小諸 布引便り

信州の大自然に囲まれて、風を感じ、枝を眺めて、徒然に、社会戯評する日帰り温泉の湯治客です。愛犬の介護が終了しました。

陶淵明を新春に読む

2012年01月01日 | 書評・絵本
岩波書店発行の中国詩人選集は、吉川孝次郎、小川環樹の重鎮による編集校閲のもと、一海知義や、高橋和己等の注釈による定価が、未だ一冊300円程度の時代の本である。学生の頃、これらを、夜を徹して、よく読んだものである。その時、自分の好きだった詩を、ページの端を折ったり、特に、好んで、よく読んだ詩は、二重に、折ったりしておいた。時に応じて、人生の節目で、困難に直面した時や、決断をしなければならない時に、取り出して読んだ物である。李賀や、李商隠や、王維等も、よいが、とりわけ、陶淵明の詩は、内なる戦いと、精神の崇高さとを、その詩の中に、感じられてならない。飲酒の其の八が、二重に折られている。

  青松 東園に在り
  衆草 その姿を没す
  凝霜の異類をつくすこと
  卓然として高枝をあらわす
  林に連なるときは人覚(さと)らず
  独樹にして衆すなわち奇とす
  ささげる壺をふゆの枝に掛け
  遠望を時にまた為す
  わが生は夢幻の間
  何事ぞ塵羈につながる(注:塵にまみれたひもつきの生活などを強いられる)