DIRTY DOZEN BRASS BAND / MY FEET CAN'T FAIL ME NOW
ニューオーリンズを代表するブラス・バンド、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドの来日公演が間近に迫ってきました! って言うかもう明日です…。もう何度も日本に来ている彼等ですが、注目は何と言ってもスーザフォンのカーク・ジョセフですよ!
ダーティ・ダズン・ブラス・バンド(以下DDBB)が、84年にアルバム・デビューした際の衝撃って言うのは、私のような後追い世代にとってはなかなか想像しづらいものがありまが、どうなんでしょうね? DDBBの結成については、その原型が出来たのは77年頃だそうです。おそらくそれまでのニューオーリンズ・ブラス・バンドと言うのは、土着した伝統的な存在であると同時に、トラディショナルという名の化石同様な状態だったんだと思うんです。そこにDDBBのような若い世代が新しい血を取り入れていく。例えばモダン・ジャズとか、ファンクとか、ソウルとか。DDBBは全員黒人のグループですから、その辺のアイデンティティも強烈に持っていたことでしょうね。特にブラス・バンドのファンク化、言い換えればマーチング・ファンクのような、あのハネながら疾走するファンクネスは、そうとう衝撃的だったのではないでしょうか?
そしてリリースされたデビュー作「MY FEET CAN'T FAIL ME NOW」(写真上)。1曲目「Blackbird Special」からブラス隊が堰を切ったようにもの凄いスピードでシンコペーションしまくるリズム。それをリードするのがカーク・ジョセフのスーザフォン。とにかくのたうち回るような低音フレーズをブンブンとドライブさせていく。ミュージック・マガジン誌05年12月号のニューオーリンズ特集において、この頃のDDBBの革新性について「エレクトリック・ベースの野太くうねるベース・ラインをスーザフォンが吹く」と評せられてますが、まさにその通り。ブラス・バンドのファンク化を可能にしたのはカーク・ジョセフのスーザフォンがあったから!と言っても過言ではないでしょう。その証拠に、このアルバム、全10曲中7曲がカークの吹くスーザフォンから始まりますからね。
おそらく、デビュー当時のDDBBは、ジャズ・バンドの括りで紹介されてたと思うんです。あのデビュー作もコンコード・ジャズからリリースされてますからね。これを聴いたジャズ・ファンは驚いたことでしょうし、これを紹介する側も興奮したことでしょうね。2nd作「MARDI GRAS IN MONTREUX」の日本盤のライナーには「凄いバイタリティに溢れた、大変なカッペ連中」とか、「伝統ブラス・バンドへの反逆か…」とか、いかにこのバンドが型破りだったか、最大限の愛情を込めた驚きが記されてます。またフェイクや即興を駆使して煽りまくるカーク・ジョセフのスーザフォンも「普通のブラス・バンドだったら、まずクビは間違いないだろうナァ…」と絶賛されてます。(間違いなく絶賛です!!)
その後、カーク・ジョセフはDDBBを離れ、ソロ・プロジェクトに着手。DDBBはバンド編成をモダンにチェンジしながらジャム・バンドやヒップ・ホップに接近。そして目下のところ最新作となるのは06年の「What's Going On」。ここではカーク・ジョセフがスーザフォンを吹いていますが、大所帯バンドによくありがちな、いまいち正式メンバーが誰なのかはっきりしない感じ。レコーディング・メンバーではあるけれど、ツアーには参加しないとか、そんな感じもあるみたい。で、今回の来日メンバーですけど、ビルボードのインフォメーションによれば、グレゴリー・デイヴィス(Trumpet, Vocals)、ロジャー・ルイス(Baritone, Soprano Saxophone)、ケヴィン・ハリス(Tenor Saxophone)、エフレム・ET・タウンズ(Trumpet, Flugelhorn)、そしてカーク・ジョセフ(Sousaphone)と、ホーン陣にはデビュー作発表当時のオリジナルメンバーが揃っています。これは現在考えられる最強メンバーと言っても良いでしょう! ある意味、流動的なメンバー編成を考えれば、今回のこれを見逃す手はありません! 特に出たり入ったりなカーク・ジョセフは次ぎいつ見れるか分かりませんからね!!!
熱くなったついでに、カーク・ジョセフ参加作品をいくつかご紹介。
THR DIRTY DOZEN BRASS BAND / LIVE: MARDI GRAS IN MONTREUX
DDBBの2ndアルバム。85年のモントルー・ジャズ・フェスティヴァルでのライヴ録音。初期DDBBの凄みを味わいたいのなら、まずこのアルバムがお勧め。もちろん1st作もマストですけど、とにかくライヴですよ! 灼熱のブラスバンド流セカンドライン・ファンク! カーク・ジョセフが吹くべースラインの暴れっぷりも最高!!
FORGOTTEN SOULS BRASS BAND / GONE BUT NOT FORGOTTEN
カーク・ジョセフはDDBB以外にもブラス・バンドから引っ張りだこ。その一つがこのFORGOTTEN SOULS BRASS BANDで、こちらはその01年作。リズム隊がDDBBのカーク・ジョセフと、リバース・ブラス・バンドのキース・フレイジャー (bass drum)&アジェイ・マラリー (snare drum)なのが面白い。音的には意外とオーソドックス。ちなみにライナーに、“Cover photo features a young Kirk Joseph second lining in the French Quarter" とありますが、ジャケ写の赤いシャツの子供がちっちゃいカーク・ジョセフってことですかね?
TREME BRASS BAND & MARDI GRAS INDIANS / TREME TRADITIONS
そしてカーク・ジョセフが参加するもう一つのブラス・バンドがこのトレメ・ブラス・バンド。このバンドは数年前に来日しまして、なんと、みなと区民祭に参加して増上寺周辺をパレードしたんですよね~。私も観に行きましたよ! ま、残念ながらカーク・ジョセフは居ませんでしたが…。(バスドラのライオネル・バティステが格好良かった~!) で、こちらは今年リリースされた最新作。マルディグラ・インディアンとの共演作となっています。
KIRK JOSEPH'S BACKYARD GROOVE / SOUSAFANK AVE
カーク・ジョセフのソロ・プロジェクト。05年作。いわゆるブラス・バンドではない、ブラス・ファンクとでも言いましょうか。ジャム・バンドも視野に入れたサウンド。グルーヴィーなカーク・ジョセフのスーザフォンが素晴らしい! DDBBをやめて、こういう方向へ行くとは正直思いませんでした。メンバーには日本人ギタリストのヒロナリも居ます。
ANDERS OSBORNE & BIG CHIEF MONK BOUDREAUX / BURY THE HATCHET
アンダーズ・オズボーンがモンク・ボードルーを向かえた02年作。カーク・ジョセフは元DDBBのトロンボーン奏者チャールズ・ジョセフと共に兄弟で参加。ポップな歌物でも、カーク・ジョセフがスーザフォンを吹いてるだけで随分とガンボ感が増すから凄い。こういったブラス色の薄い作品でこそ、かえってカークの凄さが浮き彫りにされる感じ。
STANTON MOORE / TAKE IT TO THE STREET (THE MUSIC)
スタントン・ムーアのソロ作、と言うよりは、教則DVD用に録音された音源のアルバム化。08年リリース。録音は03年だそうですが、この頃のカーク・ジョセフはDDBBとは離れていたようにも思うのですが、何故かDDBBのメンバーと共に参加。私の大好きなミーターズのジョージ・ポーター・JRも参加していまして、まさにニューオーリンズ・ファンク2大ベーシストの揃い踏み。スタントン・ムーアがオーセンティックなセカンドラインを叩いているのが逆に新鮮。
R.E.M. / COLLAPSE INTO NOW
先日解散を発表したR.E.M.の最新作にしてラスト作。これに参加している、Kirk M. Joseph, Sr.ってカーク・ジョセフのことですかね? 数曲ニューオーリンズ録音があり、そこでシャマー・アレンや、ボノラマのメンバー達と共レコーディングに加わっているスーザフォン奏者なんですけど…。ま、どのみちニューオーリンズ色はほとんど感じられませんし、スーザフォンの見せ場もまったく無いんですけどね…。なんか“M.”とか“Sr.”とか付けられると誰なの?みたいな。別人だったらごめんなさい…。
さて、いよいよ明日ですね。私はカーク・ジョセフが大好きですが、生で観るのは多分初めて。って言うか、本当に来るのかまだ不安だったり。結構、蓋を開けてみるまで分からない的なものってありますよね。来てくれることを祈ります!!
