昨夜はついに
THE SOLAR BUDOKAN。
2年間の活動休止から2009年末のTheatre Brook復活、翌年満を持して発表した前作『Intention』と、その時々タイジは「武道館でのライブ」を口にしていた。『Intention』はまさに武道館サイズ、スタジアムサイズなハードロックで、ファンは「2012年の武道館」を期待していたはずだ(正直Theatre Brookの単独ではなかなか難しいよなあ…と思いつつ)。
とにかくオレたちの「2012年末のTheatre Brookの武道館」は決まっていた。本音か冗談かは不明だが理由は“マヤ”だった(はずだ)。とにかく2012年は武道館だったのである。
しかし、そんな理由も吹き飛ぶような“現実”が起こる。
マヤ暦なんぞを待つこともなく、3.11で“世界”は変わってしまった。
2011年3月17日、下北沢・風知空知で行なわれる予定だった「Theatre Brook History's Bar~ありったけ語ります~episode.2」は、急遽
「東北地方太平洋沖地震チャリティライブ LIVE FOR NIPPON」とタイトルを変更し、まだ激しく余震が続く中(実際ライブ中、何回も揺れた)チャリティライブが行なわれた。オープニングでタイジとkenkenは「Helpless」を、Leyonaは「You've Got A Friend」を、武藤昭平とウエノコウジは出たばかりのアルバムから「キリンの首」など男気溢れる、鳥肌が立つような歌を、うつみようこは「満月の夕」を、そして「ずっとウソだった」を歌う前の斉藤和義は飛び入りで「歩いて帰ろう」と「歌うたいのバラッド」を感動的に歌った。
まだ状況はすべて同時進行で、ライブは慰霊とも怒りともつかないものになった。
しかし翌月4月14日に行なわれた
「3.11チャリティーライブ LIVE FOR NIPPON」(名称変更)では、震災後いち早く「Love For Nippon」というプロジェクトを立ち上げたキャンドル・ジュンがゲスト出演し、今回の武道館ライブ、THE SOLAR BUDOKANのきっかけとなる「YES」というキーワードを提案している(そもそも「LIVE FOR NIPPON」はキャンドル・ジュンの「Love For Nippon」からインスパイアされたものである)。
もう斉藤和義は「ずっとウソだった」を発表していたし、それを受けるようにタイジは「Rock'n in The Free World」を歌っていた。正直なところ個人的には「YES」などという心境にはなれなかったものの、震災、そして原発事故に対して湧き上がる「NO」という怒りと共に、次なるアクションとして「YES」はこのときにすでに差し出されていたわけだ。
マンスリーライブとなった「LIVE FOR NIPPON」での提案は回を重ねるごとに具体化し、「THE SOLAR BUDOKAN」へと巨大化していく。インディーズ電力も100% SOLARSもTAIJI at THE BONNETなど、佐藤タイジプロジェクトと称された各ユニットも2012年12月のSOLAR BUDOKANを目指しても一気に始動していくことになる。
(その後の詳細など等は↓)
そして2012年12月21日、THE SOLAR BUDOKANは目の前に現れた。
ニューアルバムから「キミを見てる」のインストをバックに、ビデオの中でタイジは「私たちの未来は私たちが作ることができる」と宣言する。そして本編のオープニングナンバーは、THE SOLAR BUDOKANの旅立ちの日に、これ以上ないTheatre Brookの名曲「まばたき」。オープニングアクトのときには空席が目立っていた客席もすっかり埋まり、ブドーカンの雰囲気は出来上がっていた。「Theatre Brookの武道館」を目の当たりにして最初から胸が熱くなってしまった(泣いた)。
以降Theatre Brookがハウスバンドとなり、各ゲストが歌うという豪華なフェスになった。特にタイジはオープニングアクトから数えれば3時間30分、ほとんど休むことなくギターを弾き続けた。
とんでもない武道館童貞の「筆下ろし」である。
