【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

地獄の責め苦

2010-08-23 18:58:00 | Weblog
「悪いことをしたら地獄に落とされるぞ」は、仏教でもキリスト教でも聞いたことがあります。ただ、仏教の方はともかく、キリスト教の場合には悪人に地獄はそんなに悪い場所なのでしょうか。『失楽園』によれば、地獄は悪魔(あるいは堕天使)の“場”です。ということは「反・神」の根城。そんなところに悪人(=神の教えに反した人間)がやって来たら、悪魔は虐めるどころか「おお、同志よ」と歓迎して、将来のハルマゲドンでの戦線形成に努めるのではないでしょうか。「味方の戦力」を虐め殺すほど悪魔は頭が悪くはないと思いますよ。

【ただいま読書中】『オペレーション外宇宙』マレイ・ラインスター 著、 野田昌宏 訳、 早川書房、1969年

1954年(昭和29年)の作品です。日本ではNHKのほかにNTVが開局したばかりでテレビ受像器はまだ15万台。アメリカでもやっとカラー放送が始まったばかりの時でした。
地球が人口爆発でぎゅう詰めとなっている時代、人気テレビ番組のプロデューサー、ジェッド・コクランは急に月出張を命じられます。使命は、社の重役の娘婿ダブニーの欲求不満(世界的な名声を得たい)を解決すること。ダブニーはなんと超光速の通信手段を開発したというのです。コクランは派手な宣伝を思いつきますが、話は意外な展開を見せ、“ビジネス”としての恒星間宇宙旅行開発計画が転がり始めます。原理は“簡単”です。ダブニー場によって宇宙船周囲の空間を変化させてその中を飛行すれば、外からは速度が光速を越えていくらでも増加させることが可能。アインシュタインも真っ青です。
しかし「“テレビ屋”がプロデュースする世界初の恒星間宇宙飛行」ですよ。訳者は大笑いしながら翻訳をしていたのではないでしょうか。それともこの時にはまだテレビ屋ではなかったのかな。
とりあえず当てずっぽうで月面を出発した宇宙船は、とんでもないスピードだったため、宇宙の迷子になってしまいます。ただ、超光速の通信手段を持っていたため、撮った写真を地球で解析してもらって現在位置がわかります。地球から178.3光年の地点、というか宙点。コクランは宇宙からの生中継を開始します。もちろん「スポンサー契約」をすませてから、ですが。彼はこの宇宙飛行で一山当てるつもりなのです。それも、とてつもなく大きな「山」を。
新しい惑星に着陸した彼らが発見したのは、すでに地球では失われた「大自然」でした。私個人としては、このあとの惑星めぐりはもう付け足しです。商業主義での宇宙開発、スポンサーをいかに獲得するか、「宇宙の映像」がいかに地球上の人に受けるか、などだけでも私は十分“満腹”です。アポロ11号の時、全世界の人がテレビに釘付けになったのは1969年のことですが、その時地球を覆った“ムード”を予言した本と言っても良いでしょう。