【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

文系理系

2010-08-11 19:03:23 | Weblog
経済学部が「文系」なのは、ちょっと不思議な気がします。社会を扱う学問だから文系なのでしょうが、統計を駆使する学問のはずなので、半分は理系でも良いんじゃないか、と。そういえば医学部が「理系」なのも不思議です。生物学や物理学や化学が重要なのはわかりますが、法律や社会学や人間心理についても駆使する必要があるのだから文系に半分所属させても良いのではないかな。そういえば心理学は文系に分類されることが多いけれど、多変量解析を駆使する流派は半分理系?

【ただいま読書中】『文系でもわかるビジネス統計入門』内田学・兼子良久・斉藤嘉一 著、 東洋経済新報社、2010年、1800円(税別)

本書はタイトル通り「文系出身者のための統計学入門書」です。ですから文系出身者にはありがたいことに、ギリシア文字だの数式などは極力登場しないようにされています。
まずは分散と標準偏差で話はしずしずと始まります。単に「平均」だけでは大したことはわからない、と。そして少しずつ話は複雑になり、「標本」から「母集団」がどのくらい推定できるか(「母集団」を反映させた「標本」を得るためにはどうすればよいか」の話となります。もちろん標本が100%母集団を反映するわけはありません。ではどの程度で許容するか、と言えば、「95%」です。逆に言えば、世間一般の統計は「20回に1回は外すことは許容する」ことが前提になっているわけ。
また、重要な数字「1.96」が登場します。「データが正規分布するとき、全データの95%が含まれる区間は『平均±1.96×標準偏差』」の式です。さらに「自由度(標本数−1)」によって「1.96」が別の数字に差し替えられるのが「T分布」です。
さらに話は、多変量解析に進みます。この辺になると原理はとても難しいのですが、本書ではExcelに難しい処理は任せてしまっています。
だってここで重要なのは、「数字や式を覚えること」ではありません。統計の場合、たとえば「仮説を検証する」という概念や、「データが本当に正規分布をしているのかどうかの検討」、あるいは「回帰分析では相関のあるデータを複数用いることが大前提」であること、そういったことの理解が重要なのですから。
「統計って難しい」と思う人に、安心して勧められる本です。あくまで入門用ですので、Excelを使っていろいろ実習をした後はもうちょっと詳しい本に進むともっと理解が進むでしょう。