.S.A.」。私が初めてこの曲を聴いたのは、パンクの元祖と言われるMC5のカヴァーでした。コーラスが格好良い!! リンダ・ロンシュタットのカヴァーも有名ですね。

9位は、数えきれない程のカヴァーがありそうな名曲中の名曲。でもそもそもは「Back in the U.S.A.」のB面曲だったんですよね〜。確かに曲調は地味ですし、チャック・ベリーらしくない曲かもしれませんが、そこにこの曲の個性的な魅力があったり。

10位は、数々のヒット曲を持つチャック・ベリーの中でも、屈指のヒット曲の一つ「School Day (Ring! Ring! Goes the Bell)」。歌詞に "Hail, hail rock and roll” の一節があり、それはキース_リチャーズや、エリック・クラプトンが参加した、チャック・ベリーの映画のタイトルにもなりました。

チャック・ベリー R.I.P.

2017-03-21 19:47:10 | ブルース
CHUCK BERRY / ROCKIN' AT THE HOPS

3月18日、ロックンロールの真のオリジネーターであり、ポップス/ロック史上最重要人物の一人である、チャック・ベリーが亡くなれました。90歳でした。

代名詞とも言える「Johnny B. Goode」を始め、「Maybelline」、「Sweet Little Sixteen」、「Memphis, Tennessee」、「Too Much Monkey Business」、「Back In The U.S.A.」、「Rock And Roll Music」、「Roll Over Beethoven」などなど、数々のヒット曲、名曲を生み出し、50年代後半、一際の個性で新しい時代を築き上げました。チャック・ベリーは黒人の側からカントリーなど白人の音楽に接近してロックンロールを生み出したとよく言われますが、そのリスムには、他の白人ロックンローラーとは明らかに違う、ハネたスウィング感がありました。私はその独特なノリが大好きでした。彼のひょうひょうとしたキャラも相まって、とても愛らしいロックンロールでした。

ビートルズや、ローリング・ストーンズなど、チャック・ベリーを新しい音楽として聴いていた世代はもちろん、その後のロックに与えた影響は計り知れず、時代が回った現代のシーンにおいても、直接的、間接的に、チャック・ベリーの影響を受けていないロック・アーティストはいないと言ってよいでしょう。



かつてジョン・レノンは「ロックンロールを別の言葉に置き換えるなら、それはチャック・ベリーだ。」ということを言ったとか。この言葉、大好きです。



偉大なるチャック・ベリーさん、安らかに。




写真は、チャック・ベリーの60年作「ROCKIN' AT THE HOPS」。

ローリング・ストーンズの始まりと言われるキースとミックの伝説的な出会い。正確には再会なんですけど、まあ、それは良いとして。2人の地元ダートフォードの駅でレコードを小脇に抱えるミックを見つけたキース。そのレコードというのが、キースにとって喉から手が出る程欲しい代物だった。1つはマディ・ウォーターズの「THE BEST OF MUDDY WATERS」、そしてもう1つがチャック・ベリーの「ROCKIN' AT THE HOPS」。ミックは通信販売で直接シカゴのチェスから買っていたそう。ミックとキースは幼い頃から割と近くに住んでいて、それなりに知り合いであり、そこそこ疎遠だったんでしょうね。ですが、ミックの持っていたLP が2人を急激に接近させたんです。なのでもし、ミックがチャック・ベリーのLP を持っていなかったら、ローリング・ストーンズは生まれなかったかもしれないのです。

この伝説が本当なら、当時のイギリスで、ごくごく一部の相当ませた人間しか聴いていなかったであろう、黒人のリズム&ブルース、しかも60年発表の「ROCKIN' AT THE HOPS」を、ミックはその年に通販で手に入れてることになるんですよね。ミック・ジャガー、やっぱ凄いですね。ちなみにこの「ROCKIN' AT THE HOPS」から、ストーンズは「Bye Bye Johnny」や「Let It Rock」をカヴァーしています。

ジェイムズ・コットン R.I.P.

