ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

ブッカー・T. ジョーンズ

2010-02-10 20:33:30 | ルーツ・ロック
BOOKER T. / POTATO HOLE

先日のグラミー賞で『Best Pop Instrumental Album』部門に輝いたブッカー・T. ジョーンズの「Potato Hole」。ご存知スタックスのハウス・バンド、ブッカー・T&ザ・MG’Sのオルガン奏者です。約20年振りという久々のソロ・アルバムですし、キャリアと年齢を考えれば、枯れたブルース・アルバムとか、ゲスト・シンガーを多数呼んで往年のソウル・カヴァー集のような横綱相撲が予想されますが、これが若きサザン・ロック・バンド、ドライヴ・バイ・トラッカーズを従えての全曲インストによる意欲作。しかも全10曲中7曲がブッカー・T. のオリジナル。カヴァーの中にはアウトキャストの「Hey Ya」があったり。

ギラついたギター・サウンドとどこか人懐っこいブッカー・T.のオルガンが妙に合うんですよね。パターソン・フッドを中心としたドライヴ・バイ・トラッカーズの3人のギタリストに加え、今作にはほとんどの曲で二ール・ヤングがギターを弾いてるそうです。「Native New Yorker」や「Warped Sister」では分厚いギター・リフとオルガンの絡みが相当に気持ちいい。どんなにギターが歪んでいようがブッカー・T. はマイ・ペース。そこがこのアルバムの肝なのです。アーシーな緩さから滲み出るソウルは昔と変わりません。

もちろん「She Breaks」や「Nan」、「Reunion Time」のような柔らかい曲もちゃんとありまして、こういった曲でのサザン・フィーリング豊かなブッカー・T. のオルガンはまた格別。最後を締める「Space City」は最高に染みます。まさにブッカー・T. の健在振りを知らしめたアルバムですね。


さて、そんなブッカー・T. は現在来日中であります。私は残念ながら行けませんでしたが、連日ブルーノート東京を沸かしているようです。確か今日が最終日でしたね。初日のセットリストがブルーノート東京の公式サイトにアップされていました。この最新作からの楽曲はもちろん、「Green Onions」、「Born Under A Bad Sign」、「Jamaica Song」、「The Dock Of The Bay」、「Soul Limbo」といった往年の名曲もガンガン演っているようなので、これは盛り上がったでしょうね。そして終盤の「Time Is Tight」。名曲ですよね。この曲は私もフジロックで生体験しましたが、ホント最高でした。

ブッカー・T. を私が生で観たのは、今のところそのフジロックの1回だけです。しかも終盤の数曲だけ。だってファンキー・ミーターズと被ってたんですよ~。ですがその数曲だけでも観れて良かったです。現在のブッカー・T. のサウンドがフジの雰囲気と溶け合った、自由で幸せな盛り上がりが最高でした。今回の来日も行きたかったんですけどね~。きっとフジとはまた違う盛り上がりを見せたんしょうね。


ブッカー・T. と言えば、昨年はブッカー・T. & プリシラ名義による70年代の3作品が紙ジャケCD化されましたね。これも嬉しい限り。プリシラは当時のブッカー・T. の奥様で、リタ・クーリッジのお姉さんですね。


BOOKER T. & PRISCILLA / BOOKER T. & PRISCILLA
こちらは71年の1作目にして2枚組。バックにはジム・ケルトナー(ds)、クリス・エスリッジ(b)、ジェリー・マギー(g)、ジェシ・エド・デイヴィス(g)、スニーキー・ピート(steel g)といった、スワンプ、カントリー・ロック界隈の名手達が参加しています。この頃のブッカー・T. の交友関係が伺い知れますね。ブッカー・T. は暖かくソウルフルな歌声、プリシラはスケールの大きいスワンプ・ロックな歌唱と、それぞれの味わいが良いですね。曲目はグラム・パーソンズの「She」を取り上げたりもしていますが、ほとんどがブッカー・T. とプリシラの、それぞれ単独もしくは共作による楽曲。ちなみに二人の共作で「He」という曲もあります。これがまた良い曲なんですよね~。他にもブッカー・T. による「For Priscilla」や「The Wedding Song」なんて曲があったり、ジャケ写や中ジャケのポートレートも幸せ一杯な感じ。もちろん「The Delta Song」とか「Mississippi Voodoo」、「Funny Honey」のような南部臭プンプンの曲もあります。


