人間の
男として
女を愛する
女がかつてこう語った
「わたしたちは
墜ちたまま
それしかほかに
知らない仕方でむさぼりあった
シイツの草叢で
祖先たちの墓の上で」(新川和江 「地上の愛 より」第三連)
今
男として
女を愛することを語り直す
おれたちは
天上に昇ったり地獄に堕ちたりを繰り返しながらむさぼりあった
正しいことと誤ちと多様な方法を試みて愛し合った
シイツを皺寄せながら
フランスの歴史を辿りながらロシアの大地に接吻しながら
天使と娼婦を抱擁した
その果てに
人間の女を抱く
おれは
変数の男として(nとして)
変数の女を抱く(mを抱く)
月刊ココア共和国 9月号電子版佳作集Ⅱ掲載
※参照;この詩のインスピレーションの源。
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