ニューオーリンズを代表するブラス・バンド、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドの来日公演が間近に迫ってきました! って言うかもう明日です…。もう何度も日本に来ている彼等ですが、注目は何と言ってもスーザフォンのカーク・ジョセフですよ!
ダーティ・ダズン・ブラス・バンド(以下DDBB)が、84年にアルバム・デビューした際の衝撃って言うのは、私のような後追い世代にとってはなかなか想像しづらいものがありまが、どうなんでしょうね? DDBBの結成については、その原型が出来たのは77年頃だそうです。おそらくそれまでのニューオーリンズ・ブラス・バンドと言うのは、土着した伝統的な存在であると同時に、トラディショナルという名の化石同様な状態だったんだと思うんです。そこにDDBBのような若い世代が新しい血を取り入れていく。例えばモダン・ジャズとか、ファンクとか、ソウルとか。DDBBは全員黒人のグループですから、その辺のアイデンティティも強烈に持っていたことでしょうね。特にブラス・バンドのファンク化、言い換えればマーチング・ファンクのような、あのハネながら疾走するファンクネスは、そうとう衝撃的だったのではないでしょうか?
そしてリリースされたデビュー作「MY FEET CAN'T FAIL ME NOW」(写真上)。1曲目「Blackbird Special」からブラス隊が堰を切ったようにもの凄いスピードでシンコペーションしまくるリズム。それをリードするのがカーク・ジョセフのスーザフォン。とにかくのたうち回るような低音フレーズをブンブンとドライブさせていく。ミュージック・マガジン誌05年12月号のニューオーリンズ特集において、この頃のDDBBの革新性について「エレクトリック・ベースの野太くうねるベース・ラインをスーザフォンが吹く」と評せられてますが、まさにその通り。ブラス・バンドのファンク化を可能にしたのはカーク・ジョセフのスーザフォンがあったから!と言っても過言ではないでしょう。その証拠に、このアルバム、全10曲中7曲がカークの吹くスーザフォンから始まりますからね。
おそらく、デビュー当時のDDBBは、ジャズ・バンドの括りで紹介されてたと思うんです。あのデビュー作もコンコード・ジャズからリリースされてますからね。これを聴いたジャズ・ファンは驚いたことでしょうし、これを紹介する側も興奮したことでしょうね。2nd作「MARDI GRAS IN MONTREUX」の日本盤のライナーには「凄いバイタリティに溢れた、大変なカッペ連中」とか、「伝統ブラス・バンドへの反逆か…」とか、いかにこのバンドが型破りだったか、最大限の愛情を込めた驚きが記されてます。またフェイクや即興を駆使して煽りまくるカーク・ジョセフのスーザフォンも「普通のブラス・バンドだったら、まずクビは間違いないだろうナァ…」と絶賛されてます。(間違いなく絶賛です!!)
その後、カーク・ジョセフはDDBBを離れ、ソロ・プロジェクトに着手。DDBBはバンド編成をモダンにチェンジしながらジャム・バンドやヒップ・ホップに接近。そして目下のところ最新作となるのは06年の「What's Going On」。ここではカーク・ジョセフがスーザフォンを吹いていますが、大所帯バンドによくありがちな、いまいち正式メンバーが誰なのかはっきりしない感じ。レコーディング・メンバーではあるけれど、ツアーには参加しないとか、そんな感じもあるみたい。で、今回の来日メンバーですけど、ビルボードのインフォメーションによれば、グレゴリー・デイヴィス(Trumpet, Vocals)、ロジャー・ルイス(Baritone, Soprano Saxophone)、ケヴィン・ハリス(Tenor Saxophone)、エフレム・ET・タウンズ(Trumpet, Flugelhorn)、そしてカーク・ジョセフ(Sousaphone)と、ホーン陣にはデビュー作発表当時のオリジナルメンバーが揃っています。これは現在考えられる最強メンバーと言っても良いでしょう! ある意味、流動的なメンバー編成を考えれば、今回のこれを見逃す手はありません! 特に出たり入ったりなカーク・ジョセフは次ぎいつ見れるか分かりませんからね!!!
