次の選挙での「公約」「マニフェスト」はけっこう気を使って作る必要がありますね。必ず「財源は?」というツッコミが入ることが予想されますから。
あ、財源なしでできる公約がありました。憲法改正。
【ただいま読書中】『旅の仲間(下2)(指輪物語4)』J・R・R・トールキン 著、 瀬田貞二・田中明子 訳、 評論社文庫、1992年(2002年7刷)、700円(税別)
モリアでオークの大軍に襲われた指輪隊の一行は、地獄の番人のような怪物バルログとの戦いでガンダルフを失います。しかしその犠牲と引き替えに彼らは地下から地上への脱出を果たします。悲しんでいる暇はありません。オークたちは追跡をやめません。さらに、サルマンとサウロンも手下を放っています。四面楚歌どころではありません。
一行は、森のエルフの領域に逃げ込みます。ここでなら(一時的とは言え)安息が得られるはず。
本書では、本筋以外に様々なサイドストーリーが展開するのですが、その中でも好きなのが、敵対しているドワーフとエルフの間に友情が芽生えることです。最初は礼儀正しくはあるが冷ややかな関係だったのが、お互いのことを知るにつれ少しずつ両者が心を開いていく過程は、まるで純文学を読んでいるような気分にさせられます。純文学にエルフもドワーフも登場しませんけれどね。
エルフの女王ガラドリエルと一行との別れのシーンの美しさには、素直に泣けます。人って、美の前でも泣けるんですね。
一行は小舟に分乗して大河を下ります。川面に美しくないものが登場します。この旅の間ずっと一行につきまとっているゴクリです。かつての指輪の持ち主、心だけではなくて体までもが醜く変えられてしまったゴクリは指輪に対する妄念と執着だけで生きているのです。
浅瀬に阻まれた一行を、オークの集団が襲撃します。もちろん狙いは「ホビット」と「指輪」。さらに一行の中にも“敵”がいました。人間の王国ゴンドールは王が不在のため執政が支配しています。現執政はデネソールでその長男ボロミアがたまたまモルドールとの戦いに関して助言を求めにエルロンドの館を訪れ、その縁で旅の仲間に加わっていました。しかし、ボロミアはアラゴルンが王の血筋であることからゴンドールが本来の王国に戻って自分たちが「支配者」から「臣下」に落ちることを恐れ、さらに指輪の「力」に目がくらんでしまいます。ボロミアはフロドに指輪を渡すように強要し、恐れたフロドは姿を消します。一行はフロドを探してバラバラになってしまいます。
やれやれ、内輪もめをやっている場合じゃあ無いんですけどねえ。でも、ボロミアのいかにも「人間らしい」心と体の動きには、(賛成はしませんが)私にも一部共感を覚える部分はあります。だから彼のことを単純に憎めないんだよなあ。