BOOKER T. & PRISCILLA / CHRONICLES
夫婦名義による73年の3作目。多彩な広がりを見せるこのアルバムの注目は何と言ってもプリシラの妹であるリタ・クーリッジ作となる「Time」。デレク&ザ・ドミノスの代表曲「いとしのレイラ」の後半部分の元ネタと噂される曲。「いとしのレイラ」の作曲者はエリック・クラプトンとジム・ゴードンですが、そのジム・ゴードンはリタ・クーリッジと恋仲だったことがあることから、そう噂されているとか。なにしろそっくりなコード進行ではあります。私はそんな噂も含めて、どちらも大好きです。他にもディスコチックな「Wild Fox」や、マンドリンが印象的な「Rings Around The World」など個性的な曲が並びます。 ちなみに「The Crippled Crow」でハープを吹いてるのはボブ・ディランだそうです。

春フェス

2010-02-09 11:32:50 | フェス、イベント
フジロックの出演者第1弾発表までおそらくあと1ヶ月を切り、なんとなくそわそわしてきた今日この頃ですが、夏フェスの前に春フェスがあるんです! しかも今年はロキノンさんの JAPAN JAM 2010 や、クリマンさんの ROCKS TOKYO という、大きな春フェスも加わるようなので、一層このシーズンも充実しそうな雰囲気です。出演アーティストも続々と発表されつつありますので、関東近辺で行われるフェス/イベントのうち、気になるものをいくつかピックアップ。


JAPAN BLUES & SOUL CARNIVAL 2010 ~25周年記念スペシャル~
5月29日、30日 日比谷公演野外音楽堂
ソロモン・バーク、バーナード・アリソン、コーリー・ハリス、blues.the-butcher-590213、他
まずはこれでしょう! 毎年恒例のブルース&ソウル・カーニバルですが、今年は25周年と言うことで、ソウル界の生きる伝説と言える超大物ソロモン・バークがやってきます! 初来日ですからね~。これは絶対に見逃せません。コーリー・ハリスも楽しみです。
インフォメーション→http://www.mandicompany.co.jp/hp2010/live/js10/js10.html


GREENROOM FESTIVAL 10
5月22日、23日 横浜赤レンガ地区野外特設会場
Blue King Brown、BONJAH、The Ray Mann Three 、SOIL&"PIMP"SESSIONS、PE'Z、Double Famous、Dachambo、他
一度は行ってみたいグリーンルームは、音楽、アート、映像によるボードカルチャー・フェス。豪華だった昨年に比べると今のところ小粒な印象。とは言えまだ第1弾発表の段階ですけどね。まだこれからですね。
インフォメーション→http://www.greenroom.jp/


ウォッチング・ザ・スカイ '10
4月4日 日比谷公演野外音楽堂
ジョー・ヘンリー、ジェシー・ハリス、おおはた雄一、エミ・マイヤー、他
歌と花見の野外音楽フェスティバル。ジョー・ヘンリーというチョイスが素晴らしい! 昼間も気持ち良さそうですね。
インフォメーション→http://plankton.co.jp/wts/index.html 


KAIKOO POPWAVE FESTIVAL'10
4月10日、11日 晴海客船ターミナル特設ステージ
ソウル・フラワー・ユニオン、渋さ知らズオーケストラ、曽我部恵一BAND、石野卓球、toe、他
DJ系が中心と思たら、以外とバンド系も多いんですね。
インフォメーション→http://kaikoo.pop-group.net/


