4月1日、政府は異次元の少子化対策の試案を公表した。これまでの政権も同様な問題意識で何らかの対策を講じてきたが、出生率の回復等目的は達せられていない。岸田首相は ”少子化はこれ以上放置できない待ったなしの課題”と強調しているが、今回の試案においても、考えられるすべての項目を羅列しただけとの感が強く、また児童手当の拡充等多大な資金が必要となるにも拘らず財源の裏付けが無く、問題だらけである。
そもそも少子化対策がなぜ必要か。大別して2つある。生産人口の減少と日本民族の減少である。まず、人口の高齢化は生産年齢人口の減少であり生産量の減少あるいは消費量の減少、またサービスの低下となり、経済の停滞あるいは減退を招く。現在の人口は多過ぎで半数位が適当と主張する人もいるが、問題は年齢層の分布にあり、一番の問題は少数の若者が多くの高齢者を支えなくてはならないところにある。
また、子供の数が減ることから、子供の自主性や社会性育成における障害、子供の心身の発育過程において過保護・過干渉になり易いことや、幅広い人間関係を育む機会が減少し、自主性や社会性が育ちにくいこと等を指摘する声もある。
しかし、これらのリスクは、労働生産性の向上、教育環境の整備等により致命的とはならないだろう。例えば海外からの移民等により、大部分をカバーできるだろう。
しかし、日本民族あるいは日本人の減少となると、日本文化、伝統の継承の担い手が減少し、世界における日本の存在感が損なわれる可能性がある。これは、移民等によって不可能ではないが、困難であることは間違いない。
少子高齢化が叫ばれる近年、国内の企業のあいだでは募集をかけても採用できないと、人材の確保に苦労する声がある。厚生労働省が発表している有効求人倍率を見ると、2019年12月の有効求人倍率は1.57倍であり有効求人倍率が1を超えた2014年ごろから、国内の採用は売り手市場となっているのだ。
一方で、国内で働く外国人の数は右肩上がりで増えている。厚生労働省が発表している”「外国人雇用状況」の届出状況”によれば、2022年10月末時点で国内に滞在する外国人労働者数は182万人を突破し、2022年は過去最高記録を更新した。これは国内の人手不足の裏返しであり、技能実習制度だけでは間に合わず、2019年4月に入管法が改正され、新たに在留資格「特定技能」が創設された。人手不足が深刻な産業分野介護・農業・漁業・宿泊・外食業等の12業種において、外国人材の受け入れを可能にしたものだ。
政府も外国人の就労を促進する制度を新設しているが、労働者を送り出す発展国と日本の賃金格差は縮まりつつあり、今後日本で働く希望者は減っていくと予想される。特に昨今の円安状況では日本で働く魅力がなくなり、希望者が減るどころか逆に海外で働くことを希望する日本人が増えているとのことだ。
日本人の出生数は 2019年、86.5万人となり、昨年はついに80万人を割り込んだ。異次元少子化対策や子ども家庭庁の新設等でも出生率の回復は難しいだろう。経済の活性化を図るためには、出生率の増加より、移民の増加の方が現実的と思われる。2023.04.05(犬賀 大好ー903)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます