ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

霧笛128号〈編集後記〉

2019-02-02 13:08:53 | 霧笛編集後記

〈編集後記〉

◆いつのまにか年が暮れる時節となった。こないだまで暑い日が続いていたのに。もはや冬至である。もっとも、一日のうちで朝方は寒いし、お昼過ぎは暖かくなる。最低気温同士で比べるわけではなく、最高気温同士で比べるわけでもない。午後暑かった日の数日後に朝寒い日が来る、というのはそれほど奇異なことではない。しかし、十二月に入って異常に暖かい日があった。南の方では三十度になんなんとする勢いであったようだ。これは異常気象の範疇ではあるかもしれない。で、だからどうだ、というわけでもない。最近、テレビで俳句を扱ったバラエティが人気を博しているらしいので、それに引かれたもの言いをしてしまったというところだ。

◆十二月二日、蔵王町で開催された「第三回加川広重アートプロジェクト絵画が伝える震災の記憶」のなかのイベント「詩とギターの響き」に、白石の詩人金子忠政氏のお声掛けで出演してきた。私と千田真紀の二人で、私の詩集「湾Ⅲ2011~14」から七編の詩を朗読した。加川広重氏の第一八共徳丸を描いた巨大絵画の前で、私のやはり第一八共徳丸を描いた「船」などの詩篇である。妻とふたりで朗読しながら、なにか圧倒的な力の臨界点において語らせられていたとでもいうような感覚であった。七つの詩篇は順に「水」、「半分はもとのまま」、「水と月」、「置く」、「船」、「旅」、「ありがとう」。手応えはあった。この日、詩の朗読は、須藤洋平、私たち、西田朋、やまうちあつし、金子忠政、その後、クラシックギターを吉田修氏が演奏した。絵の展示自体は、十一月二三日~十二月三日までで、二五日には、気仙沼のリアス・アーク美術館の山内宏泰副館長と加川氏のトークイベントも開催されたとのことである。

◆佐々木洋一さんから、一二六号をお送りした後お便りをいただいていた。「今号は特に充実した作品が多く「霧笛」のレベルの高さを感じました。遊人君中々いいですねー。及川さんの呼吸もいい。西城さんは、やはりベテランですね。安定感があります。」詩の先達からの有難い評価である。霧笛のレベルが高い、などとは、はじめての言葉ではないだろうか。

◆仙台演劇研究会通信「ACT」は、なかなか興味深い論考が並んでおり、楽しみにしている。一一月号には竹内英典さんの「詩人藤一也が残したひとつのこと―「リーメンシュナイダーの彼方に」を再読して―」が冒頭に掲載されている。宗教彫刻家リーメンシュナイダー、詩人にして牧師の藤一也、宗教改革、農民戦争などの宗教戦争のこと、竹内さんならではの深い思想が明らかなエセーである。

後半には、西田朋さんが、「原子炉に太陽を持ち込んでどうする!」と題して、堀口大學の詩「新春、人間に」を紹介されている。「君は原子炉に/太陽を飼いならした…君は科学の手で/神を殺すことができた」と原発のあやうさを告発するかのような詩である。実は、西田さんが蔵王町のイベントで紹介されていたのも、この詩のことであった。

◆熊本吉雄さんが今回はお休み。寛野泰子さんもまだ復帰ならず。


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