ほぼ全編見所なのでノーカット版でのソフト化を期待したいところだが(WOWOWで来年3月放送予定、らしい)、特にアコースティックセットのChar以降の盛り上がりは凄まじく、Theatre Brookをバックに吉川晃司、奥田民生、藤井フミヤ、斉藤和義といったソロヴォーカリストが畳み掛けていく展開は「武道館ロック」に相応しい。
そして、ゲストヴォーカリストとして最後に、「よォーこそ」と叫びながら登場したチャボが思いっきりSOLAR BUDOKANの理念を昇華させる。
タイジを労いつつ(スクリーンに俯くタイジの顔が映し出される)、タイジがリクエストした歌として、そして「タイジの意志がみんなに伝わるように」と、ここで畢生の名曲「ガルシアの風」を歌う。
ああ どうにもならぬ事など 何もなかったのです
ああ どうしようもない事など 何ひとつなかったのです
チャボを観るのも久しぶりだったけれども、武道館で観るのはいつ以来だろう。まったく、何で、相変わらず、そして武道館サイズであっても、こんなにも言葉のひとつひとつが伝わるんだろうと思った。このまま終わっても、それなりに楽しくて、充実したライブであったのは間違いないのだけれども、「タイジの意志がみんなに伝わるように」と歌った、この歌は、武道館のオーディエンスを一気にひとつにしてしまった。
オレたちには「どうにもならぬ事」も「どうしようもない事」など、「何ひとつない」のだ。そう思えたし、そう思わされた。
これはロックンロール・マジックです。
すべてが終わった後、タイジはTheatre Brookの4人だけをステージ上に残して「Theatre Brookの武道館」に幕を下ろした。そしてメンバーの一人ひとりに(文字通り)抱きついて喜びを表現した。
その感動的な光景にタイジの名前を叫ばずにはいられなかった。
【THE SOLAR BUDOKAN 2012.12.20セットリスト】
Opening
01.インディーズ電力(うつみようこ、佐藤タイジ、高野哲)/MY ATOM LOVER~レッツゴ―電力~オリジナル電力
02.The Sunpaulo(佐藤タイジ+森俊之)&沼澤尚/Close To You
03.Theatre Brook/まばたき
04.Leyona with Theatre Brook /Tone
05.和田唱(TRICERATOPS)with Theatre Brook/Fever
06.LOVE PSYCHEDELICO with Theatre Brook/LADY MADONNA 憂鬱なるスパイター~Rock'in the Free World
07.加藤登紀子 with Theatre Brook/愛と死のミュゼット
08.A 100% SOLARS(佐藤タイジ×Salyu)/together tonight
09.Salyu with A 100% SOLARS/新しいYES
10.田中和将(GRAPEVINE) with A 100% SOLARS/光について
11.TAIJI at THE BONNET(佐藤タイジ、ウエノコウジ、阿部耕作、うつみようこ、奥野真哉)&増子直純、田中和将/ROCK'N ROLL JEDI
12.増子直純(怒髪天) with TAIJI at THE BONNET/オトナノススメ
13.浜崎貴司&佐藤タイジ/幸せであるように
14.土屋公平&屋敷豪太、佐藤タイジ/Sunshine
15.Char&屋敷豪太、佐藤タイジ/Shin'You Shin'Day
16.Char&屋敷豪太、佐藤タイジ/SMOKY
17.吉川晃司 with Theatre Brook/1990
18.吉川晃司 with Theatre Brook/BOY'S LIFE
19.奧田民生 with Theatre Brook/ルート2
20.奧田民生 with Theatre Brook/マシマロ
21.藤井フミヤ with Theatre Brook、奥田民生/嵐の海
22.藤井フミヤ with Theatre Brook/Another Orion
23.斉藤和義 with Theatre Brook/歩いて帰ろう
24.斉藤和義 with Theatre Brook/やさしくなりたい
25.仲井戸“CHABO”麗市 with Theatre Brook/ガルシアの風
26.Theatre Brook/昨日よりちょっと
27.Theatre Brook/(最近の)ありったけの愛