2017-03-18 23:52:58 | ブルース
THE JAMES COTTON BAND / 100% COTTON

3月16日、シカゴ・ブルースの全盛期を知る数少ないレジェンド中のレジェンド、ブルース・ハーピストのジェイムズ・コットンが旅立たれました。81歳。肺炎のため入院中の病院で亡くなられたそうです。

1935年、ミシシッピ州はチュニカに生まれたジェイムズ・コットン。1956年頃にリトル・ウォルターの後釜としてマディ・ウォーターズのバンドに加入し、シカゴ・ブルースの黄金期に活躍しました。マディの有名なライヴ盤「MUDDY WATERS AT NEWPORT 1960」でハープを吹いてるのがコットンです。一時不遇を囲っていたマディが、70年代にジョニー・ウィンターの助力で復活する際にも召集されてますから、マディの信頼も相当熱かったのでしょうね。

そしてジェイムズ・コットンと言えば、「100% COTTON」でしょう!1967年にヴァンガードよりアルバム・デビューして依頼、ヴァーヴやアリゲーターなどに幾枚もの名盤を残しているジェイムズ・コットンですが、74年にブッダよりリリースしたこの作品こそ、ファンク・ブルースの金字塔と賞される傑作中の傑作なのです。

もちろん、これより前にもブルースにファンクのリズムを持ち込んだ作品はあります。ローウェル・フルスンとか、ジュニア・ウェルズとか。ですがしばしばこの「100% COTTON」こそファンク・ブルースの元祖であるように語られるのは、リズムがどうのというより、ファンクのエネルギーをブルースに閉じ込めたような作品だからだと思います。ジェイムズ・コットンの躍動しまくるハープを中心に、瑞々しいバンドの演奏もめちゃくちゃ格好良い!!もちろん、マット・マーフィーのギターも!! そしてこの後、ニューオーリンズへ向かい、アラン・トゥーサンやジェイムス・ブッカーとコラボするんですから。やはり、ファンク・ブルースと言えば、ジェイムス・コットンなのです。



さて、私が始めてジェイムズ・コットンのライヴを観たのは1991年のブルースカーニバルでした。その前年に、ジョン・メイオールが観たくて初めて足を運んだブルカニで、メインのバディ・ガイに衝撃を受け、黒人ブルースに目覚めたばかりの私にとって、ジェイムズ・コットンは、まさに2ndインパクトでした。うねりまくるハープの野太い音色に、ブルースハープって凄いな!黒人って凄いな!本物のブルースって最高だな!と大興奮したのを今でも覚えています。最後はアルバート・コリンズとのセッションもあったりで、良い時代でした。

ブルカニと言えば、96年にもジェイムズ・コットンは出演していますが、前日の横浜公演でジョニー・"ギター"・ワトソンが倒れ、亡くなってしまったんですよね。それでたしかジェイムズ・コットンが、土曜、日曜の両日出演して、ジョニーの分まで頑張って会場を沸かしてくれたように記憶しています。

ですがこの頃、ジェイムズ・コットンは喉頭がんに冒されていて、喉の手術もしていたんですよね。その翌97年に来日した際には、ヴォーカリストを従え、自身はハープに専念せるを得ないステージだったそうです。とは言え、本業がハーピストですから、その衰え知らずなブロウで、観客達を熱狂させたそうですから、さすがはジェイムズ・コットンです!

その後も度々来日しています。生で歌が聴けなくなったのは残念ではあるものの、それでも、ステージに上がり、ハープを吹き続けるジェイムズ・コットンの姿に、沢山のブルースファンが勇気づけられたことでしょう。

ジェイムズ・コットンさん、ありがとう。そして安らかに。

グラミー賞 ノミネート 『Best Traditional Blues Album』

2017-02-12 19:34:08 | ブルース
Bobby Rush / Porcupine Meat

この期に及んでまだやっている当ブログのグラミー賞ノミネート特集。でもこれをやらねば終われない。という訳で『Best Traditional Blues Album』部門です。気になるノミネートは以下の5作品。

Lurrie Bell / Can't Shake This Feelingg  
Joe Bonamassa / Live At The Greek Theatre  
Luther Dickinson / Blues & Ballads (A Folksinger's Songbook: Volumes I & II)  
Vasti Jackson / The Soul Of Jimmie Rodgers  
Bobby Rush / Porcupine Meat  


