■敦賀原発断層調査のポイント
<敦賀原発では、原子炉建屋から東に約三百㍍離れた敷地内を、長さ三十五㌔以上の活断層「浦底断層」が走っている。そこから無数の断層が枝分かれしていおり、一部は原子炉建屋の直下を走る。会合で、メンバーの鈴木康弘名古屋大教授は「近くに第一級の活断層があり、通常以上に安全性を重視した判断が必要」と指摘。千葉大の宮内崇裕教授は浦底断層が上下に数㍍ずれる可能性を指摘し「次に動いた時は、無数にある断層のうち、過去に動いていないものが連動することもあり得る」と述べた。現地調査は十二月一、二の両日、両氏のほか島崎邦彦委員長代理ら五人で実施される。>
(東京新聞11月28日付 「安全判断、より厳しく」敦賀断層 規制委調査団が提言)
<調査は、D-1破砕帯が浦底断層と連動して動くかどうかに主眼が置かれていたが、新たな活断層が認定されて、原発の再稼動が認められなくなる可能性も出てきた。(中略)調査後の会見で、チームの宮内崇裕千葉大学教授は「一、二回の変形が起きている。その変形は複雑で、もう一つの断層構造を考えないと(説明は)難しい」と、別の活断層が存在するかもしれないと指摘した(中略)規制委の島崎邦彦委員長代理は変形について「変形が確認されたこと、(変形部には)浦底断層を動かしている力と同じような力がかかったことの(チームの)認識は共通している」と述べた。>(東京新聞12月3日付 敦賀原発 新たな地層の変形確認/現地調査終わる 未知の活断層影響か)
<チームの五人は、敷地内を走る活断層「浦底断層」は今後も大きな地震を起こす可能性が高いとの認識で一致した。二日は、浦底断層から枝分かれした2号機直下につながっている「D-1破砕帯」などが連動して動くかどうか詳しく調べる。(中略)終了後の記者会見で、規制委の島崎邦彦委員長代理は「浦底断層が大変活動的な断層だと印象づけられた。それが原発敷地内にあることがかなり特殊だ」と指摘。千葉大の宮内崇裕教授も「一級の活断層という感想だ。これが大きく動くと、周辺でいろんなことが起きると直感した」と述べ。浦底以外にも未知の活断層が建屋近くを通っている可能性を示した。>
<原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理は、一日に始まった敦賀原発の初日の調査を終え、「見る場所が多く、検討しやすい」と手応えを口にした。(中略)意見が割れ、いまだに結論が出ない関西電力大飯原発(福井県おおい町)の現地調査とは対照的に、冗談を言い合う余裕もあった。>
(東京新聞12月2日付 敦賀原発 敷地内断層「大変活動的」/規制委チーム 大地震の恐れ指摘/「全員の感想共通」初日調査に手応え)
<原子力規制委員会は七日、地震や津波に関する新しい原発の設計基準を検討する有識者会議で、原発の直近に活断層がある場合、ほかの原発と同じ対策では不十分と判断する方針を明らかにした。(中略)新方針は、原子炉から約二百五十㍍東を「浦底断層」という活断層が走る日本原子力発電(原電)敦賀原発(福井県敦賀市)を念頭に置いている。規制委は来年七月をめどに新基準をまとめる。>
(東京新聞12月8日付 原発間近に活断層 設計基準を厳格化 規制委方針)
■再稼動が困難になった敦賀原発
(東京新聞12月11日付 敦賀原発 運転認めず/直下 活断層と判断 規制委チーム 廃炉強まる)
■敦賀原発をめぐる経緯
(東京新聞12月11日付 専門家全員が「クロ」)
■敦賀原発が廃炉と判断されたら…日本原子力発電への影響
<原電の敦賀原発で原子炉直下に活断層があると判断され、同原発の再稼動への道は事実上なくなった。(中略)原電は東京電力を筆頭株主(28・23%)に沖縄電力を除く電力九社が出資している。敦賀1、2号と東海第二原発(茨城県東海村)で発電した電気を東電や関西電力など五社に売電してきた。(中略)ところが、原発を動かせないとなれば、原発本体や核燃料の資産価値はゼロになり、その目減り分は損失として会計処理する必要が出てくる。さらには、廃炉費用の積み立て不足が二百七十四億円に上るという問題も浮上してくる。原発による発電しか業務のない日本原電の経営は直ちに行き詰る。(中略)政府関係者は「国有化を通じて日本原電を廃炉専門会社にするシナリオもある」と話し、政府が積極的に関与しなければいけなくなる可能性を示唆している。>(東京新聞12月11日付 廃炉なら 原電の経営直撃)
■原発再稼動についての各党のスタンス
(東京新聞12月12日付 敦賀活断層「クロ」 再稼動に焦点/民主「大飯問題だんまり」自民「原発政策に触れず」未来「自民時代のツケ」/即時停止は4党)
<規制委も法的な根拠に乏しい問題は認識しており、専門家チームで新しい安全基準を検討している。素案には活断層上の原発禁止規定が盛り込まれ、来年七月には、この基準が委員会規則として法令化される予定だ。ただし、中身の議論はこれから。既存の原発で活断層が見つかった場合の対応や、活断層と判断する具体的な基準、直下でなくとも活断層の危険が高いと判断される場合の対応など明確にすべき点は多い。>
(東京新聞12月12日付 政権交代、人選で変更も/規制委 運転停止や廃炉 議論予断許さず)
■敦賀原発第3、4号機の位置
