私が子ども時代には、親父のタバコを買うのは私の仕事でした。お金を渡されて街角のタバコ屋でピースを買って、そのお釣りでガムを買うのが楽しみでした。ところがある日、タバコ屋が閉まっていてピースが買えませんでした。そこで私はどうしたか。ちゃっかりガムだけ買って帰ったのです。親には叱られました。お使いができなかったのに、お駄賃だけ取るとは何ごとだ、と。でも、今にして思うと、笑いながら叱っていたように思います。というか、今私がその親の立場だったら、笑い転げているかも。
【ただいま読書中】『禁煙外来の子どもたち』高橋裕子 著、 東京書籍、2002年、1500円(税別)
映画「小さな恋のメロディ」には印象的なシーンがいくつもありましたが、その中の一つが、小学校の運動場での子どもたちの喫煙シーンです。「あんな子どもが」と「堂々と校庭で」の両方で私は驚きました。
しかし、日本でも未成年の喫煙は大きな問題になっています。1996年の全国調査では、高校三年男子の喫煙率は37%、女子は15%。初めて喫煙した年齢が小学校低学年である人がけっこうな率なのだそうです。
日本で小学生の喫煙が問題になったのは、100年以上前のことです。1900年頃には「くじ付き煙草」が発売されていて、一等賞品が自転車の煙草には子どもたちまで群がり、それはいかがなものか、と「幼者喫煙禁止法」が1900年(明治33年)に制定されました。これが現在の「未成年者喫煙禁止法」です。ついでですが、売春は防止法なのに、喫煙は禁止法というのは、面白いですね。
未成年者は成人よりもニコチン中毒になりやすいと言われています。さらに問題は、早く死ぬこと。喫煙を早く始めるほど死亡率が高まるのです。さらに、病気も増えます。本書にはちょいと衝撃的なグラフがありますが、15歳未満で喫煙を始めた人は、50代で心臓死する確率が、非喫煙者の10倍以上となるのです。(癌で死ぬ確率は約4倍)
子どもたちはなぜ煙草に手を出すのか。「家庭環境」とか「性格」とか「ストレス」とか、様々なことが巷では言われていますが、本書では「好奇心」と「なんとかく」が多いそうです。家庭に喫煙者がいるとその吸い殻や開封済みの煙草の箱から、と煙草の入手は楽ですが、喫煙者がいない家庭でも喫煙者になる子どもがいることから、本書では「家庭環境が絶対的な因子とは言えない」「『特殊な子ども』ではなくて、どこの子どもでも喫煙者になり得る」と推定しています。
入試会場は禁煙だし、喫煙しているところを見つかったら不合格になるのは目に見えている。だから入試の一日だけ煙草を喫わずにすむパッチを一枚売ってくれ、と中学生の親が著者の外来にやってきます。毎年大体20人は来るそうです。で、高校3年間も、煙草が見つからないように親子で頑張るんですかねえ。
未成年者は成人よりも簡単に煙草依存になってしまいます。成人よりはるかに短期間に依存になります。しかし、禁煙は意外に簡単です。成人よりはるかに短期間で離脱ができます。問題は、再喫煙。ニコチン依存からの脱却の難しさに加えて、未成熟な友人関係から生じる諸問題が再喫煙の引き金になるのです。つまり煙草依存には社会依存もあるのです。著者の外来でも1年の禁煙が続く未成年は1割だそうです。そこで著者は、ネットを活用した取り組みを始めます。つまり「本人」だけではなくて「社会」にも努力を求める態度です。ただ、こういった問題から目を逸らす人が多い社会では、まずは「小学生の喫煙がある」「それはその人の一生に悪い影響がある」ことを啓蒙することから始めないといけないでしょうけれど。
【ただいま読書中】『禁煙外来の子どもたち』高橋裕子 著、 東京書籍、2002年、1500円(税別)
映画「小さな恋のメロディ」には印象的なシーンがいくつもありましたが、その中の一つが、小学校の運動場での子どもたちの喫煙シーンです。「あんな子どもが」と「堂々と校庭で」の両方で私は驚きました。
しかし、日本でも未成年の喫煙は大きな問題になっています。1996年の全国調査では、高校三年男子の喫煙率は37%、女子は15%。初めて喫煙した年齢が小学校低学年である人がけっこうな率なのだそうです。
日本で小学生の喫煙が問題になったのは、100年以上前のことです。1900年頃には「くじ付き煙草」が発売されていて、一等賞品が自転車の煙草には子どもたちまで群がり、それはいかがなものか、と「幼者喫煙禁止法」が1900年(明治33年)に制定されました。これが現在の「未成年者喫煙禁止法」です。ついでですが、売春は防止法なのに、喫煙は禁止法というのは、面白いですね。
未成年者は成人よりもニコチン中毒になりやすいと言われています。さらに問題は、早く死ぬこと。喫煙を早く始めるほど死亡率が高まるのです。さらに、病気も増えます。本書にはちょいと衝撃的なグラフがありますが、15歳未満で喫煙を始めた人は、50代で心臓死する確率が、非喫煙者の10倍以上となるのです。(癌で死ぬ確率は約4倍)
子どもたちはなぜ煙草に手を出すのか。「家庭環境」とか「性格」とか「ストレス」とか、様々なことが巷では言われていますが、本書では「好奇心」と「なんとかく」が多いそうです。家庭に喫煙者がいるとその吸い殻や開封済みの煙草の箱から、と煙草の入手は楽ですが、喫煙者がいない家庭でも喫煙者になる子どもがいることから、本書では「家庭環境が絶対的な因子とは言えない」「『特殊な子ども』ではなくて、どこの子どもでも喫煙者になり得る」と推定しています。
入試会場は禁煙だし、喫煙しているところを見つかったら不合格になるのは目に見えている。だから入試の一日だけ煙草を喫わずにすむパッチを一枚売ってくれ、と中学生の親が著者の外来にやってきます。毎年大体20人は来るそうです。で、高校3年間も、煙草が見つからないように親子で頑張るんですかねえ。
未成年者は成人よりも簡単に煙草依存になってしまいます。成人よりはるかに短期間に依存になります。しかし、禁煙は意外に簡単です。成人よりはるかに短期間で離脱ができます。問題は、再喫煙。ニコチン依存からの脱却の難しさに加えて、未成熟な友人関係から生じる諸問題が再喫煙の引き金になるのです。つまり煙草依存には社会依存もあるのです。著者の外来でも1年の禁煙が続く未成年は1割だそうです。そこで著者は、ネットを活用した取り組みを始めます。つまり「本人」だけではなくて「社会」にも努力を求める態度です。ただ、こういった問題から目を逸らす人が多い社会では、まずは「小学生の喫煙がある」「それはその人の一生に悪い影響がある」ことを啓蒙することから始めないといけないでしょうけれど。