ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

紅葉

2021-01-24 12:30:26 | 月刊ココア共和国 投稿詩
死ぬべきもの
つるべ落としに落ちる秋の陽の光を浴びて影を宿し
赤く燃える乾いた有機物
落ちるべきもの
朽ち果てるもの
朽ち果てて黄泉返るもの

ヴィオロンの音色が時雨のようにふり落ちていくかのように
ピストルの発射音が谷間の冷気を切り裂いていくかのように
〈とうとう〉とも言わず見つけ損ねた波浪の彼方の永遠まで
常立の綿津見のくにまで海洋神のくにまで水底の竜宮城まで

朱々と燃える西方からの浄らかな陽射しを受けて
西北の山脈から去来する木枯らしの洗礼を受けて
豊かな実りの代償にはらはらと身を落とす
腐食の果てに腐植物質となり替わり
黒鉄と結んで浮遊する植物質に
呑み込まれ取り込まれ
無機質と有機質と
無生物と生物と
ぐるぐると廻り続ける循環
無限の輪廻の円環

死ぬべきもの
赤く燃えて落ちて朽ち果てるもの
山から海に流れ落ちて黄泉返るもの


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