日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

資本主義と核なき世界

2015年06月10日 09時25分57秒 | 日々雑感
 核不拡散条約(NPT)再検討会議は先月22日、約1ヶ月にわたる議論の成果をまとめた最終文書を採択できないまま閉幕した。日本が提案した広島、長崎への各国指導者らの訪問も、地名は削除されたものの趣旨は最終文面に盛り込まれるはずであったが、これも日の目を見ることなく終わった。
 NPTはそもそも核保有国の軍縮と非保有国への拡散防止が目的であるが、昨今のロシアや中国の軍事力を背景にした勢力拡大の動きや、また、既に核保有しているインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮がNPT非加盟国であり、その存在の意義が問われている。
 今回の再検討会議は決裂で終了したが、マスコミは核兵器の非人道性の声が高まったのが成果であると強調している。しかしむなしい限りだ。米国は中東非核地帯構想に関する国際会議の開催に反対するため、最終文書のとりまとめにも反対したとのことだ。この会議が開催されるとイスラエルの核保有が問題視されるとして、オバマ大統領が反対したからだとの報道もあった。
 オバマ大統領は核兵器廃絶を期待され、ノーベル平和賞を受けたが、この報道が本当であるならば返却すべきである。これからは、平和賞の選考委員は平和に関する実績重視で選考してもらいたい。例えば日本が憲法で戦争放棄し70年間軍事力を行使しなかったことを評価すべきである。
 一方、ロシアや中国は、未だに軍事力を頼りに勢力拡大を図っている。背景には西欧各国との経済格差があるのではないだろうか。冷戦時代が終わり、世界はほぼ資本主義で統一された。資本主義社会では、資本力のあるものが有利であることは、トマ・ピケティ氏の指摘を待つまでもない。ロシアや中国が自由資本主義の下で米国を始めとする西欧諸国との経済競争に勝つためには、資本主義の歴史が浅いこともあり、何かと不利に違いない。悪名高い金融工学なぞは、成熟した資本主義の下でしか生まれないであろう。これを補うためには昔ながらの軍事力が必要となるわけだ。
 国家間で問題が起こると、よく経済封鎖の話が持ち上がる。経済封鎖されると物資の不足から物価の高騰を招き、その国の経済を混乱、破綻させる。よって、経済封鎖は経済力の強い国が経済力の弱い国に対する戦争布告とみなすこともできる。この勝負においては直接的な戦死者はでないが、勝敗は始めから決まっている。経済封鎖は資本主義社会における、正当な戦争なのだ。そこでロシアや中国は経済力の弱さを軍事力で補強しようとしていると理解できる。
 このように考えると、資本力のあるものが必ず勝つとの原則がある自由資本主義が改まらない限り、軍事力、強いては核保有の効力は衰えず、NPTがいくら頑張っても犬の遠吠えであろう。(犬賀 大好-136)