ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

かくれんぼしましょあっぷっぷ

2015-02-01 21:20:50 | 詩集湾Ⅱ(1993年5月20日)

六月の晴れた午前

陽のあたる廊下の開け放たれたカーテンのかげにもぞもぞと動くものがある

 

― ねえ、××、どこに行ったの?いないわねえ どこに行っちゃったのかしら?

 

ママがパパに目くばせして廊下の隅を指さす

 

― おや、ほんとだ どこに行っちゃったんだろう?

 

晴れわたった六月の空

気持ちのいい風がガラス窓の外の物干し台を通り過ぎる

 

― ××くーん!

― ××!

― おーい!

 

もぞもぞと動くカーテンを

ママがそおっと持ち上げると

一歳と七ヶ月の男の子がむこうを向いて隠れている

 

― いないわねえ

― うーん、いない

― 変ねえ ここにいると思ったのにねえ

 

男の子は頭を半分まわして横目で不安そうにママとパパを見上げる

 

― ××くーん、どこに行ったのお?

 

遠くに呼びかけながらママは持ち上げたカーテンを手ばなす

 

― 変ねえ

― 変だなあ

― ブーブーでお出かけするのにねえ

 

六月の

陽のあたる廊下の開け放たれたカーテンがもぞもぞと動いて小さな男の子が駆け出してくる

キャッと声をあげて笑いだして

 

詩集湾Ⅱ 第Ⅳ章幻想旅行 から

 

2015年の注;第Ⅳ章は、この詩で終わる。


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