第9回 横浜西口ジャグバンド・フェスティバル 2010
4月10日 相鉄本多劇場、THUMBSUP、他
春待ちファミリーバンド、MAD WORDS、Little Fats & Swinging Hot Shot Party、Old Southern Jug Blowers、他
日本全国からジャグ・バンドの猛者達が多数集合する横浜の風物詩。去年は都合が悪くて行けなかったので、今年は何としても行きたいです!
インフォメーション→http://jugbandfes.vox.com/


Springfields '10 ~東京場所~
5月3日 日比谷公演野外音楽堂
細野晴臣、大貫妙子、キセル、星野源、他
東京場所の他に、大阪場所と九州場所があるようで微妙に出演者が違うのですが、個人的にはUAと矢野顕子が出る大阪場所に一番惹かれます。ちなみに細野晴臣は3場所全てに出演するようです。
インフォメーション→http://www.springfields.jp/


あとは、ROCKS TOKYO の詳細が気になりますね。それと渚音楽祭がお台場に復活するのも嬉しい。そういえばスプリングルーヴって今年は無いんですかね?

スーパーボウル

2010-02-09 01:42:28 | 余話
今朝、スーパーボウルの生中継を観ました。正直フットボールというスポーツを観るのは年一回、この時だけです。もちろん国歌斉唱とハーフタイム・ショーが楽しみで観るんですけど、今回はニューオリンズ・セインツが勝ち上がってきたということで、ニューオーリンズ音楽大好きな私といたしましては、応援せずにはいられないなと。ま、ルールも何も分からないんですけどね…。

国歌斉唱はキャリー・アンダーウッド。ちょっと地味な印象ですけど、アメリカでは人気あるんでしょうね。そしてハーフタイム・ショーは、ザ・フー。グラウンドならではの円形ステージで、ライティングも格好良かったですし、演奏にも気合いが感じられました。ただ残念なことに生中継では音声と映像がずれまくってましたけど…。再放送はどうだったのでしょうか?

で、試合結果はなんと、ニューオリンズ・セインツが勝ちました! 大方の予想では対戦相手であるインディアナポリス・コルツ有利ということだったそうですが、それを覆しての大勝利! カトリーナ被災後、こういうニュースは嬉しいですよね。これでまた一つニューオーリンズが元気になってくれるいいな~。

それにしてもアメリカンフットボールって、凄い迫力ですね。


ランブリン・ジャック・エリオット

2010-02-07 16:43:48 | ブルース
RAMBLIN' JACK ELLIOTT / A STRAGER HERE

先日のグラミー賞で『Best Traditional Blues Album』 部門を受賞したランブリン・ジャック・エリオットの最新作「A STRAGER HERE」です。

フォークの神様ウッディ・ガスリーの継承者にして、かのボブ・ディランにも多大な影響を与えたというランブリン・ジャック・エリオット。彼がジョー・ヘンリーをプロデューサーに向かえ、ブラインド・レモン・ジェファソン、レヴァレンド・ゲイリー・デイヴィス、ロニー・ジョンソン、ブラインド・ウィリー・ジョンソン、ミシシッピ・ジョン・ハート、サン・ハウス、タンパ・レッドなど、まだブルースが得体の知れない魔力を秘めていた時代の巨匠達の曲を歌った作品です。ジョー・ヘンリー曰く「大恐慌の時代が生んだカントリー・ブルース」を。

しかし、ただフォーク・シンガーがブルースを歌ってみました、という作品ではありません。何せプロデューサーは現在のルーツ・ミュージック・シーンにおいて最も重要なプロデューサーといっても良いジョー・ヘンリーですから。ソロモン・バークの「DON'T GIVE UP ON ME」とか、ベティ・ラヴェットの「I'VE GOT OWN HELL TO RAISE」とか、エルヴィス・コステロ&アラン・トゥーサンの「THE RIVER IN REVERSE」とか、コンピレーション盤「I BELIEVE TO MY SOUL」とか。もちろん、シンガー・ソング・ライターとして自身の作品も大変評価の高い人でもありますけどね。で、このジョー・ヘンリー、09年はランブリン・ジャック・エリオットのこの作品と並んでアラン・トゥーサンの「THE BRIGHT MISSISSIPPI」をプロデュースしたことも話題になりましたね。

