【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

パチンコ

2013-06-07 06:45:21 | Weblog

 私がパチンコを覚えた頃は、玉一個の貸し賃は2円で、一発一発手ではじく形式の台でした。素人ながら釘をじっくり読んでやっていたので、トータルではとんとんくらいの成績でしたっけ。乏しいお小遣いでやっていたので、負けるわけにはいかなかったのです。
 学校を卒業するのと同時にパチンコも卒業したので、最近の電動式の台とかスロットとかはちっともわかりません。あ、学校が何学校かは、秘匿します。たぶん時効だとは思いますが。

【ただいま読書中】『ギャンブル大国ニッポン』古川美穂 著、 岩波書店(岩波ブックレット862)、2013年、500円(税別)

 2011年暮れころ、「被災地でパチンコが大盛況らしい。そのため住民の間で軋轢が生まれている」と著者は耳にします。震災の被災地でアルコール依存が多発することは、阪神淡路や中越で知られていましたし、東日本大震災でもそれは同様でした。しかしパチンコとは? 12年3月、著者は東北に入り各地を歩きます。被災地のパチンコ店はたしかに大繁盛でした。場所によっては仮設住宅に隣接した土地にパチンコ店があって、朝から行列ができていたりします。
 生活の基盤を根こそぎ奪われ、狭い仮設住宅ですることもなく時間を過している人々。補償や失業保険や義捐金でとりあえずの日銭を持ってしまった人の一部は、たしかにパチンコ屋に入り浸っていました。ただ、酒も飲まずパチンコもしない被災者が著者にこう問いかけます。「我々はお酒も遊びも一切我慢しなければならないのですか?」。
 ギャンブルをする人は「アクション型(スリルを楽しむ)」と「逃避型(つらい現実から逃げる)」に大別されるそうです。さらに、動機は何であれ、ギャンブルを繰り返す内に依存症となる人がいます。ところがこの依存症、表からは見えづらい。とことんこじれて、家族関係が破壊されたり借金で首が回らなくなってからやっと発覚するものなのだそうです。ということは、被災地にギャンブル依存があるとしても、それが社会問題となるのは実はまだまだ先のこと。
 ギャンブル依存を「意志が弱い」「だらしない」と責めても何の解決にもなりません。刺激の繰り返しで脳内にドーパミンの代謝異常が起き報酬回路に変調が生じている立派な「疾病」なのです。ちなみに厚生労働省が2010年に研究調査を行なったところ、病的賭博の推定有病率は、成人男性9.6%成人女性1.6%だったそうです。ちょっと衝撃的な数字です。なぜか(NHK以外の)マスコミにはほとんど無視されてしまいましたが。欧米諸国では1.5~2.5%程度ですが、本書を読む限り研究方法は妥当なものに思えますので、なにか日本の特殊性があるのかもしれません。
 「パチンコはギャンブルではない」という主張があることは承知しています。承認はしませんが。
 ゲーミングマシーン(ゲームをする目的に使われ、リスクよりも大きな潜在的なリターンを利用者に提供する機械)は2011年には世界中に701万台。その60%421万台が日本にあって、二位のアメリカ(86万台)をぶっちぎっています。あ、公営ギャンブルもありましたね。そこにさらにカジノ構想があちこちで。「ミニカジノ」だけでは不満な人が多いようです。
 本書では「リスクから目を逸らし、経済効果が最優先される」点でギャンブルと原発に共通点を見出しています。マスコミや政治家の動きも、原発と何となく似ているのかな?