【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

売名

2016-02-18 06:50:11 | Weblog

 「売名」とはつまり「名を売る」行為のわけですが、買う人が登場して値段に折り合いがつかなければ「売る」行為はまったく意味がありません。株と同じく、「買う人」がいるから売買が成立するわけです。で、買う人は「他人の名前」に対して何をどのくらい支払っているのでしょう?

【ただいま読書中】『ぼくと相棒』滝口亘/鹿島春光 著、 朝日新聞社、1991年、1068円(税別)

 歯科医と医学生が趣味の化石収集クラブで出会って、それで生まれた短編集です。前半の二つの短編(「ぼくと相棒」「竜の柩」)は合作、後半の「誰もいない炭山(ヤマ)」「耳小骨奇譚」は鹿島さん単独の作品です。
 作品の主な舞台となるのは、北海道の幌加別という町。炭鉱が閉山となって斜陽となった町、ということで、モデルは夕張でしょう。夕張市を流れる川は志幌加別川ですし。
 「ぼくと相棒」と「竜の柩」では「アンモナイトの化石」が話の中心に置かれています。ヒグマに怯えながら山に入って、沢で玉石を割ったらアンモナイトの化石が出ることもある、ということなのですが、ちょっと不思議なのは「アンモナイトの化石の魅力」について、通り一遍の説明しかないことです。化石の魅力に“やられた”人には説明不要なのかもしれませんが、ここはもうちょっと素人向けに描写して欲しかった。そのかわり、というわけではないでしょうが、アンモナイトの化石に対する人の思いはたっぷり語られています。「人がこれだけ強い思いを持つのだから、アンモナイトの化石は魅力的なのだ」ということなのかもしれませんが。
 実は我が家にも、数cmの大きさですが、アンモナイトの化石が一つあります。たしか東京で買ったアフリカ産のものだと記憶しています。じっと眺めていると、不思議な気分になってきます。自分が割った石からこんなものが出てきたら、それは嬉しいかもしれませんね。ヒグマには会いたくありませんが。