その「THE BRIGHT MISSISSIPPI」ではトゥーサンに古き良きニューオーリンズ・ジャズの世界を持ちかけ、ドン・バイロン、マーク・リーボウ、ジェイ・ベルローズといった一癖も二癖もありそうなバック・メンバーを配し、トラディショナルな息吹を現代世界の音楽として見事に甦らせました。

そしてジャック・エリオットのこの作品も構図的には似ています。彼をフォークではなくブルースの世界へ迷い込ませ、バックにはグレッグ・リーズ、デヴィッド・ピルチ、ジェイ・ベルローズ、ヴァン・ダイク・パークスといった、いかにもジョー・ヘンリー作品らしい面子に、ロス・ロボスのデヴィッド・ヒダルゴも加わっています。彼らの奏でるブルースは、確かにブルースなのでしょうが、一口にブルースとは言い切れないボーダーレスな広がりを持ち、ノスタルジック且つロマンチックでありながら退廃的でダークな色彩を放っています。ジャック・エリオットのしゃがれ声も、年輪を感じさせる渋みの中にうっすらと陰を感じさせる味わい深い響きを持っています。

例えばデルタの魔力が込められたようなサン・ハウスの「Grinnin' In Your Face」では、深く沈むようなリズムに絡む、不安感を煽るような鍵盤の響き、そしてその上を沈鬱に唸るジャック・エリオットの歌唱は相当に深い。ブラインド・ウィリー・ジョンソンの「Soul Of A Man」では、彼の枯れていながらも凛とした歌声もさることながら、グレッグ・リーズのスライドがまるで神秘的な魂を呼び起こすかのようで素晴らしい! そして抗えようのない死について歌ったレヴァレンド・ゲイリー・デイヴィスの「Death Don't Have No Mercy」は、悲しげなリズムのうねりと諦観したようなジャック・エリオットの歌声に惹き込まれます。さらにリロイ・カーの「How Long Blues」ではデヴィッド・ヒダルゴのアコーディオンが酩酊する曲調に華を添える。そしてこれら陰影の濃い曲の狭間に朗らかなカントリー・ブルース「Richland Women Blues」があったりするところがまた憎いですね。

それにしてもジェイ・ベルローズとデヴィッド・ピルチによるリズム隊は良い仕事してますね。このアルバムが特別なのはこの二人によるところが大きいのでは? 二人の奏でるリズムには何処か時代を超越したトリップ感があります。これは私達が知る由もないあの時代のアメリカを、現代のフィルターを通して覗いたような作品かもしれません。

1931年ニューヨークに生まれ、カウボーイに憧れ14歳で家出。ワシントンDCでロデオの馬の世話係をしつつ、ロデオショーの道化師からギターと歌を習う。その後一旦家に戻るも、ウッディ・ガスリーの歌をラジオで聴いたのをきっかけに、ウッディに会いにいき、供に暮らし、供に全米中を旅したという、そんなジャック・エリオットの生き方こそ、私達の知らないあの時代のアメリカそのものであり、だからこそ、このアルバムでのジャック・エリオットの歌声には、そういう時代のアメリカを語るにふさわしい説得力があるのかもしれません。


~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!


 07.01.26 グラミー特集:ランブリン・ジャック・エリオット(「I STAND ALONE」)
惜しくも受賞は逃したものの、06年度のグラミー賞で『Best Traditional Folk Album』にノミネートされた前作「I STAND ALONE」。弾き語り中心の素朴な作品なれど、デヴィッド・ヒダルゴをはじめ、ネルス・クライン、フリー、コリン・タッカー、ルシンダ・ウィリアムスなど、興味深いゲストも参加。実は私、正直申しますと新作よりこちらの方が好きだったりします。

1月の10枚

2010-02-05 09:29:54 | Weblog
数日遅れではありますが、月末恒例の今月の10枚。新譜、旧譜にこだわらず、単純に今月良く聴いた、印象に残った10枚を選んでみました。


MITTY COLLIER / MITTY COLLIER SINGS TO GOD
年明け早々「CHICAGO; Blues & Soul Showdown」はディープでした。まさかミッティ・コリアが生で観れるとは!