私が思う”トラディショナル”とは少々赴きが違うのですが、まあ、それはさておき、ここは何と言ってもボビー・ラッシュでしょう!! 昨今の精力的なアルバム・リリース頻度と言い、その濃密な内容と言い、歳を重ねるごとにアクを増すかのキャラと言い、全てが真っ黒に脂ぎってギラギラしている、現役最強のファンキー・ブルースマンこそ彼のことなのです。

チトリン・サーキットの帝王と呼ばれたボビー・ラッシュが、メジャー・レーベルのラウンダーへ移籍したというだけで、マニアの間では結構なニュースになっていましたが、だからと言って、いきなり新しいことをする訳でもなく、ましてや突然売れ線になる訳ではない、それがボビー・ラッシュ。つまり、どんなに環境が変わろうとボビー・ラッシュはボビー・ラッシュであり、あのアクと臭みに塗れた南部ブルースは、相変わらずファンキーなのであります。

では、毎回同じか?と言われれば、そうでもない。今作のキモはニューオーリンズ録音。プロデューサーは、これまでにアーマ・トーマスやジョニー・アダムス、ダーティ・ダズン・ブラス・バンド等を手掛けてきた、ラウンダーの敏腕スコット・ビリントン。バック・メンバーには、かの地の重鎮鍵盤奏者デヴィッド・トウカノフスキー(kbd)、ジョン・クリアリー&ザ・アブソリュート・モンスター・ジェントルメンのリズム隊、コーネル・ウィリアムズ(b)とジェフリー“ジェリービーン”アレクサンダー(ds)、近年様々なセッションに引っ張りだこの売れっ子ギタリスト、シェイン・テリオット(g)、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドからカーク・ジョセフ(sousaphone)とロジャー・ルイス(baritone sax )等、ニューオーリンズの名手達が集められています。

そしてそんなニューオーリンズ軍団の中、ただ一人ボビー・ラッシュ陣営から参加したと言えるのがヴァスティ・ジャクソン。この人はミシシッピのギタリストで、ソングライター、プロデューサーとしても活躍ししている方。ボビー・ラッシュの過去作はもちろん、Z.Z. ヒル、デニス・ラサール、ジョニー・テイラー、ケイティ・ウェブスターなどの諸作品に参加し、個人名義のソロ作品もリリースしています。なんと昨年リリースした「The Soul Of Jimmie Rodgers」で今回の当部門『Best Traditional Blues Album』にボビーと並んでノミネートされている Vasti Jackson その人です。

絶妙にタメの効いた、いなたくもファンキーなギターリフからゾクゾクする1曲目「I Don't Want Nobody Hanging Around」、そこにハープが乗り、脂ぎった歌声が響けば、そこはもう完全にボビー・ラッシュの世界。タイトル・トラック「Porcupine Meat」のメロウなグルーヴも強烈なサザン臭で覆ってしまうのがボビー流。南部特有のいかがわしいノリが最高の「Catfish Stew」や、ファンキーな「Snake In The Grass」、「Funk O' De Funk」が格好良いのはもちろん、濃密この上ないスロー・ブルース「Got Me Accused」も絶品。

ヴァスティ・ジャクソンとシェイン・テリオットのギターの絡みも格好良いですし、デヴィッド・トウカノフスキーの鍵盤も良い味わい。ベースはコーネル・ウィリアムズとカーク・ジョセフとで分け合ってますが、特にカーク・ジョセフのバウンシーなスーザフォンがユニークなファンクネスを生み出しています。絶妙のタイム感で繰り出すジェリービーンのビートを中心に、間を活かしながら腰にくるグルーヴは流石ニューオーリンズであり、そのファンクネスをボビー流のミシシッピ産ファンク・ブルースに引き込むボビー・ラッシュ&ヴァスティ・ジャクソン。彼らによる圧倒的なブルース臭。結局のところボビー・ラッシュはボビー・ラッシュであり、環境の違いをものともしない強烈なアクと個性を思い知らされるのです。

でも実はボビー・ラッシュも生まれはルイジアナだったりするんです。なので今作は複雑にミシシッピとルイジアナ/ニューオーリンズが絡み合っている。でもそれこそ、ボビー・ラッシュの本質なのかもしれません。文句無しの傑作。ちなみに、ケブ・モや、当部門にノミネートされているジョー・ボナマッサなどもゲスト参加しています。


さて、誰もが認める現役最高のブルースマン、ボビー・ラッシュ。これまで数々のブルース系アワードに輝いてきましたが、グラミー賞は獲っていないはずです。ノミネートはあるんですけどね。なかなか…。しかし機は熟したでしょう。そろそろ彼の番です!!



