ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

詩は美味に

2009-06-14 18:56:42 | 寓話集まで
詩は美味でなければならない
透明な洋梨の淡いゼリーのように

詩は美味でなくてはならない
霜降りの手間を惜しまぬ黒毛和牛のように

詩は美味であるべきだ
殻をこじ開けて海水で洗っただけの牡蠣のように

大量の海水を吸い込んで吐き出すうちに植物プランクトンを掬い取る牡蠣のように

沖合で昨日獲れて水揚げされたばかりの戻り鰹を切れ味の良い包丁で捌いて刺身にしてすりおろしたしょうがを載せて二年仕込みの生揚げしょうゆで喰らうように

戻り鰹の切り身の表面をさっとあぶって白くして薄くスライスしてオリーブオイルとバルサミコとバジルやら香草を振りかけてナイフとフォークで食すように

バターやミルクや仔牛のすね肉や丸ごとの玉葱や人参や小麦粉やらたっぷりと時間と人手をかけて煮込んでこね回したソースを舐めるように

塩を振って炭火で焼いてカボスあるいはスダチを絞って大根下ろしをたっぷり添えてしょうゆをかけた塩焼き秋刀魚のように

三枚に下ろして酢と塩で寝かして大根おろしと味噌と七味をからめた秋刀魚のぬたのように

さっと湯がいて鮮やかな緑に変わったところをポン酢で食べる若布のように

細切りにしたきゅうりを添えて酢と少々のしょうゆをかけたほやのように

クロマグロや南マグロのトロとは言わずともたっぷりと脂の乗ったびんちょうマグロやメカジキの刺身のように

時間と風にさらし干し上げかたちを整えたあげく水に戻して中国酒やさまざまなにおい消しや時間と手間をかけて味を調えたフカヒレのように

詩は鮮やかに事象を掬い取って美味でなくてはならない

詩は言葉を吟味して熟成させてチーズのように美味でなくてはならない

詩は
豊潤に熟成して
鮮やかに爽やかに
美味でなくてはならない


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
熟成か新鮮か ()
2010-05-31 23:00:00
 料理は、新鮮な素材をあまり手をかけずにささっと食べるのがいいのか、充分に手をかけてかつ熟成させて発酵させて食べるのがいいのか、ま、実際は、両方ありということですね。
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