JOHNNY RAWLS / ACE OF SPADES
ジョニー・ロウルズも良かった!


BYTHER SMITH / ALL NIGHT LONG
インパクトではこの人が一番だったかも。


NORAH JONES / THE FALL
ノラ・ジョーンズも来日してたんですよね。残念ながらライヴには当たりませんでしたが、いくつかのテレビ番組でキュートな姿が観れて良かったです。


ALICIA KEYS / THE ELEMENT OF FREEDOM
なんだかんだで結構聴いてます。


BUCKWHEAT ZYDECO / LAY YOUR BURDEN DOWN
ザディコ界の巨人によるニュー・アルバム。ロックありレゲエありなミクスチャーです。


LEVON HELM BAND / @MERLEFEST
一応、当ブログによる09年年間ベスト1位なので。


LIVE! / MARCIA BALL
年始のタワレコ・クリアランスセールで買ったなかの一枚。これ最高です!


HAROLD MELVIN & THE BLUE NOTES / HAROLD MELVIN & THE BLUE NOTES
テディ・ペンダグラスが亡くなられてしまいましたね。彼が在籍したハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツの「二人の絆」。


BOBBY CHARLES / HOMEMADE CHARLES
そしてボビー・チャールズも…。悲しいですね。

グラミー賞受賞結果あれこれ

2010-02-04 16:24:36 | フェス、イベント
LEVON HELM / ELECTRIC DIRT

とりあえず、グラミー賞の結果を私の気になるところだけでもまとめておこうかと。

まずは『Best Americana Album』部門。

・Bob Dylan / Together Through Life
受賞・Levon Helm / Electric Dirt
・Willie Nelson & Asleep At The Wheel / Willie And The Wheel
・Wilco / Wilco (The Album)
・Lucinda Williams / Little Honey

「ルーツな日記」的大激戦区。個人的な予想はボブ・ディラン、希望がレヴォン・ヘルムだったのですが、見事レヴォンが受賞!!どれが受賞しても文句は無いですが、レヴォンの受賞は嬉しいですね。


続いて『Best Traditional Blues Album』 部門

受賞・Ramblin' Jack Elliott / A Stranger Here
・The Mick Fleetwood Blues Band Featuring Rick Vito / Blue Again
・John Hammond / Rough & Tough
・Duke Robillard / Stomp! The Blues Tonight
・(Various Artists) / Chicago Blues: A Living History

ブルース部門ですから、ビリー・ボーイ・アーノルド、ビリー・ブランチ、カルロス・ジョンソンなどが参加した「Chicago Blues: A Living History」を応援していたのですが、受賞はしたのはランブリン・ジャック・エリオットでした。フォークの偉人がジョン・ヘンリーをプロデューサーに迎えたブルース作品です。これも素晴らしいアルバムだったので納得です。


『Best Contemporary Blues Album』部門

・The Robert Cray Band / This Time
・Ruthie Foster / The Truth According To Ruthie Foster
・Mavis Staples / Live: Hope At The Hideout
・Susan Tedeschi / Back To The River
受賞・The Derek Trucks Band / Already Free

ここも個人的な大激戦区。やはりブルース部門ということを考えると、ロバート・クレイに獲って欲しかったのですが、デレク・トラックス・バンドでしたね。ま、内容的には誰がとっても納得です。


『Best Bluegrass Album』部門はジム・ローダーデイルの「COULD WE GET ANY CLOSER?」を予想していたのですが、スティーヴ・マーティンの「THE CROW: NEW SONGS FOR THE FIVE-STRING」でした。このスティーヴ・マーティンってコメディアンとか俳優を本業にしている方で、ビヨンセが出演した映画「ピンクパンサー」でクルーゾー警部を演じていた人ですね。で、このアルバムは彼がヴィンス・ギル、ドリー・パートン、アール・スクラッグスなどを招いて作られた作品のようですが、残念ながら私は未聴です。でもちょっと面白そう。

『Best Traditional Folk Album』部門はラウドン・ウェインライト3世によるチャーリー・プールのカヴァー集「HIGH WIDE & HANDSOME : THE CHARLIE POOLE PROJECT」。『Best Contemporary Folk Album』部門はスティーヴ・アールがタウンズ・ヴァンザントを取り上げた「TOWNES」と、この辺りは流石はグラミーな選出ですね。『Best Zydeco Or Cajun Music Album』はバックウィート・ザディコの「LAY YOUR BURDEN DOWN」。

『Best Country Instrumental Performance』のサラ・ジャロスは残念ながら受賞ならず。ま、これは仕方ないですね。ノミネートだけで充分です。『Best Jazz Instrumental Album, Individual Or Group』のアラン・トゥーサンも残念。ま、これも仕方ないかな…。ウィリー・ネルソンもボブ・ディランも今回は振るいませんでした。

アマドゥ・エ・マリアム、フェミ・クティ、オマー・ソーサなど興味深いアーティストが並んだ『Best Contemporary World Music Album』部門はベラ・フレックの「THROW DOWN YOUR HEART - TALES FROM THE ACOUSTIC PLANET VOL. 3 AFRICA SESSIONS』。天才バンジョー奏者によるアフリカン・ミュージシャンとのコラボ作ですね。このアルバムはピーター・バラカンさんも大絶賛しているので要チェックですね。

リトル・ウォルターの「THE COMPLETE CHESS MASTERS (1950-1967) 」は、あのウッドストック40周年ボックスを押さえて見事『Best Historical Album』部門を受賞しましたが、残念ながら「CADILLAC RECORDS」はサウンドトラック部門を逃しました。でもそのサントラからビヨンセの「At Last」が『Best Traditional R&B Vocal Performance』部門を受賞しました。

R&Bに関しては、そのビヨンセが全8つの部門のうち半分の4つを受賞。このフィールドに関してはノミネートされた全てで受賞しましたね。やはり強かった! そんななか『Best R&B Album』部門を受賞したマックスウェルは光っていますね。

ロック系では、キングス・オブ・レオンの快挙が一際輝いていますが、やはりブルース・スプリングスティーン、ジェフ・ベック、AC/DC、ジューダス・プリーストといったベテラン勢の受賞が目立ってますね。さらに『Best Boxed or Special Limited Edition Package』部門をニール・ヤングの例のボックスが獲っています。


なんだかんだで今年も面白いグラミー賞でした。来年はアリシア・キーズのあのアルバムがどう評価されるのか興味津々です。

グラミー賞授賞式

2010-02-02 16:05:14 | フェス、イベント
TAYLOR SWIFT / FEARLESS

グラミー賞授賞式、生中継を観ました!!

一番気になるのはやっぱりビヨンセの結果ですよね。主要部門の『Song Of The Year』を含む6部門の受賞。まあ、万々歳って訳でもないですが、主要部門を一つ取れたんですから良しとしましょう。でも正直、『Album Of The Year』を取って欲しかったな~、とも思うんですよね。で、その『Album Of The Year』を受賞したのはカントリー界の若きヒロイン、テイラー・スウィフトの「FEARLESS」(写真)。私は案外、テイラーが主要3部門全てを持っていくのではないかと思っていたのですが、ソングはビヨンセ、レコードはキングス・オブ・レオンでしたね。