そして対抗は? ヴァスティ・ジャクソン!と言いたいところですが、知名度的に難しいでしょう。やはりここは現行シカゴブルースを背負って立つ漢、ルリー・ベルを挙げたいですね。彼の一音一音に重みのあるブルースギターは痺れますね!!




さあ、明日の朝はいよいよグラミー賞授賞式です。という訳で、当ブログのグラミー賞ノミネート特集もこれにて最終回です。本当はまだまだ書きたいアルバムがあったんですけどね。コンテンポラリー・ブルースのファンタスティック・ネグリートとか、ワールド・ミュージックのヨー・ヨー・マとか、カントリーのスタージル・シンプソンとか、それらはまた、受賞したら紹介しますね。


では、明日の授賞式、楽しみましょう!!




↓宜しければこちらもぜひ!


グラミー賞 ノミネート 『Best Regional Roots Music Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Americana Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Folk Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Roots Gospel Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Traditional R&B Performance』
グラミー賞 ノミネート 『Best R&B Performance』
グラミー賞 ノミネート 『Best Urban Contemporary Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Traditional Pop Vocal Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Rock Album』
グラミー賞 ノミネート 『Best Rock Performance』
グラミー賞 ノミネート 『Best Rock Song』
グラミー賞 ノミネート ビヨンセ!!

U.P. WILSON

2017-01-19 23:55:50 | ブルース
U.P. WILSON / ON MY WAY

今日、御茶ノ水駅前のDISK UNIONにふらっと立ち寄りましたら、ちょうど「411円以下の中古CD全て100円!」っていう素敵なタイムセールをやっていまして、いくつか買ったうちの1枚がこれ。テキサスのワイルド・ブルースマン、テキサス・トルネードことU.P.ウィルソン。生まれはルイジアナだそうで、1934年に生まれ、2004年に亡くなられています。1990年代にJSPから数枚のアルバムをリリースし、そのアグレッシヴなテキサス・スタイル・ギターで一部熱狂的な人気を誇るという、知る人ぞ知るブルースマン。こちらの「ON MY WAY」は、1988年にRED LIGHTNIN' RECORDSからリリースされたものを、99年にFEDORAがリイシューしたもの。

ゴツゴツとした音色で快調に飛ばすギターが気持ち良い!! JBファンク的なノリも強引に弾き倒す、いなたいシャープさが堪らなく格好良い!垢抜けない歌声や、ローカル色濃いバックのグルーヴも良い。モダン・ブルースをやっても決して洗練された感じにはならないところに、その土地に綿々と受け継がれる息づかいを感じさせられますね。これぞテキサス!こういうブルース大好きです!!


アルバム収録曲→ Como Station

ブルース最強伝説。

2017-01-17 19:51:14 | ブルース
買いました! Guitar magazine 2月号「ブルース最強伝説」。表示&巻頭から113ページに及ぶという大特集。これもローリング・ストーンズ効果でしょうか?恐るべしストーンズの影響力。かく言う私もストーンズの新譜に触発されて、ここのところブルース聴きまくってますけどね。そこへこの大特集ですから。って言うか、この表紙のBBの顔を見たら買わずにいられませんよね。

これぞ、ブルース・ファンを惹きつける顔力!!

内容の方も、ギター雑誌らしくブルースマンの愛器紹介から、真島昌利、竹内朋康、菊田俊介、Rei など日本のギタリスト達が語るブルース、シカゴやテキサスなどジャンル別の常套句解説、もちろんローリング・ストーンズ特集もあります。マニアックなところでは、タンパ・レッドが大きく取り上げられているのが嬉しい!あと、高田漣による「マイ・ボトル・ネックを作ろう!」なんていうのもあったりで盛り沢山。写真も豊富。

さー、じっくり読むぞ!

これでしばらくブルース熱は下がりそうもありません。