愚かなる ミダスの触れし 山鳩の 落ちて打ちつる 凡庸の闇
*わたしたちの歌う歌は、古今に習って古語を多用しますが、平安の昔と違うところは、西洋から流れてきた知識がふんだんにあることです。この教養も時に歌に詠みこむとおもしろいものができます。
ミダスというのは、ギリシャ神話に出てくる愚かな王様のことです。酒神バッカスに願って、自分の触れるものがすべて黄金になる魔法の力をもらった。それがどういうことになったかは皆さんもきっと知っているでしょう。
黄金が好きなあまり、なんでも黄金で解決しようとすれば、大変なことになるのだぞという神の戒めです。
要するに、なんでも金で解決できると思い込めば、大変なことになるということだ。
この時代は、馬鹿が大いに馬鹿をやって、人からいろんなものを盗んで勝手に自分の人生を作り、大繁栄したという時代でした。
本当は田舎で貧乏に暮らすはずだった人間が、無理矢理人から盗んで、大層な金持ちの家に生まれてきたという例などもそれはたくさんあるのです。
お金などというものも、裏の世界から操作すれば、たくさん自分のところに持って来れるものなのです。痛いことなどそれほどしないのに、なぜか潤沢な資金が手に入る。そういう人はほとんど、霊界的な方法で、他人からお金を盗んでいるのです。
芸能界なんかにたくさんいますよ。ただ猿のようにおかしなことをやっているだけなのに、なぜかすごくたくさんのお金が入るでしょう。ああいうことが、盗みなのですよ。
そうやって、馬鹿が金持ちになってやったことというのは、すばらしく馬鹿な方法で、美しい女性ばかり狙って、裏からみんなで馬鹿にして、自分の性欲の餌にしようとするということでした。
その結果はご存じの通り。何十年とばかなことをくりかえして、結局だれひとりとして美女は手に入らず、お金も使いつくして、貧乏のどん底に落ちた。
「山鳩」というのは、馬鹿が放つ愚かな知恵の隠喩です。金をつかませれば思い通りに動く軽いものという意も含めてあります。まあそんな、痛いアイテムを使って、女をものにしようとしたのだが。ことごとく通用しなかった。かえって、自分のやったことが自分に返り、たまらなく恥ずかしいことがみんなにばれた。
馬鹿は自分が馬鹿だとは思いもしなかった。実質、美人よりもずっと自分の方が賢いと思い込んでいた。最後まで現実から学ばなかった。美人の方が自分より賢かったら困るからです。
魔法の力ももう失せた。なにもかもを失った馬鹿な王様を振り返る者はいない。
馬鹿が金持ちになると、とんでもないことになるということです。