そしてお楽しみのパフォーマンス、個人的にはやっぱりビヨンセですね。「Halo」を歌うのかと思ったら「If I Were A Boy」でしたね~。数曲でマルチ・ノミネートされているのに敢えてノミネートされてないこの曲を選んだ真意は分かりませんが、流石に気合い充分で格好良かったです。やはり最強です。それと3Dメガネをかけてマイケル・ジャクソン・トリビュートを楽しむ姿も微笑ましかったですね~。

新人賞を受賞したザック・ブラウン・バンドも良かったです。正直、新人賞にノミネートされるようなアーティストは、たとえカントリー系でもポップ色が強い印象があるグラミーなので、個人的にここはノー・チェックでした。しかし以外と土っぽいバンドなんで驚きました。レオン・ラッセルとの共演というのも良かったですが、何と言っても中心人物ザック・ブラウンのギターですよ!! あれは凄かった! アコギをあのアタックの強さでアレだけ速弾きするのは驚異的です。ある意味パンキッシュ。

驚いたと言えばレス・ポールのトリビュートでジェフ・ベックが登場しましたが、そこでヴォーカルをとったイメルダ・メイ。日本でも最近話題になっているアイルランド出身のロカビリー/ジャンプ/スウィング系の女性シンガーですけど、まさかグラミーに出てくるとは思っていなかったので、思わず身を乗り出してしまいました。ま、グラミーということもあってか上品な演出でしたけどね。出来れば彼女らしいパンチの効いた歌が聴きたかったな~と思ったり。

あとはマクスウェルですね。空間にソウルなフィーリングが染み入るような感じで素晴らしいパフォーマンスでした。後半にロバータ・フラックとの共演というのもグラミーならではでしたね。微妙に出だしを間違えた感はありましたけど…。共演と言えばメアリー・J. ブライジ&アンドレア・ボチェッリは聴きごたえありましたね。二人のリズムの感じ方がまるで違いながらも、ここぞというところはしっかり噛み合ってくる。そこがまたスリリングで素晴らしかったですね。それにしてもボチェッリは凄いですね。

全体的に、今回も共演企画が多かったとは言え、例年のような派手さより、各アーティストの個性を重視した、聴かせるパフォーマンスが多かったように思います。大掛かりなトリビュート企画もありませんでしたし。でも話題性先行の無闇やたらな共演が続く展開にも少々飽きてきた感があったので、個人的には好感がもてるショーでした。

パフォーマンス以外では、伝説のデルタ・ブルースマン、デヴィッド・ハニーボーイ・エドワードが印象的でした。この人には功労賞が贈られましたが、本人がちゃんと会場に来ていましたね。もう90歳を超えてますよね? 賞と拍手を送られてもほとんど表情を変えない、格好良い爺さんでした。

それと昨年亡くなられた方々を偲ぶコーナー。そこで初めて知りましたが、ケイト・マクギャリグルって亡くなられたんですね。カナダ生まれの姉妹フォーク・デュオ、ケイト&アナ・マクギャリグルの妹の方で、ルーファス・ウェインライト、マーサ・ウェインライトのお母さんですね。近年もエミルー・ハリスの作品なんかで素晴らしいコーラスを聴かせてくれていたのに…。まだ60代前半ですよね。残念です。毎年このコーナーは感慨深いですけど、スヌークス・イーグリンが映った時とか、テディ・ペンダグラスで拍手が起こった時とか、なんかジーンときちゃいましたね。でもエディ・ボやボビー・チャールズは出てきませんでしたね…。


次回は気になる受賞結果のマニアックなところを。

グラミー特集:デレク・トラックス・バンド

2010-02-01 02:11:46 | ブルース
THE DEREK TRUCKS BAND / ALREADY FREE

グラミー賞ノミネート特集も大詰めです。今回は『Best Contemporary Blues Album』部門。ブルース部門でありながら、ノミネート作品には胸を張って“ブルースだ!”と断言出来るアルバムは少なかったりするのですが、そんな疑問はともかくとして、素晴らしい作品が並びました。個人的には『Best Americana Album』部門と並ぶ激戦区です。ノミネート作品は以下の通り。

