ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

耳を傾ける

2017-04-17 21:32:30 | 2015年4月以降の詩

だれかがなにかを語る

大きな声で私はこう思うと叫ぶ

あるいは

聴きとれないような小さな声でささやく

ふつうに何人かでテーブルを囲んで

ふつうの声量でおしゃべりする

聴きとる気もなくふつうに聞こえてしまう

聞こえたことを受け止めて語り返す

ふつうに対話が成り立つ

 

注意を集中しないと聴きとれないはかない声

聴きそびれても訊きかえすことのできない繊細さ

介入を差し控えてしまうかぼそさ

とぎれとぎれなのにすべてが分かってしまう

ああすべてが分かってしまう

 

ふつうにふつうにふつうに

念じれば念じるほど

はかなくかぼそく繊細に

伏し目がちに

消え入るようなからだ

透き通るような肌

 

美しい

 

ふつうにふつうにふつうに

途絶えた音信を再び繋げて

通じない通じない

通じる通じる通じる

 

樹木の太い枝に引っかかって

語りかける

語りだす

独白を

だれかに伝達する

かのように

 

海岸の樹木の太い枝に


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