【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

新元号の考案者と決定者

2019-04-21 08:06:39 | Weblog

 考案者の名前が「政府関係者」から漏らされているそうですが、そんなことをする目的は何でしょうね。元号に関する「注視」を「何か」から逸らすため、かもしれませんが、その「何か」って……もしかして「安倍首相が独断で決めた」と批判されることを避けるため、とか?

【ただいま読書中】『雪のなかの雀 ──シベリア流刑地の少女の手記』シルヴァ・ダレル 著、 佐藤高子 訳、 早川書房、1977年、1200円

 著者はラトヴィアの(乳母と家庭教師がいて、別荘もある)裕福な家に生まれました。戦争が起き、赤軍が進駐してきて父の店は接収。41年6月13日、「彼ら」によって鳴らされた突然の長くけたたましいベルの音が、一家をシベリアに追いやります。罪状は……一家がユダヤ人であることとブルジョアであること、かな? シベリアへの列車の中で、貨車にぎゅうぎゅうに閉じ込められた人々はヒトラーがソ連に侵攻を始めたことを知ります。到着したのは、私が予想した強制収容所ではなくて田舎のコルホーズ(集団農場)でした。集まった農民たちは、まるで奴隷市場の競りのように、送られてきた人たちを品定めして引き取っていきます。一家はなんとかバラバラにならずに落ちつくことができましたが、翌年の1月2日にまた「彼ら」がやって来て、著者の父親を奪っていきます。
 村の小学校は4年までだったので、5年生になる姉のために母はジェルジンスクへの移住を申請。幸い認められ、母は学校の雑役婦の仕事を得ます。労働者でなければパン配給のカードがもらえません。村で人々は飢餓すれすれで生きていましたが、ジェルジンスクの栄養事情はそれ以下でした。それでも著者はなんとか生き抜きます。そして、モスクワとリトアニアで女学校、レニングラードで大学教育を受けることができました。
 「シベリアに強制移住」と聞くと、強制収容所に完全隔離のような生活か、と感じていたのですが、「ラトヴィアから追放さえできたら、あとはどうでもいい」という基本態度だったようです。ただ「ユダヤ人であること」「流刑者の子供であること」は「ロシア人社会」では「恥」であり、それが恋愛関係にも暗い影を落とします。自分が何者であるか、を恋人(候補者)に詳しく説明できないのです。さらに、教師や学生が、次々「姿を消し」ます。もちろんスターリンの粛清ですが、誰もそのことについては「なかったこと」として触れようとはしません。うっかり疑問を口に出したりしたら、次は自分の番になりますから。そして、著者に「自分の番」が来ます。
 しかし、逮捕状もなし、説明も一切なし、ただ「荷物をまとめろ」「車に乗れ」「服を脱げ」と命令ばかり。もっともその命令をしている人たちも「この人が犯罪者かどうか」なんてことは全く知らずただ上からの命令に従っているだけのようですが。
 きちんとした裁判もなしに護送列車に乗せられ、そこで著者は自分の罪状が「逃亡」(政治犯)であることを知らされます。逃亡? 大学に試験免除で入学できる資格を取得して堂々と入学しているのに? 中継拘置所から別の中継拘置所へ。飢餓と渇きと寒さ、悪罵と打擲、恥辱、そして恥辱。そして、身体は衰弱し、心はもっと傷ついた状態で、著者は釈放されます。
 なんとも陰惨な社会です。とくに私の心に影を与えるのは、この社会が「人の手」で作られ維持されていること、そしてそれがまったく目的をきちんと果たしていないこと、です。まったく無駄に人を苦しめているだけなのです。ソ連が崩壊したわけがよくわかります。崩壊した後、人々が少しは幸せになっていたら良いんですけどね。