●ソングライティング・チームのジェイ・リヴィングストン&レイ・エヴァンス(『モナリザ』、『ケセラセラ』等の作者)に話を聞いたのですが、彼らはここ30年くらい優れたメロディーは書かれていないと言っていました。
--それはおそらく正しいね。と言うのも、今日の音楽を動かしているのがダンス・ミュージックだからだ。特に、リズムというものに対する概念が恐ろしく偏狭なアメリカ人にとって。アメリカ人を踊らせる典型的なダンス・リズムは、ほとんど行進曲のリズムと言って構わない。いっち、にぃ、いっち、にぃ…………。それ以上複雑になるとアメリカ人の足はこんがらがってしまうのさ。
つまり基本となる国粋主義的行進曲のビートの上に、平行5度か何かを(ヘヴィメタルにしたければ)ちりばめ、メロディーには8分音符より短い音は使わない。そして曲を通じて、何度も同じことを繰り返すことを忘れずに。だって尻を上げたり下げたりしながら半ば行進しているような状態の人間が、5つ以上の音のメロディーを理解できるわけがないじゃないか。
ここ最近で最も売れた曲を統計的に分析してみるがいいよ。使われている音数はあくまでも少なく、驚かされるコードは使われておらず、ビートはいっち、にぃ、いっち、にぃのはずだ。それをやって大金持ちになりたいというのなら、そう難しいことではないだろう。でも、優れたアメリカン・チューンを書きたいのだとしたら、その前に不動産免許を取っておけ、と俺は言うよ。
(中略)
●あなたは膨大な数の作品を発表しており、それらは今後も残っていくわけですよね。そのことに満足を感じますか?
--君が思うのとは違う意味でね。多分、俺が捉えているよりも多少ロマンティックに捉えているだろうから、君は。
●あなたはどのように捉えているのですか?
--例えば、社会的なトピックを扱った曲は、その当時、口にして語られるべきことだった。そこで述べられていたことは、今も真実ではあるし、今後もアメリカに出来損ないの政府と無知な宗教がはびこる限り、真実であり続けるだろう。そういう意味で、俺と似た視点を持つ人々を励ます社会的機能を果たすと思うんだ。
(フランク・ザッパ 1987年/
『INSPIRATION! インスピレーション』ポール・ソロ/丸山京子・訳/アミューズ・ブックス刊2001年)