熱くなったついでに、カーク・ジョセフ参加作品をいくつかご紹介。
THR DIRTY DOZEN BRASS BAND / LIVE: MARDI GRAS IN MONTREUX
DDBBの2ndアルバム。85年のモントルー・ジャズ・フェスティヴァルでのライヴ録音。初期DDBBの凄みを味わいたいのなら、まずこのアルバムがお勧め。もちろん1st作もマストですけど、とにかくライヴですよ! 灼熱のブラスバンド流セカンドライン・ファンク! カーク・ジョセフが吹くべースラインの暴れっぷりも最高!!
FORGOTTEN SOULS BRASS BAND / GONE BUT NOT FORGOTTEN
カーク・ジョセフはDDBB以外にもブラス・バンドから引っ張りだこ。その一つがこのFORGOTTEN SOULS BRASS BANDで、こちらはその01年作。リズム隊がDDBBのカーク・ジョセフと、リバース・ブラス・バンドのキース・フレイジャー (bass drum)&アジェイ・マラリー (snare drum)なのが面白い。音的には意外とオーソドックス。ちなみにライナーに、“Cover photo features a young Kirk Joseph second lining in the French Quarter" とありますが、ジャケ写の赤いシャツの子供がちっちゃいカーク・ジョセフってことですかね?
TREME BRASS BAND & MARDI GRAS INDIANS / TREME TRADITIONS
そしてカーク・ジョセフが参加するもう一つのブラス・バンドがこのトレメ・ブラス・バンド。このバンドは数年前に来日しまして、なんと、みなと区民祭に参加して増上寺周辺をパレードしたんですよね~。私も観に行きましたよ! ま、残念ながらカーク・ジョセフは居ませんでしたが…。(バスドラのライオネル・バティステが格好良かった~!) で、こちらは今年リリースされた最新作。マルディグラ・インディアンとの共演作となっています。
KIRK JOSEPH'S BACKYARD GROOVE / SOUSAFANK AVE
カーク・ジョセフのソロ・プロジェクト。05年作。いわゆるブラス・バンドではない、ブラス・ファンクとでも言いましょうか。ジャム・バンドも視野に入れたサウンド。グルーヴィーなカーク・ジョセフのスーザフォンが素晴らしい! DDBBをやめて、こういう方向へ行くとは正直思いませんでした。メンバーには日本人ギタリストのヒロナリも居ます。
ANDERS OSBORNE & BIG CHIEF MONK BOUDREAUX / BURY THE HATCHET
アンダーズ・オズボーンがモンク・ボードルーを向かえた02年作。カーク・ジョセフは元DDBBのトロンボーン奏者チャールズ・ジョセフと共に兄弟で参加。ポップな歌物でも、カーク・ジョセフがスーザフォンを吹いてるだけで随分とガンボ感が増すから凄い。こういったブラス色の薄い作品でこそ、かえってカークの凄さが浮き彫りにされる感じ。
STANTON MOORE / TAKE IT TO THE STREET (THE MUSIC)
スタントン・ムーアのソロ作、と言うよりは、教則DVD用に録音された音源のアルバム化。08年リリース。録音は03年だそうですが、この頃のカーク・ジョセフはDDBBとは離れていたようにも思うのですが、何故かDDBBのメンバーと共に参加。私の大好きなミーターズのジョージ・ポーター・JRも参加していまして、まさにニューオーリンズ・ファンク2大ベーシストの揃い踏み。スタントン・ムーアがオーセンティックなセカンドラインを叩いているのが逆に新鮮。
R.E.M. / COLLAPSE INTO NOW
先日解散を発表したR.E.M.の最新作にしてラスト作。これに参加している、Kirk M. Joseph, Sr.ってカーク・ジョセフのことですかね? 数曲ニューオーリンズ録音があり、そこでシャマー・アレンや、ボノラマのメンバー達と共レコーディングに加わっているスーザフォン奏者なんですけど…。ま、どのみちニューオーリンズ色はほとんど感じられませんし、スーザフォンの見せ場もまったく無いんですけどね…。なんか“M.”とか“Sr.”とか付けられると誰なの?みたいな。別人だったらごめんなさい…。
さて、いよいよ明日ですね。私はカーク・ジョセフが大好きですが、生で観るのは多分初めて。って言うか、本当に来るのかまだ不安だったり。結構、蓋を開けてみるまで分からない的なものってありますよね。来てくれることを祈ります!!