【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

ツイッター

2010-08-21 13:51:04 | Weblog
twiceはトゥワイスなのに、twitterはツイッターなんですね。
ともあれ始めてみました。息子がやっているのを見ていると、まるで昔のチャットのような使い方をしている場面があって驚きました。ただ、チャットと違うのは、フォローとかリツイートがないと全体の発言をすべて拾うことができないこと(できるのかもしれませんが、私も息子もまだ初心者なのでやり方がわかりません)。ぼちぼち呟き始めてはみましたが、息子も父親にフォローされているとは、気の毒なことです。

【ただいま読書中】『襲いくるウイルスHHV-6 ──体内に潜む見えない侵入者を追う』ニコラス・レガシュ 著、 二階堂行彦 訳、 ニュートンプレス、2000年、2800円(税別)

1987年にNCI(米国国立がん研究所)では、エイズ患者が特にかかりやすいB細胞(抗体産生を担当)のリンパ腫の誘因となるHBLV(ヒトB細胞リンパ腫ウイルス)を分離しました。すぐにそれは新種のヘルペスウイルスで、T4細胞なども標的にすることがわかり、HHVー6(ヒトヘルペスウイルス6型)と命名されました。翌年(HIV発見論争で有名な)ロバート・ギャロは、HHVー6が試験管の中ではHIVより効率的にT4細胞を殺すことを述べ、このウイルスがエイズの「共同因子」であることを示唆しますが、のちに「反HIV派(エイズの原因はHIVではない、と主張する人たち)」から「共同因子が必要ということは、HIVがエイズの“原因”ではない、ということだ」と言われて、ギャロは自分の主張を取り下げます。
1980年代後半、「HIVがエイズの原因か」に関して激烈な論争が行なわれていました。高名な学者デューズバーグは、ギャロを批判して「HIVが免疫不全を引きおこすのではなくて、免疫不全になったからHIVなどの本来無害なレトロウイルスの反応が誘発される」と主張しました(もっと極端に、HIVの存在そのものに疑問を投げかける意見さえありました)。そしてギャロたちはそれに対して有効な反論ができない状態でした。当時「HIVが免疫細胞を殺している証拠」は誰も持っていなかったのですから。しかし、HHVー6が免疫細胞を殺している証拠はいくらでもあったのです。
ヘルペスウイルスは、感染が治癒した後も体内に潜伏してしばらく経ってから再活性化することがあります(その代表が帯状疱疹)。ならば多くの人が体内に持っているHHVー6も、再活性化することがあるのでしょうか。
本書の“主人公”は、ウィスコンシン医科大学ウイルス診断学研究所所長のキャリガンとその共同研究者、ノックスです。彼らは何らかの免疫力低下をきっかけとしてHHVー6が再活性化し、体内でたくさんの臓器を標的に暴れまくるのではないか、という仮説を立てます。
二人の“旅”は“ドラマ”ですが、ノックス自身もまた「ドラマ」の持ち主です。もともとはキャリガンに雇われた検査技師だったのですがその能力を買われて研究室で抜擢され、大学院に行って学位を取って公式な共同研究者になり、さらにキャリガンが欠いているプレゼンテーション能力を生かして補助金を獲得したり講演旅行をしたり、の人生になっています(ついでですが、五児の母でもあります。で、金集めなどで研究の時間が減らされるのが苦痛でしかたない様子)。
しかし、キャリガンたちの研究は、学界からは無視されました。「エイズの原因は、HIV」というドグマが1990年代に確立し、それに異議を申し立てる研究には補助金がつかなかったのです。さらにヘルペスウイルス自体がありふれたウイルスであるため、それに対する新たな研究にも補助金はつきませんでした。
「偶然の出会い」によって、キャリガンとノックスは、多発性硬化症患者や慢性疲労症候群患者の体内でもHHVー6の活性が高まっている(それらの病気ではない患者では高まっていない)ことを明らかにしますが、結局彼らは大学から追放されました。二人は間借りで私立の研究所を立ち上げ、研究を続けます。それは同時に、生き残りのための戦いでもありました。学者としての生き残りのために研究成果を出さなければならず、そのためには資金を集めなければならず、そのためには実績を示さなければならず、でもそのためには資金が必要で……科学の進歩って、ほんとに大変です。