アベノミクスによると、これからの10年間で国民一人あたりの所得は150万円増えるのだそうです。もちろん所得が増えることは歓迎ですよ。ただ、所得は倍になったが税率(消費税と累進税率の所得税)も倍・物価も倍、というのは、勘弁願います。少なくとも消費税と累進税率の分は“貧乏”になりますので。
それにしても、安倍さんの“講演”を聞いていると、小学生が夏休みの前に「早寝早起きをする。宿題は7月中に片付ける。自由研究はすごいことを2つはする。毎日ラジオ体操をする。毎日プールに行く。毎日図書館にも行って本を読む。毎日友達と外で遊んで体を鍛える。毎日……」と盛りだくさんすぎる「夏休みの計画」を立てている姿を私は連想します。
【ただいま読書中】『ゾンビ経済学 ──死に損ないの5つの経済思想』ジョン・クイギン 著、 山形浩生 訳、 筑摩書房、2012年、2600円(税別)
本書で取り上げられる「ゾンビ経済学」は以下の5つです。
「大中庸時代」1985年に始まる時期は、前代未聞のマクロ経済安定の時期だった。
「効率的市場仮説」金融市場がつける価格はあらゆる投資の価値に関する可能な限り採鉱の推計である。
「動学的確率的一般均衡(DSGE)」マクロ経済分析は、マクロ指標(貿易収支や債務水準)ではなくて、個人の行動に関するミクロ経済的モデルから厳密に導かれるべき。
「トリクルダウン経済」金持ちにとって有益な政策は最終的には万人の役に立つ。
「民営化」政府が行なっているあらゆる機能は民間企業の方が上手くこなせる。
それぞれが一世を風靡し、現実世界の経済にも大きな影響を与えた発想ですが結局失敗し、それなのにまだゾンビとして生き延びているものばかりだそうです(別名として「サッチャリズム」「レーガノミクス」「ネオリベラリズム」「市場自由主義」などなど)。そういえば日本でも、中曽根政権の「第三セクター」、小泉政権の「郵政民営化」などの例がありました。いまだにそのゾンビにしがみついている人もいるようですが(というか、なかなか息の根を止められないからこそ「ゾンビ」なのでしょう)。
本書を読んでいて感じるのはゾンビの“信者”に「現状追認」「好景気の時の思考停止」「自己弁護」「歴史に学ばない」などの姿勢がやたらと見えることです。というか、そもそも経済学は「学」の名前に値するものなのでしょうか。私は「科学哲学」での「反証可能性(ポパー)」を連想しますが、経済“学”の世界では「実証」「検証」「反証」などの作業は厳密には行なわれず、ただ「信念」と「論証」だけがあるのかな、と思えてきました。少なくとも“信者”が「イデオロギー」を語るのではなくて、「学の人」が「ロゴス」で「経済」を語ってもらいたいものです。
ところでアベノミクス、まさか「ゾンビ」と関係はしていないでしょうね。「成長」「イノベーション」という「20世紀の発想」から一歩も出ていないように私には感じられるのですが。