【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

古いSF/宇宙のスカイラーク

2010-08-07 17:49:07 | Weblog
私がSFを好きになったのは小学生の時、ジュール・ヴェルヌやアーサー・コナン・ドイルの作品によってでした。ただそのときには「彼らの作品」は好きでしたが、まだ「ジャンルとしてのSF」は意識していませんでした。私が「ジャンル」を意識するようになったのは中学の時、E・E・スミスのスカイラークシリーズによってです。以来全然読んではいませんでしたが、今回何を思ったか読んでみることにしました。さて、どんな感想になりますやら。

【ただいま読書中】『宇宙のスカイラーク』エドワード・E・スミス 著、 川口正吉 訳、 早川書房、1970年

ワシントンの研究所に勤務するリチャード・シートンは、廃液に含まれる未知の金属を研究していて、銅の原子エネルギーを瞬間的に解放する方法を偶然発見します。シートンは親友の大金持ちクレーンの援助を受けて研究と宇宙船の開発に着手します。
もうめちゃくちゃでございます、の世界です。産業スパイは暗躍し、完成したスカイラーク号は月まで1時間で行って帰るし(巨大な加速度にどうやって人体が耐えたのかは、謎です)、とうとうシートンの婚約者ドロシイは敵役の科学者デュケーン(冷静冷酷、計算だけで動く人)に誘拐されてわずか二日で235光年向こうに連れ去られてしまいます。アインシュタインさんが怒りくるいそうです。
しかしデュケーンの宇宙船は巨大暗黒星に捕まってしまいます。まだ1928年、「ブラックホール」という言葉はなかったはずの時代ですが、ほとんどそれに近い概念(光さえも逃げ出せない巨大重力井戸)をさらりと使うとは、著者はタダモノではありません。
地上でオートバイを乗り回していた(この行為が20世紀初めにはどのような社会的シンボルだったんでしょうね?)シートンは、スカイラーク号を駆ってデュケーンの宇宙船を捕捉し、中の人間を救助して全力で暗黒星から脱出します。しかしそれで燃料をほぼ使い切ってしまい、地球に帰る当てはありません。宇宙を彷徨うスカイラーク号の中では二組の恋愛が進行します。それと同時に“異物”としてまぎれ込んだデュケーンの動向が、読者の心をちくちくと刺激します。
当時のSFではおなじみのシーン、行く先々の惑星で、異星の生物が次々登場してきます。
しかし、コンダールで作られたアレナック合金製の宇宙船は、鋼鉄の500倍の強靱さを持つ透明で継ぎ目などないワンピースの船殻です。ノウンスペースシリーズ(ニーヴン)のパペッティア人の「絶対壊れない宇宙船船殻」を思い出すじゃありませんか。透明な船殻にペンキを塗って壁や床にし、塗り残したところを窓にするところもそっくりです。
中学以来私はずっとSFファンを自認していますが、こうして40年以上経ってから私をSFの世界に連れ込んだ古い作品と再会すると、今でも楽しめる、それも昔とは違った楽しみ方ができるのが意外でした。これはレンズマンや火星のプリンセスなんかも再読する必要があるかな?