LB9月号用の資料を探しに御茶の水等。
ついにリリースされた『
カンフーハッスル』購入。映画館で観たときにはシン(チャウ・シンチー)とアイス売りの少女・フォン(ホアン・シェンイー)との関係にちょっと違和感を覚えたりしていたのだけれども、DVDで改めて観ると淡い感じが伝わってわりといいス。それはともかくン・ジーホワ、シン・ユー、チウ・チーリンの豚小屋三達人のファイトシーンはやはり燃える。またスクリーンで観たいもんである。
中古盤屋で『VIBRA is BACK』を見つけたので購入。
90年春、野音の金網にしがみつきながら、この『VIBRA is BACK』に収められている『WABI SABI』や『HEAVY』といった楽曲を聴いていた。会場では
江戸アケミ追悼コンサートが開かれていて、オレと同じように、警備員に追い払われながら野音の金網越しに追悼コンサートに“参加”している連中が多くいた。誰かが歌った『タンゴ』に対して会場の女の子から悲痛な叫びが上がった瞬間は今でも忘れられない。その時の
近田春夫とVIBRASTONEのライブにはアケミ亡き後の日本のシーンを背負って立つくらいの意志を感じたものだし、事実その後数年の勢いは素晴らしかった。だから『VIBRA is BACK』を聴くと、あの90年前後のことが蘇ってくるのです。JAGATARAは終ってない。
(追記8月5日)
資料探しで古い『ミュージックマガジン』(90年6月号)を読んでいたら湯浅学氏の(短文だが)渾身のライブレポートがあった。
<会場で当日配られた参加者のコメント集の中のOTOの言葉「アケミが死んだことも、まだわかってないんだよね」が、自分には一番心にひっかかっている。場内は満員。入り切れない人が千人以上、場外で耳を傾けていたという。満員の参加者の群れに近田春夫はこう言った。「今日こんなに集まるんだったら、どうして生きているうちにもっと来ねえんだよ。俺は音楽評論家たちに言っているんだ」
俺は音楽評論家だ。しかしどこかで音楽評論家であることから逃げようとしてはいなかったか。そうだ。アケミのことを考えるたびに心が重くなるのは、自分が音楽評論家として何をしようとしているのか、その答を先へ先へ延ばしていたかったからではないのか。自分が可愛い、そりゃそうだ。可愛いから怒りをわざと萎えさせていたのだ。>(江戸アケミ追悼コンサート/湯浅学 『ミュージックマガジン』90年6月号)
また同じ号でいとうせいこうはヌスラット・ファテ・アリ・ハーンの会見録でこう書く。
<音楽のためにいう。音楽と戦える言葉のないやつは、今すぐ批評をやめろ。さもなければ、私が言葉で処刑する。>
スゲエ。
またもや同じ号で、ニューエストモデルの中川敬はインタビューにこう答える。
<「(江戸アケミの死は)ショックやった。真剣に考えてしまった。俺らも頑張るしかない。使命感が生まれたとか、そんなんでもない。もともとやろうとしていたことを、もっとちゃんとやらなあかん。のんびりやってる場合やない」>
<書けへんのや。ズバリ<ロック>を書けるライターがおらんのや。それが日本のロックの現状やねん。音楽誌っていうのが、聞く側のね、音楽を限定するぐらいの独裁があってもええんちゃう? それぐらいの時期を一度、通り越した方が。『ミュージック・マガジン』とか、それをやった方がええんとちゃうかと思うけどね。ま、やってる方やと思うけど。書き手も協力し合わなならん。“俺はこれをやってる”って自信持ってる奴らってのは、それを広めようという意識が低いねん。それを広めたらええ。音楽誌がね」>
<「時間がかかるんちゃうかな、(江戸アケミをどう書くかということは)日本のロックをどう書くかってことやから。誰も言えん。いいバンドが出て来なあかんし、(そういう状況を)変えたい、変えたい、もちろん」>
あるミュージシャンの資料をネットで探していたら、オレは係わっていなかったけれども、その頃務めていた会社が編集を請け負っていた音楽誌を休刊へ追い込むダイナマイトの導火線に火をつけた某ライターのページに辿り着いた。こういう事柄は当事者より周辺にいる人間の方が熱くなりがちだれけども、それを読んで当事者じゃないけど久々にあの頃を思い出し、熱くなりました。
この当時、上に挙げたような言葉は、この某ライターのような呑気なギョーカイ人に向けられていた刃だったのだと思う。当時の、オレの同僚たちはそれをわかりやすく(ポップとも言う)表現し、『ミュージック・マガジン』は某ライターには理解不能な表現で、同じ事を言っていたのだと思う。
ちなみに『タンゴ』を歌ったのは高田エージでした。
シオドア・スタージョン短編集『輝く断片』(河出書房新社)、『カンフー・ハッスル コレクターズエディション』、ZAZEN BOYS『himitsu girl's top secret』、東京ビートルズ『meet the 東京ビートルズ』、VA『フロム・リヴァプール・トゥ・トーキョー』、元ちとせ『故郷・美ら・思い』、CHIKADA HARUO & VIBRASTONE『VIBRA is BACK』、VA『大阪ソウルバラード番外編』購入。