【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

楽と楽々

2019-04-24 07:27:30 | Weblog

 「楽をする」と言うと、それは何か手抜きをする、つまりネガティブな語感を醸し出します。
 ところが「楽々とする」だと、何かをする、つまりポジティブな語感となります。
 「楽」を繰り返すだけで逆になるって、面白い。

【ただいま読書中】『「誤嚥」に負けない体をつくる間接訓練ガイドブック』大野木宏彰 著、 メディカ出版、2018年、3800円(税別)

 まずタイトルの解説が必要でしょうね。「誤嚥」とは、食べたり飲んだりしたものが、食道(から胃)ではなくて気管(から肺)に入ってしまうことです。「間接訓練」とは「食べものを用いない嚥下訓練」のことです(「食べものを用いる訓練」は「直接訓練」と呼ばれます)。
 人の筋肉量は、20代がピークで、それから継続的なトレーニングをしなければ1年に1%ずつ低下します。また、安静臥床をすると「1日で2%」も筋力は落ちるそうです。すると1週間寝たら15%の低下! こうなったら全身が衰弱してしまいます。
 本書では「嚥下運動」は全身の一部、という視点から誤嚥(とその訓練)を論じています。だから「まず、下肢や体幹の訓練を」なんてことを提唱しています。嚥下機能が弱っているのだから嚥下機能を鍛えたら良い、ではない、というのが著者の主張です。そこで紹介されるのが、「脳卒中の患者に起立・着席訓練を行うだけで、摂食嚥下機能が改善した」という報告です。体力がつくだけで誤嚥が減るのです。さらに、体力がつけば誤嚥をしても肺炎になりにくくなります。「起立・着席訓練」は文字通り立ったり座ったりをその場で繰り返すだけの訓練ですが、これで背筋から首の筋肉まで鍛えられることが筋電図で確かめられています。そうか、首が鍛えられたら、嚥下運動も良くなるでしょうね。
 また、姿勢の大切さも解剖学の見地から説かれます。たとえば「口の中の唾をゴックン」は、着席して背筋を伸ばして行うのと、背中を丸めて行うのとでは、後者の方が飲みにくく感じます。
 本書は、リハビリテーションの療法士を対象に書かれていますが、素人にも貴重なヒントが満載だ、と私は感じました。とりあえず休日には、カウチポテトを決め込むのではなくて、ちょっとは姿勢を正して起立・着席訓練でもしてみましょうか。