(東京新聞12月12日付 規制委 敦賀増設計画には触れず/3、4号機 活断層から800㍍/1号機は運転禁止へ)
<首相は「規制委の判断を政府も尊重しないといけない。稼動しないと収益がなくなり、事業者の判断で廃炉にすることになると思う」と述べた。>
(東京新聞12月14日付 敦賀2号機下 活断層判断/首相が廃炉見通し)
<痕跡は敦賀半島東部の「猪ヶ池」で見つかった。池底の六地点で十六~二十一㍍のボーリング調査を実施。約五千~八千年前の地層で、津波の可能性を示す海にすむ藻の一種を含む地層を確認した。そのうち五千三百~五千六百年前の層は「津波による堆積物の可能性が高い」と判定した。日本原子力発電、日本原子力研究開発機構を含む三事業者は、津波と仮定しても「ほかに調査した周辺では同様の堆積物は見つかっていない」として、津波は小規模と結論づけた。(中略)昨年十二月と今年六月に津波は認められなかったと旧原子力安全・保安院に報告したが、「データが少ない」と追加調査を指示されていた。>(東京新聞12月19日付 若狭湾沿岸 津波の痕跡/「敦賀」近くで初)
<原電は「地下の岩盤に影響のない地層の局所的なずれで、活断層ではない」と主張しており、追加調査で活断層でないと証明する考え。計画ではボーリングで地下深部を調べ、断層が岩盤まで続いているか確認するほか、敦賀原発から数百㍍の至近距離にある活断層「浦底-柳ヶ瀬山断層帯(浦底断層)」との関連性も調査する。>(東京新聞12月19日付 敦賀原発の断層 追加調査を計画 日本原電)
■敦賀原発専門家チームの報告書のポイント
■敦賀原発 専門家チームが認めた活断層
(東京新聞12月29日付 敦賀原発「直下に活断層」大筋了承/規制委チーム 報告書案「クロ」明示)
■敦賀原発をめぐる今後の流れ
<原電の星野知彦開発計画室長「今後、われわれの意見を聞く場を設けるということで、有意義な会合だった」と語ったが、チームは質問に答えてもらうだけで、「主張」を聴く気はないという。星野氏は規制委側の方針を知り、「それは知らなかった」と動揺を隠せなかった。>(東京新聞12月29日付 最後通告 原電剣が峰/敦賀に活断層了承/自信の規制委、再稼動困難/東通、志賀など波及も)
<原子力規制委員会事務局の名雪哲夫原子力規制庁審議官(54)が1月22日、敦賀原発(福井県)の活断層問題で揺れる日本原子力発電(原電)幹部に対し、公表前の評価報告書の草案を渡していた。(中略)名雪氏は事務局のナンバー3で、地震・津波対策部門を取り仕切り、評価書草案の内容を書き直す職務権限をもっている。内部調査に名雪氏は「軽率だった」と話したという。規制委は1日付で名雪氏を訓告処分として
更迭、出身の文部科学省に出向させた。(中略)規制委ないのルールでは、電力会社など規制される側とは必ず2人以上で面談し、面談内容も後に公表することになっている。名雪氏は面談翌日に担当者に報告した。事務局の調査は、ほぼ名雪氏本人への聞き取りだけで、原電側からは事情を聴こうともしない。だが、森本次長は「本人は金銭の授受などはないと言っている。
内規違反だが法律違反ではない。名雪氏個人の問題だ」と述べ、追加調査はしない考えだ。>
(東京新聞2013年2月2日付 敦賀断層調査 規制庁幹部 情報漏えい/原電に評価報告書案)
<原電側は当初から、敦賀原発の断層調査で「意見表明の機会があれば準備のため、事前に評価書案を教えてほしい」と求めていた。名雪氏は「(調査メンバーの)先生方の了解が得られれば」と答えたという。問題となった22日の面会は、原電側が「断層調査への当社の考え方を、事前にお届けしたい」と面会の約束を入れたといい、名雪氏から「ドラフト(草案)だけど」と言われ、文書の提供を受けたという。>
(東京新聞2013年2月2日付 癒着構造断ち切れず 審議官漏えい/規制機関の信頼失墜/「本人の問題」で幕引き)
<原子力規制委員会事務局の名雪哲夫元審議官=更迭で文部科学省に出向=が昨年12月3日、面談した原電幹部に「(敦賀は)いい現地調査だった。他の調査の先例になる」と好印象を語っていたことが、原電への取材で分かった。>
(東京新聞2013年2月6日付 元審議官「いい現地調査だった」原電評価、漏えい一因か/業者あいさつも報告 規制委が内規改定検討)
■なかなか決まらない敦賀原発の断層評価
<チームの専門家たちは、自分たちが合意した見解に確信を持っており、報告書案をまとめた。予定外だった他の専門家からの意見聴取(査読)も終えたのになぜ報告書を正式決定し、規制委として敦賀原発2号機の運転の可否を決めないのか、足踏みの理由が分からない。名古屋大の鈴木康弘教授は「趣旨が分からない。規制委に付き合いきれないとの思いもある」と話した。東京学芸大の藤本光一郎准教授は「原電から新しいデータが出てきても、判断は変わらないだろう。中途半端な状況を長々と続けるのは良くない」と徒労感をにじませた。
3月下旬、自民党の会合で、規制委幹部たちが、もっと原電の反論を聞くよう迫られる場面もあった。専門家チームの千葉大大学院の宮内崇裕教授は、24日の会合について「政治的圧力があったか分からないが、原電のガス抜きの意味はあるだろう」と語った。>
(東京新聞2013年4月21日付 敦賀「活断層」結論足踏み 規制委に疑問の声/専門家意見一致4ヵ月)