マスコミなどで3年前に「二大政党制」「政権交代」と大喜びで言っていた人たちが、今は「第三極」とやはり大喜びで言っているような気がします。その根底に共通してあるのは「現状否定」?
中学の社会科だったか高校の政治経済かで世界の政治について習ったときに、英米は二大政党制・ソ連をはじめとする共産主義国家は一党独裁・イタリアは政党が乱立してつねに連立政権、と私は覚えました。イタリアの場合、かつて統一国家ではなくて都市国家の集合体であったことが影響しているのかもしれませんが、ともかく何回選挙を繰り返しても安定政権ができずに政治が不安定だ、ということでした。対して日本は、一党独裁ではないが自民党の安定政権が続いていて、難点もあるが安定性と継続性という点では安心できる、ということだったはずです。
で、現在の「第三極」での離合集散を見ると、日本は英米の二大政党を目指していたはずなのに、到達したのはイタリアだった、ということだったんですね。だったら、今日本人が学ぶべきは、経験豊富なイタリア人のライフスタイル?
【ただいま読書中】『流産の医学 ──仕組み、治療法、最善のケア』ジョン・コーエン 著、 藤井知行 監修、谷垣曉美 訳、 みすず書房、2007年、3000円(税別)
まずクイズです。「甲さんは今回が初めての妊娠、乙さんは今まで3回連続流産をして今回が4回目の妊娠です。ではこのお二人、どちらの方が今回の妊娠で流産をする確率が高いでしょうか?」
回答は「どちらもほぼ30%」。
著者夫妻は、4回繰り返した流産に打ちのめされました。その仮定で二人は山ほど流産に関するデタラメを聞かされました。著者は、自分たちが苦しんでいたときにまさに欲しかった本を、自分で書くことにしたのです。
着床前の胚を含む摘出子宮の研究から、受精卵の半数にはなんらかの異常があることがわかりました。また、大規模な女性の尿中hCG検査から受精卵が着床して「おめでたです」となっても31%は何らかの原因で流産することがわかりました。着床さえできない受精卵の異常を考えると、たとえ受精してもその半数は出産にはつながらない、と本書では計算されています。すると「3回連続流産の率」は12.5%!
流産物の研究からは、流産例の半数に染色体異常があることもわかります。しかし残りの半数にはありません。染色体異常の大きな原因は、卵の減数分裂のトラブル。そしてそのトラブルは卵が“老化”するにつれて増加します。「老化」と書きましたがそれは単純な「肉体年齢」のことではありません。「閉経にどのくらい近づいているか」です。閉経は、女性の体に残っている卵がどんどん減少して1000個くらいになったときに起きます。卵の貯蔵がたっぷりある女性は染色体異常を起こしにくいのです。
ここで一つの教訓が得られます。流産を繰り返す人に、様々な高価で不愉快な医学検査が行なわれます。しかしそれが必要なのは、染色体が正常な胎児を流産する人に対してだけ、なのです。「染色体異常」と「母胎の問題」は分けて考える必要があるのです。
「流産の原因」は様々なことが喧伝されていますが、実はそのほとんどは根拠のないあやしいものであることが本書では容赦なく暴かれていきます。著者は、論文の原著者や主張を最初にした人の所に実際に行って「その主張の根拠は?」と聞いているだけなのですが。
著者は「達人のケア」を見学します。いくつかの反復流産クリニックで働く達人の、流産に苦しむ人に対応するさまざまなケアとサポートに、著者は「話す犬を見たよう」と感想を漏らします。
そして最後の「奇蹟の子」。ここはルポというより、良質の短編小説を読むような感想をもちました。医学と人の関りで、人が単に科学技術にコントロールされるだけの“弱者”ではないこと、人の価値は人の本質にこそあることがここには示されているように私には思えます。