【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

円高・株安

2010-08-26 18:40:50 | Weblog
最近円高と株安が進行しています。円が高くなると言うことは世界から見て「円」に買いたくなる(絶対的なものではなくて相対的なものでも)魅力があるということです。しかし株価が安くなると言うことは、日本経済は高い評価を与えられていないと言うことです。だったら円を買っている人は結局日本の何を買っているのでしょう?

【ただいま読書中】『イエズス会士中国書簡集(2)雍正編』矢沢利彦 編訳、 平凡社(東洋文庫190)、1971年

本書では雍正(ようせい)時代の蘇努(すぬ)一族迫害事件が主に述べられます。
第一書簡は1724年北京のド・マイヤーが書いたものです。福建省の教会で、男女が混合して集会を持っていることと若い娘が童貞を守る(結婚を禁じられる)ことが求められること、が「風紀紊乱である」と咎められ「キリスト教は禁止するべきだ」という上奏文が皇帝に提出されたのです。教会側は巻き返し運動を始めます。公式のルートから上奏文を出すだけではなくて、宮廷内の有力者のコネを使ったり役人を買収したりして、皇帝の目に触れる文書が自分たちにとって有利なものになるように工作します。その甲斐あって皇帝から直々に好意的な言葉を頂きますが、それは実は“プロローグ”でしかありませんでした。
雍正帝は清の第五代皇帝でしたが、本書によれば当時初代皇帝の血を引く公子は2000人いたそうです。当然権力闘争は熾烈だったことでしょう。雍正帝自身、皇位継承についてはよからぬ噂が囁かれていました。そこで行なわれるのが、弾圧です。皇位継承のライバルになりそうな自分の弟二人を「犬」「豚」と改名させて監禁しています(それでも呂后の「人豚」よりははるかにマシですが)。
教会は、宮廷でも大きな勢力を誇る蘇努一族を着々と取り込んでいました。長老の蘇努は、一族の動きに一定の理解を示しつつも、皇帝の目をはばかって自らは入信しようとはしませんでしたが、公子たちは次々と入信します。それは宮廷の中ではひどく人目を引く行為でした。
蘇努は突然「罪」を問われます。まずは「祖先の罪」。次が蘇努自身の行為ですが、かつて先帝が皇太子を廃嫡して新しい皇太子を撰ぶときの投票で第八皇子に投票したこと(実はこのときの投票は満場一致だったのですが)。さらに、皇帝が気に入らない人物が死去したとき弔問の使者を送ったこと。もう無理矢理の難癖です。
私は織田信長が佐久間信盛に突然突きつけた十七箇条の問責を思い起こします。ここで問われているのは、文書上の罪責ではないな、と。
実際、一族がキリスト教に入信しようとしていたことが、迫害の理由でした。ただし「宗教」を迫害の理由にするのは「文化国家」の皇帝にはふさわしいことではありません。そこでまずは“大きな罪”を問い、ついで、上奏文中の批判の言葉や日付の殴り書きなどを「不敬」として、叛乱罪を適用、男系子孫には次々死刑や永久監禁が言い渡されたのです。なんとも“権力者のやり口”ですな。