先日リチウムイオン電池の発明に貢献した吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞した。電池の高性能化が地球温暖化に対する大きな社会的貢献であると評価されたのである。
さて、認知症の患者は世界に約5千万人、日本国内に約500万人いるそうだ。その7割を占めるアルツハイマー病は、脳の中に蓄積されるある種のたんぱく質が神経細胞を壊すことなどが直接の原因と考えられているが、なぜ蓄積されるかに関しては全く分かっていない。
若年性アルツハイマー病は、30歳から60歳の人に発症し、アルツハイマー病の人全体に占める割合は5%未満とわずかだが、これに関しては解明されつつあるようだ。このアルツハイマー病のほとんどは遺伝性であり、既知の3つの遺伝子のうちのいずれかの変化によって引き起こされるとのことだ。
アルツハイマー病の患者の大半は、通常60歳以降に発症する老年性のアルツハイマー病で、遺伝子との関連について多くの研究が行われいるようだ。ある種の遺伝子はアルツハイマー病発症リスクを上昇させると考えられているが、この遺伝子を保有しない人でもアルツハイマー病を発症する可能性があるそうで、本当のところは分かっていないのが現状だ。
若い時に、ボクシング等の過激なスポーツや交通事故で頭に衝撃を受けると数年から数十年して認知機能が低下することもあるそうで、発症原因を複雑化している。
兎も角、直接の原因が患者の脳に異常なたんぱく質が蓄積することは分かっていても、現在使用されている薬には、根本的に認知症の進行を止める働きはなく、脳で生き残っている神経細胞を活性化させ、覚えたり考えたりする働きをある程度保つ程度に過ぎないそうで、最終的には認知症は進行してしまうのだそうだ。
2013年に英国で開かれた主要8カ国の認知症サミットで、各国閣僚が2025年までに根本的な治療法を見い出すと共同宣言を出したようだが、根本治療薬はいまだ見つかっていないそうだ。それどころか米国研究製薬工業協会の報告書によると、2017年までの20年間で146の薬剤候補が開発中止に追い込まれたそうだ。
開発が進まない理由について、専門家は脳内に原因となる蛋白質がたまり始めてから症状が出るまでに10年~20年以上の長い時間がかかることをあげている。すなわち認知症と分かった時点では既に症状はかなり進行しており、初期の段階での対策や治療を困難にしているからだそうだ。
現在、アルツハイマーの症状を遅らせる等の治療に数種類の認知症薬が承認されているが、この副作用も問題となっているようだ。吐き気などの消化器症状が生じたり、精神症状などの副作用も出ることがあるそうだ。
高齢の認知症の患者は、ほぼ例外なくいろいろな病気を抱えており、複数の薬を飲んでいることが多く、薬の種類が6種類以上になると、副作用の発現が急激に高まるるそうで、問題を一層複雑化している。
認知症の根本治療薬の発明は、社会的貢献の点では間違いなくノーベル賞級の価値があるが難しそうである。2019.10.12(犬賀 大好-539)
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