The Robert Cray Band / This Time
Ruthie Foster / The Truth According To Ruthie Foster
Mavis Staples / Live: Hope At The Hideout
Susan Tedeschi / Back To The River
The Derek Trucks Band / Already Free

この中から昨年はロバート・クレイ、ルーシー・フォスター、デレク・トラックス・バンドと3組も来日している訳ですから、日本も良い時代になりましたよね~。ロバート・クレイのこの新作はなかなかの力作で、円熟度を増した歌心溢れるブルース・ギターはかなり響きます。そしてメイヴィス・ステイプルスは現在新たな全盛期を迎えているのではないでしょうかね? このライヴ盤で聴ける迫力の低音ヴォイスは素晴らしいの一言!

でもここで取り上げるのはデレク・トラックス・バンド。ちなみに一緒にノミネートされているスーザン・テデスキはデレク・トラックスの奥様です。って言うか夫婦揃ってそれぞれの作品で同時に同じ部門にノミネートされるのって、案外珍しいのではないですかね? で、仲良くそれぞれの作品に客演しているところが微笑ましいです。

さて、デレク・トラックス・バンドの「ALREADY FREE」。これだけ気持ちの良いアルバムはなかなか無いと思います。ブルース、ソウル、ロック、ゴスペル、ラーガなど多彩なエッセンスをオーガニックにブレンドした芳醇なバンド・サウンド。その音には喜びが溢れています。そして一丸となって高揚していく感じが堪らない。その中心はもちろんデレクのスライド・ギターです。 彼のスライドはもう高く高く飛んでいく感じです。近年のギタリストの中では、音色とフレーズだけですぐに「この人」とわかる希有な存在ですね。

強烈なブギ・ナンバー「Get What You Deserve」、サザン・フィーリングと独特の浮遊感が秀逸な「Down Don't Bother Me」、ソウルフルな「Days Is Almost Gone」、ミシシッピの香りを漂わす「Don't Miss Me」など、ヴァラエティ豊かなオリジナル曲が良いですね。マイク・マティソンのスモーキーな歌声もエモーショナル豊か。ロック寄りのサウンドながらソウルの息吹を色濃く感じるのは、やはりマイク・マティソンの存在が大きいですよね。

そしてボブ・ディランの「Down In The Flood」やライヴで既にお馴染みのビッグ・メイベル「I Know」、ダン・ペンとスプーナー・オールダムによる「Sweet Inspiration」、ボーナス・トラックとして収録されたブラインド・ウィリー・ジョンソンの「Soul Of A Man」と、カヴァー作品も面白い。しかもどれもこれもデレク・トラックス色に染め抜かれています。

今作にはゲスト・プレイヤーも多く参加していますが、特筆すべきはデレクとはエリック・クラプトンのバンドで共にギターを弾いたドイル・ブラムホール。数曲でデレクと共作しプロデュースも務め、さらに2曲でリード・ヴォーカルも担当しています。そんな1曲「Our Love」は今作中最もフォーキーな高揚感を持った曲で、ブラムホールの歌声もなかなかなれど、後半のデレクのスライドが素晴らしい!! しかしどんな曲でもデレクの個性がハマるという事実はホント不思議ですね。

そしてもう一人、スーザン・テデスキです。デレクとウォーレン・ヘインズの共作曲「Back Where I Started」でリード・ヴォーカルを取っています。土っぽく素晴らしい歌声ですね。それにしてもこの曲、良い曲ですね。デレクはアコギをスライドさせてるんですけどこれがまた良い味わいなんですよ。いつか夫婦共演盤なんかも作って欲しいですね。





SUSAN TEDESCHI / BACK TO THE RIVER
こちらはスーザン・テデスキの08年最新作「BACK TO THE RIVER」。サザン・ロックと南部ソウルを併せたような力強い作品。デレク・トラックスが4曲でスライド・ギターを披露。ドイル・ブラムホールも参加。