【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

一冊未返却

2010-08-03 19:00:32 | Weblog
愛用の図書館。期限ぎりぎりに5冊を返却してから、いつもの巡回コースに乗って館内で本を物色し始めました。実は1冊はまだ読み切れていなくて貸出期間の延長を希望したら「あ、予約が入っています」とのことで予定が狂ってしまったのです。でも、ぐちゃぐちゃ言っても仕方ないので本棚から5冊を確保してカウンターへ持っていきます。ところが予想外のことばが私を出迎えました。「1冊がまだ未返却ですが……」。
あら? 私はいくつかの図書館を併用しているので、絶対によそのものと混じらないように返却直前に「その図書館から借りた本であること」と「冊数」とを2回(家を出る前と返却カウンターの前で)確認します。ですから返したことに自信はあるのですが、一応「タイトルは何です?」と確認します。するとさっき「予約が入ってます」で延長できなかった本。でも、予約が入っていることを確認するためには返却処理をしないといけないはず。
私と係員と、二人で「何が起きたんだ?」と一瞬呆然とします。ともかく双方でもう一回探してみることで話はまとまり、私は「限度数+1冊」借りだしたことにして帰宅しました。車の中や家の中も捜索をかけましたがやはりブツはありません。ところが数分後に図書館から電話が。申し訳なさそうな声で「こちらのミスでした。見つかりました」。しかもなぜか予約も入っていなかったそうで…… 不思議なこともあるものです。ただ、もう5冊借りているので、その本には私の予約を入れておいて、一週間以内に引き取りに行くことにしました。さあ、いそがしい。他の図書館の本も読みたいのに、ちょっと集中して読まなきゃ。

【ただいま読書中】『図書館長の休暇』ジェフ・アボット 著、 佐藤耕士 訳、 早川書房、1999年、940円(税別)

さすがに田舎町で連続殺人事件が1年に4回は多すぎると著者も思ったのでしょう。今回は舞台は島に移ります。
ミラボー図書館長ジョーダン・ポティートは、実の父ボブ・ドンのガーツ家一族再会の場に連れて行かれます。ボブ・ドンはこの際ジョーダンが自分の子どもであることを公表しようとしています。しかしそれを好まない人間も一族の中にはいました。「私生児は来るな」と脅迫状が送りつけられますが、それは島に行くことにためらいを感じていたジョーダンの背中を押すだけでした。
島には奇妙な緊張感が充満していました。ジョーダンは自分がその緊張感の焦点にいるわけではなさそうなことに気がつきます。なにか別のことが進行中のようなのです。そして、家長の末期癌でもうすぐ死ぬという告白と一家の毒舌と当てこすりと悪口の応酬の夕食の場で、最初の死者が出ます。自殺か他殺か、不明ですが、ジョーダンは例によって独自の捜査活動に着手します。しかしその過程で見つかるのは、ガーツ家の複雑(醜悪)な過去でした。過去に殺人事件が一つ(あるいは二つ、あるいは三つ)あった様子なのですが、そのことについて一族は沈黙を守っているようなのです。
さらに嵐の夜、殺人未遂事件が起きます。標的となったのは二人。そのうちの一人はジョーダンの恋人キャンディスでした。ジョーダンは怒りくるいますが、こんどはジョーダンが(またしても)命の危機に。
読んでいて、人間関係の微妙さが興味深く思えます。ジョーダンのことを大切に思っている人は、大切に思っているがゆえに遠慮して自分の本心をなかなかぶつけません。ところがジョーダンを嫌っている人は平気でずけずけと本心をぶつけます。ジョーダンは、親しい人の表情を読むことは大の得意のくせに、そういった他人の心の動きには無頓着です。このギャップが、笑える場合もあるし、もどかしく思える場合もあります。
結局事件は“一応”解決します。しかし、ジョーダンは大切なものを失ってしまいます。そのかわりといってよいか、大切なものも得たのですが。本シリーズは本作でおしまいのようですが、こんな終り方で良いのかもしれない、と私は思います。小さな町(と小さな島)にはちょっと殺人事件が多すぎましたもの。