風がささやかに流れている
奥深い湾のなかを
波がわずかにたっている
桟橋を離れた船のまわり
気仙沼は海のまほろば
東の道の行きどまり
白い漁船たちの母なる港
終わりにして始まり
造船場の赤さびたクレーンと上架した漁船
湾奥に注ぐ川
魚市場
神明崎の猪狩神社と海のうえの浮見堂
気仙沼は海のまほろば
「なーんにもない」と言って
退屈な顔をする若い女
なーんにもないのなにがなになのか知ってるかい
(ドラマは自分で創るものだよレイディ
ダンスは自ら踊るもの
浮見堂で踊ってごらんおどけてごらん
みんな 笑うさ)
風がささやかに流れている
奥深い湾のなかを
え?
風がささやかに流れている
緑色に奥深い港である湾のなかを
もう一度
風がささやかに流れている
あふれだした若葉の緑色に奥深い漁船たちがあふれる港である湾のなかを
気仙沼は海のまほろば
閉じて開く二律背反の港
気仙沼は海のまほろば
船にあげた帆がはらはらと風をまっ向からはらむように海をはらむまち
※詩集湾Ⅱ Ⅰ感傷旅行 から
2014年の注:気仙沼演劇塾うを座の立ち上げは1999年だから、これはもちろん、そのずっと前の詩。ふるさと創生の「海の道」事業の前後、ということになる。
「海の道」とは何か、を書き始めると長くなるので、ネットで検索してみてください、と書くつもりで、ためしに検索してみたら、「気仙沼市風待ち観光のまちづくり推進事業」の報告書なるものが出てきた。
http://www.mlit.go.jp/crd/tayo/001/toshikanko/pdf/kesennuma.pdf
これ、実は私が書いたもの。書いた、というのは、まあ編集のアンカーマンとして書いた、みたいな。観光課の仕事として、実際に筆をとった(というか、キーボードを叩いた)のは私であることに間違いはない。なるほど、こんなふうに、ネット上に存在していたのか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます